R6 予備試験再現答案 労働法

第1 設問1
1 X組合は、労働委員会に対し、Y学園が会議室を使用拒否したことが支配介入(労組法7条3号)にあたるとして、従来の取扱いで会議室を利用させる命令及びポストノーティス命令を求める救済申立て(労組法27条以下)をする。
2 支配介入の成立要件は、①使用者による、②支配介入行為、③不当労働行為意思、である。
(1)まず、教頭であるBが会議室の出入口を施錠し、X組合の会議室の使用を拒否した行為が、使用者であるY学園による行為といえるか。使用者以外の第三者による行為を使用者に帰責できるかどうかが問題となる。
 使用者以外の第三者の行為を使用者の行為に帰責できるかどうかは、組合に対する日頃の態度や行為者の職務上の地位を考慮して判断する。
 Y学園の校長であるAは利益代表者であるところ、X組合がY学園との間で、部活動の顧問を担当する教諭の待遇改善を議題とする団体交渉を行っていた中で、従来のX組合に有利な取扱いを変更したことからすれば、Aは日頃からX組合を敵視していたことが推認される。そして、職務上Aに近接する立場にあるBが、Aと相談の上で行った上記行為は、Aの意を体してなしたものといえる。
 したがって、Bによる使用拒否は、使用者であるY学園の行為といえる(①)。
(2)次に、Y学園による会議室の使用拒否が支配介入にあたるか。
 使用者は施設管理権を有するから、企業施設の使用を許可しなかったとしても支配介入行為にあたらないのが原則である。もっとも、施設の使用を許可しないことが使用者の施設管理権の濫用といえる特段の事情がある場合には、例外的に、使用拒否も支配介入行為にあたる。
 X組合はY学園の教職員で構成される企業組合であるから、そのミーティング等のためにY学園の会議室を利用する必要性が高い。また、X組合が使用しようとした時間も、午後6時半から1時間程度にすぎず、他に会議室を利用する者もいなかったことから、Y学園に支障はない。この点に関して、Y学園としては、会議室の使用拒否は、X組合に所属していない他の教職員との公平を図る観点から拒否したと反論している。しかし、他の教職員も会議室の利用を申請しており、その使用につき競合が生じているといった事情はないから、かかる反論はあたらない。
 したがって、Y学園がX組合に会議室の使用を許可しないことは、権利の濫用にあたるため、支配介入行為にあたる(②)。
(3)支配介入においては、不利益取扱い(労組法7条1号)と異なり、条文上、不当労働行為意思が要求されていないが、その意思がないのに不当労働行為が成立するとなると、使用者の行為を制限することになるから、不当労働行為意思が必要である。
 X組合とY学園の間の団体交渉において主張が激しく対立している状況で、Aが従来の取扱いを改めて使用拒否していることから、反組合的意図があることが推認される。
 したがって、不当労働行為も認められる(③)。
3 よって、X組合の申立ては認められる。
第2 設問2
1 不利益取扱いについて
(1)Y学園によるZに対する戒告処分は、不利益取扱い(労組法7条1号)として無効ではないか。
(2)Zのビラ配布は、使用者の業務を阻害する行為ではないから、組合活動にあたるところ、Y学園はこれを理由として戒告処分をしているため、Zのビラ配布の正当性が問題となる。
ア 組合活動の正当性は、主体、目的、態様の観点から判断される。
 Zのビラ配布は組合の意思に基づくものであり、また、教員の待遇改善を目的となされたものであるから、主体と目的は問題ない。
イ 態様の正当性については、Zのビラ配布は職員室というY学園の施設で行われており、使用者との管理施設権との抵触が問題となる。
 この点については、第1(2)で示した基準に従い、Y学園がZのビラ配布を許さないことが施設管理権の濫用といえるか否かによって判断する。
 Zのビラ配布は教職員の休憩時間中に、職員室を訪れている生徒等がいないことを確認して行われており、その時間も約10分にすぎないことから、Y学園その他関係者に支障が生じるおそれはなかった。そのため、Y学園がZのビラ配布を許容しないことは、その施設管理権の濫用にあたり、態様も正当である。
ウ したがって、Zのビラ配布は正当な組合活動である。
(3)そして、Y学園は、このZの正当な組合活動の故をもって、戒告処分という不利益取扱いをしている。したがって、不利益取扱いにあたる。
(4)労組法7条は、団結権(憲法28条)の保障を具体化したものであり、私法上の効力を有するから、これに反する行為は無効である。
(5)よって、戒告処分は無効である。
2 懲戒権の濫用について
(1)Y学園によるZに対する懲戒処分は、懲戒権の濫用(労契法15条)として無効ではないか。
(2)使用者は、企業秩序を維持するために、その固有権として、懲戒権を有する。もっとも、懲戒の刑罰類似の性質に鑑み、「懲戒することができる場合」といえるためには、懲戒の種別及び事由が就業規則において定められていることが必要である。
 Y学園においては、就業規則39条に懲戒の種別と事由が定められているから、「懲戒することができる場合」にあたる。
(3)もっとも、懲戒の刑罰類似の性質に鑑み、懲戒事由に該当するかどうかは、企業秩序が乱されたかという観点から実質的に判断すべきである。
 上記のとおり、Zのビラ配布は、Y学園その他関係人に支障が生じないような態様でなされていたため、「許可なく…印刷物等の…配布等をした」にあたらず、懲戒事由を欠く。
 したがって、戒告処分には客観的合理的理由がない。そのため、社会通念上の相当性を検討するまでもない。
(4)よって、戒告処分は懲戒権の濫用としても無効である。
以上 4枚

【感想】
 事例演習労働法に似たような問題があった気がします。

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