【転折】

読み止した本が重なりすぎて部屋の隅で瓦解した。
新しい本棚を買おう買おうと思いながら気づけば半年以上が経っていた。
さして焦りもせずどうにか格好のつく具合に本を積み直す。
もはや柱や床、壁といった部屋を部屋として確立させる要素として本が存在している。
節々の背表紙に目が止まる。
この本はどんな内容だっただろうか。
著者は...そうか、この間亡くなったな。
そんなことを回顧する。
本とは不思議なもので人間より賢い。
本来であれば、どんな人間も辿り着けないような叡智を宿している。
我々が手に取れるのは完成した叡智であるが、
著者は叡智の段階を踏んで昇華させている。
不思議とそこには、著者本来の力量を超えたものが生成される。
私は、完成された叡智を何処に帰結させているのかを求めて読み進める。

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