「私の分析によると、台風注意報が来ているから燻製に適した湿度とは言えないんですけどね」

田中がまた口を開いた。いつもこうだ。楽しかった空気をぶち壊す。それが田中だ。キャンプ場でも容赦ない。

雨が降るか降らないか。そんな運命に身を任せた勝負は今朝、曇りのち雨という形で勝利した。みんな半信半疑でキャンプに必要な準備をして、誰も「今日止めておかない?」と言わなかったから、なんとなくこの場に集まった。

来たら来たで楽しいものだ。中二病のようにズボンの裾をまくって川で水浸しになったり、焚火の前でマシュマロを焼いたりした。数時間過ごしたところでキャンプ好きの山田が「そろそろ燻製の時間だな」と言い出したのだ。

山田はへそを曲げると面倒くさい。きっと山田以外は傘が並ぶ予報を見て、日帰りだろうと思っていたことだろう。そろそろ片付けかなというところで、山田が口を開いたのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?