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芸備線の現状に関する雑感

芸備線は、広島県広島市の広島駅から県北の三次市、庄原市などを結ぶJR路線です。おそらくご存じない方も「芸備線」でWeb検索しようとすれば「芸備線 廃止」などのサジェストが出てくることから、経営状況が厳しい路線であることが推察できるかと思います。
実際に、特に山間部の区間で経営状況が厳しいことが伝えられています。

先日、芸備線のうち備後庄原-備中神代間について協議会を設けるというニュースがありました。これについて、親類が庄原市にいるため何度となく該当区間に乗ってきた一個人の雑感を述べたいと思います。

正直、経営的に見れば今すぐ廃止になっても仕方ない区間であると思います。備後庄原から先、備後西城までは通学などの需要はあるのでしょうが備後庄原以西と比べると少ないものなのではないかと推察します。これは西城という都市が庄原という都市に比べて規模が小さいことから用意に想像がつくほか、備後庄原を境に本数が急激に減少(備後庄原以西は6-8往復、備後庄原以東は4往復半ほど)することからも明白でしょう。
また、備後落合-東城間の本数の少なさ(1日3往復)は全国でもトップクラスです。東城から西の区間に関しても、1日6往復と本数としては決して多くありません。
存続派としては、地域の交通弱者の存在を取り上げている印象ですが、備後庄原-西城間に関しては既に路線バスが走っており、きめ細かなバス停で乗客を拾えます。
備後西城-備後落合-東城間はほとんど移動の需要がなく、コミュニティバスで細々と需要を拾っている状況です。
(東城から新見方面の交通は芸備線ほぼ一択のようなので、もしかしたら芸備線の特色を活かせるのかもしれませんが…)

私はとても残念ではありますが、備後庄原-備中神代間が廃止となってもやむを得ないと思うところです。ただし、私は「仮にこの区間が廃止された場合、芸備線の廃線はこれだけでは終わらない」と思っています。

当該区間が廃止されたときのことを考えますと、芸備線は備後庄原止まりの盲腸線となります。三次-塩町-備後庄原間についても、今回協議対象になる区間より利用状況がまし、というだけで決して芳しい利用状況ではありません。運行本数では日中に1時間1本運行している路線バスに大きく劣ります。
このような状況では盲腸線区間となる塩町-備後庄原間も早い遅いの違いだけでいずれ廃止の運命でしょう。
また、北に目を向けます。備後落合駅では木次線と芸備線が接続をしています。当該区間が廃止となったときには木次線も備後落合止まりの盲腸線になるわけです。
木次線の出雲横田以南に関しても1日4往復と決して移動需要は高くありません。現時点で少ないながらも来る利用客といえば、終点の備後落合駅を訪問する観光客(というか鉄道マニア?)くらいでしょう。
現時点では備後落合で芸備線に接続できるので便利はいい(実際、列車の接続時間帯には人がそこそこ備後落合駅にいる状況)ですが、芸備線の当該区間が廃止になれば備後落合は行き止まり駅です。これでは、現在より備後落合駅を訪れる人は減ってしまうのではないでしょうか。
こうなれば、木次線の備後落合-出雲横田間もいずれ廃止になる運命でしょう。

芸備線はかつて、広島都市圏と山陰の松江・米子等々の各都市を連絡する重要な陰陽連絡路線、しなわち都市間連絡を行う路線でした。都市間連絡路線というものは基本的に都市圏の境目で需要が減少します。仙山線や高徳線などがいい例だと思います。要は、多少利用が少なくても都市間連絡という使命があればその区間の存在意義もあるというものです。
今となっては芸備線は都市間連絡の役割はほぼ完全に失ったといっていいでしょう。鉄道なら新幹線と伯備線特急やくもを岡山で乗り継いだほうが早いですし、直行の高速バスもあります。結果として芸備線はただでさえ少ない地域輸送しか役割がなくなってしまいました。
今後この区間をもし存続させるのであれば、その大義は「都市間連絡」しかないと思います。実現可能性は低いですし、コストに見合わないとも思います。このまま座して死を待つよりは、という程度です。
JR西日本とすれば、新幹線-やくもルートに加えて新たなルートを開拓する意味もないですし、高速バスに対抗するのであれば広島-松江間は3時間台前半で結ぶことは絶対条件となるでしょう。そこまでして存続に舵を切られることはないと思いつつ、どうしても夢を見てしまう自分でした。

芸備線の一部区間の廃止はこれを不可能にすることです。ネットワークとして繋がっているからなんとかしうるのかもしれませんが…というところです。

なかなか厳しい状況に変わりはありません。色々な視野でみた「地域」にとって、最適な交通機関が協議の結果生まれることを願ってやみません。

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