素敵な言葉多分雪国

素敵な言葉
草木に滴る朝露も見えぬまだ朝日の低いうちから
朝の始まるときを感じるのが、なき子は好きだった。
頰の凍むような冬の朝がお好きだった。
女たちの囀るような声の中
強張り切った心を解きほぐすように
尖った声
床に額突き
少女の面影がそこかしこに滲む皮膚の柔かそうな顔は

豊かな黒髪は一糸の乱れもなく穏やかな川と流れ、小ぶりな目も鼻も口も、菩薩が化身したかと思うような整いぶり、袖の先からのぞいた指先にある小さな薄紅色の爪は、早咲きの梅の花弁よりも愛らしい。

ひねくれた様子もまた夜にしか咲かぬ花のように婉美である。

積もりたての雪よりも、咲いたばかりの花よりも柔かな手のひらに己の手を取られた感触はあまりにも甘美で

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