OUTな奴らのみる世界
ジェットコースターみたいな映画
待ちに待った公開日。
やっとやっと見られたOUT。
ほんとめちゃくちゃ楽しくて最高だった。
ジェットコースターに乗ったみたいな気持ちになる。そんな作品。
まず音がいい。要が三塁から帰る時に単車を走らす。その音が離れてくのを聞きながら「あ、いい音だ」って思った。好きな感じ。
邪魔しないけど、目立たせたいところはあえて他よりデカくて耳に残る。あっちゃんの撃った銃弾は目より耳にこびりついた。
あとカメラワークが好きだった。
特に目黒とたぐっちゃんのところに爆羅漢が攻めてくるところ。アクションシーンが多いって話だったから、ちょっと酔っちゃうかなぁとか心配してたところもあったけど、そんなことなかった。
しかもかなり見やすくて、誰が誰に何をしたかすごくわかりやすいカメラワークだった。どこを映せばダイナミックに見えて、どう映せば流れを殺さないかしっかり考えられてて大好きだった。
またみたいなぁ、早く2回目も3回目も見たい。
まずみた感想はそんな感じだった。
ここからはもっとネタバレありで心に引っかかったところを書いてみる。
不良の友情とは何たるか
OUTはいろんな形の友情が描かれてる。
たっちゃんと要。
要と今井。
要と武藤。
たっちゃんとあっちゃん。
あっちゃんと圭吾。
目黒とたぐっちゃん。
目黒と澤村。
武藤と澤村。
エトセトラエトセトラ。
ありすぎて書ききれない。
こんなにもたくさんの友情が色とりどりに描かれていてびっくりした。しかも一本の映画でこんなに受け取りやすく描けるんだ、って。どれか一つじゃなくて、それぞれを色鮮やかに。
私は目黒とたぐっちゃんの友情がとっても好き。
お互い罵り合う時もあるけど、どこまで言っていいのかわかってる。
お互いのどぎつい発言も、ずっと一緒にいて育ててきた価値観が似通ってるから笑い飛ばせる。
お互いの言わんとしてることが分かるから、ぶつけたって大丈夫という信頼がある。
二人の友情はそんなふうに見える。
要と武藤の無骨な感じもいい。
武藤があんなに懐いてるのは要だからだと思う。
絶対に自分たちを守らんとする人だから、尊敬して慕ってまた自分もその人を守らんとする。
この二人を結ぶものは「斬人」というチームだけど、多分それがなくなってもこの関係は変わらないんだろうとか思わされる。
ひとつひとつ書くとそれだけで論文になってしまいそうだからしないけど、本当に千違万別な不良たちの友情がセリフや演技から伝わる。面白い。
ただ、OUTで描かれる不良の友情はなんだか少し今まで見て感じてきたそれと違う気がした。
何が違うんだろう。そう思いながらスクリーンを眺めてた。
要はたっちゃんに斬人を紹介しながら言う。
「俺でも敵わない」
「最強」
と。
アイビーボウルでパチンコ打ってる圭吾があっちゃんに言う。
「総長が喧嘩するなら、突っ込むのは特攻隊長が先だろ」
と。
今井は信じて疑わない。
「要くんは強い」
と。
少しだけ思う。不良の信頼と信用は重たい。
本人たちはそれを「友達だから」という信頼で片付けるんだろうけど、私にはそれが「圧」に見える。
こういるべきという、圧に。
応え続ける友情
友情は圧だ。
普段から思う。
ただ、それが信頼という形で、あんなに言葉にされるから私はOUTで描かれる友情ひとつ一つがとても重たく感じるのかもしれない。
斬人の紹介の時、すごいかっこいいラップが流れる。圭吾の紹介には「(剣の)道を外れたアウトサイダー」なんて言われる。熱い。
そうか、今から私が見る人たちはほとんどが道から外れたと言われる人たちなんだと漠然と思った。
道を外れたと言われる彼らにとって大切なのは一体何なのか、道を外れたと言われたことがない私には本当のところはわからない。
薄っぺらい私の見解では「プライド」とかそう言うのなのかもな、と映画を見始めた時は思った。
今でも本当のところはわからないけど、少し違うのかもと見終わって思った。
彼らは「そうである」という仲間の言葉を背負ってる。「強い」でも「バカ」でもなんでも。
「そうあるべき」だと言われ、思うその姿を守り続けている。
それもまた、プライドなのかもしれない。
「要くんは強い」
今井からそう言われた要は満更でもない顔しながら、惜しげもなく努力を重ねる。
「特攻隊長は負けない」
その族を印象付ける特隊の長は、その言葉を言い聞かすように喧嘩から逃げることはない。脇腹に穴が空いてても。
「バカだけどクズじゃねぇ」
おじちゃんから何度も言われるその言葉は、たっちゃんを守るようで縛るようなそれは、たっちゃんの中に芯を一本打ち立てる。
「任せたよ」「負けないでね」
信じてくれたように聞こえる、労わるように投げられる総長からの言葉は裏を返せば「負けんなよ」という圧だ。
信じられるというのはこんなにも重たい。
信じてもらうためには、何度もその圧を跳ね除けていく必要がある。
跳ね除けて、屈することなかった先には「お前はこうだから」という友情という名前の圧がある。
彼らは言葉の端々から拾える圧を「友達」という言葉で言ってのける。
そもそも気づいてないのかもしれない、それが圧だということも。
それがないと己が何の名前も持たないアウトサイダーになることも。
ただその信頼に応え続けることだけが「友達」でいられる方法なことも。
OUTの友情は、重たい。
しかも上手いのが爆羅漢からは一切感じない。
ゲバラ三兄弟が兄弟だからとかそういうことじゃなく、上から下っ端まで「利益」でくっついている。
斬人やたっちゃんとは違う結びつき。
だからこそ、たっちゃんを取り巻く斬人や千紘との友情がこんなにも色濃く見えるんだろう。
ハミ出して、それでも生きる。
その言葉の意味が前よりも少しわかった気がする。
千紘の「助けて」
他にも気になったところがある。
爆羅漢に誘拐された千紘が6人で殴り込みにきたたっちゃんに、「達也、たすけて」って言うシーン。
もちろん、誘拐されてるから助けて欲しいよねとかいう常識でわかる範囲の話がしたいんじゃない。
そう言った状況を加味した上で、見た時は私はどつして千紘が助けを求めたのかわからなかった。
皆川千紘は5代目斬人総長の妹でアイビーボウルでバイトしてる。
気が強くてどんな相手にも真正面から向かっていく。けど多分、強いわけじゃない。弱くもないけど。そして何より不良が嫌いで誰かが傷つくことが嫌い。
千紘の役回りはどうしたって損することの方が多いと思う。斬人がいるったって24時間守り続けられるわけじゃない。それを承知であの街で不戦協定の鎹でいる。
現に爆羅漢に攫われてしまうわけだし。
兄が総長だったというそれだけで彼女は「そうするしかない」レールの上を歩いてる。
そんな生き方すら信念のために捧げた彼女がいとも簡単に「助けて」という意味がわからなかった。
意味がわからないなりに考えることにした。
千紘はもう「助けて」と言ってしまったわけだし。
なんで助けて欲しかったんだろう。
彼女はたっちゃんに言う。
たっちゃんを名指して、「達也、たすけて」と。
どうしてたっちゃんなんだろう。
彼女はたっちゃんに助けてもらう必要があったんだろうか。
糸を切るSOS
千紘とたっちゃんのファーストコンタクトは最悪。たっちゃんは犬のうんち踏んでるし。次会うときにはビンタされた。
キムチ片手に焼肉の匂いさせて喧嘩しかけてるたっちゃんは、千紘にとって「意味もなくくだらないプライドのために」暴れて生きる不良だった。
忌むべき存在。そんなもののために兄は死んだから。
ただ、たっちゃんは斬人に出会って、千紘に出会って、何より三塁に来て変わる。
ただ強い不良は、己の行動全てに意味を見出だす。
それは兄の丈くんが持っていた「野望」ではなく、「芯」だったように思う。(原作のネタバレになるから書かないけど)
たっちゃんは一本の芯を打ち立てる。
多分、正直千紘からすれば「馬鹿らしい」ものになってしまうかもしれないけど、それは「意味のある馬鹿らしいもの」になった。
たっちゃんは意味もなくプライドのために手を上げない。
おじちゃんとおばちゃんのため。
斬人にいる友達のため。千紘のため。
何よりそうあるという友情のため。
不良だとしても、これから誰か傷つくとしても、兄の二の舞にはならないし、誰もさせないと千紘が信じるに足るものをたっちゃんは得たのかもしれない。
だから彼女はたっちゃんに、助けてというんだ。
ほかの誰でもなく。
それにたっちゃんは「ケンカのために」大義名分を探していた。要の言う通り。
それがいつのまにか「守るために」喧嘩をするようになった。
千紘はそれを病院で目の当たりにしたんだと思う。
だから切ってもいいと思った。
たっちゃんを縛る、保護観察とか喧嘩しちゃいけないとか、そういう糸みたいのを。
たっちゃんの要に対するあの気持ちとパワーを、彼女が「助けて」というからただの仕返しとか言う意味のないモノにせずに済む。
真意は知らないけど、彼女の「助けて」はたっちゃんにとって起爆スイッチみたいなものだったと思う。良くも悪くも。
そう思うと、彼女が「助けて」と言ったのもすとんときた。
不良が守るために喧嘩をするように、彼女も守るために助けを求めたのかもしれない。
宝探しの映画OUT
まだ一回しか見れてないから全然違うかもしれない。けど、OUTの描く人間関係はなんだかジリジリ熱くて、焦げそうな、それがすごく羨ましくてかっこよく見えた。
今度はもっとちゃんとそこに注目してみるのもありかもしれない。
あと普通に圭吾が千紘を「千紘ちゃん」って呼ぶし、というか圭吾の声初めて聞いたし、圭吾って話すとあんな感じなんだ!ってなったし、圭吾の無口だけどすごく感情豊かなところも見られたし、刺されてしまって倒れるところすきだし、前髪乱れるのもすきだし、乾杯もちゃんとするし、笑うし、焼肉定食になってること気になるし、自分で言って照れるし、木刀長いし、バトルジャンキーなのがわかるところ血だらけで笑う瞬間がカッコ良すぎて、私は将来16歳の不良少年になったら長嶋圭吾に憧れて斬人入ろうって心に決めたし、長嶋圭吾最高すぎて熱かった。
なんかもうとにかく、早く2回目見たいなーと思う。もっと違ったら見方もできるし、たぶんまたここ気になるって思うところができると思う。
こんなにOUTなやつらに会いたくなるの初めてだ。
たくさん見て、もっと魅力を見つけて、楽しみたい。宝探ししながら走るジェットコースターのような映画だった。
またお宝探しに映画館にいく。
ワクワクしながら映画館に行ける。
こんな幸せなことがあるのは嬉しい。
そのお宝がOUTであることも。
17/Nov/23