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雑文 #28

師走です。
テレビを観ているととたんにムードが、モードが、変わっている気がします。

「今年の〜」みたいな発表の中で、「今年売れた本」というランキングがあったが、一位はピースの又吉さんの「火花」で、それ以下10位まで小説はひとつもないんだと言う。
少し驚いた。

「火花」は読んでいない。又吉さんのことはとくに好きでもきらいでもないので、わざわざ新書を買って読むことはなかったわけだが、どうやらこの作品は年配の方々には不評で、私や又吉さんの世代の人々には概ね好評のようだ。私の巷の評判だけど。

又吉さんは芸人として成功しているわけで、へんな話、収入は充足していそうだ。

しかし、「本が売れない」と囁かれているこの時代に、他の新鋭の小説家の方々はどうなのだろう?
私もあんまりお金が使えない身なんで、新書は滅多に買えないし、もともと乱読タイプではないから貢献できないのだが、随筆やノンフィクションより断然小説愛読者である。
だから小説がもっと読まれることを望む。

だけどそう言えば本屋に行くとノンフィクションコーナーみたいなのが多いよね。
私はタイトルをざっとしかほとんど目もくれないのですが、キャッチーなタイトルの本が競い合うように次々と出ている感がある。

「⚪︎⚪︎の仕方」とか「××にならないために」とかそういういわゆるHow To本とか。
(みうらじゅんの「ない仕事の作り方」だけはおもしろそうだ)
新聞を開くと広告もすごい。
読まずに失礼かもしれませんが、よく皆こんなもん読むよなぁと思うことが多いです。

私は、自分とものすごく性格が合致しているかかなり尊敬している著者のHow To本はためになるかもしれないけど、世の中のほとんどの人がそうではないから、そんなの読むの時間の無駄だという考えを持っている。まぁ勝手な持論です。
それよりいい小説のほうがずっと人生のためになると思うのです。
自分にとって、つまらなければそれは時間の無駄かもしれないが、なぜこの小説が評価されているのか考えることは意味がありそうだし(「ドン・キホーテ」とかそうでした)、素晴らしい小説を読むことに掛ける時間はかけがえのないものだと思う。
素晴らしい音楽のライブにお金や時間をかける価値があるように。

随筆もいいけど、読者として私は虚構が好きなんだよなあ。物語が。長いお話が。人の話が。

村上春樹氏が高校時代に図書館で借りていた本のリストが神戸の新聞に公開され、プライバシーの侵害だと問題になっている。
そりゃ問題だ。

しかし私はファンなので、一瞬とても知りたいと思った。
でもはたと気づいた。きっと、国内外の様々な小説の名作を、片っ端から読んだのだろうと。
だって私すら、中高生のときはいろんな名作に夢中になっていたのだから。
読んだ数は春樹氏より遥かに少ないんだろうけれど、それでもすごい勢いと情熱で読んでいた記憶がある。そんな時期なのよね。

その頃村上春樹作品にも出会ったが、むしろそれは娯楽だからそんなの読んでないでもっと勉強チックなのを読みなさい的な空気があった。
いまはノーベル賞候補の作家なのに!ライトノベル扱いだったのである。
だから親に隠れて読んでいたのだ。隠れキリシタンみたいに。
隠れて読むほど魅了されていたのだ。
物語がどうなるのか気になって、明け方になるまで読んじゃったりしていたのだ。(そして遅刻し国語教師にしょっちゅう怒られていました)
いまは残念ながらあのときみたいな情熱はない。

若者よ小説を読んでくれ。
物語は奥が深い。想像力を養うために最高の利器なのだ。


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