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ハムレットの記憶

2019年の秋の記憶
わたしは十数年勤めた会社を(表向きは)寿退社して(セクハラパワハラのセパ両リーグ制覇の職場から離脱してすることが叶って)ぼんやり心身の回復に努めながら窓から外を眺めたりして過ごしていた頃。

風磨くんがハムレットを演じたんですよ。急に。
朝起きたら色んな人からLINE来てて、それが凄いことなのかも分からなくて、なんの知識もなくて…。
とりあえず古典演劇であるならば勉強しよう、と思って宗教史も美術史も学んで、シェイクスピアの人生と作品について学んで、ハムレットについては手に入る限りの全ての翻訳本を読んで解釈の違いを学んで、どうにか手に入る映像作品は(野村萬斎さんとか藤原竜也さんとか)全て見て観劇に挑んだのですよ。。

そんな特に観劇経験も知識もない感想を、急に自分のために記録しておこうというnoteです。
ブツ切りなのは過去ツイのコピペだから…。笑

気が狂ったように観劇毎にアンケート真剣に書いてたら、それに応えるようにホレイショーのネックレスが変わっていったのも良い思い出。(ふうまくんの感想を書きなさいよ)

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(第一幕第一場) 真っ暗になって、舞台がはじまる高揚感に浸る瞬間が大好き。 「誰だ?」の一声がバナードーから発せられる不穏さを体感できたことが嬉しかった。 本では分かりにくかったところで、亡霊が姿を消す前のマーセラスとホレイショーのやりとりがすごく自然!
(第一幕第二場)① 円形舞台に白い衣装の王侯貴族たち。盆の外に黒い衣装のハムレット。 眼鏡をして足を組んだ貴族たちは特権階級の冷たい人々に見えて怖かった。 ハムレットは衣装も立ち位置も「蚊帳の外」で、孤立した王子が強調されていて可哀想だった。
(第一幕第二場)② 王から任務を託されたヴォルディマンドは張り切って野心に溢れ、コーネリアスは発言の機会なく…去って行く時が寂しそうで可愛かった。 レアティーズに対するクローディアスの態度は親しみがこもっているように見えたが、クローディアスの人心掌握術を見ているようだった。
(第一幕第二場)③ 「近親関係は…」からはじまるハムレットとクローディアスのやりとり。 言葉のひとつひとつが聞き取りやすくて。 多くの者から見られる立場ゆえに、自分の言葉と振舞いに制約があることを自覚しているハムレットの苦悩が伝わってきた。
(第一幕第二場)④ クローディアスの言葉に追従して笑う貴族や、つまらなさそうな貴族がいる中、レアティーズは心配そうにハムレットを見ていて良かった。 マルチアングルか分割で全員の表情を観察したかった。目が足りない。
(第一幕第二場)⑤ ホレイショーとハムレットが再会する場面、久々にハムレットの表情が晴れたところを見たのか、マーセラスとバナードーが嬉しそうな顔をしていて…。 ハムレットのことを心配する面々の登場に安心した。
(第一幕第二場)⑥ ハムレットが「友だちじゃないか」(2回目)と言う、言い方が最高だった。 ハムレットは立場や肩書きではなく、中身を認めた相手を大切にして、尊重して付き合っていきたいと考えている人なんだな。だけど王子だからこそ、それは難しいことなんだろうな。寂しい。
(第一幕第三場) ポロー二アスの家族の唯一幸福な場面。レアティーズのオフィーリアへの愛、ポロー二アスの長い訓話を聞き飽きつつイタズラな微笑みを浮かべる兄妹の仲の良さ。立派な父への尊敬を感じた。
(第一幕第三場)追記 オフィーリアがハムレットの愛を信じ喜んでいることも、父には従うしかない良家の娘の不自由さも感じて悲しさも少し。
(第一幕第四場) 亡霊について行くハムレットを引き止め、命令に従わず追いかける3人は、本当に「友人」だな。 「いまのデンマーク、何かが腐っている。」(本当はマーセラスの台詞だけど、バナードーが言っていた。) 当時の民衆の不安や不満を代弁しているようで、痺れたところ。
(第一幕第五場)① 刻限が近付くことを知らせるように鳴る鈴の音と、夜明けとともに明るくなる照明が本当に美しくて…! いつの公演だったか、興奮して手帳に書き付けるハムレットがペンを落としたところも、むしろ興奮が伝わるようで良かった。 「貴様のことだよ、叔父上さま」の迫力…!!
(第一幕第五場)② 剣に誓う3人の、地下からの声への怯え方と、興奮して上機嫌にすら見えるハムレットの対比が良かった。 何百万回も言われてると思うけど、「唇には指で封印を」の所作の美しさ…! そこからの独白と捌け方の演出も最高だった。
(第二幕第一場)① レナルドーにポロー二アスが指示するところ、ポロー二アスの政治家としての一面が見える。彼がどのようにして様々な情報を得るのか、尼寺の場にもつながる場面だからカットされてなくて嬉しかった。
(第二幕第一場)② オフィーリアがポロー二アスに狂ったハムレットについて語るところ。 既に城内で狂ったフリをしていたのか、ここから狂ったフリを始めたのか分からないけど、オフィーリアへの想いを断ち切れないハムレットの姿を想像してしまって悲しくて…。
(第二幕第一場)③ 政治家として王の不興を買う恐れに焦るポロー二アスと、父親として娘を大切に思うポロー二アスがせめぎ合っているようで…。また、そのどちらにしても自分の立場を弁えて父に従うオフィーリアの賢さと不自由さが切なかった。
(第二幕第二場)① ロゼギルがコミカルに登場して可愛くてたまらなかった。ヘコヘコしてニンマリして下賎なロゼギル最高。 王がロゼギルを間違えて、王妃が正しく把握しているという演出が私の中ではとても新鮮だった。 本だけでは気付けない上に、新しく解釈を問われているような気持ちになった。
(第二幕第二場)② 野心溢れるヴォルディマンドのドヤ顔での報告は堂々としていて滑舌も素晴らしくて…。労を労われて捌ける際にコーネリアスが手を叩いて小さくガッツポーズをするところも可愛くて大好き。
(第二幕第二場)③ 「本題を。」とテーブルにグラスを打ち付けるガートルード。ハムレットが気違いと言われた時からずっと不機嫌で、いつもは辟易しながらもポロー二アスの話を聞いている彼女が話を遮って急かしたところに、彼女なりのハムレットへの愛情を感じた。
(第二幕第二場)④ ハムレットからの恋文を、ポロー二アスではなくてオフィーリアが読み上げ(させられ)るところが悲しかった。 ポロー二アスは政治家の顔だった…。 席を立って続きをガートルードが読むところも、ガートルードの驚きと、息子への愛情を感じた。
(第二幕第二場)⑤ ガートルードはこの時から密かに不自由なオフィーリアとハムレットの恋が成就するように願っていたのかな。 もしかしたら、自身の若い頃は自由に相手を選べなかったんじゃないかな…とも思った。
(第二幕第二場)⑥ 「“こうだ”と申し上げてそうでなかったことが一度でもございましたか?」 ポロー二アスは非難の矛先が自分に向かうのは避けたくて、むしろハムレット狂乱の理由を探り当てた功績であるとアピールしていたのかな。 後半の公演にいくほど言い方が強くなっていた気がする。
(第二幕第二場)⑦ (そうでなかったことは)「なかったな」と、ポロー二アスに食い気味に返すクローディアス。 後半の公演ほどポロー二アスを宥めるような言い方で…。ポロー二アスはクローディアスの大切なブレーンであり、様々な汚れ仕事の共犯者というか請負人だったのかな、と思った。
(第二幕第二場)⑧ 狂ったフリのハムレットとポロー二アスの掛け合い。 客席に話しかけるポロー二アスが上手すぎて、グッと観客との一体感をつくってくれたと思う。 認識・妊娠など、和訳でうまく韻を踏んでいるところの音のセンスは風磨くん演じるハムレットさすが…!!
(第二幕第二場)⑨ ロゼギル登場シーン。 千穐楽でポロー二アスが「殿下…じゃない!」と、大胆に間違えて爆笑を誘っていたけれど、私が見ていた公演で間違えたのも噛んだのもコレだけ。そして間違えたのに「…じゃない!」と付け足して爆笑をさらえる対応力…。 大鷹明良さん素敵すぎた…!!!
(第二幕第二場)⑩ ロゼギル登場。 2人は幼い頃は貴族の学校(?)でハムレットと学友だったんだろうけど、人を見る目ができてからのハムレットには嫌悪されていて…。 だけど機嫌をとるように発する言葉も、シンクロしたコミカルな動きも本当に可愛くて大好きだった。
(第二幕第二場)⑪ ギルデンスターンとハムレットのやりとり。 「なんでも適当に言えばいい」と、コミカルな動きで対応した直後に、怖い顔でギルデンスターンをねじ伏せるハムレットにゾッとした。 「ぐずぐずせずに言ってくれ」のリズムに合わせて机に頭を打ち付けるところも大好き…。
(第二幕第二場)⑫ 怯えながら何とか上手く言葉をつなぐローゼンクランツも、こっそり髪を直したり帽子を拾ったりするギルデンスターンも、どちらも根っからの悪者ではないけれど浅ましい人物という感じで凄く良かった。
(第二幕第二場)⑬ 役者たち登場。 ハムレットに歓迎された後、役者1が舞台後方でロゼギルに握手を求めて拒否されるところが本当に大好きだった。 (アドリブだった?) その仕草ひとつで、当時の旅役者の身分も、ロゼギルの人間性も、ハムレットの人間性も、ハムレットと役者の関係も分かるようで。
(第二幕第二場)⑭ プリアモス王の下り。 ハムレットの1回目(いや違うな、ってやり直す前)「復讐に狂いし豪傑ピラス」じゃなかった…? 私の妄想…? なんだかここで役者たちはハムレットの心の奥にある不穏なものに気付いたような気がしていたんだけれど、確かな証拠が欲しい…。。
(第二幕第二場)⑮ 役者のプリアモス王に対してポロー二アスが「長すぎる」と言ったところ。 役者たちが詰め寄らんばかりの空気は迫力があって怖かった。 役者たちのガラの悪い一面が垣間見えて、偏見なく仲良くしているハムレットの人柄や、役者たちがハムレットに信頼を寄せる理由も感じた。
(第二幕第二場)⑯ 独りになれたハムレットが花冠を投げ捨てたところで、彼はどれほど人々からの視線を意識して生きなければならないのかと苦しくなった。 テーブルをひっくり返すハムレットの激しさは、独りになってようやく発露させた激情で…。 怖くて悲しくてたまらなかった。
(第三幕第一場)① 尼寺の場。私が色々予習をしてきた中で、最も理想的なハムレットだった。 ハムレットが激昂する暴力的な描かれ方だと苦手だと思っていたけれど、今回のハムレットは理性的で、失意と葛藤と諦念と怒りの中に、捨てきれないオフィーリアへの愛と執着が感じられて。
(第三幕第一場)② オフィーリアを見つけた瞬間、気を取り直したように優しく話しかけるハムレットと、目を合わせられず椅子から立ち上がって話すオフィーリア。 その様子をみて自分が王に呼び寄せられていた事を思い出したのか、3回目の「元気」で袖を見据える目も、暗い声も、悲劇の予感がした。
(第三幕第一場)③ オフィーリアが苦しそうに「この気高い心には」と言った瞬間、俯いてフッと笑う表情…。何もかも納得したように笑って、「お前は正直か?」と諭すように言う優しい声音と、悲しい目。 そこからの言葉はハムレットの激昂ではなくて、全て彼の演技なんだと思った。
(第三幕第一場)④ 「お前の親父はどこにいる?」に対して嘘を重ねるオフィーリアへの苛立ちも、怒りも、悲しさも…。理由を察していながら、抑えきれず次第に激しい言葉で責め立てるハムレットの苦しみが胸に迫って…。 言葉も態度も辛辣なのに、どうして泣いているように感じてしまうの。
(第三幕第一場)⑤ 「尼寺へ行ってしまえ」 オフィーリアへの酷い仕打ちを自覚していて、だけど盗み聞く存在を意識すれば今更どうすることも出来なくて…。 愛するオフィーリアを抱きしめて、何もかも打ち明けてしまいたい…そんな気持ちと決別するような、本当に悲しい台詞だった。
(第三幕第一場)⑥ 「尼寺へ行ってしまえ」から、ハムレットが去る瞬間、何公演かは鼻をすすって泣いているようだった。 前半後半という感じで変わったわけでもなかったような…。私が聞き逃していただけかしら?
(第三幕第一場)⑦ ハムレットが立ち去った後、クローディアスとポロー二アスの会話が先で、オフィーリアの嘆きが後。 ハムレットがイギリスに遣わされると聞いたオフィーリアの悲しそうな目が忘れられない。 きっとハムレット自身も隠れて聞いていたんだろうな。
(第三幕第一場)⑧ 政治家の顔をしている時のポロー二アスはオフィーリアに冷たくて…。泣き崩れる娘を置いてクローディアスと立ち去ってしまうのが悲しかった。 順序の入れ替えによって、取り残されたオフィーリアの嘆きが一層悲哀を感じさせる演出だったと思う。
(第三幕第二場)① 旅役者たちに芝居の指示を出すハムレットは楽しそうで、気安い様子で舞台前方に並んで腰掛けるところが好きだった。 「特に守らねばならないのは」で、さらにぎゅっと距離が詰まって。
(第三幕第二場)② 役者たちとハムレットの関係の良さが本当に微笑ましくて、ハムレットの青春を見ているようで懐かしく暖かい気持ちになったけど、これから起こる悲劇を思うと、役者たちの前途まで勝手に想像してしまって、泣きたいような気持ちにもなった。
(第三幕第二場)③ ハムレットが役者たちに芝居について語っているところの中で、「せっかくの台詞を」という何気ない一言が、今回のハムレットが大切にしてきたものも、シェイクスピアの思いも、全て凝縮しているようで…説得力があって大好きだった。
(第三幕第二場)④ 気持ちが高揚して激流となり、嵐となり、あるいは竜巻のようになるときこそ、むしろ静かに表現する抑制が必要だ。 全面的に同感だ!! 今回のハムレットの何が良かったって、台詞のひとつひとつに感情が乗っていて、耳で聞いているだけでも本当に素晴らしい劇だったところなの。
(第三幕第二場)⑤ ホレイショーを誉めそやすハムレットの台詞は、ハムレットが人を判断する基準や、ホレイショーとハムレットの信頼関係がよく伝わって良かった。 「いつか話した父上の最期」は、本当に話したのかな? この言葉だけでホレイショーは察したのかな。どっちなんだろう。
(第三幕第二場)⑥ どんなに辛い目にあっても、辛さを顔に出さず、運命が下す打撃も恩賞も、等しく感謝の心で受け止める。 情熱と理性が見事に調和しており、激情の虜にならない男。 ハムレット評するホレイショーの人物像をもって第五幕第二場を観ると、どうしても泣いてしまう…。
(第三幕第二場)⑦ 劇中劇。小人のような劇中王と王妃が可愛らしくて、台の上で演じるところが分かりやすくて。 劇を観ているクローディアスやガートルードの反応も見やすかった。 気まずい場面になるとワインを飲む仕草が少し哀れにすらなった。
(第三幕第二場)⑧ ルシアーナスの不気味さと声の響き、クローディアスを睨みつけながら叫ぶハムレットの迫力が相まって、このシーンも本当に好きだった。 ポロー二アスがワインを飲む仕草で、やはり彼はクローディアスの共犯者なのかと感じた。
(第三幕第二場)⑨ 芝居を止めろとポロー二アスが叫んだ後、ルシアーナスがハムレットと目を合わせて微かに頷くような仕草をして劇中劇の舞台から降りるところが良かった。 ルシアーナスは何か察した上で、ハムレットの為に、現王クローディアスの不興を買うような劇を演じたんだなと納得した。
(第三幕第二場)⑩ ロゼギル登場。 ロゼギルはハムレットの気晴らしになるよう芝居を勧めたと王に褒められたことを功績だと思っていたのに、こんな展開になって焦りに焦っている感じが伝わって良かった。 保身と野心が浅ましく滲むロゼギルに対して、ハムレットの静かな怒りが爆発して怖かった。
(第三幕第二場)⑪ 笛を持ってくるのがルシアーナスなところがハムレットと役者の関係を強調しているようだったし、自分を舐めたロゼギルに対して笛を使って皮肉を言う台詞の意味が見事に伝わる流れで最高だった。
(第三幕第二場)⑫ 芝居によって確かな証拠を得たハムレットが復讐を決意する独白。 母の恥ずべき行為への憎しみはさらに増し、それを理性で抑え、舌と心が欺き合うよう願いつつ母のもとへ向かうハムレットの心情が伝わって、苦しくて切なかった。
(第三幕第三場)① クローディアスの祈りの場面。 床に映し出されるステンドグラスが綺麗で…。罪の獲物を手放せず、赦しを得られないと思い悩むクローディアスが哀れ。 王冠を外して懺悔するクローディアスは、王の風格を失い、俗世の小物だった。
(第三幕第三場)② クローディアスを殺すか逡巡するハムレット。 魂を浄め煉獄での苦しみを味わうことのない死を与えることは、復讐足り得るのか。 ハムレットの逡巡によって、悲劇的な最期を迎える多くの登場人物の死後に思いを馳せてしまった。
(第三幕第三場)③ ハムレットとレアティーズは、ガートルードは、クローディアスは…。その最期までに懺悔する時間はあったのだろうか。死後の世界で罪を赦されたの?
(第三幕第三場)④ ハムレットが去った後、「心の抜けた言葉は天には届かない」と呟くクローディアス。 当初は彼の狡猾さを強調しているのかと思っていたけれど、今回のハムレットでは印象が変わった。 クローディアスは罪を自覚し後悔し苦しみ、それでも野心を捨てられない哀れな人だと感じた。
(第三幕第三場)⑤ 立派な兄と比較され劣等感に苦しんだこともあっただろう。ガートルードと結婚する前に家族はいなかったのかな。 兄の息子であるハムレットの存在は、クローディアスにとってどれほど劣等感を刺激され、自分を脅かす存在に思えたことだろう…。
(第三幕第三場)追記 ハムレット退場前、「魂はどす黒く染まって」千穐楽で言い直して2回言ったけど…風磨くん噛んじゃったのかな?堂々と言い直してたから気にならなかったけど、珍しいなと思った。
(第三幕第四場)① 居室の場。 ハムレットはポロー二アスを殺してしまったことによる混乱や興奮もあって、ガートルードを辛辣な言葉で激しく責め立てたのかな。
(第三幕第四場)② ガートルードの恥ずべき行いに対する憎しみも、分かってもらえない寂しさも、強く激しくぶつけるところが理性的なハムレットらしくなくて、そこに母への愛ゆえの憎しみと、まだ残るわずかな母への甘えと感じた。
(第三幕第四場)③ ガートルードの膝に頭を乗せ、善い心を取り戻して欲しいと切々と諭すように訴え、去ろうとしたハムレットに対して、「私はどうしたらいいの?」と問いかけるガートルードは本当に…無自覚に人を傷つける。これだけ言われてまだ分からないの…?まだ自分で考えて自制できないの…?
(第三幕第四場)④ 諦めたように微笑って、王の寝床へ行けばいいと再びガートルードを責め立てるハムレットが本当に可哀想で…。 最後の「おやすみなさい、母上」は、泣いているようだった。永遠の別れを告げるような穏やかで切ない声で…。 お願いガートルード、ハムレットを抱きしめてあげて。
(第四幕第一場) 罪の意識に苛まれハムレットを心配するガートルードと、一言目に保身を口走った挙句に取り繕って政治的な心配をするクローディアス。二人の言葉の方向は噛み合わず、またひとつボタンを掛け違えて悲劇に向かっていくようで悲しかった。
(第四幕第三場)① ポロー二アスの死体を探すクローディアスは苛立ちをあらわにしていて、後にこっそり埋葬したのは浅はかだったと後悔しているように、やはりポロー二アスなしではクローディアスは今の地位につけなかったんだろうなと思った。
(第四幕第三場)② クローディアスを食った態度で皮肉を浴びせるハムレットからは、静かで確かな憎しみと殺意を感じた。 「さようなら、母上」夫と妻は一心同体…皮肉に聞こえるけれど、第一幕の「お言葉に従いましょう、母上」に対応してるんだと思った。 お前を父とは認めない、という強い意思。
(第四幕第四場)① フォーティンブラスが野心も知性もある堂々とした若者で良かった。 隊長の軍人らしい佇まいと声によって、ハムレットの落ち着いた話し方や声が一層引き立てられていて好きだった。
(第四幕第四場)② ハムレットの独白。 フォーティンブラスの姿勢に尊敬の念を抱き触発され、名誉のため、思いを残忍な血で満たすと覚悟するハムレット。 ハムレットはここで、自分の命をかける覚悟をしたんだろうな…。
(第四幕第五場)① オフィーリアをガートルードに会わせ、怯えながらも守るように寄り添うホレイショー。ハムレットが去ったデンマークに彼が未だ留まっている意味を考えてしまった。ハムレットが愛したオフィーリアを見守ってくれていたんだろうか…。
(第四幕第五場)② 黒い布を被って現れたオフィーリアに驚いて、美しい歌声に鳥肌が立った。 途中からダミ声で歌うところは本当に凄みがあって…。 初めて見た時も震えたけど、千穐楽は特に涙が出るほど凄かった。 南沢奈央さんがオフィーリアで良かった。
(第四幕第五場)③ 早起きをしたバレンタインデー。 あなたと結ばれる日。 愛しいあなた扉を開けて微笑む。 入る時は娘でも出る時はそうじゃない。
(第四幕第五場)④ 「男が言うの!」 アバズレ女なんかと一緒になれない。 私を抱くその前に誓ったのに…。 歌詞…違うかな?忘れたくないのに記憶力がなくて…。。もう一回みせて…!
(第四幕第五場)⑤ オフィーリアの後を追ったホレイショーは、水夫からの手紙を受け取ってハムレットに会いに行くまで、彼女を見守っていたんだろうか。そばを離れることがなければ、彼女は死ななかったんだろうか。
(第四幕第五場)⑥ 暴徒が押し寄せた際に、ガートルードが「裏切り物のデンマークの犬ども」と言うところが、本当に気位の高い、狭い世界で生きてきた女性という感じで…。マリーアントワネットみたいに無自覚に人を傷つけてしまうんだろうな…と納得するようなガートルード像で良かった。
(第四幕第五場)⑦ いきり立ったレアティーズの「忠義なんか地獄に失せろ!」から「父の仇はとことん討ってやる」までの台詞と表情が良かった。 ハムレットとは対照的に、父の仇を討つべく真っ直ぐ向かってくる彼の行動原理は「己に誠実であること」なんだろうな、と思った。
(第四幕第五場)⑧ ポロー二アスの教え通り「己に誠実」なレアティーズ。彼にとって譲れない、誠実であるべきもの。 昨日友人が解をくれた。それは「家族への愛」なんだと。 それがレアティーズにとって最も譲れないものだから、全てを捨てて謀反を起こし、そしてハムレットを殺そうとしたんだね。
(第四幕第五場)⑨ 緊迫した場面に現れるオフィーリア。狂った化粧で、喜びに溢れる表情をしてレアティーズに駆け寄り抱きついて…。誰だと思ってたのかな。 そのまま花を配るところ。 ローズマリーとパンジーはレアティーズに。 ウイキョウ・オダマキ・ヘンルーダ・ヒナギクは、まさかの民衆に。
(第四幕第五場)⑩ オフィーリアの狂気で、暴徒の熱が冷まされていく…本当に美しく悲しい演出で。 少し順序の入れ替えもあって、悔いと悔やみのヘンルーダをガートルードへ手渡し、オフィーリアが走り去ってから、レアティーズが嘆き悲しんでいた。
(第四幕第五場)⑪ 大切な妹の狂った姿を見たレアティーズが嘆き悲しむ姿は堪らなかった。 もし、レアティーズがフランスへ戻らなければ、支えを失ったオフィーリアが狂うこともなかったのかな…。
(第四幕第六場) ホレイショーに水夫が手紙を届けにきた場面。 水夫の衣装が目出し帽で現代風で驚いた。異質なものへのホレイショーの警戒した目も良かった。 だけど、ここでホレイショーが城を去らなければ…と、またひとつボタンの掛け違いで悲劇に近づくようで悲しかった。
(第四幕第七場)① ハムレットを殺す策略にレアティーズを巻き込むクローディアス。 クローディアスは常に話術で他者を共犯者にするし、自分の手を汚さない。 王妃との早すぎる再婚も、貴族の同意に礼を言って半ば共犯者にしていた。 稚拙な策略はポロー二アスがいないからなのかな…。
(第四幕第七場)② オフィーリアの死をガートルードが語る場面。 悲しそうに、そしてレアティーズを気遣うように、真摯にオフィーリアの死の詳細を話すガートルードは、優しさも気品も…本来のガートルードの姿を取り戻したようだった。
(第四幕第七場)③ レアティーズの悲しみの深さは計り知れず、その表情には涙が出た。 また、オフィーリアの死を悲しむこともなく、レアティーズの動向を心配しているクローディアスは本当に保身が第一の男で…。良い方の心を残して清く生きようとしているガートルードとの決裂は決定的だった。
(第四幕第七場)④ オフィーリアには付き人もいただろうに、どうしてこんなに美しくゆっくり川に沈んだのか…。 人間ああなると人形か畜生に等しい。と言われるような状態だったオフィーリア。 彼女が川に落ちた時、このまま死なせてあげようと思った人がいたんじゃないかな。
(第五幕第一場)① 墓掘りの場。 墓掘りの相棒が突き抜けて狂っていて、気持ち良かった。
(第五幕第一場)② 骸骨に怯えてか顔を顰めているホレイショーと、面白そうだとウキウキして墓掘りに話しかけるハムレットが可愛かった。 墓掘りが気の利いた返答をすると嬉しそうにホレイショーと笑いあって、ハムレットの人柄が浮かび上がる場面だった。
(第五幕第一場)③ ヨリックの頭蓋骨の場面で、「結局はこんなご面相になるんですよ」って話すところ。 千穐楽の時だけかな、「ご面相になるんですよぉ~」っていう言い方めちゃくちゃ可愛かったし、あの言い方の方が、楽しかった幼い頃の道化師との記憶を思い浮かべてるみたいで好きっ!!
(第五幕第一場)④ オフィーリアの葬儀。 レアティーズがいたところで、ホレイショーは誰の葬儀か察したんだと思う。 レアティーズが「妹」と言った瞬間に、ハッとするハムレットを掴んで、心配そうに見つめていた。
(第五幕第一場)⑤ オフィーリアの死を知った瞬間から、レアティーズがオフィーリアを抱きしめるところも、驚いて悲しんで堪えて、堪えきれず飛び出すまでのハムレットの顔の演技がすごく良かった。
(第五幕第一場)⑥ 本でも映画でも舞台でも、どうしてここでハムレットが激昂するのか…納得できなかった。 今回のハムレットは本当に自然で…。あぁ、愛する人の死を知って、ただ我を忘れただけだったのね、と素直に納得した。
(第五幕第一場)⑦ 自分はオフィーリアの傍にいられないけれど、立派な男だと認めていたレアティーズが守ってくれると信じていたのかな。 どうしてオフィーリアが死んだか知らないハムレットにとっては、俺が守れなくてもお前が守ると思っていたのに…何をしていたんだ!?と思ってしまったのかな。
(第五幕第一場)⑧ ハムレットを守ろうとするガートルードは母の愛を正しく示していたし、ハムレットがオフィーリアをどれほど愛していたかが強調される場面だったと思う。 オフィーリアを抱きしめて棺に戻す時の表情が優しくて、頭に添えた手も大切なものを守る手で…。
(第五幕第一場)⑨ 「ヘラクレスには…」の謎めいた台詞は、英雄気取りのやつには…という皮肉なのかな。墓掘りの場で世の無常を感じたハムレットは、オフィーリアの死によって更に、運命には抗えないとの思いを強くしたんだろうか。
(第五幕第二場)① ローゼンクランツとギルデンスターンが死刑に処されるように手配したハムレットに対し、ホレイショーは心底驚いていた。 ハムレットの変貌をどう受け止めていたのかな。
(第五幕第二場)② ハムレットは狂い始めたのか、クローディアスを倒す為には他の犠牲を厭わなくなってきたのか…。 ヒリヒリするような空気を纏ったハムレットが怖かった。 「それまでの時間は俺のもの」というハムレットの声音が痺れるほど好きだった。
(第五幕第二場)③ 千穐楽だけ「あんなに我を忘れたりして」からの台詞に一瞬だけ違和感があったのだけれど、何か間違えた…? 椅子に腰掛けるハムレットは王子そのもので、完全に理性で自分をコントロールできているように見えた。
(第五幕第二場)④ オズリックの場面。可愛くて大好き。 滑稽な仕草に合わせて返すハムレットは悪戯好きの少年のように無邪気で可愛くて、ホレイショーと笑い合う様子は、ハムレットの素の姿はこんなに愛らしいんだと思った。
(第五幕第二場)⑤ 大阪公演から絶好調で、どんどんオズリックとの掛け合いが派手になっていたように思う。すごく楽しかった。 あいっ!あいっ!と台詞のやりとりを交わしていくところが本当に最高で…。 からかってるのに嫌味がなくて、ハムレットは根底に優しさと好奇心がある青年だと思った。
(第五幕第二場)⑥ どんどん派手になる掛け合いに楽しくなっちゃったのかな?笑 「なんでその紳士に野暮ったい言葉の服を…」の下り、千穐楽で忘れちゃって、「なんでこの紳士の話を…」って2回言ってた。 何事もなかったかのように進行してて、皆さんさすが…って思ってた。
(第五幕第二場)⑦ オズリックが去った後にホレイショーと冗談を言い合う場面が可愛くて…。 ハムレットとホレイショーは二人きりだと横に並ぶのに、他者の目を意識する時はホレイショーが後ろに控えるのかな。 この楽しそうな姿が走馬灯のように浮かぶのよ…最期に。
(第五幕第二場)⑧ 貴族登場。 カットされがちな場面がカットされなくて嬉しかった。 ハムレットは既に王の陰謀に気づき死を覚悟していると思うけれど、ホレイショーはここで察したのかと思ってる。
(第五幕第二場)⑨ 不気味な貴族は、劇中劇で王を殺害したルシアーナスと同じ末原さん…だよね? 暗い企み腕は鳴る…。 この配役が意図的だったのか分からないけれど、私はとても不穏な予感と悪意を感じた。
(第五幕第二場)⑩ 企みに気づいてハムレットを試合に出したくないホレイショーの必死さが泣けた。 対するハムレットは気づいた上で諦念というべきか、全てを受け入れる覚悟で試合に臨む。 いま来るなら…からの台詞は忘れたくない。
(第五幕第二場)⑪ いま来るなら、あとには来ない。あとで来ないなら、いま来るだろう。いま来なくても、いずれ来る。覚悟がすべてだ。生き残した人生のことなど誰に何が分かる。だったら、早めに死んでも同じことだ。 ここにはもう、煉獄に怯え、死を恐れ、躊躇うハムレットはいなかった。
(第五幕第二場)⑫ ハムレットがレアティーズに謝罪する場面。 家族愛に溢れ、父の仇を討つべく復讐に向かう…。同じ立場のレアティーズを兄弟と呼ぶハムレットは、レアティーズになら殺されても構わないと思っていたのかな。
(第五幕第二場)⑬ 「どの剣も長さは同じだね?」 だね?という優しい言い方が個人的にツボで毎回悶えてました。 イケメンのイケボの標準語ってヤバくないですか…??(急に観劇の感想関係ない)
(第五幕第二場)⑭ レアティーズとの試合。円形舞台が回って臨場感に溢れ、楽しそうに試合に臨むハムレットが愛しかった…。 一本入った後、千穐楽だけかな?剣を突く練習をするようなハムレットのアドリブも本当に素敵だった。
(第五幕第二場)⑮ ガートルードがハムレットの汗を拭いた後、ハムレットの表情は見えないけど、ホレイショーが笑顔で目を合わせて頷き合うところが堪らなく好きだった。 私はハムレットとホレイショーには並んで生きて欲しかった…。いつも2人だけの関係なら横に並んでいたじゃない…。
(第五幕第二場)⑯ ハムレットに斬られ、それでも家臣に手を貸してくれと言うクローディアスは本当に…人を巻き込んでしか何も出来ない、情けないほど弱い男。 毒杯を背後から無理やり飲ませるハムレットの所作がカッコ良すぎて、悲しさも忘れて見入ってしまう…。
(第五幕第二場)⑰ レアティーズはハムレットがクローディアスに投げつけた言葉で全てを察して、ハムレットの行動を理解したんだと思った。 許し合う2人は紳士で美しくて…どうしてこの人たちが死ななければならないのかと悲しくなった。
(第五幕第二場)⑱ 死を臨むホレイショーに、生きて俺のことを語れとホレイショーに頼むハムレット。 生きる辛さを十分に分かっているくせに、それでもホレイショーにだけは生きて欲しくて、「俺のことを語ってくれ」と、無理やり生きる理由を与えるところが、優しくて切なくて。
(第五幕第二場)⑲ フォーティンブラスを次の王に指名し、最期まで、それを伝えてくれとホレイショーに託すハムレット。 あとは、沈黙。 あとは…でフッと微笑うハムレットが大好きだった。死なないで…。
(第五幕第二場)⑳ ホレイショーはハムレットの最期の優しさや自分への思いに気付いていたからこそ、「おやすみなさい、優しい王子」と言っているんだと思った。 優しい王子…。本当に優しい、戻らぬ人。
(第五幕第二場)㉑ 現れたフォーティンブラスは立派で堂々とした青年で、イメージ通りで。 この惨状について私の口から語らせていただきたい。と訴えるホレイショーの顔も声も何もかもが素晴らしくて涙が出て。
(第五幕第二場)㉒ みだらで血なまぐさい、人の道に悖る行為のかずかず、偶然の裁き、ふとしたはずみの殺人、企みと強いられた大義から引き起こされた死。 仕組んだ策略が意図とは裏腹に張本人の頭上に落ちた事の顛末。 劇中の全てが走馬灯のように脳裏に浮かんで、悲しくて堪らなかった。
(第五幕第二場)㉓ ハムレットがドイツに留学していなければ、ガートルードはもっとハムレットを理解していた? レアティーズがフランスに行かなければ、ハムレットの暗い疑念に気付いた?オフィーリアの傍にいた? ホレイショーが城内にいれば、オフィーリアから目を離さなかった?
(第五幕第二場)㉔ ありとあらゆる「もしも」を並べたてても、全ての出来事が必要で避けられなかった出来事で、だけど何かひとつでもタイミングが違えば避けられたかもしれない結末で…。 初めてこれは本当にとんでもない悲劇なんだと感じた。
(第五幕第二場)㉕ フォーティンブラスの「悲しみつつも幸運を抱き締めたい」という台詞が、冒頭のクローディアスの「一方の目には笑みを、もう一方の目には涙を」という台詞に重なって、王が代わることをはっきり感じた。 なんて美しい物語なんだろう…と、シェイクスピアを尊敬した。
(第五幕第二場)㉖ フォーティンブラスが「“死体”を運び出せ」と命じた時に、さらに強くハムレットを抱き締めるホレイショーの姿に涙が止まらなくなった。 味方良介さんも、宮崎秋人さんも、終幕を飾るに相応しい本当に素敵な役者さんだった。
今回のハムレットは本当に台詞が大切にされていて、誰も上滑りすることがなくて。 シンプルな衣装とセットながら使い方が上手くて、とにかく美しく無駄がなくて。 贔屓目はあるかもしれないけれど、この数ヶ月さまざまなハムレットを観てきた中で、一番好きなハムレットだった。
これを機にもっと舞台を見たくなったし、歴史物だったり伝統的な物語を題材にした映画も見たくなったし、本当に見識が広がる素敵な時間だった。 本当に風磨くんのファンは幸せだな。

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