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GTSリバリー : カーボン表現のバリエーション

近年のレーシングカーは軽量で強度があるカーボン素材を多用していますし、市販車のチューニング、ドレスアップなどでもカーボンパーツは大人気です。自ずとリバリー制作においてもカーボン表現を施したくなる箇所は出てくるわけで、今回はその技法についてみていきたいと思います。

最も手軽な表現はマットブラック

ミニチュアカーなどで最も手軽なカーボンの表現はマットブラックなりセミグロスブラック(リバリー風にいうとハーフマットのブラック)での塗装となります。

これはGTSのリバリーにおいても有効な表現で、光沢色でカラーリングされた中にマットあるいはハーフマットの黒の領域があると、遠目にはカーボンむき出しだったり、樹脂製のパーツがはめ込まれているようにみえます。

デカールによる表現

次に考えられるのがデカール単体による表現です。

私も色々と作ってみましたが、実物に忠実な繊維の編目を描いたからといってリアリティがあがるわけではなく、案外雑に黒地にグレーの斜線を引いただけのデカールの方がそれらしく見えたりするのが面白いところです。

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カーボン表現のデカールはユーザーデカール実装当初から人気のジャンルのひとつで多種多様なものがシェアされていますので、最終的に自分で作るにしても色々と試してみるとよい経験になるかと思います。

ボディカラーとデカールを使った表現

上記ふたつの表現の特性を合わせ持つ、つまり塗装やシート施工で仕上げられた部分とは異なる質感を持ちつつ、編目が再現されたカーボン表現を行いたいと考えて試行錯誤し、その集大成として作ったのが2015年のスーパーGT岡山テストに参加したRAYBRIGのテストカラー、通称Phase1のリバリーです。

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このリバリーでは下地となるボディカラーには銀色(スペシャルカラー:K1 Liquid Met.)を指定し、その上に斜線のデカール2種を重ねています。

実際のカーボンは光のあたり具合によって異なる向きの斜線がみえたり、時にフラットな色にみえたりします。ボディカラーの銀色が光のあたり具合によって黒く見えたり白く見えたりする、それと明度が一致している斜線は見えなくなり、明度差が高い斜線ははっきり見えるという仕組みでそれを再現しようという試みです。

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この表現、見栄えはよいのですがひとつ欠点があり、リバリーエディター上でデカールを貼り付けるのに非常に神経を使います。

広い面積、複雑な面構成の部分をカーボン表現で覆うとなるとデカールを何枚も貼り継ぐことになります。デカールは「面に合わせる」「カメラに合わせる」いずれの貼り方でも画面の端に行くほど歪みが大きくなるので、異なる方向から貼ったデカールの端と端で模様を合わせるのはかなり難しいです。デカールに透明度がつくと重なりが出ないようにしなければならないため、難易度はさらにあがります。

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前述のRAYBRIGのテストカラーのリバリーでは車体全体をカーボン表現で覆う、しかも入り組んだ箇所も多いスーパーGTの車両ですから、矩形のデカールでは事足りず、パネルラインで分割された範囲をぴったり覆う形状のデカールを用意しました。

デフォルトのボディカラーを活かす

ところでこの記事の先頭に掲出しているスケープフォトのRedBull X2019は紺色の部分にカーボン柄が浮き出ていますが、これまでに挙げたようなカーボン表現を施しているわけではありません。

一部の車両はデフォルトのボディカラーが無塗装・カーボンむき出しであるため、リバリーエディターでボディカラーを指定しないことでそのカーボン表現を活かすことができるのです。

先述のRedBull X2019のリバリーは軽量化のために塗膜を極限まで薄く仕上げた結果、塗装の下にカーボンが透けて見えるという妄想設定で紺のデカールを半透明にしています。

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スーパーフォーミュラSF19もカラーリングとロゴをすべてデカールで賄えばデフォルトのボディカラーの高解像度ですばらしく立体的なカーボン表現をそのまま流用することができます。

ただしボディカラーは編集エリア毎に異なる色を指定できるものの、あるエリアは色を指定するが別のエリアは指定せずデフォルトのままといったことはできないため、ボディを銀色にしたいメルセデスF1のリバリーやメタリックブルーにしたいアルピーヌF1のリバリーではウィングやバージボードなどのカーボン表現も自前でおこなうことになります。

リバリーの印象を決めるのはグラフィックス

カーボン表現についてさんざん語っておいてこんなことを言うのも心苦しいのですが、カーボンに代表される素材・質感表現を盛り込むとリバリーはリッチになるものの、リバリーの印象を決定づけるものではありません。

次回はリバリーの印象を大きく左右するグラフィックス要素、スポンサーロゴの配置について書いてみようかと思います。

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