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ふらんすの銀行口座開設のお話

 家探しに続き、外国で暮らすためのもう一つの難関である銀行口座開設のお話。

【三行概要】
・家探しが先、銀行口座開設は後。
・パリに日本語対応可能な窓口があるのは、LCLとCaisse d'Epargneの2行。
・厳密に比較したわけではないが、個人的にはCaisse d'Epargneはオススメ。

家探しが先か、銀行口座開設が先か

 留学前にフランス大使館の説明会や先輩方の話を聞いていてもよくわからなかったのは、「不動産の契約が先か、銀行口座の開設が先か」というもの。不動産の契約に際して家賃の引き落としのために銀行口座情報の提示が求められる一方で、固定の住所が無ければ銀行口座を開設できないという、まるで両者はニワトリとタマゴの関係にあるようなのである。
 今年の夏までフランスに留学していた先輩に聞いてみたところ、「難しい問題だけれど、融通が利くのは銀行よりも個人の貸主だから、口座がない状態で借りられるか、貸主に相談してみるのが良いかも」とのことだった。結果としては、その方に紹介してもらった個人による不動産情報も掲載されているサイト(LeBonCoin)で、無事、外国人の対応に慣れているという貸主に出会うことができ、銀行口座が無い状態で契約することができた。しかし、家賃の支払いには銀行口座が必要であったため、賃貸契約を済ませ、住居が確定した段階で、直ちに口座を開設する手続を行うこととしていた。

(参考)ふらんすの家探しのお話https://note.mu/moon_en_france/n/n3abca10b44c1?magazine_key=m95f4f90ba4e8

 表題の「不動産の契約が先か、銀行口座の開設が先か」については、口座開設手続の際に銀行の窓口の方にお尋ねしており、その内容は後ほど。結果から言ってしまえば、三行概要に記載のとおり「家探しが先、銀行口座開設は後」である。

LCLか、Caisse d'Espargneか

 住んでいる街にもいくつかの銀行があるが、お金に関することであるので、できれば日本語対応可能な窓口で手続をしたかった。フランスで日本語対応可能な窓口を設けているのはLCLとCaisse d'Epargneの2行。いずれもパリに1か所ずつのみである。
 とりあえず「よく聞く」という安易な理由からLCLに手続のアポイントメントの電話を掛ける。何度か掛けてやっと繋がるも、電話番号を確認され、「折り返しますね」の一言。
 電話を待っている間、以下のページの中にあるCaisse d'Epargneの欄に「ここのスタッフは本当に仕事が早く」という文言が目に留まる。仕事の速さ。まさにこの国で私がずっと探し求めているものである。

(参考)【日本語でOK】パリで銀行口座開設【ワーホリ・学生ビザ滞在向け】
https://matome.naver.jp/odai/2141009313555272501

 しかも、こちらはメールでも問い合わせが可能とのこと。LCLから折り返しの電話が1時間以上経ってもなかったため、こちらにもメールで手続のアポイントに関するメールをお送りする。ダブルブッキングになったら、適当に理由付けてどっちかにすればいいや、できれば対応が丁寧な方にしよう、と。
 結局当日中にはどちらからも連絡がなかったものの、翌日にはCaisse d'Epargneから候補日に関するメールが届く。大学院の授業の合間に行けそうな時間帯でセット。
 一方、LCLからは電話をしてから約1週間経った今でも折り返しの電話は来ていないのであった。

口座開設にあたっての必要書類

 候補日の提示の際に、併せて伝えられた必要な書類は以下のとおり。

- パスポート 長期ビザ付
- 住居証明書 公共料金の領収書(本人の名前の入っている書類)
- 経済証明書 学生証/入学許可証 + 本人の貯蓄証明書(残高証明書)もしくは労働契約書
- デポジット金 400€

 「住居証明書」については、まだ公共料金を支払っていなかったため、賃貸契約書で良いかと確認したところ、問題ないとのこと。「本人の貯蓄証明書(残高証明書)もしくは労働契約書」については、あまり思い当たる書類がなかったが、ビザの発給のために職場から発行してもらった経済証明書のPDFをメールで送付し、これで良いかと確認したところ、こちらも問題ないとのこと。メールでやりとりができると、このような事前の必要書類の確認ができるので、とても楽である。
 パリまで片道2時間弱かかり、平日の昼間しか窓口が空いておらず、大学院の授業の合間で行ける日時が限られていたため、何とかこの1回で口座が開設できるよう、あれこれ使えそうな資料を携えてパリに向かった。
 なお、フランスの口座を開設する際、デポジット金として数百ユーロが必要となるとともに、そのお金がニセ札ではないか、盗まれたものではないかを証明する書類(両替や引き出した時のレシート等)が求められることもあるようだが、自分の場合は特段求められなかった。

窓口での口座開設手続

 列車の故障により1時間の遅れが生じて出鼻をくじかれたが、なんとか対応可能な時間内に到着。あと30分遅れていたら、アポイントを取り直してほしいと言われていた時間であったため、一安心。
 メールでやりとりをしていたMさんが迎えてくれた。穏やかなメールの印象とは少々異なり、キビキビッとした「姉御肌」な感じの女性。重要な情報について、さくさくっとわかりやすく、かつ丁寧に教えてくれた。ときおり階級層別のフランス語についてや、フランス語話者が英語を話すときあるあるなどの雑談も交えつつ、しかしながらしっかりと手続を勧めてくれ、思わず話の途中で「本当にここを選んで良かったです」と面と向かって言ってしまった。
 手続は1時間強で終了。即日、口座が開設された。インターネット上で様々な手続ができるようで、とても便利。

住宅保険の手続

 貸主から住宅保険に加入してほしいと言われており、「銀行で相談できると思うよ」と聞いていたので、口座開設手続後にご相談。事前に貸主に満たしておくべき条件をメールで貰っていたので、それを提示し、さくさくっと候補の保険商品を紹介していただいた。便利。月12ユーロ程度で、口座から引き落としになる。こちらも即日有効に。後日、貸主に証明書を送付した。

改めて、家探しが先か、銀行口座開設が先か

 全ての手続が1時間半ほどで終了。
 最後に(この方なら率直に教えてくれそうだな)と思い、「家探しが先か、銀行口座開設が先か」の質問をMさんにぶつけてみたところ、きっぱりと「家探しが先、銀行口座開設は後」とのことであった。
 回答はおおよそ、以下のとおり。若干、自分の解釈も含まれるかもしれません。

・ この国ではクレジットカードがないと生活できないため、キャッシュカードには必ずクレジット機能を付けている。住所が確定していない方と契約して、クレジット機能を使われていなくなられると、会社として大きな損失になる。
・ (日本の住所でも開設できると聞いたことがあるが、という問いに対して、)例えばこちらに赴任してきて、ご家族が日本に固定の住所を持っているということであれば、対応が可能な場合がある。しかし、学生が日本で借りているアパートによる手続は、固定的な住所とは言いづらく、なかなか難しい。実家など、保護者の住居を元に手続をすることも考えられるが、その場合は保護者の方に様々な書類を提出していただくことになる。
・ ホテルはもちろんのこと、他人の契約する住居に同居しているという場合も契約はお断りしている。なお、例えば学生寮など、寮の代表による居住を証明する書類がある場合は問題ない。
・ 住居については、お金さえ用意すれば確保できる。住居があるということは、クレジットカードの契約をするにあたっての経済力の審査という観点もある。
・ 外国人にとって、住居の契約が高いハードルであるのは理解するが、マネーローンダリングの観点から言っても、必要な条件だと考えている。

 自分も親族に銀行員がいたり、マネーローンダリング対策に携わっていたりしたこともあるので、これまでの気さくな雰囲気から「仕事人」のオーラ全快でとうとうと語るMさんに対して、ただただ頷くばかりであった。
 というわけで、「家探しが先、銀行口座開設は後」です。

Caisse d'Espargneのデメリット

 Caisse d'Espargneのデメリットについても説明しておく。
 契約手続を始める際にまず説明されたのは、Caisse d'Espargneは「信用金庫」のようなもので、フランス全域に支店があるが、地方ごとに別会社となっているとのこと。「日本のJRみたいな感じです。JR東日本、JR東海のような。」わかりやすい。
 この支店で口座を作ると、「ILE-DE-FRANCE」エリアになり、自分が居住する地域にある支店とは会社が異なることになる。そのため、一部の手続が別会社の支店ではできないことがあるとのことだった。ただ、できない手続の例として挙げられたものが、現金による口座への入金等、あまり想定していないものばかりであったので、特に問題ないこととした。Caisse d'Espargneの口座を開設しようと考えている場合は、この点をよく検討した方が良いと思われる。
 LCLにはLCLのデメリットがあるのだろうが、手続をしていないのでよくわからず。機会があったら調べてみよう。

今後の手続

 今後、カードを有効にするためのPINコードの通知が郵送されるとのこと。届いたらMさんにメールでその旨を連絡し、それを受けてカード本体や小切手帳を送付するとのことだった。こちらの口座は基本的に日本の口座からの送金を受け取り、家賃を引き落とすくらいにしか使う予定はないが、いざというときにいろいろとお世話になると思う。

最後に

 LCLと比較できるのは最初のアポ取りのやり取りくらいであるが、Caisse d'Epargneは事前の評判のとおり、とても仕事が早く、かつ懇切丁寧に説明してくれ、手続後も「困ったことがあったら、いつでも『私に』連絡してください」とおっしゃっていただき、Caisse d'Epargneというよりも、たまたま担当していただいたMさんによるところは大きいとは思うが、自信をもってお勧めできる。最後に「(インターネット上でほとんどの手続ができてしまうため、)もう直接お会いすることはないと思いますけどね!あははは!」と高らかにおっしゃっていたけれども、またMさんとお話したいなぁと思っています。