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1.未曾有の頭痛
未曾有の頭痛が起きたのは、2023年4月4日(火)の晩のことである。発症したばかりの時点では、まださほど深刻な痛みでもなかった。たとえて言うとワインを飲んだあとに感じる程度の頭痛だ。これならロキソニンを飲んで一晩寝たら治るだろうと考えていた。
翌日夕方はプレイの予約が入っている。念のためお客さんには連絡を入れておこう。心配されないよう軽く書いたつもりだったが、「心配です。今回はキャンセルにしましょうか」と返信が来た。朝起きた感じによって、また連絡することにして横になる。
関係ないかもしれないが、このところ就寝時に耳鳴りがしていたことを思い出す。どんな音かというと、ダイヤルアップ接続音である。いにしえのパソコン通信時代の、あの音が今も耳の中に響き渡っている。不気味な予感。
翌朝までに2回ほどトイレに起きた。いつもより頭が重く、立ち上がりにくく感じる。
早朝、あらかじめ書いておいた「満月のワンオラクル」を寝ながら各所へアップ。そして、いよいよ起床時刻となり、リビングの椅子に座る。
あ、もうダメだ。
2〜3分も座っていられなそう。それでも朝食だけは摂らなければ、と野菜ジュースとたんぱく質が摂れるチキン&ゆで玉子のラップサンド的なやつを冷蔵庫から持ってきてテーブルへ置く。
野菜ジュースを少しずつ飲もうとするも舐める程度しか入っていかない。パンなんかもってのほかだ。食べられない、いやその前に見たくもない。気持ち悪い。お客さんにはキャンセルのメールを送信。
なんだこれ。未曾有の症状である。こうしている間にも頭の痛みはどんどん増強し、まるで孫悟空の頭にあるアレのように、ぎゅーーーっと締め付けられる。ちなみにあの輪っかは「緊箍児(きんこじ)」というらしい。
とりあえずロキソニンを投与して横になる。やたら寒いので、「まるでこたつソックス」を穿いて羽毛布団にくるまる。横になると少し楽だ。そのまま少し眠った。が、上体を起こすと緊箍児が締め付けてくる孫悟空状態。
そんな感じでしばらく様子を見ていたが、ひどくなる一方でさすがに怖くなってきたので救急相談することに。。。
初めての「#7119」は、コミュ障のため電話を避けてネットでチェック。出現する選択肢にどう答えても「急いで救急車を呼べ!」にしかならない。意を決して電話をかけ、聞かれたことに答えていくと会話の最後に相手が救急車を手配してくれた。段取り良い。
さて、この時点ですでに頭は働かなくなっていることを自覚した。通常ならば、「今、電話をかけているのはご本人でよろしいですか?」と聞かれたら、「はい、本人です」とか「はい、そうです」的な返答をするだろう。しかしこの日はふにゃふにゃの声で「あい、よろひいでふ」としか言えなかった。今になって思うと、わりとあぶなかったのかもしれない。
働かない頭ながら、かかりつけの大学病院でないとイヤなのは分かっている。電話口でその旨希望すると「救急隊員が到着したらもう一度、そのことを伝えてください」
そこで大学病院近くの救急車を手配してくれたのか、偶然クルマが空いていたからなのかはわからないが管轄消防署からの配車(?)だった。
病院の救急外来へ到着するまで10分ほどだったが、頭を揺らされ、吐き気を我慢できなかった。到着するや、毛玉排出の猫のように
「吐きたい! 吐きたい!」
訴えると即、吐き袋を看護師さんが私の口元へ当ててくれる。間髪入れずに「ろー」すること数回。野菜ジュースで赤いため、吐血かどうか確認される。
「やさいじゅーすでふ。にんじんとか とまと はいってまふ」
診察台に寝かされるとやはり症状は落ち着く。救急担当医師からも、落ち着いて見えると言われるが、寝てるとダイジョブだけど上体を起こすと頭が激痛で死にそうだと告げる。
ストレッチャーに移り、頭部CT検査へ。
画像が上がると、前頭に出血が見られるとのこと。PC画面を確認するとおでこの真ん中に当たる部分に4〜5cmほどの黒い線が見える。なるほど。
ここから医師の質問責めに遭う。
「頭ぶつけましたか?」
「転んだことは? 尻もちついた?」
「殴られた?」
「酔っ払って記憶をなくしたとか?」(大昔ならあるかも)
「覚えのないアザとかないですか?」
残念ながら、皆無である。
しかし外傷がないのに、この出血はちょっとアリエナイらしい。そう言われても断じてケガなどしていないのだ。
その日は結局、「緊急性がないため、このままお帰りいただいて大丈夫です」と言われ、なんの治療もなく、薬も出されず帰される。腑に落ちない。だいじょばない。
吐き気を我慢して帰宅。即、「ろー」だった。
(つづく)
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