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4.スルーされたSOS
2日目。4月8日(土)朝、だいたい6時頃に自然と目が覚めた。天気は良さそうだ。陽が射しているのがカーテン越しにわかる。
メンドクサイ難病科病棟の場合、朝6時になると女性の元気な声で「おはようございます! ◯月✕日△曜日、6時になりました」みたいなアナウンスが流れるが、ノーゲのほうは静かなものだ。
しばらくすると廊下の水回りあたりから、電気シェーバーの音が聞こえてきた。看護師の巡回も始まっているようだ。耳で感じる朝の風景。
まだ食べられない朝食を眺めた後ベッドでうとうとしていると、どこかの病室から女性の悲鳴が上がった。
「きゃあああああ、助けてー!」
何が起きたのだろう。朝から穏やかではない。が、誰も駆けつけたりはしていない様子。
再び悲鳴。
「きゃああああ、殺されるぅーーー!!」
「誰かーあ!!!」
あっ……(察し)ここはノーゲだった。
「いやぁーーーーっ! ヘビ女に殺されるー!!!」
3日目、4月9日(日)。きょうも午前中にあの女性が助けを求めて叫ぶのだろう、とヘンな期待をしていたが全然おとなしい。まさか本当にヘビ女にこr。。。
点滴のみで何もせずに寝ているだけで、少し楽になってきた。しかし、まだ上体を起こすと頭に激痛が走り、自分の話す声が頭蓋骨に反響して耳鳴りを引き起こす。これは最初から同じ症状である。
4月4日(火)に自宅で入浴して以来、頭や体どころか顔すら洗えていない。現状、配線だらけなので手を洗うことだけは許されているが、そんな中、日中担当の看護師が「夏樹さん、しばらくシャワーできてないですよね」と聞いてくれた。おお、渡りに舟だ。シャワーなんて大それたこと、まだ自力ではできないができれば体は拭いてもらいたい。さらに言えば頭も洗ってほしい。
そう話すと「じゃ、あとで用意してきますね〜」と軽く返答して行ってしまった。
その前に、きのうヘルパーさんに買ってきてもらった「からだふきシート」で、数日洗っていない顔でも拭いておこうか。
ああ、さっぱりするなぁ。拭き終わったシートはさぞ汚れているのだろう。大掃除なんかで網戸を拭いた汚れみたいに真っ黒だったりして。猫の顔にも負けそうだ。
はたして顔を拭き終わったシートを見てみると、え、黄色い……? それも特色インキの蛍光黄色である。二度見どころか何度見もした。どこかの印刷工場にでも潜り込んできたのか、と思われるほど色鮮やかな蛍光色。人体の不思議である。
さて、シャンプーの話。いまだに移動すると吐いてしまいそうなため洗面台まで行けずに、なんと、ベッドで寝たまま頭を洗ってもらうことになった。
ベッドには洗髪装置が持ち込まれる。長方形をした子供用プールのような素材と形状だ。たぶん空気で膨らませている。首を乗せる部分だけが低くなっており、枕のように使う。まさに下の商品のようなものだ。
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ポットから頭へお湯がかけられていく。そのポットは、つけ麺のスープ割のだし汁が入っているステンレスのあれ。湯加減ヨシ。意外にも快適である。
そのままドライヤーで乾かしてもらう。すっかり伸びてしまったがスキンフェードの名残のため、乾かしにくいところが楽に乾かせて助かります、と好評(?)を博す。
その日の夕飯は症状が出てからいちばん食べられた。とは言え、魚の西京焼き1/4、ご飯5%、鶏肉入り酢の物1/2だけ。きょうはこれが限界。
(つづく)
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