「どうしてごみばかり撮ってるの」

「どうしてごみばかり撮ってるの」
 声をかけてきた人は故人の身内であり、私の身内でもあり。とにかく私に問いかけてくるのはいつも身内だった。
 被写体は故人の家だ。
 それは無人の家。
 誰も住んでいない、誰にも使われていないと言ってしまえば、確かにそうだ。家も、家具も、故人の愛用品も、蒐集していたコレクションも、すべてがごみだ。

 湿気のせいなのか気温のせいなのかわからない、ひやりと静まり返ったその家で、私はシャッターをひたすら切っている。
 故人が座っていた椅子を。故人が眺めていた庭を。故人と散歩したかつての道すがらを。
 私はこの家に来るたび、いてもたってもいられなくなる。

 故人の家は未だ片付けの目途が立たず、人も住まず、ただ朽ちていっている。いつかあの家は、何かの拍子にくしゃりと潰れてしまうだろう。私はそう思っている。とても古いから。ごみのようなものだから。

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