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おでかけ日記(大阪・中崎町)

中崎町に行くと、雑貨屋の八割が臨時休業している。定休日ではない。行くつもりだった店も、行くつもりのなかった店も全て臨時休業している。
この手の雑貨屋はたいてい長細い古民家で営まれている。壁は古びた暗色の木材で、玄関口も不自然に小さく、窓もない。「店」であることをひた隠しにしていて、GoogleMapを頼りに歩く訪問者を素通りさせることに全力を注いでいる。小道を何度も行ったり来たりさせて訪問者の体力を奪い尽くしたあとは、メモ用紙にボールペンで書いた「臨時休業」の文字を見せて最後の気力を奪うだけだ。
とあるカフェギャラリーに行こうとしたが、GoogleMapが示す場所に行っても壁しかないし、電話もつながらない。架空のギャラリーを地図に載せれば訪問者が死ぬまで小道を行ったり来たりするはずだと考えた者がいるのだろう。

町を訪れる人を苦しめるよりも、飲食物を提供して対価を得る方が生産的なのではないかと考える人もいて、そういう人は白い建物でカフェをやっている。
「兎の杜」は兎をコンセプトに据えたカフェで、店内には兎のぬいぐるみや置物があるが、そこら中にいるわけではない。要所にほどほどにいる。ベンチの真ん中に3匹とか。スイーツも甘さ控えめが主流になってきているし、兎もほどほどにいる方がいいのだ。

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