普通ってなんだろう



友人と通話をしていた。

「君は、だいぶ普通じゃないよね。それを自覚してない」




普通って、なんだろう



これは、ずっと私の中にあった。

最古の記憶の園児の頃からあった。

無邪気に遊べなかったし、なんでだろうって考える子供だった。


人が当たり前にしてることと、自分が当たり前と思うことがだいぶ違うのはなんとなくその時から勘づいていた。

けれど、認めたくなかった。

だって、すでにあるレールに乗れば楽だ。

舗装された、道を歩くのは楽だ。

私だって、楽したい。


20年も、もがいてきて、いい加減諦めた。

私は、私の普通は変えることができない。

いくらやっても苦しくなるばかりで、替えることができなかった。

できると思ってた。


何一つ、変わらなくて、

何一つ、報われなかった。


屍が、郊外の一軒家の、小さな、物に囲まれた部屋で横たわっていた。

生きるために必要なものごとをこなす力を失った個体。

こんこんと眠り続け、一日の大仕事は食べて、出すこと。




普通ってなんだろう



普通、というのは私という一人称からみた、当たり前だ。

もしくは、とある社会における多数決的なこうあるべきという考え方。


わたしは普通が良かった。

普通なら、もっと楽に歩めた。

もっと、まともな暮らしができた。

もっと、それらしく人生を歩めた。

普通じゃないから、すべて、選択肢にすら、もつことができない。


それが悲しくて、なんでだろうって悔しくて一通り考えて試してもがいて、

どうしようもないとわかって、諦めた。

できるものなら、したかったよ普通。





普通ってなんだろう



今の私にとっての普通は、毎日を繰り返すことだ。

くりかえし、くりかえし生活をしていく。

そしてくりかえす中で新しいことを一つは含むようにする。

そうすると、くりかえしているのにすこし変化が生まれる。

それを体感するのがたのしい。


今の私にとっての普通は、家にいることだ。

用事は極力つくらない。

週に一回用事があるかないか。

それでも多いかもしれない。

ついでにできることであれば急にやるから、予定を入れない、が正しいのかもしれない。

まあ、月に1~2回はあるほうがいいってことも、分かってきたのだけれど。






普通ってなんだろう



私にとっての普通はわかってきたね。

けれど、一般的というのは相変わらずわからないや。

なぜかも、なんでそれがかれらの普通なのかも、その内容も違いも、いまいちわからない。

それは、スキルみたいに使いこなせるものなんだろうか。




「君は、だいぶ普通じゃないよね。それを自覚してない」



たしかに、そうかもしれない。

思い当たる節はあるよ。

人とこんなに違って、それぞれ違うものだとしても、これだけちがって苦しかったくらいは、普通がちがう。そして、その差も今までぜんぜんしらなかった。

もっと、近いものだと思ってた。


人と人は違うものだから、

家族の中でも性格も好みも考えも違うように

違う家族や地域で育ったから考えも価値観も違うように

受けてきた教育やあたりまえが違うから、言動が違うように

人と人は違うものだから、

私が普通と違うといわれたって、そりゃあそうだよと思ってた。

けど違った。


私はみんなになんか違うねって言われた。


そりゃそうだよ。だって、違う人間なんだもの。


だけど、あなたはもっと違うねって言われた。


ずっとわからなかった。

私が、私として生きてきて、

私を把握するために周りを見てきた。

外から見た私が、私かもしれないと思ったからだ。


そして余計にわからなくなった。

こんこんと眠り続けて、私の普通を見続けてきて、やっと息ができるようになった。

その私の普通は、みんなの普通とだいぶ違うらしい。


ざんねん。

なんてこった。


ここまでとは思わなかった。

なんとなくの違和感や、あそこまで普通に近づけなかった理由がすこし見えた気がした。

こんなにちがうのか…!

とおもっていた何倍も、何十倍も、何百倍も、ちがう。


氷山の一角を、全部だとおもっていた。


こんなにも違うのか。







普通ってなんだろう




私はこれからどうしていけばいいのだろう。

普通がこんなにも違うと、合わせるのなんか無理だ。



「合わせないで、君の思う環境を造っていけばいいんだよ」


そうはいうけれど、どうやって。



「君は君の超理論でなんでもやってきてるよ」


超理論って、なにそれ。(笑)



「君が思うようにすればいいってことさ。先導者にでもなればいい」


まあ、合わせるよりは、楽かもね。





私は、合わせられないほど違う普通を持っているらしい。

やっと、知った。

そしてこれから、やっと気づいていくのだろう。


ぎゅっ、と強く抱きしめられた。

世界中を旅して音楽を奏でる人に。


彼が、何を聞いたかはわからない。

けれど私をみて、私の存在を想い強く抱きしめてくれた。

なにも、言わなかった。


しばらくやさしくつよい抱擁のあとに顔をみると、「大丈夫」という顔をしていた。




普通ってなんだろう





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