心の声
横断歩道を渡る小学生、
姉弟と思われるふたりが手を挙げた。
朝の県道は通勤車両で急ぐ方々が多く、
すぐには止まらない。
しばらくして、ようやく軽自動車の女性ドライバーが、
ゆっくりと停止した。
お姉ちゃんが深々と頭を下げる。
同時に弟くんも深々と頭を下げた。
ドライバーさんの横顔しか見ることはできなかったが、
思いっきりの笑顔だとわかった。
感心感心と私も笑顔になった。
が、それで終わりではなかった。
横断歩道を渡り終えたふたり。
止まってくれた車が動き出すと、
再びその車に頭を下げた。
少し距離を置いて見守っていたけれど、
”ありがとうございました”
声には出していないふたりの声が、
私には聴こえた気がする。
それは多分、ふたりの後姿に送った、
私の心の声だったのかもしれない。
とても寒い朝が、
ほっこりとあたたかくなった朝だった。