サヴォア邸、呉羽の舎、ニテロイ現代美術館 Viz制作のメモ

出たがり(フリーランスも兼業なので当然)ですのでxRArchiアドカレ早くも二回目のマスをかっさらったmozでございます、今回は表題の制作一段落、製作中の著名建築リアルタイムビジュアライズの制作についてメモを記して行こうと思います。

どなたかの参考になれば。

なお、すべての著名建築ビジュアライズで目的としていることは
「限られたリファレンス内での再現精度計測」です。

最終的な目標は、現存しない建築物や都市の再構築化に貢献することを目指しています。


Case.1 : Villa Savoye / Le Corbusier

●制作目的は?
「各室の詳細図や一部室一般図は入手できないが、ネット上に多数の画像リファレンスがある建築物を、建物を訪問した経験がない人間がどこまで再現できるか」

●制作使用ツールは?
・モデリング → CINEMA 4D
・ランドスケープ → CINEMA4D UnrealEngine4
・UV展開 → CINEMA 4D
・マテリアル作成 → UnrealEngine4、SubstanceDesigner
・ライティング → UnrealEngine4
・各種ギミック実装 → UnrealEngine4
・UI → Adobe Illustrator CC
・起動時モーション → Adobe AfterEffects

●リファレンスは?
・大枠の図面(一般的な立断面図)
→ 建築のしくみ 住吉の長屋/サヴォア邸/ファンズワース邸/白の家


→ instagram、Flicker、GoogleStreetViewに投稿されている写真
・周辺環境
→ GoogleStreetView、GoogleEarth

●モデリング・マテリアル制作手順
リファレンスの「建築のしくみ」書籍を参考にC4Dで躯体周りをモデリング
上記の画像リファレンスwebサイトやサービスから、ディテールの確認、建具や階段情報、図面表記のない室の情報を画像を元に制作。

→特にサヴォア邸は大枠寸法がわかっている上にタイル箇所が多いので室寸法や建具位置の逆算にはあまり困りませんでした、大枠の躯体図とタイルから追い出した寸法値誤差がある場合は按分したり、場所によっては画像のタイル数量値を採用するなどで対応。

→屋内外建具についてはリファレンス「建築のしくみ」を三角スケールで計測、いわゆる分一(ぶいち)で大まかな寸法値を算出

→細かい設備系の寸法値の当たりは、画像リファレンスにある写真で、洗面器の横にいる人たちの腰の位置や足の長さから当たりをつけ、C4D上でマネキンをおいて逆算しています(サヴォア邸に関してはタイルや大まかな図面があるのでそこまで苦労しませんでした。)

→リファレンスに使用した画像は、ざっくり見積もって1000枚程度、これはサヴォア邸が見学可能で建築物としてはかなり著名なこともあります。

→周辺、ランドスケープ周りは、GoogleStreetView画像を下敷きにして当たりになるオブジェクトを制作、この場合は車路部分を適当なボリュームを制作して、ランドスケープマテリアルを塗布、敷地内高低差はGoogleEarthの高低差算出機能(全く正確ではない)を当たりに見栄えがいい程度に制作しています。

→コルビュジェ家具 これはカッシーナや他webサイトで具体的な寸法図が出ているのでそれを参照

→UI これはヒストリアさんの「SolidVision」を参考に、


『PCに触れる人なら問題なく触れる』を目指して制作しました。
UIカラーはサヴォア邸に使用されている壁面色を参照しています。

●最も大変だった箇所、対策
・いうまでもなくBluePrint(以下BP)
→当方エンジニア、プログラマ経験皆無なので「ブーリアンってなんぞ?」からスタートしました、これは実践とトレース、トラッキングあるのみです。
やりたい機能に近そうなUE4の動画をひたすら視聴し、全く同じことを写経します、おそらく全期間合計で5~60チュートリアルはやったはず、中には複数回同じものを。

・UE4での最適化
FPSがでない、当初β版はVRだとFPS50を割っていたはずです、7月に公開後、10月にα版を公開するまでほとんどすべてのモデル形状をやり変えています。(主にリトポ、後述のライティングに対応するため)

顕著に効いたのがカリングとドローコールの調整ですね。





EPICさまのこちらの記事を参照しました。

具体的には、制作当初は屋内外の壁面モデルや床、天井部材は同一オブジェクトとして、マテリアルスロットを複数持たせて配置していましたが、こうするとほとんどすべての画角やシーンで不要なデータ(中には2K解像度テクスチャ張り込みオブジェクトも)が表示され続けます、解決方法を知らずアーティファクトや光量不足を解消すべくガンガンライトマップの解像度を増加させたりビルドクオリティを上げたりしたものの効果的にはならず、むしろFPS低下がネックに(一時期FPS20を下回りました)

対策のために、内外壁を分けてディレクショナルライトの当たる外側のライトマップ解像度を512までに、内側は暗部は2Kまで許容するなどで対策しました。

その他、東西南北で壁を細かく分節する、ライトマップの継ぎ目が出ないように、壁面の構成はいわゆる「突きつけ」は可能な限り排除、「留め」納めを意識して制作しました。

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あとかなりFPSを持っていったのがラジエータでした、こちらはInstancedStaticMeshで対策ができたのでめでたしめでたし(最初はC4Dクローナーを固めてそのままおいてました、おそろC)

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と、ざっくりとはこんなところでしょうか。
DLはこちらからどうぞ↓



Case.2 : 呉羽の舎 / 白井晟一

●制作目的は?
「全室に渡り詳細図が存在するが、画像リファレンスがまるでない、存在しても白黒写真がほとんどの建築物を再現できるのか」

●制作使用ツールは?
・モデリング → CINEMA 4D(継続中)
・ランドスケープ → 未着手
・UV展開 → CINEMA 4D(継続中)
・マテリアル作成 → 未着手
・ライティング → 未着手
・各種ギミック実装 → 未着手
・UI → 未着手
・起動時モーション → 未着手

●リファレンスは?
・大枠+詳細図面
→ 木造の詳細 (3)

→ GoogleStreetView、GoogleEarth(学生時代に気合で探した、が個人邸なのでお察しください。)

●モデリング制作手順
リファレンスの「木造の詳細 (3)」書籍を参考にC4Dで全室ディテール含めモデリング、マテリアル周りは図面情報から表現予定。

モデリングに関してはほとんど全室の図面がこちらの書籍に存在しているので建築関係者なら問題はないはず、とはいいながら書籍内にもある通り、かなり特殊だったり難しい納まりが多数なので、自分の腕試しも含めてトライしています。

現状モデリングは母屋は終了、書屋は60%程度、玄関は未着手、といったところです。
図面情報のある建築のモデリングは時間をかければできることなので、現時点で特段困難だったところはないですが、図面理解に時間がかかったぐらいですね。

今後想定されるのは、マテリアルの質感をいかにして追い込んでいくか、が肝なのかな、というところです。
サヴォア邸でライトマップの作り方、UV割を学習したので、こちらはモデル分割などは当初から意識的に制作しております。

例のごとくアウトプットはUE4の予定。

来年4月までにはフィニッシュしたいですね。
個人邸なので完成しても公開できないのでご了承下さい。

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Case.3 : Museu de Arte Contemporanea de Niteroi / Oscar Niemeyer

●制作目的は?
「図面が殆どない、あっても概念図、大まかな並立断面図(購入すればあるかもしれません、買ってません)、画像リファレンスもサヴォア邸に比べると体感1/5以下、矩型部材が少なく、建物自体も流線型で再現根拠、当たりにできる部材数が極端に少ない建築物をどこまで復元で追い込めるか」

●制作使用ツールは?
・モデリング → CINEMA 4D(継続中、90%終了)
・ランドスケープ → UE4(継続中)
・UV展開 → CINEMA 4D(継続中)
・マテリアル作成 → UE4(継続中)
・ライティング → UE4(継続中)
・各種ギミック実装 → UE4(継続中)
・UI → 未着手
・起動時モーション → 未着手

●リファレンスは?
・建築全般
→ webサイトで入手できる設計概念図(大まかな平面寸法が記入されている図、立面・断面の寸法は未記載)
→後ほどwebサイト画像サンプルで、一部分だけ断面寸法情報が存在する図面を発見
→ instagram、Flicker、GoogleStreetViewに投稿されている写真
→ トリバゴやレストランレビューサイト、ウェディングのwebサイトより地下のレストラン画像リファレンス入手
→ 上記の複合でこちらで想定、想像
・周辺環境
→ GoogleStreetView、GoogleEarth

●モデリング制作手順
とにかく上記のリファレンス群を行き来しながら、C4D内でモデルを作っては調整し、を繰り返して追い込んでいきました。
そもそもリファレンスで使用している平面情報のある図面が正しいのかわからないので、画像リファレンスと行ったり来たり…

●最も大変だった箇所、対策
現状モデリングしか完遂に近いものはないですが、
連装窓、アプローチのスロープ、地下レストラン形状全般、大空間のR天井+梁
ですね。

連装窓はGoogleStreetViewの画像をC4Dに取り込み、C4D側のシーン画角をあわせて窓枚数を調整しました、結局5°ピッチで連装窓が配置されていることがわかりました。

アプローチスロープはもう…気合です。
と冗談は置いといて、こちらもStreetView参照です、スロープ上にいる人たちの腰位置を目算で想像して、マネキン設置で対応してます、スロープは階層構造になってる部分があるので、その部分もマネキンを配置してスロープ天井高を算出しています、ね、簡単ですね。

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コルビュジェのモデュロールの逆算ですね。

地下レストランはニテロイ現代美術館でリサーチかけても全くリファレンスが出てこなかったので、突然ひらめいてレストラン名で検索すると結構出てきたのでディテールがめんどくさいだけでそこまで難しくはないですね。
発想の転換が大事ですね。

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大空間のR天井と梁、これはもう…気合、マジで気合、嘘ですスロープ同様です。
実はスロープより先に完成していましたが、時間はこちらのほうがかかったので後述しました、4F展示空間にR梁が表しになっているので、StreetView+マネキン配置で寸法を詰めていきました。

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結果的に購入できる図面があることを教えてもらい、参考までにサンプル画像を見た際にこの大空間の実寸法が判明したのですが、この時点で誤差40mmまで追い込めていたので、図面は買わず、全て完成後に答え合わせしようとワクワクしています。

今後苦労しそうなのはランドスケープ周りですかね、単純に物量の問題かな。

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あとはサヴォア邸でのBPが汚かったので、どこに出しても恥ずかしくないBPをくみたいな~と言った感じです。

どなたかの参考になれば幸いです。


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