見出し画像

「I wonder」のMVについて考える



4月29日にDa‐iCEのYouTube Channelにて公開された
「I wonder」のMV



今回はこのMVについて考察していきたいと思う。

※この先を読む前にまずMVを見ることと、このnoteを読み終わった後にもう一度MVを見返すことを推奨します。

※あくまで個人的な解釈です。
このnoteを読んだ後、ご自身でも考察してみてください。





MVが公開される前にメンバーから是非考察してみてくださいと言われただけあって、

今回のMVはかなり作り込まれているのが分かる。



というのも、
このMVには"不思議な箇所"が多い。


散りばめられた"不思議"の数だけ深読みができるようになっていて、
見る人の数だけ新たな物語が生まれる。


MVを一通り見た時になんとなく思い付いた物語をいくつかこのnoteに記していきたいと思う。






大前提として、
・セットが全員同じ部屋
・MV後半で出てくる女性役が全員同じ女性
この二点からこのMVについては
"ある男の物語の各場面をメンバー5人で演じ分けている"ということを今回の全考察の共通認識として話を進めています。

それを踏まえてこの後の考察を読んでください。



1.時間順

このMVで
ポイントとなっているカットの1つである
"時計が示す時間"

それぞれのメンバーのセットごとに時間が異なる。

花村想太のセット
和田颯のセット
工藤大輝のセット
岩岡徹のセット
大野雄大のセット

花村想太は朝の7:20
和田颯は夜の9:10 (21:10)
工藤大輝は早朝の5:05
岩岡徹は夕方の4:35 (16:35)
大野雄大は夜の11:25 (23:25)
※MV登場順




1つ目の考察は
0時から24時までの時間順で考えていく。
(一般的な1日の順)



① 5:05の時計 工藤大輝のシーン

少し早い朝の目覚めから始まる


今が何時なのかも分からないまま
毛布に包まり、靴下を履いて、
窓の外を眺めておおよその時間を確認する。

目覚めのコーヒーを飲みながら
ベッドに腰掛けたり、机に向き合ってみたり

もう少し寝ていたかったけど、
この時間から二度目して寝過ごしたらまずいと嫌々体を起こす。
という、我々の日常にも既視感のあるシーン。




② 7:20の時計 花村想太のシーン

日が昇り、外に活気がついてくる
慌ただしくも心地のよい時間帯

窓を開け、空を眺めて深呼吸をする。

いつも通りの新たな1日に心踊らせている様子

ソワソワしながら時計を気にしていて
誰か待っていることを予感させる。




③ 4:35(16:35)の時計 岩岡徹のシーン

日が暮れ始めたが、
男の様子がおかしい。

何度も時計を見つめている。

待っている人がなかなか帰ってこない。

何かあったのだろうかと不安が押し寄せる。




④ 9:10(21:10)の時計 和田颯のシーン

夜の帳が下りた頃

待てど暮らせど帰ってはこない。

コーヒーを飲んで自分の心を落ち着かせる。
それでも落ち着かず何度も窓の外を見ている。




⑤ 11:25(23:25)の時計 大野雄大のシーン

人々の気配もすっかり消える頃
外は豪雨に見舞われている。

そんな状況でも寝ずに帰りを待っている。

表情は明るい。
必ず帰ってくると信じて疑わない様子。




帰ってくるはずだった彼女が帰ってこない
とある1日の話

①〜⑤で
いつも通りの平穏な朝から
不穏な空気が流れ
不安に駆られ
それでも決して諦めない
という心境の変化が感じ取れる。


この後、彼女は帰ってくるのか、否か。

答えは分からないまま終わっていくのだが、
時間順で捉えると⑤の大野雄大の表情から
必ず帰ってくると思える心強さで終わることができる。



2.季節順

MV公開前、
縦長用のメンバーソロカットの踊ってみた動画が投稿された。

個人的に、MVが公開される前に
1番最初に感じた違和感は
メンバー5人の衣装の季節感。

岩岡徹 衣装
大野雄大 衣装
和田颯 衣装
工藤大輝 衣装
花村想太 衣装

特に後半に投稿された工藤大輝と花村想太の衣装を見れば一目瞭然だが

工藤大輝の衣装は、
今の時期にしては明らかに厚着すぎる。

逆に、工藤大輝の季節感に合わせると
花村想太の衣装では薄着すぎる。


他にも
それぞれのシーンの色味や細かい描写にも異なる季節を感じる。



このMVの秘密の1つ

動画の概要欄にこのMVを読み解くヒントとなる一文が記されている。

どんな季節、どんな時間、どんな世界でも"君"を待つ。

"どんな季節"

そう、
このMVで5人の中で異なるのは
時間だけではなく
実は季節も異なる。

窓から射し込む暖かい陽の光

穏やかな春の朝を感じる花村想太の場面 (①)

夜なので
服装や部屋から明確な季節は分からないが、

夜になるとまだ冷え込む同じく春の和田颯の場面 (②)

窓の外の豪雨から
台風が来ていることが分かる。

日本で台風が集中する時期は納得から秋にかけて
服装からも考えて、秋の手前の大野雄大の場面 (③)

夕方の感じや服装の色味からも

秋であろう岩岡徹の場面 (④)

服装の生地感やストーブを点けている様子から

冬の工藤大輝の場面 (⑤)




季節感を整理すると
それぞれの場面での表情の違いにも納得できる。



全員がそれぞれの場面で
「"君"を待つ。」状況なのだが




① 春の朝

花村想太の表情からは

「これから君に会える」
とワクワクしている心情が感じ取れる。




② 春の夜

恐らく①と同じ日の出来事で和田颯の表情から

帰ってくるはずの彼女が夜になっても帰ってこないことに
もしかしたら事故に遭ったのかもしれない、事件に巻き込まれているかもしれない
と、考えを巡らせる様子と
その想定に不安が押し寄せている心情が感じ取れる。

ただ、時計の時間からまだ21:10なので

これから帰ってくるかもしれない。
その時に自分が寝ていたら悲しむだろうから
できるだけ起きて待っていようと、

眠くならないよう、夜なのにコーヒーを飲んでいるのではないかと考えた。




③ 台風が襲ってきた秋の手前の夜

半年近く経っているが、一向に彼女は帰ってこない。

話すことも会うこともできない。
今、何処にいるかも分からない。

繋がる手段はないけれど、
君に伝えたい想いをどこかに贈りたい。

そんな気持ちからおもむろに
手紙を書き始める。
(画面手前に封筒があるので置き手紙では無い)




④ ③から少し日が経った秋

ここから表情が暗くなっていく。

空(くう)を見つめ物思いに耽る描写が多い。

もしかしたら、
もう帰ってこないのでは?
一生会うことはできないのでは?
もう君はこの世にいないのでは?

悪い想像ばかりが浮び
諦めかけている心情が感じ取れる。



⑤ 凍えるような寒さの冬の早朝

1年の3/4が経過し、
幾つ夜を越えても君が帰ってくることはない。

君がいない生活の方が当たり前になった。

君はいないものとして日々を生きているし、
別にそれで支障もない。

それらを内包した無を感じ取れる表情

机に向かっても③の時のように手紙を書くことも無くなった。


それでも、頭の片隅には君がいて
今でも君を想っている。

いつ帰ってきてもいいように
早起きするのが習慣になった。


一途に待ち続ける男の感動的な話にもできるが、

この先
彼はどれ程の時間、待ち続けることになるのだろうか。

そんな、先の見えない恐ろしささえ感じてしまう終わり方。






1つ目の考察では
1日の中での時間経過として捉えたので
悲しさはあれど、最後は清々しさで終わる
希望感のある物語となっていたが

2つ目では
遥かに長い時間が流れていて
途方に暮れ
孤独と向き合い
哀しさや切なさを抱えたまま終わる物語になる。





時間順と季節順

どちらの考察でも深掘りしなかったことがある。




なぜ、この女性は帰ってこないのか。

実はこのMV内で一切触れられていない。



考えられる理由として
「I wonder」が主題歌となっているドラマの設定に合わせて
記憶喪失となって男のことを忘れてしまっていたり

他には、
事故や事件に巻き込まれていたり
喧嘩別れの最中だったり

はたまた、
もう女性はこの世に存在していなかったり
等々


"君"を待つきっかけや理由でさえ、
MVを見るこちら側に委ねられている。




理由を何にするかで
物語の奥行きも変わっていく。




そして、
視点を変えることでも
物語の方向性が変わる。



3.世界線

これまでの考察では当たり前のように
女性側がいなくなった設定で話を進めてきた。

3つ目では
その設定ごと変えたい。


いなくなったのが
この男の方である可能性を考えようと思う。




このMVの不思議な点の1つ

はりぼてのセットをあえて引きで映すシーンがある。

室内の撮影をする際、その撮影地は
ハウススタジオを利用するか
1からセットで作り上げるかのどちらか

楽曲の世界観に合った理想の部屋を
数多あるハウススタジオから見つけ出すのも
時間と労力がかかるので
セットを作るパターンも多い

ただ、
世界観重視でセットを作るMVで
セットが丸見えになるのは珍しい。
(FAKESHOWのように仕掛けの種明かし的にわざと映すMVはある)


大抵は、セットであることを隠すはずだ。


しかし
「I wonder」では
種明かし要素でもないのにセットが丸見えになる。


そして
セットが見える構図の時にだけ起こる変化がある。

それが、女性の登場。


女性が登場する時は必ず俯瞰の視点

他のカットのように男の近くからの視点では
女性が映らないのだ。



これらのことから
考えた1つの可能性


男はすでにこの世に存在しない。
そして"記憶の中の世界"に取り残されている。

ただ、彼自身がそのことに気づいていない。


そこから考えた設定はこうだ。


男は
彼女と会うはずだった"とある日の出来事"の
記憶の中にいる


"部屋の中"が"記憶の中の世界"


断片的な記憶にいるのでセットの範囲までしか部屋がない


記憶の中の世界なのでどれだけの時間待っても
当然彼女が帰ってくることはない


彼女自体は記憶の欠片にしか残っていないので俯瞰でしか映らない



そうすれば
男がこの部屋の中から出られないことも
部屋の中にも外にも男以外 誰もいないことも
説明がつく


そして
セットを丸見えにするメタ構造が
この世界が非現実であることの暗喩になっているため
わざとそのカットを入れたと考えることができる




男は自分自身が亡くなっていることに気づかない限り
永遠にこの部屋の中に閉じ込められていることになる。

しかし、
彼にとっては彼女を待っている時間が楽しみの1つなのだから
そのことに気づいてしまった場合
楽しみすら奪うことになる
それならこのままの方がいいのかもしれない
という

所謂メリーバッドエンド的な物語になる。




まとめ

今回、MV公開から1週間で考えた
ある程度の根拠を持てる考察を3つ紹介した。

他にも箇条書き程度の考察や
人に見せる程でも無い考察がいくつかある。


しかし、
自分がした主な3つの考察もそれ以外の細々としたものも
どれも正しいとは思えない。

言ってしまえば、
この世に存在する考察の全てが正解で不正解である。

考察なんてそんなものでいいと思う。


「○分○○秒の〜のカットどういう意味だろう」
という、1人が感じた種から無限に広げていける。



「I wonder」のMVのポイントとなっているのは
各メンバーのカットが全てバラバラに登場すること

時間や季節感など様々な観点で考察していったが
これらが一般的な順序では無く
ランダムに出てくることで

十人十色、見る人の数だけ物語が生まれる構成になっている。


見る人が考察する"余地"がある。



もちろん、いつものMVのような感想も
他の人のコメントを見るのも楽しみなので
沢山あって欲しい。
(個人的な感想を述べると考察とか伏線とか抜きに、色味や光での季節の表現が映像作品としてとても素晴らしいと思いました。)

ただ、
「I wonder」のMVをきっかけに
与えられたものから自分達の解釈を広げ、世界を膨らませるのは楽しいということを
6面の皆さんに体感して欲しい。








※楽曲考察ではなくMV考察なので、歌詞については一切触れません。

※便宜上、このnote内では敬称を省略させていただきました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?