ヴァサラ幕間記〜フェスタ編

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【異世界転生あるある】転生した世界の住人とトラブルになる雰囲気

第7世界モブ達と新たな人物

 2人でファーストフード店から出て公園を通りがかった瞬間、友人が立ち止まった。

 「…さっきは良くわからないとか言ってごめん…いや、いるわ」
「いる?」
友人が見ている方を見てみると、確かに、いる。
 赤い髪の人が虚空に向けて何か話している。
「私はヴァサラ軍四番隊隊長、エンジンビャクエンだ」

 エンジン…イントネーション的に円陣かエン神だろうが、名乗っているようなので神の方だとは思う。そして、名前はやはりビャクエンのようだ。
 闇の帝王とかいうのと戦い意識を失ったらしく、第7世界と言われる別の世界(多分ここ)に転生したらしい。
「え。ちょっと待って。何、怖い怖い。ちょ、早く行こ」
友人は言っているが、私は2回目ということもあり、ビャクエンさんのよく分からない話に多少耐性ができていた。
「いや、気になるし、もうちょっとだけ聞かせて。…あ、帰っても大丈夫だよ」
「…聞いてくの?じゃあ付き合うよ。変な人だと危険だし…」
 友人は渋々とだったが、帰ろうとした足を止めて私と一緒に物陰に隠れてくれた。
「あの人もいるじゃん。えっと…赤い服の和尚?…ああ、エイザン和尚って言うんだ」
 
 そうそう、そう言う名前だった。

私も思い出しながら、続きの会話を聞く。

「ここは一体…どこなのでしょうか」
 ビャクエンさんが言うのに、
「東京ですよ」
と私は独り言で答える。
「皆目検討がつかん」
エイザン和尚が言うのに、
「東京だって」
と友人も1人呟いている。

「天国とも地獄とも言えぬ」
さらに和尚は言うが、もしかしてここが彼らの概念的天国や地獄だったとしたら、私たちの存在意義が問われる話だ。
 そんなことを考えていたら、友人が伝えてくる。
「なんか殿っていうのがいるらしいよ」
「殿とか…時代劇でしか聞いたことないんだけど」
 その殿は外の世界というところに降り立ったらしい。
「手がかりは…〝第7世界〟」とビャクエンさんが言っている。

 東京…なんだけどな…

 さすがに教えてあげたくなったものの、他の世界についての話になり、和尚が
「我らが知るこの世界は広大な世界のほんの一部だと!」
と力を込めて言っているのを聞いていると、何となくその腰を折るのも申し訳なくて教えるのをやめた。
「〝あり得ない〟と言うことはあり得ないのだと…‼︎」
などと、この世界があり得ない世界だという感じで言っているが、私たちにしてみれば、それはあなた方ですよと言う話だ。
 そうこうしている内に元の世界に戻れる戻れないの話になり、今のままでは愛する者が住む世界が消えてしまうとか言っているので、まだその設定は残ってるらしい。

「ビャクエン殿、これはとどのつまり」
和尚が言っているのを聞き、「とどのつまり」と思わず復唱してしまった。
それを実際に話し言葉で聞くのは初めてで逆に新鮮だ。
「難度Sランクの特別任務じゃ‼︎」

 じゃ…?

 ビャクエンさんの言葉遣いもたいがい変わっているのだが、和尚の言葉遣いも変わっている。

そして、
「今私たちにできることをしよう」
と言い、2人で公園を歩き出した。
 どうもこの世界の住人との接触を試みるらしい。
だとすると、見つからないようにするのが私たちの難度Sランクの任務だ。
「我々の住む世界とはまた一風変わった文化ですね。不思議な感覚です…」
とビャクエンさんが言うのに対して「…懐かしい」と和尚が割と大きい声で言うので、まさかこの世界に来たことがあるのかと思ったら、そうではないらしい。彼らのいた場所で、新たな世界を冒険し切り拓いた話が始まった。
 日本人らしき名前の人や中国っぽい名前の人と一緒にいたらしく、それも気になると言えば気になるが。

 新たな世界を冒険し切り拓く…?

 どれだけ未開の世界なのだろうか。その方がとても気になる。
アメリカ開拓時代などに思いを巡らせていると、
「うわ、あの住人と接触するか…」
と友達がつぶやいた。

「何だ…⁉︎この禍々しい気は⁉︎」

 禍々しい…?

「まさかこれは…〝闇の帝王〟カムイか⁉︎」
と和尚も驚愕して言っている。

 その方もいらっしゃるんですか⁉︎

 非常に魅力的な二つ名だとさっきから思っていたので、どんな人なのか興味大アリだ。
「いやいや、帝王いないって。あれ、ここら辺でばっかケンカしてるヤンキーだよ」
なのに友達が冷静に言う。

 でも禍々しい気を放つヤンキー…?どんだけ…?

 木の影で休むか寝てるかしていたらしい禍々しい気のヤンキーだが、見たところ、ただの全身黒服の男性だ。いや、見る人が見たら禍々しいのかもしれないが。
 禍々しいヤンキーは、ビャクエンさんと和尚を見ると、
「ケンボー?KG⁇」と一瞬驚くが、「ああ、そっくりさんか」と踵を返して帰りだした。

 多分、違うのでは?

思っていたら、
「ッてオイィ‼︎‼︎なんでこんな顔似てる奴がいんだよ‼︎!」
とセルフツッコミセルフボケをしている。
「声でか!」と、驚いた友人が耳を塞いだ。
「…何だ急に」
と少し引いているビャクエンさんに全面同意だ。
 ヤンキーはその音量のままに
「I’m 住んでるJapan, 英語わかる⁉︎」と言いだした。
 今までずっと日本語で話していたのに、なぜ唐突に英語で話しだしたのかが謎だ。そしてなぜそんなに喧嘩腰なのかも謎だ。

 だが「オメーら外国人か⁉︎案内して欲しいのか⁉︎」と言っているのを見ると、根は親切なのだろうか。
「お前ら何!?宇宙人!?」と禍々しいヤンキーから言われて「う、宇宙?」と言っているので、あちらの世界では宇宙はないらしい。
 ついでに言うと、宇宙について説明しようとしている和尚の言うことは、多分、房中とか女体の宇宙とか言うやつであって、絶対に違う。
 何だと思ってるんだよ、と言うヤンキーのセリフに、私は頷きまくった。

 去って行こうとするヤンキーに「頼む!力を貸してくれ‼︎」とビャクエンさんが言っている。変なプライドを持たずにそう言えるビャクエンさんは多分、できた人なのだろう。
 なのにヤンキーは「お前おもしれぇな」と言ったかと思うと、何と言うことだろうか。ケンカが始まってしまった。
 ちょっと意味が分からない。

 気になりすぎて全然帰れないよ。
思っていると、友人が私の袖をチョイチョイと引いた。
「ねえねえ。火の極みとか言ってるよ。極みって、無念の極みとか言う時のアレだよね。何かの名前じゃなかったよね」
「うん、そうだと思うけど…」
 しかし、ビャクエンさんの構えは堂に入っていて、いかにも何かが出そうなのだ。

「極み」って技名っぽいよね。

 和尚も「ビャクエン殿…!」と、それは止めておいた方が、という顔をしている。
「赫灼炎…」
唱えだしたので、何か出るか!?とドキドキしながら見ていたのに!
そのまま殴られてしまった。

 出ないのかよ!

 と、突っ込んでしまった私たちは、多分悪くないと思う。
さすがの禍々しいヤンキーも動揺しているようだ。

 しかし、このヤンキーは禍々しい割に親切なようで、謝りながらビャクエンさんにスポーツドリンクをあげている。
 さらに、2人が困っていることに協力する態勢だ

 おそらくビャクエンさんは、この前手紙で読んだことを説明したのだろう。
ヤンキーが「アリタノマチ」と言っている。
 友人が私を見た。
「…そんな、御徒町みたいな所あったっけ?」
「てか、ナントカマチってそんなある?」
和尚が
「何だあ、ユウラクチョウと読むのではないのか!」
と言っているのを聞いて、私たちは頭で漢字を変換した。

 いや、有楽町で合ってますよ⁉︎

「アリタノマチですか、ユウラクチョウだと思ってました!」
とビャクエンさんも言っている。これはマズい。2人がありもしないアリタノマチに向かってしまう。
 笑い声が聞こえ、「ありがとう」「こんなの簡単だよ」と一件落着した体になっているが、全く解決していない。

 友人と私は顔を見合わせた。

〝7月29日にユウラクチョウに行かなければ、クリエイターとか言う人のゲームに参加できませんよ〟

 と、私たちはあの謎人物達に言いに行くべきなのだろうか。
しかし彼らにとっては全く他人の私たちがそれを言いに行っても怪しくないだろうか。
そして禍々しいヤンキーに絡まれないだろうか。

 問題だ。
これが今の私たちの、難度S級の大問題である。


 7月29日(土)13:30〜15:00  よしもと有楽町シアターへ

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