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ヴァナヘイムの悪の魔女【2:2:0】【ファンタジー/シリーズもの】

原案:peony

0:登場人物
ロキ:男
レギン:男
エイル:女
ワルキューレ:魔女

(所要時間:約30分)

0:高所から更地となった世界を見下ろすワルキューレ
0:独り言

ワルキューレ:なァんにもないじゃない。つまらなくなったわねェ。……「ココ」も。


0:現・組織本部
0:ロキが居なくなった折檻室で一人残されたエイル

エイル:……痛い。痛いよ。辛いよ。ごめんなさい。
エイル:人を殺して、たくさん殺してごめんなさい。国を滅亡させて、ごめんなさい。
エイル:私が、私がお話を書いたから……ぐすっ。

0:薔薇の香水のような香りが漂い、ワルキューレがどこからともなく現れる

ワルキューレ:……そんなに悲しそうな顔をして、どうしたのォ?かわいいかわいいキンダー(※子供の意)ちゃん♪

エイル:……あなたは、何処から入ってきたのですか?(※調子を戻して)

ワルキューレ:あらァ、そんなに簡単に感情をコントロールできるのォ?

エイル:……ロキ上官は、私が泣くともっと怒るので、いつも泣かないようにしてるんです。

ワルキューレ:ふぅン。あの「かわいい」ロキちゃんがねェ。

エイル:……ロキ上官が、かわいいんですか?

ワルキューレ:かわいいわよォ。それはそれは、とーーっても♪

0:ワルキューレ、エイルをじっと見つめる

ワルキューレ:……綺麗な青い目に、素敵なブロンド。

エイル:……。(※まじまじと見つめられて、気まずい)

ワルキューレ:シー(※あなたの意)、アタクシと同じかしらァ?

エイル:同じって、どういうことですか?

ワルキューレ:シー、名前は?

0:エイル、少し考えてから、おそるおそる喋りだす

エイル:……Z-エイルと申します。
エイル:あの、あなたはロキ上官のことを知っていました。組織の人間ですか?

ワルキューレ:エイルちゃんねェ?かわいがってあげるわァ♪……だって、エイルちゃんはアタクシとおんなじ。

エイル:……。

ワルキューレ:アァ、ごめんなさいねェ。質問に答えなくちゃいけないわねェ♪
ワルキューレ:……オーディンちゃんと面識はあるわァ。そのときにコードネームも貰った。

エイル:やっぱり、組織の人間なんですね。

ワルキューレ:(※「人間」辺りから遮って)でも人間じゃない。

エイル:……人間じゃ、ないんですか?それはアンドロイドという意味ですか?

ワルキューレ:アンドロイドでも無いわ。これが証拠。

0:ワルキューレ、おもむろに自分の手首を切り、血が流れる

エイル:ヒッ!!血が流れて……!!(※動揺)

ワルキューレ:あらァ?血に恐怖を感じるのかしらァ?
ワルキューレ:でもこれでアタクシはアンドロイドじゃない、その証拠にはなったでしょう?

エイル:(※調子を戻して)…は、はい。ではあなたは一体何者なのでしょう?

ワルキューレ:アタクシのコードネームは「P-ワルキューレ」。……悠久(ゆうきゅう)の時を生きる、魔女よ。


0:ロキの研究室
0:慌てているロキとレギン

ロキ:おいレギン!!「魔女」の毒薬のレシピはどこだ!!

レギン:僕に聞かないでよ……。

ロキ:あれが無いとぶっ殺される!……駄目だ、もう何もかも終わりだ!

レギン:あ、ロキ、これは?
レギン:ちっちゃい頃に「魔女」から貰ったレシピを、一枚一枚保管してたノート。

0:薔薇の香水のような香りが漂い、ワルキューレがどこからともなく現れる

ワルキューレ:あらァ♪そんなことしてくれてたのねェ?姉さん嬉しいわァ♪

0:冷や汗を拭い、笑顔を作るロキ

ロキ:……わ、ワルキューレ姉!!久しぶり!!

レギン:ワルキューレ姉さん。

ワルキューレ:ロキちゃんもレギンちゃんも、大きくなったわねェ。二人とも美男子に育ってくれて、嬉しいわァ♪

ロキ:それにしても、ほ、本当に、久しぶりだな!

レギン:最後に会ったのは、僕らが7歳の頃だから、十年ぶりだね。

ワルキューレ:レギンちゃん流石の記憶力ねェ♪
ワルキューレ:サヴァンに奪われた能力を、簡単に超越してしまう才能を持ってる。

レギン:ありがとう。ワルキューレ姉さん。

ワルキューレ:……それはそうと、あっちの研究室にまだ幼いキンダーが寝かされてたけどォ?

ロキ:あーー!!いや、それは!!何でもないんだ!!

ワルキューレ:あのキンダー、喋らないのねェ。しかもサイコパス。

レギン:そうなんだよね。謎が多いんだ。だから解剖を……

ロキ:(※「解剖」に被せて)あーーーー!!!ワルキューレ姉、長旅で疲れてるだろう?
ロキ:あっちの部屋で、ワルキューレ姉が大好きなワインを御馳走するよ!どうかな!?

レギン:……ロキ?

ロキ:(※小声で)厄介事になるから黙っとけ!

レギン:(※小声で)……了解。


0:同時刻
0:別室

0:エイルとシヴが話している(※シヴは手話で)

エイル:……シヴ。よかった。何もされてなくて……。あのワルキューレさんって人のお陰だね。
エイル:とっても不思議な人ではあったけど……。

0:シヴに手話で「怪我は大丈夫?」と聞かれるエイル

エイル:……あ、これ?いつもよりちょっと痛かったけど、大丈夫だよ。
エイル:ロキ上官、最近ずっとイライラしてるから、仕方ないよ。
エイル:……でも、どこか辛そうなんだよね。やっぱり私のせい、なのかな……。

0:シヴから手話「元気を出して」

エイル:……ありがとう。シヴ。
エイル:あっ、そうだ……。シヴは本当に大丈夫だった?怖くなかった?

0:シヴから手話「怖くなかったよ」

エイル:……よかった。今日は一緒に、手を繋いで寝ようね。


0:別室
0:ワインと豪華な食事が用意されているテーブル
0:ロキとレギンがいる場所に、ワルキューレが遅れてやってくる

ワルキューレ:……ごめんねェ!二人とも!ちょーっとオーディンちゃんのところに顔出してたら、遅くなっちゃったァ。

ロキ:ワルキューレ姉!待ちくたびれたよぉ!

レギン:ワルキューレ姉さん。おかえりなさい。

ロキ:今ワインをグラスにつぐから、ちょっと待ってね!

ワルキューレ:ありがとォ♪ロキちゃあん♪

0:(少し間)

ロキ:ワインの味はどうかな!?

ワルキューレ:悪くないわよォ。悪くない。なんといっても、あのかわいいかわいいロキちゃんが用意してくれたワインだものォ♪

ロキ:(※胸をなでおろす)よかった……!!

ワルキューレ:でもォ、栓が開いてたのは気になるわねェ。
ワルキューレ:……ロキちゃあん。このワイン、飲んだのかしらァ?

レギン:ああ、それは、僕がこの施設に戻ってきたときにお祝いで少しだけ……

ロキ:(※レギンの台詞に被せて)だぁぁーーーーーーーーーっっっ!!!!!

レギン:ロキ?

ロキ:(※小声で)レギンお前マジで余計なこと言うなよ!

レギン:(※小声で)…了解。…ごめんよ。

ロキ:あの、あれだよ!ワルキューレ姉!
ロキ:ちょーっと、僕らさ、ワルキューレ姉に憧れて、一口くらいならいいかなって……
ロキ:本当に!本当にそれだけだったんだよ!……ほら、僕ら、ワルキューレ姉のことが、大好きだからさ!

ワルキューレ:「ワルキューレ姉のことが大好き」?んふふ♪嬉しいこと言ってくれるじゃなァーい♪それじゃあ、許しちゃおうかしらァ?

レギン:ロキも僕も、ワルキューレ姉さんのことが好きなのは、昔から変わらないよ。なんと言ったって、僕らの師匠だからね!

ワルキューレ:あァん♪かわいいかわいいレギンちゃあん!レギンちゃんのまっすぐなその瞳、アタクシだぁいすきよォ♪

ロキ:そうだよ!だからこうやって、ワルキューレ姉から教えてもらった薬の作り方だって、きちんとファイリングしてるわけだしさ!

ワルキューレ:あぁん♪二人ともだぁい好き!
ワルキューレ:……んふふ、そうよォ♪みーんな、アタクシのことを好きになればいいのォ、愛すればいいのォ!
ワルキューレ:そしたら、みーんな幸せになれるわァ♪……アタクシが、幸せにしてあげるのよォ♪


0:別室
0:一人で居るワルキューレに、エイルが話しかける

エイル:ワルキューレさん。あの、今お時間少しいいですか?

ワルキューレ:あらあらァ。エイルちゃん♪どうしたのォ?お話でもしましょうかァ。「同じもの」同士ねェ。

エイル:……「同じもの」って、どういうことですか?
エイル:初めてお会いした時にも、ワルキューレさんはそう仰ってました。私とワルキューレさんは「おんなじ」だと。

ワルキューレ:だってェ……エイルちゃん、国を滅ぼしてるでしょォ?しかも二つも。そのうち一つはエイルちゃんの祖国だしねェ。

エイル:っ……。(※少し言葉に詰まる)
エイル:どうしてそんなことが、分かるんですか?

ワルキューレ:顔見れば分かるわよォ。あ、このキンダー、国滅ぼしてるなァってェ。

エイル:それは、ワルキューレさんが、

ワルキューレ:そうよォ♪アタクシが魔女だからァ。

エイル:やっぱり……。その魔女の力というのはどこまで凄いのですか?

ワルキューレ:といってもォ、エイルちゃんのことが分かるのは、魔女の力はあんまり関係ないかしらねェ?

エイル:え?

ワルキューレ:あるのよォ。「通じ合う瞬間」っていうのがァ。

エイル:通じ合う瞬間……。

ワルキューレ:アタクシねェ、今でこそ人間を捨てて、「魔女」という存在になったけれど、それでも太古の昔は、人間だったことに間違いは無いのォ。
ワルキューレ:……そういうときのねェ。「人」の感覚っていうのかしらねェ。……残ってるのよォ。

エイル:ワルキューレさんの中の、「人」の感覚が、私と「通じ合った」んですか?

ワルキューレ:……そゆことォ。アタクシも昔ねェ。大陸にそびえる大きな大きな国を滅ぼしたことがあるわァ。

0:エイル、数秒絶句

エイル:…………ワルキューレさんも、そうだったんですね。……だから出会ったときから、私のことを「同じ」だと仰っていた。

ワルキューレ:そォ♪だからこそ、こうしてエイルちゃんとアタクシは「通じ合う」ことができたわァ。

エイル:……辛く、なかったんですか。

ワルキューレ:んン??

エイル:国を滅ぼしたとき、辛くなかったんですか。

ワルキューレ:辛かったわね。(※物寂し気に)

エイル:……その国は、今は……

ワルキューレ:といっても、もう何百年も前のお話よォ。……アタクシ、「魔女」だからァ♪
ワルキューレ:国もすっかり復興して、今では栄えてるみたいねェ。……だけどやっぱり。忘れられないわ。……何百年経っても、ね。

エイル:ワルキューレさん……。

ワルキューレ:んふふ♪ちょっとしんみりしちゃったわねェ。

0:エイル、ワルキューレの頭を撫でる

エイル:……よしよし。

ワルキューレ:……あらァ?

エイル:ワルキューレさんは偉いです。……辛い記憶を、ずっと忘れずに持っている。
エイル:私も、滅ぼした国のこと、ずっと忘れずに居たいです。

ワルキューレ:……んふふ。忘れていいのよォ。「辛い記憶」なんだからァ。

エイル:……でも、「大事な記憶」です。
エイル:あなたもそうだから忘れられない、いや、忘れたくない、そうでしょう?ワルキューレさん。

ワルキューレ:……エイルちゃん今いくつだっけェ?

エイル:十歳になります。

ワルキューレ:……んふふ、なんてお気遣い上手♪大人になるのが楽しみねェ。

エイル:……。

ワルキューレ:……そう、そうねェ。「大事な記憶」かァ……。
ワルキューレ:確かに。あんなに「愛して」「愛された」のは初めてだったかしらねェ。

エイル:……「愛」ですか。

ワルキューレ:……えェ。そこから、なのかもしれないわァ。アタクシが「愛」に執着するようになったのは。

エイル:……もし嫌でなければ、ワルキューレさん、あなたのお話を、聞かせてもらえませんか?

ワルキューレ:聞いても面白いものじゃないわよォ?
ワルキューレ:それに、アタクシは「魔女」。タダじゃ聞かせてあげなァい♪

エイル:私の過去も話します。

ワルキューレ:……あらァ?

エイル:だから、ワルキューレさん。私はあなたのことが知りたいです。「同じもの」同士でしょう?

ワルキューレ:んふ、んふふ、アハハ……!!
ワルキューレ:なァーんて面白くってかわいいキンダーなのォ!?
ワルキューレ:……いいわよォ。分かったわァ。交換条件でお互いのことを話しましょう。

エイル:本当ですか!?(※嬉しそう)

ワルキューレ:……青いお目目をキラキラ輝かせちゃってェ。んふふ、かぁわいい♪


0:ロキの研究室
0:ロキとレギン
0:ずっと怯えているロキ

レギン:……ロキ。そろそろ研究を……。

ロキ:…………無理だ。

レギン:何もかも投げ出したままじゃないか。

ロキ:分かってるんだよそんなことは!!

レギン:……ワルキューレ姉さん、かい?

ロキ:当たり前だろ!?!?あの「魔女」が来てるのに、研究なんて手につくはずもない!!
ロキ:もう僕らを守ってくれるフリッグはいないんだよ……。

レギン:……あはは。まあ確かに、昔はよく僕らが、人体実験させられてたよね。
レギン:「正確な反応が見たいから」とか言って麻酔も無しにさ。新しい薬の治験とかも全部僕らだった。
レギン:……怖かったなあ、あれは。

ロキ:お前は!!まだマシだっただろ!!「サヴァンだから正確な脳のデータが取れないかもしれない」とか言って、危険な実験や精神薬の治験、限りなく死ぬ可能性が高い毒薬の治験は、全部僕に回ってきた!!
ロキ:……何度死の淵を見たことか。一週間身体が痺れて動かない・二週間嘔吐と頭痛に悩まされる・三週間同じ幻覚を見させ続けられる、なんてこともザラにあったんだぞ!?

レギン:あはは。そんなこともあったねぇ。

ロキ:笑い話じゃねーよ!僕は今でも鮮明に覚えてる!!

レギン:……でも、そのお陰で、複数の新薬の開発にも成功した。ワルキューレ姉さんが居なかったら、今の僕らは居ないよ?

ロキ:そ、れは……確かにレギンの言う通りだ。僕はワルキューレ姉のこと、科学者として、研究者として、本当に尊敬しているよ。

レギン:……本物のマッドサイエンティストは、ワルキューレ姉さんだよね。

ロキ:ああ。僕もお前もさんざん「マッドサイエンティスト」だと揶揄(やゆ)されて来たが、ホンモノを知らない奴は本当に幸せだと思う……。

レギン:……確かに。知らないに越したことは無いのかも。

ロキ:はぁーーーーー。あったま痛ぇ。ちょっと寝てくる……。

レギン:大丈夫?ロキ。頭痛薬あるよ。

ロキ:あー…。あの十時間は目覚めない、レギン特製の頭痛薬だろ?いらねーよ。

レギン:ええ?これ飲めば百発百中でよくなるんだけどなあ。

ロキ:そんなに寝てられる状況じゃないだろ。……一時間したら起きる。

レギン:分かったよ。(※しょんぼり)……おやすみ、ロキ。


0:別室
0:エイルとワルキューレが話している

エイル:……私は、あの国で、父と母と三人で暮らしていました。でも私の祖国は、戦争が絶えないとても治安の悪い国でした。

ワルキューレ:まァ、『あの国』だものねェ。だった、というのが正しいのかしら。んふふ♪

エイル:私は戦争を止めたかっただけなんです。お父さんに、早く帰ってきて欲しかっただけなんです。
エイル:お母さんが日に日にやつれていくのが怖かっただけなんです。

ワルキューレ:そうねェ。それは嫌ねェ。

エイル:……国を滅ぼすつもりなんて……人を殺すつもりなんて……これっぽっちもありませんでした。(※だんだんと感情が溢れる)

ワルキューレ:……よしよし。エイルちゃんは、本当に偉い子なのねェ。泣いてもいいのよォ?アタクシの前で良ければ、だけどォ。

エイル:(※感情を溢れさせながら)ワルキューレさんは、お優しいんですね。
エイル:ロキ上官は、私が泣くといつも怒るんです。だから泣かないように我慢しなきゃ、我慢しなきゃと思っていたら、いつの間にか泣けなくなっていたんです。
エイル:お父さんを殺してしまったことも、お母さんを殺してしまったことも、たくさんの人を殺して、祖国を壊滅させてしまったことも、あんなに悲しかったはずなのに。
エイル:思い出しても、全然泣けなくて。

ワルキューレ:エイルちゃんはいい子ねェ。よしよし。
ワルキューレ:……でもそう……あのロキちゃんがねェ。少し言っておかなくちゃいけないわねェ。

エイル:……無感情になった私は、それこそお人形のようで。いえ、お人形そのものだったのかもしれません。
エイル:ロキ上官の、お人形。

ワルキューレ:サンドバッグでも、あったみたいだけれど。

エイル:……あれは、仕方ないんです。ロキ上官だって、いろいろ抱えていて、私を折檻(せっかん)することで、それが晴れるならいいんです。

ワルキューレ:(※被せ気味に)駄目よォ。エイルちゃん。年頃の男の子が、こんなに小さな女の子に暴力を振るうだなんて、駄目。
ワルキューレ:だからエイルちゃんも、それを受け入れないで?ねェ?

エイル:ワルキューレさん……(※優しさに感動している)

ワルキューレ:まァ、立場が逆なら別なのだけれどォ。
ワルキューレ:……エイルちゃん?少し、頭の両端に手をあてさせて頂戴?

エイル:?……何を、するんですか?

ワルキューレ:今までエイルちゃんが味わった痛みの分だけ、アタクシがロキちゃんに教えてあげるのよォ♪

0:別室
0:折檻室
0:ワルキューレとロキ

ロキ:ち、違うんだワルキューレ姉……!!エイルへのあれは教育であって……!!(※焦っている)

ワルキューレ:あれだけ女の子には手を上げるなと教えたわよねェ?
ワルキューレ:……悲しいわァ。姉さんとーーっても悲しいわァ。

ロキ:やめてくれ!!ワルキューレ姉!!久々の再会だろう!?ほら、さ!もっと楽しくいこ……

ワルキューレ:うるさい。

ロキ:っっ!!(※魔術で言葉を詰まらせる)

ワルキューレ:両手首を縄で縛ってェ。……んんと、この電気椅子はまだ通電しているのかしらァ?

ロキ:……っっ!!~~~!!(※魔術で言葉を封じられている中、必死にもがく)

ワルキューレ:あ、通電させる瞬間は、その魔術解いてあげるから安心して?
ワルキューレ:……アタクシ、人の悲鳴を聞くのは大好きなの。知ってるでしょォ?
ワルキューレ:ほォ~ら♪……3・2・1……

0:バチン、という音と共に、ロキの身体に電流が走る

ロキ:ぐ、ぐああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!

0:別室
0:レギンの研究室
0:エイルとレギン

エイル:ロキ上官、大丈夫でしょうか?

レギン:あの悲鳴を聞いても大丈夫だと思えるなら、エイルも魔女の素質があると思うけどね……。

エイル:ワルキューレさんは、私のことを「同じ」だと仰っていました。
エイル:魔女になるのも、悪くないのかもしれません。

レギン:……一体何を吹き込まれたんだろう。

エイル:それで、レギン上官、どうしてシヴを解剖しようとなんてしたんですか?

レギン:ああ、それはね。僕がフリッグから託されたこのペンダント、シヴの眼球と同じ構造をしているんだよ。

エイル:……それで、解剖を?

レギン:うん。そうだよ。

エイル:解剖したら、何かが分かるんですか?

レギン:分かる、と信じて研究をするのが科学者だよ。

エイル:私はシヴの解剖したところで、何かが分かるとは思いません。

レギン:どうしてそう言い切れるんだい?

エイル:そのペンダントとシヴの眼球の構造が本当に同じだったとします。エイル:それを抉り出して、眺めたところで、新世界創造計画は何か動きを見せるのでしょうか?

レギン:……エイル……君は……

エイル:それにこれは、ボスからの命令じゃない。ロキ上官とレギン上官が勝手にやっていること、そうですよね?

レギン:エイル、僕は君にあまり怒りたくないんだ。勘弁しておくれ。実験してみないと、分からないこともあるんだよ。

エイル:でもシヴは一人の人間です。しかもまだ5歳。実験の後遺症で、命を落としてしまうかもしれないんですよ?
エイル:そうなったら、組織にとっても損でしょう?

0:薔薇の香水のような香りと共に、ワルキューレが現れる

ワルキューレ:エイルちゃんの言う通りよォ。レギンちゃん。

レギン:わ、ワルキューレ姉さん!!

エイル:ロキ上官は……?

ワルキューレ:あァ。ロキちゃんなら……もぉっと楽しみたかったのだけれど、途中で泡吹いて失神しちゃったから置いてきたわァ。

レギン:(※ぼそりと)相変わらず容赦ないなあ……。

ワルキューレ:トクベツに教えてあげるけどねェ?今のままじゃパーツが足りない。足りないのよォ、レギンちゃん?

レギン:……シヴと、このペンダントだけじゃってこと?ワルキューレ姉さん。

ワルキューレ:そ。

エイル:じゃあ、シヴが解剖されることは無いんですね!?ワルキューレさん。

ワルキューレ:それはァ。アタクシにも分からないわァ。
ワルキューレ:でも、近々訪れる「もう一人」を待ちなさァい?

レギン:……もう一人?

ワルキューレ:ええ。それでパズルのピースは完成するはずよォ。
ワルキューレ:だから今この状態で実験を行っても、失敗するだけ。
ワルキューレ:……ロキちゃんが起きたら、あの子にもよーく聞かせておいてェ??

レギン:わ、分かったよ。ワルキューレ姉さん。

0:ロキがふらふらと部屋へ入ってくる

ロキ:……ワルキューレ姉……

ワルキューレ:あらァ!ロキちゃんもう起きたのォ!?さすが男の子ねェ!強い子は好きよォ♪

ロキ:どうせ、もう行くんだろ?……またしばらく帰ってこないんなら、挨拶がしたかった。

ワルキューレ:ン~~~!!本ッ当にいい子ねェ、ロキちゃあん♪
ワルキューレ:いい子だから、一つ情報を教えてあげる。

ロキ:……情報……?

ワルキューレ:ロキちゃんねェ?アールヴィルちゃんのこと、消したつもりでいるでしょォ?

ロキ:……は?アールヴィル?そりゃあもちろん、殺戮兵器のヘイムダルに抹殺させて……

ワルキューレ:(※被せ気味)生きてるわよ。

ロキ:は?!?

レギン:アールヴィル、って、あのアールヴィル上官かい?

ロキ:ああ、殺した。確かに殺したはずだ。ヘイムダルが俺に嘘なんてつくはずがない!!

0:通信機をとるロキ

ロキ:おい!!ヘイムダル!!アールヴィルは殺したんだよな!?おい!!お前が嘘なんてつかないよな!?おい!!

ワルキューレ:それじゃァ、レギンちゃん?そういうことだから。近々現れる最後のピースは「無口な女」「戦闘部隊」。
ワルキューレ:(※独り言)あら、でもそれって、オーディンちゃんの計画に関係あるのかしら。

レギン:……無口な女……戦闘部隊……。うん。覚えたよ、ワルキューレ姉さん。

ワルキューレ:エイルちゃんも、またねェ。またロキちゃんに乱暴されたら言うのよォ?

エイル:あ、あの、ワルキューレさん!もう行ってしまうのですか?

ワルキューレ:そうねェ。アタクシは、一か所に留まるのが苦手なのよォ♪

エイル:……いつか、私のことも魔女にして、一緒に連れて行ってくれますか?

ワルキューレ:気が向いたらねェ。その前に、エイルちゃんはエイルちゃんの役目を果たしなさい♪

エイル:(M)その「魔女」は、薔薇の香水のような香りと共に姿を消した。
エイル:(M)私にとっては、いい出会いだったんだと思う。
エイル:(M)「彼女が国を滅ぼした話」は、後からこっそり教えてくれた。
エイル:(M)……「似ている」彼女。私ととっても似ている彼女。
エイル:(M)いつか私も、悠久の時を生きる魔女に、なれるのだろうか。



0:END

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