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2025年入学 慶應ロー合格再現答案

総評


2024年9月10日に令和7年度入学者対象の慶應ロー入試の発表がありました。結果は免除なしの合格でしたが私は試験後いくつか論点を落としてしまったことに気付いたため、合格か不合格かは5分5分であると思っていました。そして、入試が終わってから一週間は予備論文直前であるにもかかわらず、ネットの去年の再現答案などを確認し、どのくらいまで論点をおとしても耐えるのかを血眼になって探してしまいました。このような経験から、いくつか論点を落としても耐えるのだという先例を、今後ロー入試を控える方たちにご紹介したくてこのような再現答案を執筆しました。致命的な論点ミスを複数教科でいくつかしているため恥ずかしながら、ボーダーぎりぎりだと思います。それでも一種の再現例として参考になれば幸いです。今後難化していくであろうロー入試の対策にわずかながらでも貢献できればうれしいです。慶應ローはおそらく成績開示がないため、各評価個別の感想と主観的評価を付しました。近年の傾向として民法が難しくなっていると思われるため、他の合格者様も言及していると思われますが、本番は民法を後回しにして最後に解くのがいいかもしれません。

憲法

感想

中やらかし科目その1 ランコントルの使用許可について条例6条に違反することを理由に不許可処分していることに気づいたが、6条をどう処理していいかわからず適当な処理をしてしまった。別途三段階審査によるのがよかったか。2024の伊藤塾の全国公開論文模試と同じ内容で合憲限定解釈の点は多少書きやすかった。しかし内容があっているかはわからない。試験時間が終わった後回収の際周りの答案をすこしみると、答案用紙の裏まで書いていてビビった。時間は55分ぐらいかけた。主観的評価C

本文

1A市の、「憲法改正に反対するA市民の会」の大集会室の使用の申請を却下した処分、および「憲法改正に反対するA市民の総決起集会実行委員会」のランコントルの使用の申請を却下した処分がこれらの団体の構成員の集会の自由を侵害するものとして憲法21条1項に反し違憲とならないか。

(1)そもそも、上記団体は、大多数の人が集まり憲法改正に反対するという一定の目的の下に集まる決起集会を開こうとして上記申請を行おうとしているため、かかる自由は集会の自由として保障されているとも思える。

(2)もっとも、大集会室はその使用の目的の中に集会を行うことも入っていると考えられ「公の施設」(地方自治法244条)として設置されているといえるが、ランコントルは人々の交流の場として設けられているだけであり、「公の施設」にあたらずかかる場所での集会を行うことの申請権は憲法上保障されていないのではないか。

これに関して、ランコントルは壁や塀でおおわれていない南北、東西ともに60mの平らな広場であって、南側と西側は広い道路に面しており、人々に意見を伝えることのできるパブリックフォーラムとしての性質を有している。さらに従来からプロスポーツチームの公開練習や音楽イベント、国際交流祭り、地元物産展などが行われてきているから「公の施設」にあたり、ここでの集会を行うことを申請する権利は憲法上の権利として保障されていると考えられる。

2そして、上記のとおり団体の構成員の集会の自由が、申請を却下されたことによって侵害されている。かかる侵害は正当化されるか。

3(1)そもそも、上記自由は自己の政治的思想を他者に伝達するものであり、自己実現や自己統治の精神にもかない、重要なものである。

(2)一方で、憲法改正に反対する集会を禁止するという、特定の思想を禁止するものでもあり見解規制とも言え、その制約の程度は大きい。

4そこで、審査基準は厳格に解するべきである。また、条例11条は「公の秩序をみだすおそれがある場合」に許可を認めていないところ、同要件を厳格に介して、かかる場合とは、公共の安全に対する明らかな差し迫った危険が明白に認められる場合を意味すると解する。(泉佐野市民会館事件参照)よって、上記申請を認めることによって、かかる明白かつ現在の危険が認められない場合は、上記の処分は許容されないと解する。そして、本件については条例の6条も問題になっているところ、上記自由の重要性にかんがみて、明白かつ現在の危険が存在しない場合には、6条違反として申請を認容しないことも違憲になると考える。

5本件についてみると、「憲法改正反対集会が開催されれば、A市が憲法改正反対運動の片棒を担いでいるといわれても仕方がない」との意見が電話で寄せられたことを考慮しているが、まだ反対の意見が電話で寄せられただけでは、上記程の危険がいまだ認められるとは考えにくい。そして、上記の人権の重要性にかんがみて、明らかな差し迫った危険とは、警察の動員によっても対処できないほどの危険を意味すると解するところ、たとえ上記集会に反対する住民が存在したとしても、いまだこれほどまでの危険が差し迫っているとは言えない。また、市民会館は、申請者が男性であるか女性であるか、若者であるか高齢者であるか、市のどの地味に住んでいるかを考慮することなく使用許可を与える方針で臨んでいるが、集会の性質としては、市民の間で分断を生み出しかねないような政治的問題には関わらない音楽会、趣味の集まり、学習会など市民の集いのために利用されることを想定していると主張するが、明示的に地方自治法は利用目的によって制限を課しているわけではなく、また大集会室も基本的には先着順に使用許可を与えているのであり、その使用に際して許可者の裁量は大きくないといえ、政治的利用を理由とする制限は合理的ではない。さらに憲法改正問題はヒートアップしており、ランコントルや市民会館で反対派の集会が行われると、それを知った多数の推進派が詰めかけて、騒動に発展することも市長として大変心配でありそれを防止するために申請を却下したと市長は主張するが、かかる想定は観念的なものにすぎず、前述のとおり警察の動員をもってしても制御できないほどの騒動とは言えないため、明白かつ現在の危険が認められず、かかる申請の却下処分は違憲である。

 

 

民法

感想

一番主観的にはできた。難化したと言われていたが、憲法を解いて民法の問題を見た瞬間これは難しすぎると思って先に刑法を解いた。民法は残った時間で解いたのである。民法の答案が正解筋の一つかはわからないが、この内容はロースクールタイムズさんの答案とは少し違かったと記憶している。いろいろな回答筋があったと信じたい。そして、正直民法の答案で相対的に浮いたので合格したと思っている。それほどまでに他科目で結構なやらかしをしたと思う。設問1でEについて触れられなかったこと、設問3は相殺契約(?)であるため条件を付してもいいのではないかと後で考えその2つだけ気がかりな点である。 主観的評価A~B

本文

第1設問1について

1CはBに対してAB間の賃貸借契約に基づく賃料支払い請求権を差し押さえたとして、かかる請求をすることが考えられる。

(1)まず、これに対しBはAB間の賃料債権がDに譲渡されて第三者対抗要件が備えられた(民法467条2項)ため、Cの差し押さえは無効であり、上記請求が認められないとの反論をすることが考えられる。

(2)アもっとも、Cとしては、AD間の債権譲渡が将来債権譲渡(466条の6)であり無効となると主張することが考えられるが、将来債権譲渡も当事者、範囲などによって特定され、公序良俗(民法90条)に反しない場合には有効になると解する。

イ本件では、当事者がAB間の賃貸借契約と明確であり、その譲渡される範囲も令和6年3月分から令和12年5月分までと明確になっており、特定されているため、公序良俗に反せず、有効になると考えられる。

(3)次に、Cとしては、差し押さえ命令がAおよびBのもとに送達されているためかかる差し押さえをBに対抗できるとも主張すると考えられる。そこで、差押債権者と債権譲渡の譲受人のどちらが優先するかが問題となる。

アこの点について、第三債務者の二重弁済の危険を回避するため、差押え債権者と債権の譲受人の優先度合いは、差し押さえ命令の第三債務者への送達と債権譲渡の第三者対抗要件の具備の前後によって決すると解する。

イこれを本件についてみると、差し押さえ命令がBに送達されたのは令和6年の2月10日であり、第三者対抗要件が債権譲渡について具備されたのが令和6年2月8日であるから、債権譲渡の譲受人であるDがCに優先するといえる。

ウそうだとすると、Cの上記反論は認められないとも思える。

しかし、Aはかかる債権譲渡により無資力になっているから、Cはかかる債権譲渡を詐害行為取り消し(424条以下)によって取り消すことを主張するといえる。

ここで、Aは債権譲渡によって相当の対価を得ており、債権者であるCを害する目的でかかる行為を行っているから、424条の2によってかかる行為を取り消すことができる。

2よってBの反論は認められず、Cの請求は認められるといえる。

第2設問2について

1Cは設問1と同様の請求をすることが考えられる。

2これに対してBは、AB間で甲建物の売買契約を締結したから、乙債権は混同(520条本文)により消滅したと反論することが考えられるが、Cは自己が「第三者」(同条但し書き)に当たると再反論することが考えられ、かかる再反論は認められる。

3また、CはAB間の甲建物の売買はCを害する目的で行ったものであり、Aは無資力で通謀が認められるから、424条の2によって取り消すことができCの請求は認められると主張することが考えられ、かかる主張も認められる。

第3設問3について

BはFの有する丙債権と相殺したから支払いを拒絶すると主張することが考えられる。

FはAのBに対して有する乙債権が差し押さえられるなどした場合には、乙債権と丙債権を相殺する(505条1項本文)との意思表示をしたが、かかる意思表示は乙債権が差し押さえられるなどした場合という停止条件が付されており、相殺に条件を付すことはできない(506条1項但し書き)ため、かかる意思表示は認められず、Bの主張は認められない。よってCの請求は認められる。

刑法

感想 

大やらかし科目 設問1はそれなりには書けたと思うが、設問2について、強盗罪の理解が甘くて客観的に見て反抗を抑圧するに足りる暴行であればよいのに、実際に反抗抑圧されていないとだめと考えて「暴行または脅迫」を否定してしまった。現実の反抗抑圧が必要との立場をとっても強盗未遂は成立するよなと後から思った。そこの点数および「強盗の機会」の論点などを落としている。刑法は周囲のレベルが高いと思われるため、このやらかしは非常にでかいと思われ、一番終了後の脳にダメージを与えた科目である。時間は55分ぐらいかけた。 主観的評価D

本文


第1問題1について

1甲の罪責について

(1)甲がAに対し「死にたくなかったらいうことを聞け」と申し向ける脅迫を行い、粘着テープでAの身体を緊縛する暴行を加えた行為は、被害者の反抗を抑圧するに足りる程度の暴行・脅迫であり、「暴行または脅迫」にあたり、「財物」を「強取」しているから、上記行為に強盗罪(236条1項)が成立し、後述のとおり乙と丙との間で窃盗罪の範囲で共同正犯(60条)が成立する。

(2)よって甲はかかる罪責を負う。

2乙の罪責について

1乙が甲との間で窃盗行為を行う旨の提案をしたことについて強盗罪の共同正犯が成立するか。

(1)そもそも乙は実行行為を行っていないが、かかる者にも帰責することができるか。共謀共同正犯の成否が問題となる。

アこの点について共同正犯の処罰根拠は一部実行全部責任の下、他人の行為を相互に利用補充しあって結果に因果性を持つところにある。そこで、①共謀②共謀に基づく実行行為、③正犯意思が認められれば実行行為を行っていなくても共同正犯となると解する。

イこれを本件についてみると、確かに甲乙間では窃盗の共謀があるだけであり、強盗罪の共謀は認められない。もっとも、窃盗行為をしに他人の宅に入る場合、家主がいた際には強盗行為に移り財物を奪取しても異常とは言えない。さらに、A宅に人がいた場合を話し合ったことがなかったのであり、強盗行為が明示的に否定されていなかったことを考えれば、窃盗の共謀の射程が強盗罪の共謀にも及び、強盗罪の共謀があったといえる。(①充足)そして、かかる共謀に基づく実行行為が存在し(②充足)乙にはA宅の見取り図などを用意し積極的に犯罪にかかわっているうえ、報酬も3分の1もらおうとしているため、そのかかわりの度合いは大きいといえる。また、乙自らかかる計画の提案をしており、首謀者と評価でき正犯意思が認められる。(③充足)

(2)よって、乙の上記行為に同罪が成立するとも思えるが、乙は窃盗罪の共同正犯の故意しか有していないのであり、同罪の故意にかける。

アそこで窃盗罪の共同正犯の故意が認められるか問題となるも、構成要件は実質的に考えるため、両者の間に法益、行為態様の同一性がある場合には重なり合う限度で故意が認められるといえる。

イ本件についてみると、窃盗罪と強盗罪はともに財産に対する罪ということで保護法益が共通しており、行為態様も財物の奪取という点で共通しているから、窃盗罪の共同正犯の範囲で重なり合いが認められ、乙の故意が認められ、上記行為に同罪が成立するから乙は窃盗罪の共同正犯の罪責を負う。なお、目的とする犯罪が異なっても構成要件が重なり合う範囲で共同正犯は認められることを付言しておく。

3丙の罪責について

(1)丙の、甲の犯行の見張り及び計画において運転役を務める行為に強盗罪の共同正犯が成立しないか。乙と同じく丙は実行行為を行っていないため、共謀共同正犯の成否が問題となる。

ア本件では、乙と同様に、甲丙間では強盗についての共謀はないが、A宅に人がいた場合のことは話していないのであり、さらに丙は強盗をしたと甲から聞いても驚いただけで金銭を受け取っているため、強盗が明示的に共謀から除外されていなかったと考えられ、窃盗の共謀の射程が及ぶといえる。(①充足)そして、共謀に基づく実行行為が存在する。(②充足)

もっとも、丙は運転役や見張りをするだけであり、報酬も1万円と少なかったのであるから正犯意思が認められないとも思えるが、これらの役割は犯罪をするうえで重要なものである。さらに、丙は報酬額の交渉をし、30万円もの報酬を受け取ることに成功しているから、自ら積極的に犯罪にかかわる意思があったといえ、なお正犯意思が認められる。(③充足)

イそして、窃盗罪についての故意しか有していないのは乙と同様であり、乙と同じく、窃盗罪の範囲で甲乙と共同正犯になる。

(2)そして、丙はかかる罪責を負う。

第2設問2について

1甲が箪笥に近づき、その後果物ナイフをBに向け脅した行為に強盗罪(238条、236条1項)が成立するか。

(1)まず、事後強盗罪が成立するには「窃盗」であることが必要であるところ、甲が箪笥に近づいた時点で実行の着手が認められ、「窃盗」は未遂でもよいから甲は「窃盗」に当たる。

(2)もっとも、甲は箪笥に近づいてから屋根裏部屋に隠れているのであり、窃盗の機会に「暴行または脅迫」をしたかが問題となる。

アこれに関して、強盗罪は暴行または脅迫により財物を奪取する犯罪であるから、暴行または脅迫は窃盗の機会に行われる必要がある。そして、「窃盗の機会」であるか否かは窃盗行為と暴行または脅迫の時間的場所的接着性、および被害者等による追跡の有無などによって判断されると解する。

イ本件についてみると、甲は箪笥に近づいてから、Aが帰宅したため屋根裏部屋に逃げ込んでいるが、その後Aは一時間甲が侵入したことに気づいていないが、甲はA宅から逃亡することはできなかったのであり、侵入したことにAが気づいてからすぐにBが来てそのBに対して脅迫行為を行っているため窃盗行為と暴行または脅迫との時間的場所的接着性が認められる。よって、「窃盗の機会」にした行為といえる。

(3)そしてナイフを突きつける行為は「逮捕を免れ」るために行われている。しかし、「暴行または脅迫」は前述した強盗罪の特質からすると、相手方の反抗を抑圧するに足りるものであることが必要であるところ、かかる脅迫行為によりBは反抗を抑圧されていないため、「暴行または脅迫」にあたらず、上記行為に同罪は成立しない。

(4)そして、財物奪取目的ではなく逮捕を免れる目的で脅迫を行った行為について恐喝罪(249条)は成立せず、上記行為に窃盗未遂罪が成立するにとどまる。

2なお、Bがナイフを投げAに当たりAが障害をおったことについては、上記行為との関連性はなく、甲は何ら罪責を負わない。

3よって甲の上記行為に窃盗未遂罪が成立し、甲はかかる罪責を負う。

商法

感想

とくにいうことなし。ほかの科目との調整で若干易しくなったか。当てはめだけ難しいがあとは論証を張り付けるだけだったと思う。非上場会社には時価という概念が存在しない(?)ため有利な金額の論証は使えないという意見を終わった後聞いたが、みんなこのことを知らないと思われるため相対的には沈まなかったと思う。主観的評価A

本文

1Cは甲社に対し本件新株発行の差し止め請求(210条)をすることが考えられる。

(1)まず、Cは本件新株発行により、自己の持ち株比率が減少してしまうといえるから、「株主が不利益を受けるおそれ」があるといえる。

(2)そして、Cは本件新株発行が「特に有利な金額」(199条3項)に当たるにもかかわらず株主総会の特別決議を経ていない(199条3項、201条1項、199条2項、309条2項5号)ことは法令違反に当たる(同条1号)と主張することが考えられるが、かかる主張は認められるか。

アこの点について、199条3項の趣旨は、既存株主の経済的損失を回避するところにあるから、「特に有利な金額」とは、時価を基準とした公正価額より低い価額をいうと解する。

そして、既存株主の保護と会社の資金調達の利益の保護の調和の観点から、公正価額とは、会社の資金調達目的が達せられる限度で既存株主に取り最も有利な価額をいうと解する。

イ本件についてみると、令和6年3月当時における甲社の株式の評価額は一株当たり50万円程度だったのであるから、本件新株発行において株式の一株当たりの払込金額を20万円としたのは「特に有利な金額」での発行といえ、法令違反に当たるといえる。

2次に、本件新株発行についてDに対して行うことは、会社の主導権を確保するための発行であるといえ、「当該株式の発行・・・が著しく不公正な方法」により行われるもの(同条2号)として指し止め事由に当たることを主張すると考えられる。

(1)そもそも、不公正発行とは、不当な目的を達成するための手段として株式発行を行うことを意味すると解する。そして、被選任者たる取締役が、選任者たる株主の構成変動を目的として株式発行を行うことは、機関権限の分配を定めた法意に反するといえるから、原則として現経営陣の支配権の確保のためなされた新株発行は不公正発行に当たると解する。

もっとも、会社は株主全体の保護を目的として活動するものであるから、株主全体の利益の保護の観点から、かかる発行を正当化する特段の事情がある場合には、かかる発行でも不公正発行には当たらないと解する。

(2)これを本件についてみると、本件新株発行はCがDの提案に対して拒否などをすることから行われたものであり、さらに本件新株発行によりAとDが50株以上を有することになり、株主総会の特別決議において承認要件を満たせる数を保有することになるから、かかる新株発行は現経営陣の支配権維持のためになされたものとして、不公正発行に当たる。そして、取締役会においてかかる発行は承認されているため、株主全体の利益の保護の観点から正当化されるとも思えるが、株主であるBおよびCが承認していないため、株主全体の利益の保護の観点から正当化される特段の事情もない。

2よって上記の事由により、Cの主張は認められる。

民事訴訟法

感想 

小やらかし科目 X1が自己の過失を主張しているのだから本件陳述は過失相殺に当たる事実として抗弁になると終わった後気づいた。これが結果として自白になるからよかったがそうじゃなかったら死亡してたと思う。あと問題文をよく読んでなくて設問2で一部請求棄却後の残部請求の話かと勘違いした。途中まで論証を張り付けるだけの問題かと思ったら勝手に落とし穴に引っかかっていた。この間違いに途中で気づかなかったら確実に落ちていたであろう。恐ろしや。  主観的評価B

本文

第1問1について

1本件陳述は裁判上の自白に当たり、裁判所はこれを認めて裁判の基礎としなければならない(弁論主義第2テーゼ)という効果を有するのではないか。

(1)そもそも、自白とは、口頭弁論期日または弁論準備期日における、相手方の主張する自己に不利益な事実を認めてこれを争わないとする弁論としての陳述を意味すると解する。

アそして、自己に不利益とは何を意味するか問題となるも、基準の明確性の観点から、相手方が証明責任を負う事実を意味すると解する。そして、証明責任の分配基準が問題となるも、基準の明確性の見地から、法律効果の発生を望むものが、当該法規の要件事実について証明責任を負うと解する。

また事実とは何を意味するのかが問題となるが、証拠と共通の働きをする間接事実や補助事実についてまで当事者が自白をした場合裁判所がこれを認めて裁判の基礎としなければならないとすると、自由心象主義(247条)に反するので、事実とは主要事実を意味すると解する。

そして、過失のような抽象的要件事実の場合、それを構成する具体的事実に当事者の主張が集中するため、かかる事実に弁論主義が適用されないと当事者にとって不意打ちとなる。そこで、抽象的要件事実について問題になる場合には、それを構成する具体的事実が主要事実となり弁論主義が適用されると解する。

イこれを本件についてみると、本件陳述はXらの過失を構成する具体的事実についての主張であり、本件訴訟の請求原因となる事実の主張であるため、Yが証明責任を負う事実であり、自白に当たると解する。

(2)よって弁論主義第2テーゼにより裁判所に拘束力が生じる結果、当事者に不要証効(179条)が生じ不可撤回効も生じる。

2そして本件陳述はX1に対してどのような効果を有するか。

(1)そもそも、本件訴訟は不法行為に基づく損害賠償請求であり、通常共同訴訟(38条)に当たるため、共同訴訟人独立の原則(39条)が生じ、共同訴訟人であるX1には何ら効力が及ばないのが原則である。

(2)もっとも、紛争解決の実効性の観点から、かかる原則を修正し、X1にも自白の効果を及ぼすべきではないか。共同訴訟人の主張共通の原則が認められるかが問題となる。

アこの点について、共同訴訟は本来なら別個に行われる審理を併合することによって事実上の審判統一を図る訴訟形態にすぎず、それぞれの訴訟において弁論主義が妥当するため、他の訴訟人が提出した主張を援用しない限り、共同訴訟人との関係で効力を有するわけではない。したがって、共同訴訟人の主張共通の原則は認められないといえる。

イよって39条により原則通りX1には何らの効力も有さない。

第2設問2について

1まず、介護費用300万円を追加請求することは本件訴訟の既判力に反し許されないのではないか。

(1)アこの点について、当事者は実体法上私的自治の尊重の観点から分割請求することが認められており、訴訟法上も訴訟の開始、審判対象の特定、さらには審判によらずに訴訟を終了させることを認める権能たる処分権主義が認められていることから、一部請求は認められていると解する。

そして一部請求をした場合には、かかる部分についてのみ訴訟物となると考えられるため、既判力もかかる部分にのみ及ぶと解する。もっとも、原告が一部請求であることを明示しなかった場合、請求が全部請求であると考えて応訴した被告にとって不意打ちとなる。そこで、原告が一部請求であることを明示した場合に限り、当該一部について既判力が生じ、残部請求は既判力に反さず許されると解する。

イよって、本件でも本件訴訟は一部であることを明示しているから、残部請求については前訴の既判力に反さず許されるとも思える。

(2)そうだとしても、一部請求棄却後の残部請求は信義則に反し許されないのではないか。

アこの点について一部請求を審理する際、裁判所は自ら債権の全額について審理をするものである。そして、一部請求棄却は、債権の全額について存在しない判断を示すものである。それにもかかわらず原告が残部請求をするのは紛争の蒸し返しとなり、紛争は解決されたと考える被告の合理的意思に反し、被告にとって不意打ちとなり、二重の応訴の負担となる。そうだとすれば、前訴において裁判所の審理が請求前部に及んでいなかったなどの特段の事情のない限り、一部請求棄却後の残部請求は信義則に反し許されないと解する。

イよって本件でも係る特段の事情はなく一部請求棄却後の残部請求は信義則に反し許されないといえる。

(2)もっとも、本件では、前訴の一部請求が認容されているところ、介護費用を追加請求することができるか。控訴の利益の有無が問題となる。

アこの点について、控訴には、控訴の利益が認められることが必要になる。そして基準の明確性の観点から、当事者の申し立てと原審の判断を比較して、前者が後者を上回る場合に控訴の利益が認められると解する。

イこれを本件についてみると、X1は200万円を請求しているのであり、第1審裁判所はこれを全部認容しているのであるから、当事者の申し立てが原審の判断を上回るとは言えない。

ウよって、控訴の利益が認められず、控訴は許容されない。

(3)もっとも、Yが控訴した場合などには付帯控訴により請求を拡張することができると考えられる。また、別訴によっても、前述のとおり前訴の一部請求の既判力は残部請求に及ばないが、Yらが前訴の判断内容に反する主張をした場合、信義則(2条)に反するものとして遮断することができるため、X1にとって不利益はないと考えられる。

 

刑事訴訟法

感想

中やらかし科目その2 設問3を解いている途中にVの発言が現場指示か現場供述かわからなくなってしまい両方現場指示にしたところ、ロースクールタイムズさんが現場供述におそらくしていたため、両方外したといえ、結論の正誤は点数に直結すると思い相当点を落としたと考えた。この実況見分調書の理解が甘いところがあるため、今後勉強していく必要がある。主観的評価C

本文

第1設問1について

そもそも供述証拠は、知覚・記憶・叙述の過程を経るところ各過程に誤りが混在する恐れがあるにもかかわらず、公判廷外の供述は反対尋問(憲法37条2項前段)等によってその真実性を確かめることができない。ゆえに、内容の真実性が保障できない証拠の証拠能力が原則として否定されるのである。そこで、伝聞証拠とは、公判廷外の供述を内容とする証拠であって、その内容の真実性が問題となるものをいうと解する。

第2設問2について

1実況見分調書は公判廷外の供述を内容とする証拠であって、その調書に書かれている内容の真実性が問題となるものだから、伝聞証拠に当たる。

2もっとも、321条3項が検証調書を一定の条件の下証拠として許容している趣旨は、捜査機関が訓練を受けて専門的技術的な手法により行うものであってその恣意の入る余地が少なく、また内容が複雑多岐にわたるため書面で記した方が正確性を期すところにあるといえる。そして、実況見分も検証と強制処分か任意処分かの違いはあれど、捜査機関が専門的な手法で行う点は同じであり、書面に親しむ点も同様であるから、同項の要件を満たせば証拠能力が認められるといえ、「司法警察職員の検証の結果を記載した書面」に当たると解する。

第3設問3について

1まず実況見分調書は前述のとおり伝聞証拠に当たるため、被告の同意(326条1項)がない本件においては321条3項の要件を満たす必要があり、Lの作成名義の真正と内容の真正についての供述が必要である。

2では、別紙1において、立会人が「これくらいでした」と話したことが記載されているが、かかる内容が現場指示ではなくそれを超えて現場供述に当たるとしたら、別途321条1項各号の要件も満たさなければならないといえ、かかる供述の内容が問題となる。

(1)これに関して、本件における実況見分調書は、本件犯行が可能であったことを立証趣旨として証拠調べ請求されている。そして、上記発言は、Xが窓の隙間から右腕を深く差し入れてきて暴行を加えたという本件犯行について、それが可能であるかを確かめるためにVが指示した窓の長さを測ったところ15㎝だったという事実を示すために用いられているに過ぎない。よって上記発言は実況見分の契機となるものに過ぎないといえる。

(2)よって上記発言は現場指示にとどまり、別途321条1項各号の要件を満たす必要はないと考えられる。

3次に、別紙2についてVの「犯人は運転席側の窓の、上下に開いた約15㎝の隙間から右腕を差し入れて、運転席に座っていた私が着用していたネクタイの結び目近くをワイシャツともどもわしづかみにした」という発言があるところ、かかる発言は現場供述に当たらないか。

(1)そもそも、これについても、本件実況見分調書の立証趣旨である本件犯行が可能であったことという内容を考慮すると、Vの主張および訴因に記載されている犯罪事実通りの犯行が可能であったのか、すなわち窓の隙間から手を差し入れてネクタイの結び目近くをわしづかみにする暴行が可能であるのかということを調査するための契機にすぎず、上記発言は現場指示に当たるといえる。

(2)そして、現場指示に当たる以上新たにVの発言の内容の真実性が問題となることはなく、321条1項各号の要件を満たす必要はない。

4そして、別紙1と2のいずれについてもVの発言が新たに伝聞証拠とならない以上、その発言通りの状況を撮影した写真部分も、写真自体は被供述証拠であるため伝聞供述とならないから、実況見分調書と一体となってその証拠能力が認められる。

5よって、本件の実況見分調書は321条3項の要件を満たすだけでよいと考えられる。

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