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染めヲタ2022–2023

染め納め

大晦日です。
前回の投稿を見返したら、去年の2月でした。
あれ以降、いかに怒涛の日々だったのかを物語っていますね、、、。
前回の投稿では、面白い人になりたい。面白い人とは自分の好きなことに一生懸命なオタクである。と書いていました。

私はまぎれもなく染めのオタク街道まっしぐらで歩んで来たと、2022年も大晦日になり、ようやく胸を張って言えます。
なぜならば、ようやく自分が目指してきたデザインで染め上げる方法がわかったからです。
2年間調べ続けてきた情報が、すべて繋がって一気に疑問が解消された感覚です。
年末は染めの悪夢も見て、このトンネルはいつまで続くのだろうとも思いましたが、今を逃したらまた秋になるまで製作が出来なくなるので、
死にものぐるいでついさっきまで試していて
ついに、この技術に出会ってから2年間夢見てきたものが出来て、感動しています。
まだ上には上がいますが、あるレベルまでマスター出来たと思います。
ようやく染め納めです。祝い酒を飲みながらようやく振り返ります。

しっくりきた「染めヲタ」

11月、バーで働く友人に、お店が落ち着いている時間に染めの基本的な方法を伝える約束をしたら、
なんだかんだと周りの人たちも参加してくれることになりました。
染めの楽しさや美しさを、自分だけでなく外でいろんな人に感じてもらいたいとずっと思ってきたのが、思いがけず実現することとなりました。

その時に、どういう方向性で時間を共有するのがいいかなあと考えました。
ワークショップという言葉はちまたに溢れているし、「教える」というのも
おこがましいと思ったので、エンターテイメントとして楽しんでもらえるスキルシェアの会にすることにしました。
私が出来ることは私がシェアするし、他に強みがある人は、別のことをシェアしてくれたら嬉しい。そういう循環する時間を共有したいと思いました。
その名も「染めヲタ談義vol.0」
今後も続けられるよう、練習させてもらうことも含めて0回目としました。
楽しかった人は投げ銭をしてね、というカジュアルな会です。

そんな訳で3時間半くらいかけて、ヲタトークと
みなさんにも参加してもらえるように簡単な染めや、化学反応の実験などをしたところ、予想外の盛り上がりを見せました。
半分は若い世代の男性で、それもまた興味深いところでした。

フィードバックとしては、こんなにしっかりと座学的な内容を教えてもらえると思っていなかったとか、マジックショーみたいで面白かったとか、
もっと人に教えることをやっていったほうが良い、続編希望!!などのお声を頂きました。投げ銭も沢山してもらい、本当に嬉しかったです。

自分一人で日々作業をしていると当たり前のことが、知らない人からすると面白く、染めに対する興味のある人が思っていたより多いということが私の大きな学びでした。
というわけで、オタクの道はしっかりと歩めているようです。


染めとは?

なんど聞かれたか分からないくらい聞かれてますが、何度でも語ります。
ここで改めて、私の言う「染め」とはなんなのかお伝えしたいと思います。
なぜかというと、多くの人は染めといえば藍や茜などで染液に浸けて染めるというイメージが強いためです。
染めと一言だけ伝えると、なんか地味で自然派なやつ、、、ですよね?みたいな?という方が多いですよね。その気持ちもよく分かります。
ただ、日本的な草木染めでも鮮やかな色合いは出るんですよ。

いわゆる日本でいう「草木染め」というのは世界の染めの技術の中のほんの一部でしかありません。

いわゆる草木染めのイメージ


ボタニカルコンタクトプリント


私が研究しているのはボタニカルコンタクトプリントという方法です。
まず草、葉、花などの植物を生地の上にレイアウトしていきぐるぐると巻いてから紐などで結ぶことでプレスをかけ、蒸す・茹でるなどをして加熱して色を定着させます。
(この手法はエコプリントとも呼ばれますが、エコであるか否かはそれぞれの考え方があると思います。
私はエコを第一目的として始めたわけでは無く、植物の美しいデザイン、アートの表現方法としてこれを選んでいます。)


この手法の面白いところは、写真のように葉脈など細部まで、植物の形が残ること、
そして、植物そのものから出た色で染めているということです。
染めの原理は世界共通のため、日本の「草木染め」で使う材料も使います。
一般的な煮染めは大量の水を火力を使うのに比べ、この方法はそれを少なくでき、かつデザイン性が高いのも魅力です。
この技法で作られた服を初めてインターネットで見つけた時に衝撃を受け、
染めの世界へと足を踏み入れることとなりました。

チュートリアル

加熱前
加熱後

作品を見た方の多くは驚かれるとともに、どうなっているのか分からず混乱する方が多いため、あらためてまとめていきたいと思います。
(日本の染め技法の中で植物の柄を表現する場合、ステンシルのように形を彫って型を作り、彫ったモチーフの部分だけ色が染まらないようにします。)

私の実験を見た人は知っていますが、使っているのは摘んで来た植物、媒染といって色素を生地に固定する役割を持つアルミや鉄といった金属の水溶液、
加熱用コンロ、水。これだけです。

デザインをより美しくするために、別に煮出した染液(茜などのいわゆる草木染め用の染料)で背景に色付けすることもあります。
人によっては葉を染液にしばらく漬け込むことで、その色を吸収させてから蒸して定着させますが、私は人工的に感じるため、それもしていません。

多くの植物にはタンニンという成分が含まれています。
とくにどんぐり、くるみ、栗、落花生など殻の出来るの樹木やもみじなどカエデ科の樹木には豊富に含まれており、そのタンニンと鉄が結びつくことで暗色の輪郭が生まれ「プリント」されます。

樹木でなく地面から生えている草や花の多くはタンニンを含んでいませんが、それでもオレンジコスモスなど、ともて美しい色が出るものがあります。
オレンジコスモスの場合はカロチノイドが豊富なため。
また不思議なことに、見た目が薄い色に見えてもよく色が出る草は、今のところ100%薬効があります。見つけたときは名前が分からないため、念のためちぎって香りを嗅ぐようにしています。
後から調べると薬草だと分かります。
加熱している最中も、とても良い香りがします。

このように、染めに使える植物はごく一部なため、それを探したり入手するのが大変です。お花屋さんに行ったら綺麗な色が沢山あると思う方が多いですが、そのほとんどは色が染まらないのです。
世界の染色家がガーデナーでもあるのはそのためです。

綺麗な色ならみんな染まるの?植物の選び方


この半年間じっくりと身の回りの植物を見てきて、プリントに使用できる植物の見分け方は感覚的にわかるようになりました。
もしかしたら理論としてどこかにまとまっているかもしれませんが、
私はまだ探していません。
もしそうした本を入手したとしても、国が違えば気候や生態系が違うので、あまり意味がないと思っているからです。
よく観察することと、実験してみる、その繰り返しによる情報の蓄積が大切です。
同じ植物であっても摘む季節によって全く色が出なかったり、出る色が変わったりします。ほんの数日の差でも違いが生じることもあるし、
フレッシュのものとドライのものでも違います。
一般的な草木染めでもそうですが、多くの人が躊躇するのはそうした面倒くささゆえだと思います。
私はその意外性を楽しめるタイプのようです。

料理と同じで、染めにも沢山のレシピがあります。基本的なさしすせそは共通でも、バリエーションは多岐に渡るため、私自身もまだまだ知らないことがあります。
例えばボタニカルコンタクトプリントのベーシックなレシピでは加熱時間は1,5時間とされていますが、様々な方法を繰り返すうちに、その時間だと長すぎて色が消えてしまうものもあることに気が付き、植物それぞれの「スイートスポット」があると知りました。

慣れてくるとある程度は平均してイメージ通りにできるようになりますが、ほんのすこしのさじ加減で変わるため慎重に、
でも時にはあえて違う方法にチャレンジする勇気も大切です。
このテクニックは確立されてからまだ20年くらいで、
それ以降も多くのアーティストが試行錯誤して日々新しい方法を見つけています。失敗は成功のもととは、本当にその通りであると多くの方が実証しています。
これまで何度も膝から崩れ落ちるような思いをしましたが、諦めないで答えを探し続ければ必ず見つかると、今は言えます!
同じテクニックを使った素晴らしいアーティストが世界中にいますが、知名度のある人のワークショップはとても高価で、レシピの中でも1番大事な
部分は決して公開しないので、(その気持ちはもちろんよくわかります!)基本のキ以外は、独学していくしかありません。


下準備も含めると一度の染めのために2日ほどかかるため、なるべく失敗や無駄を減らしたいですが、向き合った分だけ結果に繋がると感じています。
だからこそ集中できる時間をどうやって確保していくかが悩みどころ。
とくに秋〜冬のはじめは染めに適した植物が沢山!
これを逃すとまた来年となってしまう為、とにかく追われていましたが、
必死にやってきて本当に良かったです。


この1年でやってきたこと


日本ではまだやっている人が少なく、やっていたとしても非常に簡易な方法と思われるものばかりで、独学でやるしかないと腹をくくって2年。正直つらいと思ったことは沢山あります。
染めに集中するために生活の環境も変えました。
実は前回の投稿してから何も書いていなかった間、
独学の答え合わせとして関東圏では珍しい草木染め専門のブランドで働いていました。そこでは最小限の設備でどれくらいの受注ができるかとか
草木染めのニーズなどを知ることが出来ました。
染めの知識については知っていることばかりで、正直なところ働いているよりも自分で学んだほうが圧倒的に速いと実感したため、今は別の仕事をしながら制作しています。
草木染め業界では割と認知度のある会社だったので入ってみたことは良かったし、その上で再び独学を選んだことは間違っていなかったと感じています。



また、自然に囲まれた場所に引っ越してきたことがスキルを大きく向上せてくれました。あの時、東京に住み続ける決断をしていたら、答えが見つからずに挫折していたはず。
そう思えるまで時間がかかりましたが、今は良かったと思います。


いま。そしてVISION

草木染めの会社を辞めて新しい環境にすこし慣れたらすぐに、秋からは染めに使える植物が増えるため、怒涛の実験に次ぐ実験の日々で、ようやく先ほどイメージ通りのものが出来上がったところ(2年前に見た、まさにあの作品にそっくり!という出来)で、感動と燃え尽きのため
来年の目標については年が明けてからゆっくり考えたいと思いますが、
私の目指す「染め」とは
ポップ、リラクシング、エレガンス、ユニーク
身につけた人が豊かな気持ちになり、よりよい1日になるようなデザイン。
ONE  OF A KIND(1点物)を持つしあわせを感じてもらいたい。

服飾(革製品ふくむ)に限らず、インテリアなどにも使って頂けるものを作っていけたらと考えています。
音楽や舞台芸術などの衣装や装飾などもしたい!
まだまだ研究の日々ですが、たまにスキルシェア会が出来たら良いなと思います。

大きくは
人と自然を繋ぎ癒す人「自然藝術家」を目指して型にとらわれない活動をしていきます。
植物染めはフィトテラピーやカラーセラピーに通ずる活動でもあると感じています

海外の作家さんたちの製作現場を見にいきたい!
そしてヲタ談義したい!


ボタニカルコンタクトプリント以外には、アイスダイという草花や染料を凍らせて融解時に染めるテクニックや、空き瓶に染料と生地、水を入れて太陽熱で染めるソーラーダイ/ジャーダイなど省エネルギーな方法や、
日本的な煮染めを利用したグラデーション染めその他の手法でアーティスティックなデザインを目指しています


住む場所も含め制作環境は悪くはありませんがベストではないため、これからも探したいと思います。もともとは海の近くに住みながら働きたいというところから、
染めにつながっているので。
あとやっぱりそろそろ車の免許を取った方が良いですね。
ワークショップ的な何かとか展示とかするにも、運べないし、、、、。

あとは、現実的なはなし、
通年制作できるよう季節にあわせて集めた葉や花のストックをしないといけません。
今より大きな生地を染めるには、さらに設備も整えなければなりません。
簡単な縫製は自分で出来るよう習うつもり。
このあたりは是非いろんな方からの知識をお借りしたいです!
取り急ぎは、今の環境で出来ることから形にしていきます。

それにしても2020年から相変わらず激動ながら、
一筋の光が見えてきました。
来年が楽しみです。
今年お世話になった皆様、本当にありがとうございました。
素敵な出会いを沢山いただきました。
来年も祈りを込めながら、一生懸命に染めと向き合っていきますので、応援どうぞよろしくお願いいたします!









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