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lumière d'espoir(リュミエール・デスポワール)【1:1:0】【ラブストーリー/失恋】

lumière d'espoir(リュミエール・デスポワール)
作・monet

所要時間:約15分~20分

0:登場人物

エマ・スリーズ:17歳。学生。大学に行く為に勉強をしているが、なかなか上手くいかない。元々は本が好きで文学部志望、現在はダニエルの影響で薬学部志望。(※7歳を演じるシーンがあります。)

ダニエル・ヴィオレ:28歳。エマが目指す大学の薬学部で研究員として働いている。エマとは10年来の幼馴染。(※18歳を演じるシーンがあります。)

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0:本編スタート

0:10年前
0:エマ7歳。ダニエル18歳。

エマ:ねえ、ダニエル!遠くに引っ越しちゃうって、本当なの?

ダニエル:本当だよ。エマ。大学に入って、勉強をするんだ。

エマ:……どんな勉強?

ダニエル:うーん。人の役に立つ勉強、かな。エマにはまだちょっと難しいかもね。

エマ:難しくないよ!私にも教えて!私も、ダニエルと同じ大学に入って、勉強する!

ダニエル:あはは……。困ったなあ。

エマ:何も困ることなんか無いよ!

ダニエル:うーん。じゃあ、僕が行く大学の名前だけ教えてあげる。『プロヴァンス大学』。難関だけど、エマも目指してみるといい。

エマ:なん、かん?

ダニエル:難しい、ってことかな。沢山勉強しないと入れないんだ。だからエマも沢山勉強して、僕と同じ大学においで。そしたら会えるかもしれないよ。

エマ:する!!勉強、する!!!私、勉強はそんなに得意じゃないけど、ダニエルと同じところに行けるなら、頑張るよ!!

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0:現在
0:エマは机でうたたねをしている
0:夜もすっかり更けた深夜3時頃

エマ:(※寝言)……だに、えるぅ……わたしも、がんばって、べん、きょう、する……から、、、

エマ:はっ!!!(※起きる)

エマ:私また寝てた!?!もう最悪~~~!!!今日は参考書の220ページまでは進めたかったのに~~……。

エマ:(M)……ダニエル。元気にしてるのかな。あれから手紙を送っても、一向に返事は無いけれど……もう私の事なんて、忘れちゃったのかな。

エマ:……だとしたら……だとしたら、私は一体何のために、、(勉強をしているの?)

ダニエル:(※回想)『だからエマも沢山勉強して、僕と同じ大学においで。そしたら会えるかもしれないよ。』

エマ:いいや。いいや!!私はたくさん勉強をして、ダニエルと同じ大学に入る!!そして、必ずまた再会するの!!

エマ:(※ぼやくように)……だって、、ダニエルは、、……私の初恋の人なんだから。

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0:数日後
0:『プロヴァンス大学』オープンキャンパス。

エマ:えっと、、薬学部……薬学部はどこかな……??

エマ:(M)今日は『プロヴァンス大学』のオープンキャンパスの日!!少しでも薬学部の教授に顔を覚えてもらうんだ!!

0:誰かとぶつかる

エマ:あっ!!すみません!!

0:資料をぶちまけるエマ

エマ:あっ、ああああ!!す、すみません!!!ごめんなさい自分で拾うので大丈夫です!!!

ダニエル:いえいえ。ぶつかってしまったこちらも悪いので。……ん。もしかして薬学部志望ですか?(※エマに気づかない)

エマ:……え?あ、はい。そうですが。(※ダニエルに気づかない)

ダニエル:よかったら案内しましょうか?僕がこの大学の薬学部で研究員をしています、ダニエル・ヴィオレと申します。

エマ:だ、

ダニエル:だ?

エマ:ダニエル・ヴィオレ!?!

ダニエル:(※困った様子)え?あ、はい。ダニエル・ヴィオレです。論文もいくつか出しているから、知ってくれているのかな。ははは…(※困り笑い)

エマ:わたし!!エマです!!!!

ダニエル:え、ま…?(※ピンとこない)

エマ:昔近所に住んでいた、エマ・スリーズです!!覚えてませんか!?

ダニエル:(※思い出せない)あ。ああ~~!!久しぶりだね!!本当に大きくなった!!

エマ:私、ダニエルのこと追いかけて『プロヴァンス大学』まで来たんだよ!?ねえ!!

ダニエル:そ、そっかそっか。それは嬉しいな。ありがとう。研究室まで案内するよ。

エマ:……。(※ダニエルのよそよそしい態度に不安を覚える)

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0:研究室での説明会が終わった後

エマ:あの!!ダニエル!!

ダニエル:……ん?どうしたんだい?(※困ったように)

エマ:この後、コーヒーでも飲みに行きませんか!?その、昔の話や、今日の説明会の話題も兼ねて!!

ダニエル:あーー……。ごめん。今日はこの後予定があるんだ。また今度。

エマ:それじゃあ!連絡先だけでも!教えてくれませんか!?

ダニエル:……。

エマ:だってダニエル!!(周囲の目を気にする)……いや、ダニエル。あれからずっと、手紙を送っても返事が無くて、ずっと心配だったんだもん!!

ダニエル:……ごめんね。

エマ:それに、さっきからずっと、名前で呼んでくれない。なんで!?どうして!?私の事忘れちゃったの!?そんなわけないよね!?

ダニエル:……。

エマ:何か言ってよ!!

ダニエル:……エマ。僕らはもう、あの頃とは違うんだ。

エマ:~~っっ!(※名前を呼ばれた嬉しさと、酷いことを言われた悲しさで何も言えない)

ダニエル:じゃあ。僕はもう行くよ。

エマ:待って!!ダニエル!!

ダニエル:……次会うのは、エマが入学した後かな。

エマ:っっ…。

エマ:(M)そんな……そんな希望を持たせるようなこと、言わないでよ。私の事、振るならちゃんと振ってよ。そんな事言われたら、頑張ろうって、思っちゃうじゃんかあ……。

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0:過去回想

0:10年前
0:エマ7歳。ダニエル18歳。

エマ:ねーえっ、ダニエルってかっこいいよね!

ダニエル:えーっ?そうかな?

エマ:私の友達の中でも評判なの!あのお兄さんと家が近いなんて羨ましいなーって言われちゃうんだよ!!

ダニエル:ははは。それは嬉しいけど、ちょっと困っちゃうなあ。

エマ:年下の女に好かれるのは、嫌?

ダニエル:嫌じゃないよ。でも少し、動揺してしまうというか……、うーん。なんて言ったらいいのかな。恥ずかしい、のかな。

エマ:ふふっ!じゃあダニエルも、まんざらでもないってことだね!!

ダニエル:そういうことを言ってるわけじゃないよ!?お願いだから変な噂を広めないでね!エマ!!

エマ:分かってるよ。このことは私だけ知ってればいーの。

ダニエル:どういうことだい?

エマ:そういうこと。

ダニエル:ん、んん…?

エマ:と、いうことで、ね!!ダニエル、今日もお勧めの小説を教えて!!

ダニエル:ははは。エマは本当に愛読家だなぁ。……うーん。今日はどれにしようかな。少し難しくてもいいかい?

エマ:ぜんっぜん!!難しくていいに決まってる!!私は「あいどくか」だからね!どんな本だって読めるの!!

ダニエル:ははは。そうかい。頼りになるねえ。将来は小説家だったり?

エマ:うーん。それもいいけど……

ダニエル:いいけど?

エマ:将来は、ダニエルのお嫁さんになりたいな!!

ダニエル:……あ、ははは。そりゃあ、また、困ったなあ。

エマ:なぁに~?恥ずかしいの??

ダニエル:うぅん。そうだねぇ……。

エマ:でも、まんざらでもない。そうでしょ?

ダニエル:あはは。(※困ったように笑う)

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0:現在
0:エマの自室

エマ:(※独り言)……思えばあの時、私は本気にしちゃってたけど……ダニエルは困ってたのかな。

エマ:(※独り言)だとしたら……だとしたら……わたしは、10年間も片想いをして……?

エマ:(※独り言)本当は進みたかった文学部への道も諦めて、苦手分野を必死に勉強して……

0:ベッドに倒れ込むエマ

エマ:(ため息)……ほんとうに、何やってるんだろう。

エマ:そっか。もうあの頃とは違う、のか……。10年も経ってるんだもんね。……ダニエル……。(※だんだんと眠りに落ちる)

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0:一年後
0:『プロヴァンス大学』合格発表

エマ:う、そ……。

エマ:受かって、る……!?!

エマ:(M)私の受験番号。確かにある。載ってる!!受かった!!難関と呼ばれている『プロヴァンス大学』の薬学部に、受かったんだ!私!!

エマ:(M)勿論、真っ先に報告したかったのはダニエルだった。私は研究室へと走る。急いで急いで、何度も転びそうになりながら、薬学部の研究室へと走る。

0:薬学部の研究室に着いたエマ
0:息切れしている

エマ:はあっ、はあっ、ダニエル!!ダニエル!!いる!?!

0:扉を開けようとし、固まるエマ
0:そこではダニエルが女学生と睦まじく戯れあっていた

エマ:ぁ………(※声が出なくなる)

ダニエル:……ん?誰か来たかな。まずいな。研究員と学生がこんな事をしている所を見られたら。

0:女学生と会話している
0:ダニエルは甘ったるい口調で続ける

ダニエル:ん?……ああ。もちろんさ。誰か来るかもしれない。その方が、興奮するだろ……?君も。

ダニエル:……愛してるよ。アデル。このまま君をここで抱きたいくらいだ。

0:呼吸が浅いエマ

ダニエル:(※入口に向かって)で?誰なんだい?今僕の名前を呼んだのは。僕達の行為を今も覗き続けているのは。

ダニエル:女の子かな?なんなら三人で……っと、それは駄目かい?アデル。悪かったね。君だけにしておくよ。…はは。冗談さ。君だけだよ。

0:何も言わずその場から逃げ出すエマ

ダニエル:ははは。行っちゃったみたいだ。

ダニエル:ん?なんだいアデル?本当に良かったのか、って? (少し間)……いいんだよ。彼女には、俺なんかよりもっと相応しい人間がいる。

ダニエル:これから沢山の出会いを経験して、少しずつ、大人になっていくのさ。……いつまでも昔に縋り付いてちゃ、前には進めないからね。

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0:走って中庭まで逃げてきたエマ
0:泣いている

エマ:はあっ、はあっ、!!なん、なんで、、!!どうして……!!ダニエル!!!

エマ:そりゃ、そりゃあさ、恋人くらい居るかもしれないって、、考えたこともあったよ!?!

エマ:でも、こんなのあんまりじゃんか!!ひどい、、ひどいよ、、!!うわああああああああ

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0:過去回想

エマ:『将来は、ダニエルのお嫁さんになりたいな!!』

ダニエル:『……あ、ははは。そりゃあ、また、困ったなあ。』

エマ:『なぁに~?恥ずかしいの??』

ダニエル:『うぅん。そうだねぇ……。』

エマ:『でも、まんざらでもない。そうでしょ?』

ダニエル:『あはは。(※困ったように笑う)』

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0:現在

エマ:……そっか。そっかあ。……私の初恋は、終わったんだ……。

エマ:……わたし、これから、何を糧に、頑張っていけば、いいのかなあ、、??

エマ:ねえ、、ダニエル、、、この10年の、責任、取ってよお……

エマ:うっ、うわあああああああ、、、!!!(長めに泣く)

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0:一年後

エマ:(M)私はあれから、結局薬学部を蹴り、浪人して文学部へと入学をした。

エマ:(M)今では恋人もいるし、やりたい勉強もできている。充実した毎日だ。

エマ:(M)ダニエルがあれからどうしているかのは、分からない。知りたいとも思わない。

エマ:(M)その程度の気持ちだったんだ、と思う自分と、それで良かったのかもしれないと思う自分の、両方が居る。

エマ:(※独り言・ぼそりと)……でも、あの10年間が全部無駄だったなんて、思いたくないな……。

0:エマの恋人がやってくる

エマ:…あぁ!授業お疲れ様!今日はランチ、どこに行く?……お。いいね~!あそこのサンドイッチ、気になってたんだ!

エマ:(M)――これはどこにでもある、叶わなかった、初恋の話。

0:END

◆補足◆

lumière d'espoir = フランス語で「希望の光」

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joyeux anniversaire. Cher ami.

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