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置き去り

嫌でも今を見せつけられる、この世

過去は綺麗な気がして、今は汚い気がする

過去の記憶にはふんわりエフェクトがかかっていて、なんかめちゃくちゃ嫌で死にたくなったことも美しかった気がしてくる


過去をいつまでも左手に持ったまま、でも時は前に前に進んでいる少年


少年の大切な思い出、“ショーケースの中”にある思い出
キラキラ輝いていて素敵なことなんだなぁと思う

“悲しい歌”、これは今。ショーケースの中にはキラキラ輝く思い出があるのに、それと比べると今は悲しいらしい、そんな今




キラキラした思い出を握りしめて、今を悲しいと思うほど綺麗に美化された過去、思い出

自分だけじゃなくて周りに同情されるくらい




少年もいつか前を向く、今を見ていないことにきっと気がつく

両腕を振って走れるようになる


今を生きていないことに気づいて、過去に掴まっていることに気がつく


夕立の後にはきっと前を向いて走れるようになる


過去は過去として心にしまうことができるけれど切ない



ずっと握りしめてきた過去だから


そんな簡単に手放すことはできなくて、瞼の裏に張り付く君懐かしい?ついこの間?



簡単には捨てられない思い出、今まで一緒に過ごしてきた過去に付き纏われる
思い出が自分を過去に縛り付ける
思い出はショーケースの中で輝き続ける、何度も何度も見せられる
嬉しい楽しい辛い悲しい全部全部


何度も過去に引き戻されそうになって今に戻る

もう1度今を生きていないことに気がつくことができる

何度も今を生きる決意をする、そしてまた過去に引き戻される



過去をよくよく見返すと、今と同じように辛い出来事もあったはずなのに、見えるのはキラキラのショーケースに飾られる部分だけだから

けど、辛い時期があったんだと認識して改めて「今」を見つけられる








結局いつ思い出しても思い出は美しいし。




深呼吸して目を瞑ればいつでもあの頃に戻れる


どうしようもなく悲しくなった時には明日への活力、元気をもらえる


初めての場所に行く時は思い出の中の大切な人に勇気づけてもらう





でも立ち止まってるだけじゃダメだから



いつか、今じゃなくてもいいけどどっかでバイバイしないといけない

どんなに綺麗で美しくて素晴らしいことであったとしても、過去に掴まることしかできなくなる前に。






思い出とのお別れは辛い。

幻想だから、自分が信じてきたものだから、宗教だから


でも今を見るためには必要なのは分かる



「今」というこの時は、

汚くて、ダサくて、悲しくて、たまに死にたい



そんなにいいもんじゃないかもしれないけど、今を見て一歩ずつ歩いていきたい、歩いていってほしい



その道筋がいつか絶対に、美しい思い出になってショーケースに飾ることができるようになるから


その日まで生きてみようかな






ショウケースの中に思い出を並べて見せびらかしたり
悲しい歌 歌って気を引いたりしたいよ
ソーダ水揺らして 生まれて弾ける泡を見ていた
意味はないよな 理由もないけどそれもいいな

さあ、走り出せ 七色の少年よ
僕だけが置き去りになってる
夕立のあとの虹が半分で途切れて
なんか切ない気持ちで微熱に酔ってんだ

脚の長い影が歩いても歩いてもまだついてくる
僕のほうを見て笑っているんだ
目蓋の裏側に浮かんだり消えたり
キミは忙しい
懐かしいような ついこの間のことのような

ずっとあれから今日まで
僕はあの日の朝で
繰り返し何度も何度も何度も目を覚まして

さあ、走り出せ 七色の少年よ
僕だけが置き去りになっている
夕立のあとの虹が半分で途切れて
なんか切ない気持ちになるけど
少し潤って色づいた街で
ちょっと満たされた気分の
微熱に酔ってんだ

七色の少年-パスピエ


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