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オリンピック強化選手【女子ピストル北嶋選手】

日本ライフル射撃協会によると、射撃スポーツ人口はおよそ1万人。
2020年東京オリンピック ライフル射撃強化選手に選ばれた北嶋 選手の射撃練習を、縁あって見学させてもらった。

場所は世田谷にある総合運動場体育館。地下に射撃練習場がある。
平日なので北嶋選手以外にひとりしかいなかったが、普段は趣味で射撃を楽しむ年配の方が多いそうだ。

北嶋選手が専門とするのは10m、25m先の的を撃つ競技種目。
以前は紙製の的を撃っていたが、今はデジタル化され、ディスプレイで射撃データをすぐに確認ができる。この射撃場では10mのみ練習が可能だ。
25mの練習をするときは千葉の練習場まで行くそうだ。

射撃精度を上げるためのアイテム。
射撃で使わない側の目に、北嶋選手ののビジョントレーニングをサポートしている北里大学医療衛生学部視覚機能療法学の半田知也教授考案の特殊なフィルターを装着。片目の視界をなくすことが目的だが、光は通す特殊加工がされているため、ただ視界をふさぐレンズより撃ちやすいという。
アイパッドで動画撮影、自身のフォームを確認しながら練習を進める。

準備が整ったら、まずは【据銃(きょじゅう)】、
銃を構える練習を行う。

足の位置、腰の位置、姿勢、呼吸、その一挙一動に集中が高まるのを感じる。
選手はオーダーメイドの耳栓をしているので、音はあまり聞こえていないのだろう。試合の際は洋楽などの音楽がかけられているそうで、練習時もその場を再現するため音楽をかけることが多いという。

張り詰めた空気が伝播して、見ている方も背筋が伸びるような感覚を覚えた。

次に行うのは【空撃(からうち)】。
集中を高め、据銃の後、銃の引き金を引く。小さくカチっと音が鳴った。一糸乱れぬ姿勢。
そして幾度も立ち位置の確認からはじめ、繰り返し練習する。
何発も撃って精度を上げていく、というやり方ではなく、丁寧に、一発一発の精度を上げるため鍛錬を重ねる。

最後に【実射(じっしゃ)】。
ここまでですでに練習開始から30分以上の時間が経過していた。
指先にすべての意識を集中させ、そして引き金を引く。パン、と銃声が練習場に響いた。

もっと頭に響くような銃声なのかと勝手に思いこんでいたが、空気銃のためそこまで大きな音ではない。やはり耳栓は集中力を極限に高めるためのものなのだろう。

ふと、陸上部で100m走を走っていた記憶が蘇ってきた。朝は何を食べ、髪型は空気抵抗を少なくするため纏めて、スパイクの針を入念にチェックし紐の結び具合を何度も調整した。
クラウチングスタートの時の足の位置、一歩目踏み出す距離。
0.1秒を縮めるために常に微調整していたこと。
もう20年も前の記憶だが、不思議と鮮明に思い出すことができた。もちろん中学生の部活とは比べものにならないのは言わずもがなだが。

北嶋選手は、警察出身。公務員をやめて、競技の道に専念したのはつい最近だという。すごい勇気だと思ったが、本人は「自然な流れでした」と答えた。専門的な道をいく人たちは、不思議と「気づけば今の立っている場所にいた」と答える人が多いように思う。周りが後押しする環境を、自分で創りだしているからに他ならない。

北嶋選手は、大会に出場する傍ら、企業の広報担当としても活動している。アスリートとして、ビジネスマンとして忙しい日々だ。
自分と同世代のアスリートを今後も応援していきたい。

【選手情報】
■ プロフィール
選手名 北嶋 那実子 Kitajima Namiko
生年月日 1984年7月3日
出身地 広島県福山市(生:福岡県)
所属 CF Partners 株式会社
種目 ピストル

■ 射撃を始めたきっかけ
警察学校。当時の担当教官に「オリンピック競技にもなっているのでやってみないか。」と言われ、競技人生を歩み始める。

■ 主な戦績
2015 全日本ライフル射撃競技選手権大会優勝
2016 全日本ライフル射撃競技選手権大会準優勝
2016 東日本ライフル射撃競技選手権大会優勝
2016 長崎国体団体優勝、個人3位
2017 全日本選抜ライフル射撃競技大会4位

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