マガジンのカバー画像

自分で気に入っている選

6
自分でもくだらなくて笑っちゃう・なんか好きな記事選デス
運営しているクリエイター

#絵本

ちぎれ雲と雲ちぎり仙人

秋風が吹く頃になると、雲ちぎり仙人は向こうの山からやってくる。 ものすごく歳をとっていて、頬の少しこけた、しかし背筋はシャッキリ伸びていて、いかにも職人ぜんとした風貌である。 雲ちぎり仙人はその名の通り仙人なのだが、あまりにも長生きなので、収めるべき修行はほとんど全てなくなってしまった。 なので仙人と言っても、毎日山をひょいひょい飛び回りながら、花を咲かせ、動物とおしゃべりをし、川のせせらぎに耳を傾けるような生活である。 ただ秋口は何か風流な遊びでもしたくなるようで、それ

夏屋の店じまい

夕方の風が、少し軽くなった。夏特有のずっしりと湿った風のあいだに、軽く爽やかな風がまじっている。今年の夏も、そろそろ終わりかな、と思いはじめる。 思いたって、夏屋に連絡をとってみた。夏屋というのは夏のあいだにだけ営業している店なのだが、その店もそろそろ片付けはじめるだろうか。その前にいちど顔でもだそうか。などと考えていたのだ。 --- 夏屋からの返信(透明な便箋に入っていた。どうやら夏らしさの演出らしい。)によると、やはり今年はそろそろ店じまいらしく、さらに気の早いこと