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雑文 #75

だんだんSNSで愚痴を言えなくなってきた。
尖った感じの意見とか。
それはたぶん、実際の知人友人が増えたことによるのかもしれない。
リアルにお会いしたことのない不特定多数に向かってつぶやいてた頃に戻りたいと思うことがある。

別にNHKスペシャルを毎週観ているわけではないけど、先週の人工知能のやつと今週の「そしてテレビは戦争を煽った」、特に今週のは素晴らしかった。
クリミア半島で起こっているロシアとウクライナの間の戦争を題材にしているのだが、戦争の悲惨さを伝えようとかいうありがちな意図ではなくて、テレビがどのように人々の感情を喚起するかということを探るのに終始していた。

ロシアとウクライナ、どちら側でも取材し、どちら側の意見にも偏らない姿勢が良かった。
当の自分がそのテレビなのに、ロシアやウクライナのテレビ局が「プロパガンダ」として結果的に事実と異なることを伝えている例も紹介している。
全部が好きなわけじゃ決してないけど、時々NHKはすごいことをやる。

ネットで「クリミア 戦争」とかググればザクザク動画が出てくるのかもしれないが、それはしたことのない私にとって、衝撃的な映像がいっぱいあった。
実にたくさんの人が、爆撃にあった場所の様子や負傷した人、亡くなった人、などの動画をスマホなどで撮り、ネットにアップしている。
その中の、不確かな情報が堂々とテレビで伝えられ、あっという間に広まり、人々の愛国心を高めたのである。

怖い。
メディア…特にテレビの在り方については、日本も他人事ではない。

私の涙腺が決壊したのは、そうやって「敵は悪者」と煽り士気を高める一方で、ウクライナのビルが爆破された際に居合わせた市民が皆で協力して窓からの脱出を試みている動画を観たときである。

そう、それが本来の姿なんだよ、と思った。

そのとき市民は敵味方関わらずとにかく助かろう、助けようとしていた。
周りにいた人も、窓から降りる足場を持ってきて、中にいる人を助けようとしていた。

また、父親がテレビの影響で親ロシア派になり、ロシアへ渡った親子がいた。
息子はウクライナのテレビ局で働いていて、子供が生まれたばかりなのだが父親にはテレビ電話でしか会えない。
孫と会わせたいし、自分も会いたい。
でも政治的信条の違いのせいで会えない。
その電話での息子の複雑な表情をカメラはリアルに捉えてた。

物事には裏と表があるのにテレビは一面的にしか伝えない。
斧は人を殺すこともできるし薪を割ることもできる(とあるロシア人が言っていた)

報道っていうのは、できるだけ中立に伝えて人々に考えさせるという姿勢を保つべきじゃないのかな。

国にはそれぞれ立場があり、それぞれの立場に立てば必ずそれぞれが正しいわけで、真実はわからない。
けれど私は「暴力はいけない」ということだけは確信している。

などと番組を観ながら後半泣き続けていたわけだが、この番組を観た人がどれくらいいただろう。

いや、別に観なきゃいけないわけじゃないんだけどね。
土曜の夜にウクライナ人の遺体なんて見たくない人が多いだろう。

けれどもテレビがテレビの欠点を伝えるということ、私にはとても重要なことに思えたのです。

ツイッターはバレーボールか海街ダイアリーで溢れてた。
私は海街を少し見てみたが、あれ?この話知ってる…と思い少し経って漫画を読んだことがあると気がついた。
漫画はなかなかおもしろかったような記憶があるが、どうやら私は是枝作品が苦手なようで、間もなくテレビを消した。
是枝作品は誰も知らないと空気人形を観たことがあって、なんかあんまり好きになれず、一生懸命作っただろうに申し訳ないが、奇跡も観ていないのである。
映像の質感がどうも私にはダメなようである。
以前ラジオで是枝監督がトークしているのを聴いたことがあるが、話の内容は興味深かったのだけれど、なんかこの人好きにはなれないな、と思った。
やはり作品と人となりは結びついているんだと思う。

てなことを、海街を観ている人たちがたくさんいるツイッターで言えなかったので、ここに記しました。

今日のNHKスペシャルを作った人のことは、まあこの一作品でだけじゃ断定できないけれど、好きになれそうな気がした。

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