2023年12月27日「ウォンカとチョコレート工場の始まり」

ロアルド・ダールの小説「チャーリーとチョコレート工場の秘密」
……の前日譚です

モル氏はいわゆる厄介ファンなので
ダール作品の映画だヤッター!からの
オリジナルストーリーと知り恐る恐る観に行った勢なのですが
(ごめんなさい)
ウンパ・ルンパにはじまり小学生の自分が魅入られたダール作品の要素がスクリーンの細部に至るまで詰め込まれており
それらがさらに現代の映像・音響技術で迫力満点に表現されて
令和に新規ダールありがとうございます……!と拝む気持ちで劇場を後にできました
ファンタジーとリアルが融合した優しい世界観は「パディントン2」に
ミュージカル的な音楽+動きや色彩の鮮やかさは「グレイテストショーマン」や「ロケットマン」に通ずる好みさでした

警察や教会への賄賂さえもチョコが牛耳る
仁義なき「製チョコ三国志」世界観の街に
身一つで上京したウォンカ青年
いきなり借金背負わされたり(どうぶつの森…)
悪のチョコ会社三つ巴に命を狙われたりしながらも
聡明な少女ヌードルを相棒に魔法のお菓子屋さんで一旗あげる
というあらすじです

魔法やハプニングの描写は「ぼくが作った魔法のくすり」であったり
意地悪ジジババのジットリ感や洗濯部屋の秘密基地感は「おばけ桃の冒険」であったり
凶悪なのにどこか間抜けな悪役は「魔女がいっぱい」であったりと
ダール作品の「ならでは」要素が絶妙に揃った世界観に浸れます

特筆したいのがヒロインのヌードルとウォンカ間が対等な友情で結ばれていることです
本作における「愛」をウォンカと母→ヌードルと母の相似形にしたことで
物語のテーマがとっちらかることなく美しくまとまっていると思います
ダール作品の魅力としてモル氏的に強く推したいのがこの「対等な友情」表現です
「チャーリーとチョコレート工場の秘密」ではチャーリーとワンカさん
「マチルダは小さな大天才」ではマチルダとハニー先生
「魔女がいっぱい」では「ぼく」とおばあちゃん
という、年の差や立場が明らかに異なる関係の相棒が強い絆で結ばれています
本作は「聡明ゆえに現実を諦めてしまった少女」という、「マチルダ」に近いヌードルが相棒ポジなのですが
前述の年の差に加え、ウォンカはさながらジャスミンをホールニューワールドするアラジンみたいな振る舞いをしているので
「不遇な少女とそこから連れ出してくれる王子様」
という構図にしてロマンス方向に舵を取っても物語としては不自然ではないと思うんですよね
でも本作ではあくまで「愛」のテーマはを二人とそれぞれの母間に据えていて
「ああ、ダール作品のこういうとこが好きなんだなあ」としみじみしました

あと迫力ある映像という点だと
ウォンカのチョコレート店、武闘派修道士500人と動物大合戦、地獄のチョコ責め処刑といった
つよつよなシーンのインパクトはありつつも
「ダールらしさ」から逸脱しない塩梅にしていたのが巧みで良かったです
スケール的にこれらのアクションシーンの匙加減間違えたら「RRR」じゃん!って感想になってたと思います

ふたつだけ厄介ファン的に引っかかったのは
 ウォンカが字を読めないのは不自然ではないか?
 (連れ出したヌードルを活躍させるため?だとしたら他の要素(キリンに気に入られるとか、ウォンカでは重量オーバーな場所があるとか)で対応できるのでは)
 ウンパ・ルンパの存在、初見にはわけわかんなくないか?
 (この世は全人類小学生でダール履修している世界線だから…)
ですが本当重隅どころか重たいタンスわざわざずらしてホコリ掻き出すレベルの引っかかりですね

作中でウォンカたちも街の人も結構散々な目に遭ってるんだけど
それでも漂う「おとぎ話」っぽさは
ウォンカ青年の終始怒らない、それこそ魔法使いみたいな物腰が画面的にも役者さんのビジュアルにもハマってるんだろうなと感じました
本当、騙され無限借金地獄に落とされてもお店あぼーんしても憎しみゼロで「ひええどーしよー!」な反応だったので
こいつ大物になるな…もうなってたわ「チャーリーとチョコレート工場の秘密」読めよって自分ツッコミした(笑)