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たこやきレインボーは80年代カルチャーの再生である

たこやきレインボーがエイベックスからメジャーデビューすると聞いたとき、正直、とても複雑な気持ちでした。エイベックスというとダンスミュージック。小室哲哉の音楽が日本中を席巻して、80年代の多種多様な音楽がそれをきっかけに、完全といっていいほど消滅してしまった。
当時はインターネットはありませんから、テレビやラジオといったものがメディアの全て。そこから流れる音楽のほとんどが小室サウンドになってしまったという時代。その頃から、私は音楽が面白くなくなってしまい、自ずと遠ざかることになってしまったのですが・・。

そして年月が過ぎて、ももクロの「行くぜっ!怪盗少女」を聴き、不協和音を盛り込んだ大胆なサウンドがとても面白く思えて、なんやかんやいろいろあって、たこやきレインボーが大好きになってしまったのですが・・・。

たこやきレインボーは、当初からボーカル力をとても大事にしているグループと感じていて、楽曲は、ロック、ファンク、チャチャチャからミュージカル曲まで多種多様。特にバンドを前提としたサウンド作りをしてると感じたので、在宅でファンを続けながらも、将来がとても楽しみにしていました。
そして、たこ虹がエイベックスからのメジャーデビューが決まって嬉しさと同時に、心配が募って・・。
でもその心配は杞憂でしかなかったのですが。

「虹色進化論」のブルーレイでエイベックスの方が話していたことですが「たこ虹をバンドでやることについて、スタジオミュージシャンを揃えることも考慮したが、たこ虹とマッチする人間性で選び、ユニコーンのような雰囲気で出来たら面白いんじゃないか」という経緯で、テッシーに依頼。
その返事が「真剣にバカをやります」という一行で、快諾したというテッシーがあまりにカッコイイのですが・・。

たこ虹のボーカルスタイルは、メンバーごとに違いがあって、それぞれの持ち味を活かしつつ楽曲を表現しています。特に年下組の三人。まいまい、れんれん、さくちゃんのボーカルは、とても80年代的です。
80年代のボーカルスタイルは、とにかく個性が強い。ウィスパーな声の人がいたり、パワーボーカルで押し切るタイプがいたり、情感を持って歌う人がいたり・・・。それは、そのまま、まいまい、れんれん、さくちゃんに当てはまります。
さきてぃは、素直にストレートに歌う90年代以降のスタイル。そして、くーちゃんは、時代に関係なくなんでもこなせるオールラウンダー。
そのようなボーカルスタイルを持つたこやきレインボーに、80年代のバンドの伝説的存在というユニコーンのテッシーにバンドを依頼する意味を考えると、本当に面白いんですよね。

たこ虹の楽曲は、あらゆるジャンルを網羅していますが、特に、セカンドアルバムの「ダブルレインボー」とサードアルバムの「軟体的なボヤージュ」は、80年代の多様性に富んだサウンドととても重なります。「私、ただ恋をしている」は、80年代の昭和歌謡ですし、「踊れ!命尽きるまで」は、チボ・マットを彷彿とさせる。SuperSparkの音は、どことなく、80年代のCMで聴いたような既視感を覚えます。「ネンジルノ」の世界観も80年代っぽい。
「めっちゃDISCO」という曲もありますし、「にじースターダスト」は、歌詞などを考えても、デビットボウイの別名義である「ジギー・スターダスト」のオマージュとしか考えられないものもある。「Rainbow Plane」は、発売当時の記事によるとロックオペラとして制作されている。そして、どことなく感じる不安感は、ケイトブッシュっぽさを感じる。
デビットボウイも、ロックオペラというスタイルも80年代よりも以前のものですが、少なくとも、エイベックスの台頭によって淘汰されていった音楽を確信的にやっているように思える。
そして、「たこ虹物語~オーバー・ザ・関ヶ原~」は、80年代のバラエティ番組を彷彿とさせます。

80年代を代表する伝説的なロックバンド、ユニコーンのテッシーをバンマスに迎えた「なにわンダーたこ虹バンド」。私は、どことなく、80年代の多様性あふれる音楽を、精神性をも引き継いでやってるんじゃないかと思うんですよね。
だからこそ、私にはとても、たこやきレインボーの創る音楽がとても楽しく感じられる。
そして、たこ虹は、バラエティ力もハンパなく凄い。私には、たこ虹そのものが、80年代の自由奔放なポップカルチャーの面白さを、現代に合うようにカスタマイズして再興してるんじゃないか、・・とも思えるんですよね。特に、さくちゃんの表現やれんれんのファッションセンスの自由さに、そのことを強く感じます。

そして、さくちゃんがユニコーンが大好きになって、もっと早くに生まれて、リアルに体験したかったと言うようなところにも、感じ入るものがある。
音楽のサイクルは、どんどんとまわっていくもの。そろそろ、たこ虹の創る音楽が時代とカチッとハマる瞬間がやってくるように思っています。

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