都庁のお膝元で悲しい世界が産まれていた

小雨が降る中、ボクは東京医科大学病院に行こうと新宿駅から歩いていた。新宿に訪れるのは何ヶ月ぶりだろうか。東京都の西側は、広告のターゲット層が若いこともあり目新しさから右へ左へと目移りしながら歩いていた。

しばらく屋根のある場所を歩いていたが、突如屋根が終わり、見上げると都庁が見えた。そこから視線を下げると何人かのホームレスの人達がお家を構築していていることに気づいた。
秋葉原もそうだが、最近わりとホームレスを見るようになったと思う。一時はクリーンな東京のイメージでもアピールしたいのか、一切見ないレベルで追いやられていたのだが最近はちょくちょく見かけるようになった。
秋葉原の方では昔ながらの高齢の失業者風体の人ばかりだったが、ダンボールハウスを構成している物にキャリーバッグやスーツケースがまざっているものが多く、そこに違和感を覚え、下世話だがとても興味がでてしまった。

どんな人が生活しているのだろうと歩きながら観察していると、どうも20代、30代の人が多いようだった。率直に若いのになぜホームレスになっているのだろうかと疑問を感じ、ホームレスとして生活している理由をあれこれ想像する思考遊戯を楽しんでいた。
考えながら歩いていると、都庁目の前の高架下、雨風もしのげそうな中々の一等地のお家には目につく位置にダンボールの看板がぶら下がっていた。

「有名Youtuberになりたいです。カンパお願いします」

正論ワンパンマンなら「無理でしょ」でKOだけど、ボクとしては奇跡的にYoutuberになって生活できるようになったとしても、ホームレス状態からの人気者が行き着く先は自分を使ったエンタメしかなく、最後は悲惨な目に合うのが関の山という未来しか思い描くことができなかった。

最近マツコ会議でTVとYoutuberエンタメの差異をやっていて、その時マツコが「これ絶対勝てないわ。TVや映像はリアリティを追求しているのに、あなたたちはリアルを切り売りしてるんでしょう。そんなの絶対勝てるわけがない」というのはものすごく的確だと思った。
例えば芸能人やお笑いでイジったりイジられたりで悲惨な目にあったとしても、そこには一線がひかれていると思う。(度がすぎているのもあるが)

しかしYoutubeではリアルであることが何よりも重視されているように感じるため、作り物(虚影)は人気コンテンツとなりづらいように思う。いやいやVTuberとか虚影ですやん。っていうのはあくまでも映像の話であって、結局視覚情報以外の要素はリアルなコンテンツだとボクは思っている。感じ方次第なので正解かどうかはこの際置いておこう。

話を戻すと、もしかしたら新宿で生活されているホームレスの人たちは、どこにも行く場所がなくてそこにいるわけではなくて、「誰かに無条件で助けて欲しいからそこにいるのでは」という感じがした。
Youtuberになりたいだけなら東京にいる必要性なんて全く無いわけだし。

それでも東京という場所にしがみつき、「東京暮らし」というステータスをホームレスという状態でも続ける彼ら・彼女たちは、誰かに利用され、誰かに消費されるしかないように思えた。

再び都庁を見上げると、雨のせいか上層階は霧に覆われていた。
外れしか入っていない50億円ガチャの都知事選は1週間後。
誰が就任するのかは知らないが、きっとこの先この都庁下はホームレスが増え続けるように思えた。


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