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ビューティアドバイザーが異世界へ行く話(仮)4

4.異世界人は、化粧する

 パンの焼ける香ばしい匂いがして、目を覚ます。もうすぐ今使っているジャムもなくなってしまうだろう。そうすれば今度は、違う果物の時期がくる。

 少し寝すぎてしまっただろうか。いつもは、母かステラがしている朝食の仕上げを手伝うくらいには、身支度を終えてキッチンスペースにいるというのに。

 ある程度身辺を整えて、今日の予定を確認する。

 昨日は団長が休みだったが、今日は出勤しているはずだ。エナを連れて、今後どのようにするか相談すべきだろう。俺は今日昼からの当番だし、相談が早めに終わればエナに街を案内するくらいは許してもらえるだろうか。

 ぼんやりとそんなことを考えながら階段を下りていくと、階下にモスグリーンのスカートが翻ったのが見えた。

 俺が下りていくと、ステラがはっとして俺を見上げる。何か言いたげに、半端に開かれた口は、しばし待ってみても何も紡がない。

 わずかに首を傾けてステラの向こう側をのぞくと、食卓の上には湯気を立てたスープや、こんがり焼けたトーストが並べられている。

 俺は何も言わないままうつむいてしまったステラに、声をかける。

「おはよう。朝食、手伝えなくて、悪かったな」

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