漢検準一級自作問題 2021年9月26日作

問題

Q1 読み 1点×30問
(音読み)
1 喧嘩で(剣呑)な雰囲気を醸す修羅場と化した。
2 七堂(伽藍)が揃った大寺院を訪れる。
3 国会議員が答弁に対し(柳眉)を逆立てている。
4 (亦声)の意味を調べてもピンと来ない。
5 (盤陀)は金属同士の接合などに使われる。
6 ドクダミやスギナなどの雑草を(揃刈)する。
7 (彪蔚)な器を買う。
8 母親と数年ぶりに(禰祖)に訪れる。
9 中国に来た理由は(秦腔)を鑑賞したいからだ。
10 蝶の観察で(鱗粉)が手に付く。
11 昨日食べた(牡蠣)の所為で腹痛を患う。
12 (春韮)を使ったたまご料理が好きだ。
13 酒と醤油には(麹菌)が使われている。
14 月は昃き、(鳴珂)は動く、花は連なる繍戸の春。
15 生薬として使われる(茜草)。
16 形振り構わず(凛乎)とした態度をとる。
17 この寒さを(祁寒)と称せずして何と言う。
18 丁度(牝馬)が台頭し始めた時代だ。
19 生前の悪行を(浄頗梨)鏡で映し出す閻魔。
20 動物を使う占いとして(羊肝卜)が挙げられる。
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(訓読み)
21 先日樹立した新政府の(弥栄)を祈る。
22 2021年の干支は(辛丑)である。
23 息子はもう(廿)になってしまった。
24 (鰍)は杜父魚とも書く。
25 目上の人に(阿)る。
26 天符「雨の(磐舟)よ天に昇れ」
27 DIYの一環として(檮)を再使用する。
28 いかならむ時にか妹を(葎生)の汚なきやどに入れいませてむ。
29 (鞠)と手と歌は公家の業。
30 旧都一の(伶)の記念館を訪れる。



Q2 表外読み 1点×10問
1 (詔)を承けては必ず鎮め。
2 季節の移ろいを感じさせる(一枚)の落ち葉。
3 (雷)がすぐ側に落ちて吃驚する。
4 生身の魚介類は(中)る可能性がある。
5 女子生徒が先生に(科)を作っている。
6 どこか(心)悲しそうな表情。
7 近所にあるお城の(台)にのぼる。
8 (祇)が祀られている神社。
9 期待という名のプレッシャーに(気圧)される。
10 (故)に彼を論うのは早計だ。



Q3 熟語の読み 1点×10問
ア 1(諮諏)・・・2(諏)う
イ 3(晦冥)・・・4(冥)い
ウ 5(奇矯)・・・6(矯)る
エ 7(宮娃)・・・8(娃)しい
オ 9(舛馳)・・・10(舛)く



Q4 共通の漢字 2点×5問
1 祖父の( )回忌に行く。
1 ( )艶な容姿をした稀代の大魔女。
2 棚ぼたでお年玉を貰い( )外の僥倖である。
2 父は暇があれば釣りに行く程の太公( )だ。
3 ( )目に晒されるのを恐れる。
3 駑馬も( )駕と言うので努力を惜しまない。
4 あの科学者は他の追随を許さない( )異だ。
4 いち早く号外を伝える( )敏たる報道機関。
5 中( )を刺激し、疲労回復をはかる。
5 徒競走中に転んで擦過( )を負う。
[カイ・コウ・ジュウ・シュン・ショウ・ボウ・ユウ・リョウ]



Q5 書き取り 2点×20問
1 (ナスコン)を基調とした浴衣。
2 地球の(チョウセキ)力は月によって生じる。
3 (ケイカク)が取れて性格の成長を感じる。
4 祭りで孫に(リンゴアメ)を買う。
5 (カンジ)として笑う石原陸軍中将。
6 明鏡止水の境地に達した老僧侶の(エゲン)。
7 (カンブツエ)とは所謂花祭りのことである。
8 雇用形態について社長に(クカン)する。
9 (フウヨウ)荻花、秋瑟瑟たり。
10 澱粉に(ヨウソ)液を浸すと反応が起こる。
11 (オトサ)えて羽根の羽白し松の風。
12 神棚に(サカキ)を供える。
13 エリザベス女王の(タイカン)式。
14 (サクラガユ)を作る為に小豆を買いに行く。
15 神宮から聖霊の(カンジョウ)を受ける。
16 墓地で見た(リンカ)を怨霊の仕業と恐れる。
──────────────────────
17 未来(エイゴウ)の愛を誓った鴛鴦夫婦。
18 救世主の(エイゴウ)に信者が喜ぶ。
19 聖人ぶっている彼は生粋の白(ムク)鉄火だ。
20 (ムク)の木の苗木を植える。



Q6 誤字訂正 2点×5問
1 我が家の周囲に鬱叢と繁茂する這柏慎を眺め、いい加減刈り取ろうと重い腰を上げる。
2 江戸時代の百姓の騒擾により木破微塵になった祖先の邸宅の遺産を調べるべく、東京から遥々京都にまでやって来た。
3 権威ある一族の末裔として神からの恩寵を享受していた巫女が、身分を隠蔽し与伽として遊廓で働いていた事が暴露された。
4 朴念仁な性格と言えるであろう彼女の相合を崩した時に見せる水際立った無邪気さに惚れた。
5 高熱と下痢を伴う疫病の蔓延は勇名轟く部隊の士気を俄かに阻相させた。



Q7 四字熟語 2点×15問
(1)
1 〇〇暮楚
2 〇〇謎離
3 〇〇一宇
4 〇〇双葉
5 〇〇碩学
6 一夜〇〇
7 高軒〇〇
8 天香〇〇
9 金烏〇〇
10 虹梁〇〇
[えんが・ぎょくと・けいか・けんぎょう・せんだん・ちょうか・ちょうしん・つうじゅ・はっこう・ぼくさく]
──────────────────────
(2)
1 梅の花の別称。
2 極めて珍しい宝物。
3 刹那的な出会いと別れ。
4 陰湿な人相。
5 祖国滅亡の愁嘆。
[(狐狸)妖怪・(和氏)之璧・麦秀(黍離)・光陰(如箭)・(氷肌)玉骨・(蜂準)長目・朝秦(暮楚)・社燕(秋鴻)]



Q8 対義語・類義語 2点×10問
(対義語)
1 犀利
2 直線
3 侮蔑
4 徹夜
5 擾乱
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(類義語)
6 不精
7 神童
8 道楽
9 出鱈目
10 富士山
[こうたん・しょうけい・じんぜん・そうしん・ちんぶ・ついろ・ねいけいじ・ふようほう・ほうとう・ようちょう]



Q9 故事成語 2点×10問
1 兎に(サイモン)。
2 (コウロ)上一点の雪。
3 天機(セツロウ)すべからず。
4 (ハクトウ)新の如く、傾蓋故の如し。
5 (コチョウ)の夢の百年目。
6 朝風呂(タンゼン)長火鉢。
7 (カンコクカン)の鶏鳴。
8 (コキン)の悲しみ。
9 罌粟粒の中に(シュミセン)あり。
10 (オンリョウ)恭倹譲。



Q10 文章題 2点×5問 1点×10問
(A)
 医者は彼の先に立ちながら、廊下伝ひに或部屋へ行つた。その部屋の隅にはアルコオルを満した、大きい硝子の壺の中に脳髄が幾つも漬かつてゐた。彼は或脳髄の上にかすかに白いものを発見した。それは丁度卵の白味をちよつと(ア.滴)らしたのに近いものだつた。彼は医者と立ち話をしながら、もう一度彼の母を思ひ出した。 「この脳髄を持つてゐた男は××電燈会社の技師だつたがね。いつも自分を黒光りのする、大きいダイナモだと思つてゐたよ。」彼は医者の目を避ける為にガラス窓の外を眺めてゐた。そこには空罎の破片を植ゑた(1.レンガベイ)の外に何もなかつた。しかしそれは薄い(イ.苔)をまだらにぼんやりと白らませてゐた。

         (中略)

     四十四 死

 彼はひとり寝てゐるのを幸ひ、窓格子に帯をかけて縊死しようとした。が、帯に(ウ.頸)を入れて見ると、俄かに死を恐れ出した。それは何も死ぬ刹那の苦しみの為に恐れたのではなかつた。彼は二度目には懐中時計を持ち、試みに縊死を計ることにした。するとちよつと苦しかつた後、何も彼かもぼんやりなりはじめた。そこを一度通り越しさへすれば、死にはひつてしまふのに違ひなかつた。彼は時計の針を(エ.検)べ、彼の苦しみを感じたのは一分二十何秒かだつたのを発見した。窓格子の外はまつ暗だつた。しかしその(オ.暗)の中に荒あらしい鶏の声もしてゐた。

     四十五 Divan

 Divan はもう一度彼の心に新しい力を与へようとした。それは彼の知らずにゐた「東洋的なゲエテ」だつた。彼はあらゆる善悪の彼岸に悠々と立つてゐるゲエテを見、絶望に近い羨ましさを感じた。詩人ゲエテは彼の目には詩人クリストよりも偉大だつた。この詩人の心にはアクロポリスやゴルゴタの外にアラビアの薔薇さへ花をひらいてゐた。(カ.若)しこの詩人の足あとを(2.タド)る多少の力を持つてゐたらば、――彼はデイヴアンを読み了り、恐しい感動の静まつた後、しみじみ生活的宦官に生まれた彼自身を軽蔑せずにはゐられなかつた。
(芥川龍之介『或阿呆の一生』より)

(B)
まずすばやく鯉を捕え、これにむしゃぶりついてから、それを考えても遅うはない。鯉は何故なにゆえに鯉なりや、鯉と(キ.鮒)との相異についての形而上学的考察、等々の、ばかばかしく高尚な問題にひっかかって、いつも鯉を捕えそこなう男じゃろう、お前まえは。おまえの(ク.物憂)げな眼の光が、それをはっきり告げとるぞ。どうじゃ。」確かにそれに違いないと、悟浄は頭を垂れた。妖怪はそのときすでに鯉を平げてしまい、なお貪婪そうな眼つきを悟浄のうなだれた頸筋に注いでおったが、急に、その眼が光り、咽喉がゴクリと鳴った。ふと首を上げた悟浄は、咄嗟に、危険なものを感じて身を引いた。妖怪の刃のような鋭い爪が、恐ろしい速さで悟浄の咽喉をかすめた。最初の一撃にしくじった妖怪の怒りに燃えた(3.ドンショク)的な顔が大きく迫ってきた。悟浄は強く水を蹴って、泥煙を立てるとともに、愴惶と洞穴を逃れ出た。苛刻な現実精神をかの獰猛な妖怪から、身をもって学んだわけだ、と、悟浄は顫えながら考えた。

 隣人愛の教説者として有名な無腸公子の講筵に列したときは、説教半ばにしてこの聖僧が突然饑えに駆られて、自分の実の子(もっとも彼は(ケ.蟹)の妖精ゆえ、一度に無数の子供を卵からかえすのだが)を二、三人、むしゃむしゃ喰べてしまったのを見て、仰天した。
 慈悲(4.ニンニク)を説く聖者が、今、衆人環視の中で自分の子を捕えて食った。そして、食い終わってから、その事実をも忘れたるがごとくに、ふたたび慈悲の説を述べはじめた。忘れたのではなくて、先刻の飢えを充たすための行為は、てんで彼の意識に上っていなかったに相違ない。ここにこそ俺の学ぶべきところがあるのかもしれないぞ、と、悟浄はへんな理窟をつけて考えた。俺の生活のどこに、ああした本能的な(5.ボツガ)的な瞬間があるか。(コ.渠)は、貴き訓を得たと思い、跪いて拝んだ。
(中島敦 『悟浄出世』より)






















答え

Q1 読み
(音読み)
1 けんのん
2 がらん
3 りゅうび
4 えきせい
5 はんだ
6 せんがい
7 ひゅううつ (ひょううつ)
8 でいそ
9 しんこう
10 りんぷん
11 ぼれい
12 しゅんきょう
13 きくきん
14 めいか
15 せんそう
16 りんこ
17 きかん
18 ひんば
19 じょうはり
20 ようかんぼく
──────────────────────
(訓読み)
21 いやさか
22 かのとうし
23 にじゅう
24 えびすがお
25 おもね
26 いわふね
27 きりかぶ
28 むぐらふ
29 まり
30 わざおぎ



Q2 表外読み
1 みことのり
2 ひとひら
3 いかづち
4 あた
5 しな
6 うら
7 うてな
8 くにつかみ
9 けお
10 ことさら



Q3 熟語の読み
ア 1 ししゅ・・・2 と
イ 3 かいめい・・・4 くら
ウ 5 ききょう・・・6 いつわ
エ 7 きゅうあい・・・8 うつく
オ 9 せんち・・・10 そむ



Q4 共通の漢字
1 幽 (幽回忌・幽艶)
2 望 (望外・太公望)
3 十 (十目・十駕)
4 俊 (俊異・俊敏)
5 傷 (中傷・擦過傷)



Q5 書き取り
1 茄子紺
2 潮汐
3 圭角
4 林檎飴
5 莞爾
6 慧眼
7 灌仏会
8 苦諫
9 楓葉
10 沃素
11 音冴
12 榊
13 戴冠
14 桜粥
15 勧請
16 燐火
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17 永劫
18 影向
19 無垢
20 椋



Q6 誤字訂正
1 叢→蒼 (鬱蒼)
2 破→端 (木端微塵)
3 与→夜 (夜伽)
4 合→好 (相好)
5 相→喪 (阻喪)



Q7 四字熟語
(1)
1 朝秦 (朝秦暮楚)
2 撲朔 (撲朔謎離)
3 八紘 (八紘一宇)
4 栴檀 (栴檀双葉)
5 通儒 (通儒碩学)
6 検校 (一夜検校)
7 寵過 (高軒寵過)
8 桂花 (天香桂花)
9 玉兎 (金烏玉兎)
10 鴛瓦 (虹梁鴛瓦)
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(2)
1 ひょうき (氷肌玉骨)
2 かし (和氏之璧)
3 しゅうこう (社燕秋鴻)
4 ほうせつ (蜂準長目)
5 しょり (麦秀黍離)



Q8 対義語・類義語
(対義語)
1 椎魯
2 羊腸
3 憧憬
4 蚤寝
5 鎮撫
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(類義語)
6 荏苒
7 寧馨児
8 放蕩
9 荒誕
10 芙蓉峰



Q9 故事成語
1 祭文 (兎に祭文。)
2 紅炉 (紅炉上一点の雪。)
3 洩漏 (天機洩漏すべからず。)
4 白頭 (白頭新の如く、傾蓋故の如し。)
5 胡蝶 (胡蝶の夢の百年目。)
6 丹前 (朝風呂丹前長火鉢。)
7 函谷関 (函谷関の鶏鳴。)
8 鼓琴 (鼓琴の悲しみ。)
9 須弥山 (罌粟粒の中に須弥山あり。)
10 温良 (温良恭倹譲。)



Q10 文章題
(書き取り)
1 煉瓦塀
2 辿
3 貪食
4 忍辱
5 没我
(読み)
ア た
イ こけ
ウ くび
エ しら
オ やみ
カ も
キ ふな
ク ものう
ケ かに
コ かれ

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