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「 風流 」


片耳の白い黒猫は古い1.7m程のブロック塀の上を歩いている。日当たりの悪い隣地との境界線にあるため鮮やかな緑の苔が上にも横にもモフモフとくっついている。苔を避けながらざらついたセメントの天端の上を歩いていく。20m程歩いた折り返し地点の手前で風が吹いた。黄色の落葉を巻き込んでいる。ヒラリ、ヒラリ、舞い踊り、塀の下の砂利に落ち着いた。黒猫はその様子をじっと見つめて、前を向き、また歩く。曲がり角で隣のブロック塀に40cmジャンプした。先に行くほど翳り湿り気を帯びている。途中に赤いモミジが静かに佇んでいる。暗く光は届かないがモミジが赤い灯篭のように映えている。苔も露を光らせる。顔を上げれば雲の流れる青空がほんの少し見える。風が流れると書き「風流」。知ったかぶりをした人間の愚かな自己満足。こんなもので人間は茶を飲むのかと、塀にかかる枝をくぐり抜け悲哀を込めながら尻尾で葉を揺らし通りすぎた。モミジが数舞、散った。
また風が吹いた。






思考回路

これは大事な話・・・さてさてどこをどう回るから回路というのか・・・
振り出しに戻るのか・・・

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