インテ炎上と価値

某化粧品のCMと、「相応」の価値

某化粧品会社のCMの炎上騒ぎに関連して、こちらの記事を読みました。


CMを見た時は、「別に友達同士で年齢の話するのは普通なのでは?」「もう手放しで『かわいい』ってチヤホヤしてもらえはしないから、努力して大人の『かわいい』作ろうよ! って前向きな話なのでは?」「もうひとつの、『疲れを顔に出してるうちはプロじゃない』とかいう上司は、PCの角で殴ってやれ」っていう、頭の悪い感想しか出てきませんでした。

しかし、上に紹介した記事を見て、納得。

男女限らず、「その年を迎えた人が、理不尽に押し付けられる価値観」にみんな違和感を感じて、もやもやしたのかもしれない。


メインターゲット層が、見てて気持ちよくないCM

人間が年を取るのは仕方ないことだし、年齢によって発想や思考や身体能力の差が出るのは仕方ないから、そこは区別して尊重すべきところ。だけど、「若いから」とか、「○歳だから」で舐めくさった観方するのはいい加減やめようよ、って、それでみんな怒ってるんじゃないかってことに気づきました。

いい加減、昔の社会通念から連綿と続く、「これくらいの年の人はこう」っていうグルーピング、みんなクソくらえだと思ってるのかも(少なくとも、私は)

特に、働き方も給料も男女の役割分担もだいぶ昔とは変化している若者世代は、「私らの頃は、あなたくらいの年だと」っていう押し付けが、大嫌いなんだと思います。

ちょっと前に炎上してたファッションビルのCM(キラキラ可愛い後輩と比較されて、「そういう需要じゃないから」って上司に言われるやつ)も、今回の化粧品のも、「確かに年齢や性別や見た目で馬鹿にした態度を取る人は世の中多い。だからこそ、それに傷つけられないようにキレイをアップデートしよう」って意図なんでしょう。

でも、それにしては「馬鹿にした態度に傷つけられてる」シーンが長い!

ファッションビルのやつは、馬鹿にされた女性が、「ちょっと気合入れてオシャレしよう」って思うのは、最後自宅で鏡を見つめてる、本当にわずかなシーンだけ。

化粧品だって、友達に「25歳」を延々けなされ続けるのがメインで、発破掛けられた女性が「燃えてきた」って奮起するのは最後のちょっとだけ。

「だからこそ、キレイになろう」のメッセージ性を訴えるシーンが少なすぎじゃないですか?

世の人たちは、種類や量の差こそあれ、これらのCM内で押し付けられる「その年齢に押し付けられる価値」に現実世界でうんざりしてて、どうにかその悩みを解消したいと思ってるんですよ。男性だって、男性特有の「年齢に押し付けられる価値観」に辟易してるはず。

だからこそ、メーカー側だって、そういう人たちにターゲットを絞って、CM展開しようと決めたはずでしょう?

何で「うちの商品(サービス)使えば、そのうんざり感解決できるよ!」って方向で訴求してくれないんだろう。


危機感と不快感の境界にあるのは

POPや広告って、「消費者の不安を煽って危機感を持たせることで、需要を掘り起こす」方が効果が出やすいんですよ。「美白」って書いてるPOPより、「あなたのシミに」ってPOPの方が、ドキッとしたお客さんが立ち止まってくれる。人の心理につけこむようで汚いけど、そういう手法もあるんですよ。

法律事務所の広告とかそうじゃないですか。「そのお金、取り戻せます」みたいなキャッチコピーとか、「今のままだと無駄なお金払ってますよ」って危機感を煽るためのものです。

だから、消費者を不安にさせてものを売る、「危機感を持たせるようなCMを作る」っていう意図も、わかる。

わかるんだけど、キャッチーで目を引く過激さを追求するあまり、最近のCMは危機感を越えて「めっちゃ不快」を与えるものが増えてる感じがします。

法律事務所の広告が、危機感を煽って尚且つ不快感を覚えさせないのは、「(うちのサービスを買ってくれれば)その問題は解決できます!」が全面に押し出されてるからなんですよ。

化粧品のPOPだって、「あなたのシミに」とは書くけど、「(あなたのシミに)これを使ってください!」って、問題を解決するための訴求なんです。

だから、ファッションビルとか化粧品のCMだって、馬鹿にされたり軽んじられるのは冒頭のちょっとだけで、もっと問題解決の喜びを全面に押し出して訴求して欲しい。

冒頭でちょろっと馬鹿にされて、奮起してめっちゃキレイにめかしこんで、翌日馬鹿にしてきた奴らにカウンターパンチ喰らわせて黙らせてドヤ顔して、最後に「あ~すっきりした!」って服なりメイク品なりに囲まれて寝る、みたいなCMの方が、こっちもすっきりする!

それに、それで悩ましい現状が打破されてるところを見た方が、「私もこうなれるかも」って前向きなメッセージを受け取れるじゃないですか。

現実世界と仮想世界(CM)でわざわざ二回も嫌な押し付けられ方したくねーよ! って感じです。


消費者だって笑顔で、御社の自慢の商品買いたいです

●CMも広告も、デザインや展開はやり尽くされてる。
●消費者のニーズもライフスタイルも多様化してるから、それに合わせて万人受けする広報を打つのは難しい。

そういうところがあるから、どんどんパンチの効いてるものを追求してしまうんだと思います。

でも、最近それが行き過ぎて、ものを売るために価値を押し付けてるCMや広告が多いのでは? なんて、改めて考えるきっかけになりました。

多様化してる消費者に、自社のものを欲しがってもらえるように、欲望を誘導したいのはわかる。それが広報の力で、訴求する側の役目だし。

でも、年齢に限らず、CMに盛り込まれたるものに、「こうあるべき」「これに価値を感じるべき」が多いような気がします。

元々多様化してるんですから、今どきの人たちは価値を押し付けられることには敏感ですよ。

嫌な思いをするような言葉やシーンは少な目にして、本当に楽しくて嬉しくて思わず笑顔になって好きになっちゃうような紹介の仕方をして欲しいです。

自信を持っておススメしてくれる自社製品(サービス)なら、尚更。

私たち消費者だって、CMで気になってたやつを店頭で見られたらちょっとテンション上がるし、心から欲しくなればそのままお金も落とします。

笑顔で買い物したいな。「あっこれ、こないだ炎上してたイライラするやつだ」なんて、思いたくない。企業だって、思ってほしくないでしょうし。

でも、企業にそういうものを押し付けないよう求めるのと同時に、私たちも「押し付けられてる!」って過敏にならないよう、普段から受け流す癖をちょっとでも付けた方がいいかもしれませんね。

意見して、炎上させちゃうのは消費者側だから、少し考えたり、飲み込んだり、受け流したりするのは、私たちに求められる努力なのかも。

企業も消費者も、win-winでいたいですね。


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余談ですが、今回炎上してしまったCMの化粧品会社は、本当に素敵なサービスや商品もある会社なんですよ!

被災地にBAさん派遣してお化粧支援もしてたんです。
東日本大震災における活動

現地の女性にメイクして差し上げたら、「みんな苦しい時に贅沢言えなかったけど、すっぴんは恥ずかしかった」って泣いて喜んでくれた方もいたと伺いました。

被災時や緊急時の肌のお手入れ方法とか掲載してるの、ここの会社くらいだし!
非常時の美容について

WEBでBAさんに相談できるサービスもあるし!
おうちで美容相談

今度はテレビ会議やskypeの時に、ディスプレイ上でメイクしてるように見せるアプリも開発したらしいですよ!
TeleBeauty

こういう素敵なサービスや取り組みをしてるのに、CMの印象で台無しにしてほしくないです。

CMや広報宣伝ってやっぱりその会社の印象を大きく一気に左右するじゃないですか。テレビやポータルサイトの隅に貼られてる広告は見ても、そこから公式HPを隅々まで見に行く人、少ないでしょう?

別にこの会社の信者ってわけじゃないけど、会社の広告塔になるCMは、大事に作って欲しいなと思います。

そして、願わくば、折角多くの人が関わって作られたCMが、公開1日で消えるなんてことが減りますように。

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