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Da‐iCEの楽曲遍歴


よくグループの歴史を、第一章・第二章と区切る事が多い。

そして、メンバー自身が感じている転換期とファンが考える転換期、世間から見た転換期は違う事が多い。

2011年1月17日に結成された《Da-iCE》
Da-iCEにもこの事が言えると思う。


活動が10年も続けばインタビューで
「ターニングポイントはいつですか?」という質問をよくされている。
彼らは口を揃えていつも
「AAAさんのオープニングアクトに出させて頂いたことです。」と答える。
ライター側からしたら
「CITRUSが1億回再生されている事です。」や「CITRUSでレコード大賞優秀作品賞に選ばれた事です。」的な、
世間的に見ても分かりやすい、納得しやすい、答えが欲しいのが何となく透けて見える。

確かに、世間一般からしてみればCITRUSが大きなターニングポイントだと思う。
そして、Da-iCEの歴史を大きく区切るとすれば
レコード大賞受賞前後で第一章、第二章と分けられるのだと思う。

しかし、彼らは2020年にUNIVERSAL SIGMAからavex traxへとレーベル移籍をしている。
他にもグループ結成からメジャーデビューまでや、ベストアルバム発売など、
これらは間違いなくグループの節目と言える。


そうやって考えていくと、グループの活動から区切りを決めていくのはとても難しくなる。


という事で、今回は"楽曲から"Da-iCEの歴史を
考えていきたいと思う。

その前に、メンバーの"Da-iCEの音楽"に対しての考えや拘りが分かるインタビューを先に載せておく。

工藤 : 特に僕らは、サビをあまり(EDMの)ドロップのようにしない。ちゃんと歌モノとして聴けるものを、というのがテーマにあるので (※中略)

--Da-iCEにはドロップNGという暗黙の了解みたいなものがあるんですね。

工藤:「っぽい」ものはありますけど、基本的にボーカルの歌をフィーチャーしたいので。それを前提にした上で、トレンドをどれくらいスパイスとして入れられるかっていう考え方なんです。

https://realsound.jp/2019/12/post-462849.html/amp

花村 : でも結構早い段階で、リーダーはEDMやりたくないって言ってたよね。まだクリス・ブラウンが全然EDMやってた頃。

──おお。それはなぜだったんですか?

工藤 : EDMは、やっていらっしゃる方が他にたくさんいたので、そのジャンルに未来を見出せなかったっていうことです。そこに追随できるイメージが湧かなかった。あと僕らのテーマでもある、サビをちゃんと歌う、歌詞がしっかり立っているっていうのは、昔EDMっぽいジャンルをやっていた時にも決して崩してはいなかったんですよね。絶対ドロップのサビはやらなかったり。「Da-iCEって歌を絶対しっかり歌うグループだよね」って言われるのも、そこだと思うんですよね。

https://rockinon.com/interview/detail/199792.amp

工藤 : バンドなら曲を自分たちで書くのは当たり前じゃないですか。でもダンスボーカルのグループってそうじゃないことが多いし。じゃあ僕らの音楽スタイルは?っていう話になってくると、引っかかっていたところではあるんですよね。ダンスボーカルって、ジャンルではなくて形態だと思うんで。旬なものを取り入れて歌っている「媒体」っていうイメージがあります。でもDa-iCEはそうじゃなくて、音楽としての「ジャンル」でありたい。今そういうタイミングに、いよいよなってきているのかなっていうのは感じています。

https://rockinon.com/interview/detail/199792.amp

この事も頭に入れながら考えていきたいと思う。

まずは彼らのはじまり、第一章。

ダンス&ボーカルグループらしいEDM+デビュー曲らしいアップテンポな「SHOUT IT OUT」
ミディアムバラードの「TOKI」
ライブで盛り上がるC&Rや手振りが含まれている
「ハッシュハッシュ」
切ないラブソング「もう一度だけ」
夏曲ド真ん中を突いた「エビバディ」
ダークな一面を見せた「WATCH OUT」
珠玉のバラード「恋ごころ」

インディーズ時代の楽曲と1枚目から10枚目までのシングル、アルバム3作。
時には「BOMB」のような攻めた楽曲もあるが、ここまでは大抵のダンス&ボーカルグループがやる王道で順当な選曲だと思う。

ここまでをDa‐iCEの[第一章]としよう。

3rdアルバムで"NEXT PHASE"と宣言した通り、ここからDa‐iCEの楽曲が一段階変わる。

HIP HOPの「トニカクHEY」
しっとりした夏曲「君色」
超ポップで華やかな「TOKYO MERRY GO ROUND」
ロックな「Limits」
ジャズの「リグレット」
ドラムンベースの「Blackjack」
ファンクな「FAKE ME FAKE ME OUT」
AOR(Adult-oriented Rock)の「VELVET EYES」

これまでのDa‐iCEになかった楽曲が次々に増え、彼らの楽曲の幅が大きく広がった。
"ジャンルレスなJ-POP"であるDa‐iCEが色濃く表れている。
直接的なグループの区切りとなるベストアルバムや
ベストアルバム発売後一発目の重要となってくるシングルで"原点回帰"の「BACK TO BACK」。

王道からは外れているものも含めこれまでにないジャンルに挑戦しながらもダンス&ボーカルらしい「It's not over」や「Phoenix」のようなEDM楽曲も要所要所に入れ込んでいて、
Da‐iCEの楽曲のジャンルが広く深くなっていった期間。

よって「FACE」までをDa‐iCEの[第二章]とする。

そして、ここでグループとしての転機でもある
UNIVERSAL SIGMAからavex traxへのレーベル移籍。
移籍後すぐに6ヶ月連続リリースという何ともavexらしい戦略で勝負を仕掛けた。

爽やかな王道J-POPの「DREAMIN' ON」
R&Bの「amp」
ストリングスアレンジが美しいバラード「image」
ロックバラードの「CITRUS」
シティポップの「EASY TASTY」
アルバム「SiX」では初8分の6拍子である「Love Song」やR&B+ソウルの「Special One」など
連続リリースで更に新ジャンルに挑戦したDa‐iCE

楽曲のみならずパフォーマンス面でもバンドを後ろに付けてのライブという初挑戦があり、
それに伴い「Revolver」や「Lights」、「Kartell」などのバンドサウンドが特徴的な楽曲が増えてきている。

バンドへのアプローチを増やしながら、すかさず超HIP HOPな「liveDevil」や和ロックの「Break out」などの楽曲の幅を広げる事ももちろん忘れない。

明確にやりたい事をやりつつも、ジャンルには囚われずさらに幅を広げ、
常に最高傑作を追い求めている今のDa‐iCEは[第三章]と言えるだろう。

ここで改めて、彼らの楽曲に対する拘りを振り返ってみたい。
・EDMでもサビはドロップにしない
・ボーカルの歌を聴かせる

元々アカペラグループで活動していた大野雄大とソロシンガーとして活動していた花村想太。
この2人がボーカルだからこそ、2人の歌唱力を最大限に引き出す為の拘りだと言える。


Da‐iCEのようにボーカルがパフォーマーの役割も兼ねているダンス&ボーカルグループは踊る事を考えた歌、歌とダンス合わせて一つの作品になりがちで、どうしても"聴き込む曲"にはなりづらい。

さらに、歌を歌う人と歌わない人では歌詞の書き方が違い、花村想太は以前
「作詞してると歌いやすさや耳馴染み、リズムを優先しすぎて英語を使う事が多くなる時がある。」
と発言していた。
実際、英語が多い歌は耳に入りやすいし音にノリやすい。しかし、それと同時に聴き流しもされやすい。

つまりダンスに合わせたアップテンポなEDM調で歌詞に英語が多い状態でサビもドロップしてしまうと、歌を聴くよりも音にノル方が重視され、まさにクラブミュージックらしいEDMになってしまう。


それを避ける為、"2人の歌を聴いて貰う為"の拘りのおかげで、彼らの楽曲は一つ一つ"曲"としてのクオリティが高い。

そのため、曲を聴いただけではとてもダンス&ボーカルグループとは思えない。
日本のダンス&ボーカルグループの曲がサブスクで回りにくい原因はそこにあると思われる。
(※日本人ダンス&ボーカルグループではじめてのサブスク総再生回数1億回突破をしたのがDa‐iCE)

サビの高音が特徴的で、2人の高い歌唱力が際立っている「CITRUS」はサブスク総再生回数1億回を超え、"歌を聴いてほしい"というメンバーの初期からの思いが現実となり、多くの人に届いた楽曲である。


また、曲を聴いてMVに辿り着いた方の感想に
「バンドじゃないんだ」
「踊る人達だったのか」
という声が多かった。

初めてデモを聴いた時メンバーは
「せっかくドラマタイアップが付くシングル。グループを知ってもらう為にも、もっとDa‐iCEらしい楽曲にした方がいいんじゃないか。」
と言っていたらしい。

確かに「CITRUS」はDa‐iCEらしいかと聞かれれば違うが、世間的には聴き馴染みのあるロックバラードである。

そのためダンス&ボーカルグループとは知らずに曲を聴いてる人が多かった。


ちなみに、「CITRUS」の歌詞には英語が一つも入っていない。


そして、もう一つ。
・トレンドをどれくらいスパイスとして入れるか

Da‐iCEは所謂"流行りの曲調"に全振りした曲というものがない。

これは明言された事はないので憶測でしかないのだが、彼らは意図的にそうしている気がする。

当たり前だが、ダンス&ボーカルグループは楽器を持たない。
演奏はトラックを流せばいいので様々なジャンルに挑戦できる。
だからその時々の流行りに合わせる事もできるしそういう変芸自在な所はダンス&ボーカルグループが武器にできる所だと思う。

しかし、流行に完全に乗っかってしまうと自分自身のスタイルが消えてしまい、一歩間違えれば"真似事"扱いされる事もある。

Da‐iCEは、流行りに目を向けず乗り遅れるという事はないが、乗っかりすぎるという事もない。
あくまで"スパイスとして"入れて楽曲に落とし込み自分達のスタイルで昇華する。

そして、これは主題歌書き下ろしに関しても言える事だと思う。が、この話はまた別の機会に。


Da‐iCEの楽曲の歴史
もう少し細かく分割しようかと思ったが、
今回は大きく3つに分けた。

結成したてやデビューしたての頃はまだ制約がある中でc/w曲などではなるべく自由に自分達で。
そこから少しずつ事務所やレーベルからも信頼を得て、よりメンバー主導で活動できる環境に。
という変化を感じる。

クレジットを見ても2分の1、3分の1がメンバー制作だったものからメンバーが制作してない方が珍しくなっている。

これ以上はもうないだろうと思った時に新たな手を打ってくるDa‐iCE。

次はどんな手を打ってくるのか楽しみだ。


最後に、Da‐iCEに楽曲提供して新たな色を足してくれた方々のインタビューを一部掲載しておく。
これらも合わせて考えてみるのも面白いと思う。

コモリタミノル : Da-iCEの表現力には毎度驚かされます。歌唱力に制約がないからこそ、自由に曲が浮かんで来ます。

https://www.m-on-music.jp/0000269729/amp/

藤原聡 : かねてから、イベントやラジオでご一緒させて頂いていた事もあり、オファーを頂いた時はとても嬉しく、自分なりに感じているDa-iCEの魅力を最大限に発揮出来る楽曲を作りたいという思いで作詞作曲したのが、この「FAKE ME FAKE ME OUT」です。
楽曲のリズムとメロディの色気がDa-iCEに絶対似合う!と思っていましたが、完成した楽曲を聞いた時、自分が思っていたよりも遥かにグルーヴィーでソウルフルになっていて、本当にテンションが上がりました。

https://da-ice.jp/news/detail.php?id=1070439

さかいゆう : オファーを頂き、過去の作品を色々聴かせていただきました。想太くんと雄大くんの声がとても特徴的で、しかもお二人が対照的な声色で、これは「自分のオリジナルでは絶対できない事ができる!」と思いました。

https://da-ice.jp/news/detail.php?id=1079068

内澤:最初、「エレキギターを入れてほしい」というリクエストがあったんですよ。エレキギターが入っていて、ミディアムテンポで、音数も少なめでという感じで。使用楽器をピンポイントでリクエストされるとは思わなかったのでびっくりしました。

(※中略)

ーー8分の6拍子というリズムも意外でした。
内澤:そうなんですよ。打ち合わせでも念のため「リズムの指定ってありますか?」と尋ねたんですけど、「パフォーマンスのことは考えず自由に作ってください」と。その時は、チームとしての「侠気」を強く感じましたね。きっと、どんなことでも自由にチャレンジできる環境にDa-iCEはいるんだな、と。すごく健全なチームだなと思ったので、自分としても敢えてこのリズムにチャレンジしてみました。

(※中略)

ーー大野さんと花村さんのボーカルは、曲作りの最初の段階ですでに意識していましたか?
内澤:意識しまくりましたね。こんなことを言うのはおこがましいのですが、とにかく歌がめちゃくちゃうまいし、声質もすごくいいバランスなんですよ。突き抜けるような花村さんのハイトーンボイスと、甘くて太い大野さんの声の両方がうまく活きるようにするにはどうしたらいいか、じっくり考えながら作っていきました。

https://www.billboard-japan.com/special/detail/3085






《追記》

REVERSiのネットインタビュー記事にて
メンバーが楽曲コンペに参加し始めた時期が明記されていたので付け加えておく。

工藤:自分たちも曲選びから参加したかったんです。

花村:そんな状況を変えるために、一度自分たちで表題曲を選ばせてほしいと言って、メンバー主導で2017年の11枚目シングル「トニカクHEY」をリリースしました。

https://www.thefirsttimes.jp/interview/0000079717/

[第二章]と称した時期とリンクしていて、
楽曲面だけでなく制作面でも内情が変わっていた事が分かった。

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