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ヴァナヘイムの千錯万綜【3:2:0】【ファンタジー/シリーズもの】

0:登場人物

オーディン:男。ボス
ロキ:男。科学者・研究者チームのトップ
レギン:男。科学者・研究者チームの天才
ヴェルダンディ:女。強い
フェンリル:女。飼い殺し状態

(所要時間:約20分~30分)

0:過去回想

ヴェルダンディ:あの悪徳政治家をぶっ殺したいの。
ヴェルダンディ:この組織『ヴァナヘイム』と白樺家が敵対関係にあることは調査済み。ヴァナヘイムには毒を調合できる魔女や、それを薬として処方できる薬剤師も居る。人を殺すのに特化したサイコパスな子供や、社会に恨みを持った人間。大量の密売武器に、人間兵器や超能力者まで。
ヴェルダンディ:……白樺家をぶっ潰すには、条件が整い過ぎている。

オーディン:ほう。だから貴様は俺の組織に属したいと。

ヴェルダンディ:そう。

オーディン:何故だ?

ヴェルダンディ:家族をぐちゃぐちゃにされた。許さない。
ヴェルダンディ:白樺家を潰す為だったら、何でもする。

オーディン:人を殺した経験は?

ヴェルダンディ:……無い。だけど、

オーディン:白樺家の人間だったら殺せる、といったところか。

ヴェルダンディ:そう。

オーディン:当然だが、俺の組織に属する限りは、白樺家以外の人間も殺してもらうことになる。貴様はそれでいいのか?

ヴェルダンディ:……最終的に白樺家の人間を殺せるのなら、やる。

0:(少し間)

オーディン:……はっはっは!!

ヴェルダンディ:何が可笑しい。

オーディン:気に入った。貴様のその執着。

ヴェルダンディ:…………。

オーディン:貴様を俺の組織に所属させてやろう。貴様、名を何という――。

ヴェルダンディ:(M)そして俺がボスことT-オーディンから貰ったコードネームは、『U-ヴェルダンディ』。
ヴェルダンディ:(M)ヴァナヘイムの思想など、正直俺にとってはどうでも良かった。
ヴェルダンディ:(M)俺の目的は、白樺家を潰すこと。あの悪徳政治家、白樺 徹(しらかば とおる)を絶望させ、最終的には殺すこと。
ヴェルダンディ:(M)だから俺は――。


0:回想終了
0:現在
0:オーディンの部屋

フェンリル:失礼します。……あれ?オーディンさん。薔薇の香水のような香りが……。どなたかこの部屋にいらしてたのですか?

オーディン:貴様が気にすることではない。

フェンリル:そう…ですか。

オーディン:調度いいタイミングだったのだろう。……調子に乗り過ぎているロキを、窘(たしな)めることができたのは非常に好都合だった。

フェンリル:……また人任せですか。

オーディン:貴様が心臓を突いてくれたお陰で、俺は身動きが取れなかったからな。

フェンリル:またそんなことを言って。怪我なんてとっくに治っている癖に。……いいえ、貴方は、例え最初から怪我をしていなかったとしても、自ら動くことは無かった。

オーディン:知ったような口をきく。

フェンリル:貴方は元々そういう人です。ロキ上官が居なかったら、とっくに死んでいたでしょうに。

オーディン:貴様は俺に、死んでいて欲しかったのか?

フェンリル:……どうでしょうね。

オーディン:ボスを失った組織はどうなる?

フェンリル:壊滅し、皆路頭に迷うでしょう。

オーディン:その通りだ。……俺は、生きているだけで意味を持つ。

フェンリル:だから自らは動かない、と。……ですが、アールヴィル上官のときは別だったでしょう?

オーディン:あぁ、アールヴィルか。あれは最初から、殺すつもりなど無かったぞ。

フェンリル:……どういうことです?

オーディン:俺がアールヴィルを手負いにした後、構成員の「誰か」が殺してくれれば好都合だと思っただけだ。

フェンリル:……全く。呆れます。

オーディン:まあ、それも失敗に終わったようだがな。

フェンリル:……失敗?ヘイムダル上官が殺したのでは?

オーディン:殺されたのはヘイムダルだ。アールヴィルはまだ生きている。

フェンリル:え!?

オーディン:あいつはなあ、「死ねない」んだよ。呪われているからな。

フェンリル:……アールヴィル上官が、ヘイムダル上官を殺すなんて……そんなこと、信じられません!

オーディン:だが事実だ。

フェンリル:……そんな……、ヘイムダル、上官……。

オーディン:いつもの様に泣き叫ばないのか?貴様も、つまらなくなったものだ。

フェンリル:……多くの構成員が死にましたから。もう、慣れてしまいました。……いえ、慣れたというより、心が麻痺してしまっているのかもしれません。

オーディン:それでも貴様の心は壊れない。何故だろうな?……ふっ、貴様は本当に面白い奴だ。

フェンリル:貴方に面白がられる為に、心を保っているのではありません。

オーディン:その心が、壊れる瞬間を楽しみにしている。……こっちに来いフェンリル。――今日も貴様を壊してやるよ。

0:現・組織本部
0:地下施設入口
0:息も絶え絶えなヴェルダンディ

ヴェルダンディ:はあ、はあ、……ここが、現組織本部。地下施設か。生き残るつもりなど毛頭無かったが、生きてしまった以上、頼るしか無いのだろうな。

0:ロキの研究室
0:ぼそぼそと独り言を呟いているレギン

レギン:……無口な女……戦闘部隊……無口な女……戦闘部隊……無口な女……戦闘部隊……無口な女……戦闘部隊…無口な女……戦闘部隊……無口な女……戦闘部隊……

ロキ:うるっせええ!!おいレギン、いい加減にしろよ……。集中できねーだろ……。

レギン:ああ、ごめんごめん。ウルド3号機の開発を、引き続き進めよう!

ロキ:お前はそれで、集中できてんだもんな……。僕にはやっぱり理解できねーよ……。

レギン:それで、ウルドのクローン自体は完成したもんね。後は人工知能を入れるだけだ。

ロキ:……ああ、完成したぞ。ウルドそのままの身体だ。

レギン:それにしても、美人さんだよね。ロキが誘拐してきたんだっけ?ロキの趣味で。

ロキ:そーだよ。悪いか。初めての人体実験の被験者は、絶対美人なお姉さんにするって決めてたんだよ!

レギン:相変わらずの女好きだねぇ。

ロキ:馬鹿野郎!ボスだって女好きだろ?美人に越したことはねえよ。

レギン:まあ、そうかもしれないねぇ。あはは。……あ、ウルド2号機のデータはもう取ってあるから、今そっちに渡すよ。

ロキ:ああ、頼んだ、レギン。

レギン:……無口な女……戦闘部隊……無口な女……戦闘部隊……無口な女……戦闘部隊……無口な女……戦闘部隊……無口な女……戦闘部隊……無口な女……戦闘部隊……

ロキ:おいって!!

0:音も無く現れるヴェルダンディ

ヴェルダンディ:……ここか?

ロキ:うわあ!!お、お前誰だよ!?

ヴェルダンディ:……戦闘部隊・階級Aクラス、U-ヴェルダンディだ。

ロキ:なんだ……生き残りか……

レギン:……無口な女……戦闘部隊…………あ!君だね!?

ヴェルダンディ:何だ。

ロキ:ええ……。本当に無口な女で戦闘部隊だ……。

レギン:フリッグから何か託されていないかい?

ヴェルダンディ:……先生から?

レギン:うん。フリッグから。何か託されているはずだよ!

ヴェルダンディ:それよりも名乗って頂きたい。

レギン:ああ、ごめんね。僕はM-レギン。科学者・研究者チームで、階級は君と同じAクラスだよ。

ロキ:……科学者・研究者チームのトップ、Y-ロキだ。知らねえとは言わせねえぞ。

ヴェルダンディ:……なるほど。白衣からなんとなく想像はついたが、ここは科学者・研究者チームか。

レギン:そうだよ!ここはロキの研究室!それで、フリッグから何か託されて……

ヴェルダンディ:まずはボスに会わせてくれ。

レギン:フリッグから何か託されているはずだよね!?

ロキ:あー……。ボスならこの下の階の奥の部屋だ。

ヴェルダンディ:……助かる。(※立ち去る)

レギン:ちょっとロキぃ!何で逃がしちゃうのさ!無口な女、戦闘部隊だよ!?

ロキ:逃がしたわけじゃない。また戻って来たときに聞けばいいだろ。

レギン:そんなにウルドの開発に集中したいのかい?

ロキ:それもあるが……。レギン、お前もう少し、人との会話というものを覚えろよ……。

レギン:ロキ、やっぱりワルキューレ姉さんと会ってから大人しくなったね。

ロキ:……うるせえ。

0:オーディンの部屋

オーディン:……フェンリル、俺から離れて服を着ろ。

フェンリル:え?あ、はい。どうしました?

オーディン:「とても優秀な人材」が戻って来たようだ。

フェンリル:……とても優秀な人材?

0:ノック

ヴェルダンディ:……ボス。只今戻りました。開けてください。

フェンリル:……あ、本当に人が来た……この声……

オーディン:開けろ。フェンリル。

フェンリル:は、はい!

0:フェンリル、扉を開ける
0:ヴェルダンディが部屋へ入ってくる

フェンリル:……!!やっぱり!!ヴェルダンディ上官!!生き残ってらっしゃったんですね!!

ヴェルダンディ:…………フェンリル?

オーディン:よく戻ったぞ!ヴェルダンディ!…………とでも言ったんだろうな。ふっ、貴様らのところの「シグルズ指揮官」は。

フェンリル:ぐっ……(※耐える)

ヴェルダンディ:……俺もまだあまり状況が掴めていない。白樺家は本当に絶滅したんだろうな?

フェンリル:え、白樺家……?

オーディン:絶滅した。一人残らずな。……まあ、「偽物」ならそこに居るが。

フェンリル:……っ。

ヴェルダンディ:(※フェンリルを見やって)……偽物に興味は無い。……絶滅したなら、いい。白樺 徹(しらかば とおる)は俺の手で殺すことが出来た。

フェンリル:お、とう、さん……

オーディン:貴様の父親では無いだろう!はっはっは!

フェンリル:……仰る通り、です。

オーディン:哀れだなあ!!実に哀れだ!!……良かったなあ、ヴェルダンディ、貴様が嫌悪(けんお)していたフェンリルは、白樺家の本当の娘じゃあなかった!!

ヴェルダンディ:……どういうことだ?

オーディン:偽物だったんだよ!!こいつは白樺家でも何でもない、ただ自分のことを「白樺家の娘」だと信じ込んであの家で生活していた、身寄りのない捨て子だ!!

フェンリル:……っ。

ヴェルダンディ:……シグルズ上官が、取り違えたということか?

オーディン:あの優秀なシグルズが取り違えることは無いだろう。さしずめ、情けをかけたのだろうなあ。…………赤の他人の家を「自分の家」だと思い込み、父親でもない男を「お父さん」と呼ぶ惨(みじ)めな幼子(おさなご)に。

フェンリル:やめて……。

オーディン:お?どうしたフェンリル。何か言いたいなら言ったらどうなんだ?……ふっ、まあ、何も言えまい。

フェンリル:……っっ。

ヴェルダンディ:なるほど。理解した。あの時、身代金が支払われなかったのはそういうことか。

オーディン:よかったなあフェンリル!!これでヴェルダンディから、ゴミを見るような目で見られることも無くなるぞ!!何せ、「偽物」だったんだからなあ!!はっはっは!!ヴェルダンディも「偽物」に興味は無いってよ!!

フェンリル:…………。

ヴェルダンディ:……偽物。

オーディン:なあヴェルダンディ!これで貴様も幾分楽になっただろう?貴様の憎んでいた「白樺家」は絶滅した!

ヴェルダンディ:ボスの言う通りではあるが。……偽物といえど、あの「白樺家」で生活をしていたのなら、ある程度の内部事情は知っているんじゃないか?

オーディン:聞きたいならその「偽物」に聞いたらいい。俺は話疲れた。貴様ら二人、この部屋から出て行ってくれ。

ヴェルダンディ:了解。

フェンリル:……か、かしこまりました!

0:オーディンの部屋を後にするフェンリルとヴェルダンディ
0:しばらく無言が続いている

ヴェルダンディ:…………フレイは?

フェンリル:えっ。

ヴェルダンディ:フレイは居ないのか?

フェンリル:……フレイ上官は、国家転覆計画の後、この施設に来てすぐ亡くなられました……。

ヴェルダンディ:やはり死んだ、か。

フェンリル:ヴェルダンディ上官は、フレイ上官と仲がよろしかったですもんね。

ヴェルダンディ:……別に仲が良かったわけじゃない。世話にはなったがな。

フェンリル:今この施設には、科学者・研究者チームであるロキ上官、レギン上官と、エイル上官。戦闘部隊のシヴ上官。現在は稼働していませんが、アンドロイドであるウルド。そして私と、ボスがいらっしゃいます。

ヴェルダンディ:…………ゲルズは居ないのか?

フェンリル:ゲルズさん、も……この施設に来てすぐ、亡くなられました。それも、ほぼ自殺のような形でロキ上官に逆らって……。

ヴェルダンディ:そうか。…………ゲルズも、読んだんだな、あの手記を。

フェンリル:手記?

ヴェルダンディ:「偽物」に話す義理は無い。

フェンリル:…っっ。た、大変失礼いたしました……。

0:ロキの研究室
0:ロキとレギンが、ヴェルダンディと話している

ヴェルダンディ:だから、俺はフリッグ先生から何も託されていないよ……。

レギン:そんなはずは無いんだよ!「魔女」の言うことは絶対なんだ!

ロキ:おい、レギン……お前、ちょっと落ち着けって。

レギン:これが落ち着いていられるか!「魔女」が言ったんだ、絶対にこの人が何か持ってる!

ヴェルダンディ:(※大きくため息)……おい、ロキ上官だったか?一つ聞きたいことがあるんだが。

レギン:僕の話をちゃんと聞いてよ!

ロキ:あー……。ちょっと黙ってろレギン。何の用だ?

ヴェルダンディ:フレイの死因はなんだ?

ロキ:………………フレイ?(笑)
ロキ:……あー!思い出した!ヴェルダンディ、お前ヴェルダンディか!

ヴェルダンディ:………。

ロキ:フレイの研究室によく通ってたもんなあ!なんだ?友達の近状が気になったのか?

ヴェルダンディ:………友達ではない。それにフレイは死んだと、先程フェンリルから聞いた。

ロキ:はっはっは!そーだったな、そーだったな!お前の質問は「フレイの死因」についてだもんな!

ヴェルダンディ:………何がそんなに可笑しい。

ロキ:そんなに怖い目でこっちを見ないでくれよ~!ヴェルダンディ!美人が台無しだぞ?

ヴェルダンディ:早く答えろ。

ロキ:「絞殺(こうさつ)」だよ。何をトチ狂ったか知らないけどね。T-ゲルズによる絞殺だ。

ヴェルダンディ:………それがフレイの望みだった。

ロキ:は?何言ってんだお前?

ヴェルダンディ:ロキ上官。お前がフレイに投与した薬はなんだ。

ロキ:……相変わらず怖い目!僕がフレイに投与した薬~~??それはね~~特別に教えてやるよ!フレイの友達だしな!

ヴェルダンディ:だから友達ではないと

ロキ:(※被せて)ロキ様特製!!人間を生きたまま目覚めなくする、その名も「植物人間薬」~~!!!

レギン:だからその名前ださいって言ってるだろう?

ロキ:ダサくねえだろ!?超絶かっこいいじゃん!

ヴェルダンディ:……植物、人間……。

ロキ:あれ~?やっぱりお友達が死んだことにショック受けちゃった?いや僕はね、助けてあげようと思ってあの薬を投与したんだよ。他にも呼吸を最低限まで浅くできる薬、血の巡りを悪くする薬、痛み「だけ」は感じるようにする薬、それから……

ヴェルダンディ:…………やっぱり手記に書いてあることと同じだ。

ロキ:あ?お前、僕の話を聞けよ!!

ヴェルダンディ:……フレイを殺したのはお前だな、ロキ上官。

ロキ:だから違うって!フレイを絞殺したのはゲルズだよ!

ヴェルダンディ:…………フレイは「自分がもし植物状態になったらゲルズに絞殺してほしい」とこの手記に記していた。

レギン:なになに?んーと、『敬愛する親友ヴェルダンディとゲルズに贈る』?へー。フレイ、こんなの遺してたんだ。

ヴェルダンディ:…………フレイは、フレイは……。親友でも友達でもないが、組織に来た頃、不安定だった俺の力になってくれた。

ロキ:だから許しませんってか?あっはは!!………………お前、なめてんのか?

ヴェルダンディ:……………。

ロキ:だんまり、か。……組織に逆らったゲルズを殺したのはこの僕だ。僕にはその権限がある!!そう!!ボスと同様のな!!

0:ロキ、ヴェルダンディに拳銃を突き付ける

ヴェルダンディ:………っ。(※少し動揺)

ロキ:……選べよ、ヴェルダンディ。お前最初に会った時から気にくわなかったんだよな。……選べ。ここで死ぬか、僕の愛人になるか。

ヴェルダンディ:……………。

ロキ:ま、美人だから愛人になるって選択肢を残してあげてるだけ、有難いと思えよ?

0:勢いよく部屋に入ってくるフェンリル

フェンリル:ヴェルダンディ上官!!!

ロキ:チッ、フェンリル。何の用だ?危うく撃っちまうところだったじゃねえか。

フェンリル:……ロキ上官。貴方はオーディンさん、いえ、ボスと同じではない。同じ権限なんて持っていない。

ロキ:んだよ、ボスの愛人ごときが!!知った口利いて!!こっちは何年組織に居ると思ってんだ!!

フェンリル:……何年組織に居ようと、ボスは関係なく殺す。そうですよね?そうでしたよね?

ロキ:……っっ。まさか。

フェンリル:ロキ上官の現状を、ボスはあまり良く思っていません。……このままだと貴方、殺されますよ?

レギン:ちょっと好き放題やり過ぎだったもんね。まるで自分がこの組織のトップだ、みたいな態度は僕も良くなかったと思うな。「魔女」が檄(げき)を入れてくれてからは、少し大人しくなって安心してたけど、本質は変わってないみたいだね。

ロキ:……レギン……お前まで……。

0:ロキ、銃をおろす

ロキ:……ったく、何なんだよ、何なんだよ!!じゃあどうしろって言うんだよ!?僕に与えられた使命は何だ!?「優秀な科学者」になることだ!!今までだってずっと、ずっとずっとボスの言う通りに頑張って来た!!一生懸命研究をして、組織に貢献してきた!!この地下施設を作ったのだって僕なんだ!!……そんな事言うなら……どうやって生きるのが正解だったんだよ!!分っかんねえよ!!訳分かんねえ!!なあ!!フリッグ!!教えてくれよ!!フリッグ!!!

フェンリル:ロキ上官。ボスからお呼び出しです。

ロキ:僕は……死ぬのか?

フェンリル:分かりません。

ロキ:僕は……間違ってたのか?

レギン:少なくともロキは優秀な科学者だ。それは間違いないよ。

ロキ:……レギン、ありがとな。お前と一緒に研究ができて良かったよ。……ヴェルダンディ、怖がらせてすまなかった。……フェンリル、ボスのところへ行ってくるよ。

0:ロキが居なくなった、ロキの研究室
0:ヴェルダンディ、レギン、フェンリル

フェンリル:……ロキ上官。

ヴェルダンディ:…………。

レギン:ロキ、殺されちゃうのかな。困ったなあ。誰が僕の研究室の掃除をしてくれるんだよ。

フェンリル:…………。

ヴェルダンディ:…………。

レギン:あ!ヴェルダンディ!このフレイの手記、一通り読ませてもらったよ!凄いねこれ!いろんなことが書いてある!

ヴェルダンディ:………あ。

レギン:「魔女」が言っていた最後のピースは君で間違いないよ、ヴェルダンディ!

ヴェルダンディ:だが、フリッグ先生は関係ないぞ?

レギン:僕ずっと思い違いをしてたんだけど、最後のピースは必ずしも「フリッグから託されたもの」とは言っていなかったんだよ、「魔女」は!

フェンリル:……レギン上官……貴方という人は……ロキ上官が行ってしまわれたばかりだというのに。

レギン:ああ、フェンリルも居たのか。ロキのことは仕方ないよ。人は必ず死ぬ。

フェンリル:……まだ死ぬと決まったわけじゃないですけど。でも、心配とか無いんですか?

レギン:時間が勿体ないよ。せっかく研究したいものの資料が揃ったんだ。僕は研究がしたい。「フリッグの意思」を知りたい。

ヴェルダンディ:…………フリッグ先生の、意思。

レギン:君も興味あるかい?ヴェルダンディ。

ヴェルダンディ:……ああ。フリッグ先生には本当に世話になったからな。俺も、知りたいよ。……研究の力にはなれないと思うが、傍で見させて貰ってもいいか?

レギン:勿論だよ!それに、力になれないってことはないと思う。研究中、その手記を開いていて欲しい!

ヴェルダンディ:……了解した。

レギン:それから、シヴを連れてきてくれるかな?W-シヴ。エイルと一緒にいると思うんだけど……。あ!フェンリル、案内してあげて!

フェンリル:は、はい!かしこまり、ました……。

0:レギンの研究室

レギン:~~♪(※適当に鼻歌)
レギン:楽しみだなあ!やっと知りたかったことが分かるんだ!

0:ヴェルダンディがシヴを抱っこして研究室へ入ってくる

レギン:あ、ヴェルダンディおかえり!あのシヴをここまで抑え込めるなんて、ヴェルダンディは流石だね!僕とロキがやったときは暴れちゃって全然ダメでさ~。

ヴェルダンディ:……事情を話したら快諾してくれた。あのエイル、という少女もな。

レギン:やっぱり女性同士の方が、心を開きやすいのかな?それにしても、ありがとう!
レギン:……それじゃあ、研究を始めよう!

0:オーディンの部屋

オーディン:………………あーあ。疲れた。
オーディン:よく頑張ったよ、貴様は。本当によく頑張った。偉かったな。……この辺りの言葉だろ?貴様が欲しかったのは。
オーディン:……俺と貴様はよく似ていたな。……兄弟のようだと思っていた時期もあった。科学者・研究者チームを任せたのも間違いじゃなかったと思っている。……だから、残念だ。非常に残念だよ。弟なら、一緒にキャッチボールくらい、してくれたって良かったのによお。貴様は研究研究研究で。……可愛げが無いところも、俺に似ていて好きだった。
ロキ:『なあボス!見てくれよ!僕が作った、新しい発明品なんだ!』
オーディン:……ゆっくり眠れ。弟よ。
 


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