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同族感電ウィルス【水属性運用実録】

始めに


遊戯王OCGでは今も昔も禁止カードのリメイクという行為が行われてきました。
このようなリメイクの多くは禁止カードを弱体化させたカードとなっていることが多く、下位互換であることもあります。
しかし、時代が進み禁止カード自体の復帰も珍しくなくなってきているのが近年のOCGで、そうした中で禁止カードのリメイクとして生み出されたカードは立つ瀬がなくなっていっています

今回はそんな数あるリメイクたちの中から、2011年7月に登場した禁止カードのリメイクモンスター
リメイク元から使いやすさを大きく削った結果、一瞬だけ輝いたモンスター
《同族感電ウィルス》の運用を考えていきたいと思います。

なぜハザードは起きないのか


効果詳細については上記(またはWiki)を参照してください。

さて、このカードを説明するにあたってはリメイク元を見てもらう必要があります。
かつてあまりにも強い汎用性・除去力から禁止カードとなった《同族感染ウィルス》です。

現代の基準では考えられないことですが、1ターンに何度も使えるため、手札1枚で1体を確実に除去できるだけでもかなり強かったのです。
《スナイプストーカー》
という同様に1ターンに何度も使え、手札1枚をコストに3分の2の確率でカード1枚を除去できるカードすら当時は強く、制限カードに上り詰めていたのです。
特にエラッタ前の《キラースネーク》がいた頃は最悪で、この手札コストすら毎ターン墓地から戻ってくる《キラースネーク》で補えば問題なしだったわけです。

そんなリメイク元を考慮してか、手札コストは除外になり、1ターンに1度の制約を付けられ弱毒化しています
この結果、リメイク元と比べて後年に追加された海皇とのコンボ性がなかったりします
それでもリメイク元が持つ特定の種族を全て滅ぼす能力はそのままなので、効果が使えさえすれば除去能力として強いのは確かです。
しかし、こんな部分など些細だと言い張れるほど《同族感電ウィルス》は致命的な弱毒化をしています。

それは、手札に除去したいモンスターと同じ種族がいないと使えないという点です。
OCGには12期現在26種類もの種族が存在しています。
テーマごとにある程度種族が決まっているデッキは存在するため、必要な種族は1種類に絞れるかもしれません。しかし、ミラーでもなければ同じ種族を握っているという状況は限られ、そもそも相手モンスターに感染させることすらできないのが普通です。
汎用な手札誘発モンスターを抱える種族なら、より感染させやすいかもしれませんが、どの道このカードと特定の種族が必要であり、リメイク元のような引いたらすぐ使える安定した除去能力を持っているとは言い難いわけです。
特定の種族をメタしたいためだったり、種族変更とコンボで使おうと考えるなら、完全に制限解除された現代においてはリメイク元である《同族感染ウィルス》のほうが使いやすいのはお判りいただけると思います。

このように感染力がバチクソ薄いウィルスに変異してしまったのでまったく注目されないかと思われていたこのウィルスですが、たった一瞬だけ環境の一部で使われていました。

このカードを使っていたのはご存じ、OCG界の伝説的な問題児集団【征竜】です。

当時征竜全盛期の環境では、征竜6割、魔導3割、ヴェルズ他1割というくらいのあまりにも極端な環境で、主にこのウィルスは征竜をたった1枚で機能不全にできるドラゴン族の《ヴェルズオピオン》に対し有効でした。
レベル7の征竜は共通効果として除外されるとサーチする能力を持っていたため、コストも軽く使え、水属性であることから《タイダル》のコストにも転用できました。
ただし残念ながら、先ほどの分布の通りヴェルズはそもそもそこまでいたわけでもなくよほど征竜や魔導対面のほうが多いし、ミラーマッチにおいては当時のランク7エクシーズで良く使われていた《ドラゴサック》や《ビッグアイ》というドラゴン族以外が出てきてそもそも盤面にドラゴン族が残ってるほうが稀だったのでそこまで使われてなかったのでした。
なお、この頃はまだ《同族感染ウィルス》は禁止だったことも付け加えておきます。

さあハザードを始めよう


上記でも示した通り、普通に使うには《同族感染ウィルス》に軍配が上がってしまいます。そんな《同族感染ウィルス》とどう差別化するか、その答えは実は征竜が見せてくれています。

それはコストとして手札を除外するという点です。
除外をトリガーとした効果を起動できるのは《同族感電ウィルス》ならではのポイントで明確な差別化が可能な部分です。

しかし、たとえ除外する点をうまく使うと言っても、同じ種族がいないといけないのでは?と考えるでしょう。
これに対する一つの答えとして、自分フィールドのモンスターを破壊するために使うことが可能なので、自分フィールドや《同族感電ウィルス》自身の種族を参照する手もあります。
例えば《同族感染ウィルス》が水族であるのに対し、実は《同族感電ウィルス》は雷族なので除外をトリガーとするサンダードラゴンの起点役にすることもできます
ただし、この場合であれば《同族感電ウィルス》自身を犠牲にする必要があり、相手が雷族を使ってなければディスアドバンテージを負うことになります。
そもそもこのカードの持つ効果は除去能力であり、機能すれば普通に強力ですので、そこは生かしていきたい部分です。
そうすると、種族変更を狙いつつ除外を活かすところを模索したいです。

除外と種族変更・・・何か見えてきませんか?

これが今回の立役者たち、除外を得意とするアンデット族です。

まずは言わずと知れたアンデット族最強のサポートカードである《アンデットワールド》を使うことで全てをアンデットにし、《同族感電ウィルス》が感染しやすい環境を作ります。
次に手札コストとして用意するのが《背護衛》です。このカードは除外されたエンドフェイズに手札に戻ってくるので実質ノーコスト感染券1枚分となるカードです。
そして最後に重要となるのが《アルグールマゼラ》です。《同族感電ウィルス》の感染は自分フィールドも含んでいるので、《アンデットワールド》の下で放つと文字通り《同族感電ウィルス》本体も含む全てのモンスターが消し飛びます
ですが、《アルグールマゼラ》には自分フィールドのアンデット族が破壊される代わりに手札・墓地から除外できるという抗体散布能力があり、一方的に相手のモンスターのみを消し飛ばすことが可能です。
しかもなんとこのカード、除外されると守備表示で特殊召喚されます。

これら3枚のカードによって、《同族感電ウィルス》を実質ノーコストで《ライトニングボルテックス》した上に展開も行うカードに変貌させるのが今回の狙いです。
その姿は奇しくも《キラースネーク》を無限手札コストとしていた《同族感染ウィルス》と瓜二つです。

他にも除外されると墓地のアンデット1枚を除外して特殊召喚できる《霊道士チャンシー》や除外トリガーを持つ不知火なども利用して《同族感電ウィルス》を出して効果を使えばアドバンテージが取れる状況を作っていきます。


ここまでは主に《同族感電ウィルス》を出した後のプランですが、用意するまではどうするかという点が気になっていると思います。
そこはアンデット族の蘇生力とレベル6を展開する能力を利用していきます。
《同族感電ウィルス》を墓地に送る手段としては言わずと知れた万能墓地送りカード《ベアトリーチェ》を用います。

《ベアトリーチェ》を出すには上述の《霊道士チャンシー》や手札・墓地から展開が比較的容易な《九尾の狐》、レベル6シンクロのアンデット族《イモータルドラゴン》などを使っていきます。

《同族感電ウィルス》はレベル4のモンスターなので《アンデットワールド》の中であれば様々な蘇生手段が使えます。
今回は主に《馬頭鬼》《アンデットリボーン》《リターンオブアンデット》を使っていきますが、《ゾンビマスター》《生者の書》《蒼血鬼》なども存在します。
上記のようにランク6を生みやすい状況になるので《告天子竜パイレン》による蘇生を狙ってもいいでしょう。


……
しかしこの戦術、相手をゾンビにするわ、ウィルス感染させて消し飛ばすわ…
なんかバイオなハザードみたいだな????

サンプル構築


MDで行った構築

実際の構築を見ていきましょう。
《アンデットワールド》には《屍界のバンシー》という墓地発動する専用サーチモンスターがいる他、手札に欲しい《背護衛》は墓地から除外すれば手札に戻せるため、事実上全ての準備は墓地肥やしだけでできます。
アンデット族を墓地に送るには、前述の《霊道士チャンシー》《イモータルドラゴン》の他、《ユニゾンビ》《牛頭鬼》《アドヴェンデットセイヴァー》を使います。
《背護衛》の除外には《霊道士チャンシー》《牛頭鬼》《ヴェンデットコア》《ホーンテッドアンデット》《妖刀-不知火》《不知火の武士》を使います。蘇生にも利用する《アンデットリボーン》でも除外できるように《背護衛》は2枚採用にしています。
これらのアンデット族を除外するカードは《霊道士チャンシー》の展開方法としても使え、《背護衛》と《チャンシー》がいる場合は《チャンシー》を除外→《チャンシー》の効果で《背護衛》を除外しつつ《チャンシー》が帰還という動きができます。
《チャンシー》はランク6にも使えて動きの核となっているので、早めに墓地に送って展開できるようにしていきます。

レベル6を並べるには前述の《妖刀-不知火》による6シンクロの展開や《霊道士チャンシー》《イモータルドラゴン》《九尾の狐》を利用するのが基本です。
《マッドマーダー》を利用すれば《アルグールマゼラ》をレベル6にしたり、《チャンシー》を除外して展開した《ホーンテッドアンデット》のレベル6トークンを6シンクロに変えるという動きが可能になるので、余裕がある時に墓地に送っておきたいカードです。
モンスターの頭数を増やしやすいため《九尾の狐》のコストにする使い方も便利です。特に自身の効果でフィールドに戻った《アルグールマゼラ》を墓地に送る手段として《マッドマーダー》《九尾の狐》を揃えておくことで、《アルグールマゼラ》を墓地に送るためだけにリンク召喚をしなくても良くなります

他の採用カードとしては除外すると破壊効果を使える《不知火の宮司》や《ユニゾンビ》の展開につながる《不知火の隠者》《逢華妖麗譚-不知火語》
《馬頭鬼》などを墓地に戻すことで手数の追加に利用できる《異次元からの埋葬》
《馬頭鬼》や《同族感電ウィルス》を墓地に送れる《のどかな埋葬》と状況に応じて《のどかな埋葬》《ホーンテッドアンデット》《リターンオブアンデット》を使い分けできる《トラップトリック》が採用されています。

EXデッキで特筆するカードとしては《アンデットスカルデーモン》《ヴァンパイアサッカー》です。
《アンデットスカルデーモン》は基本的には《妖刀-不知火》によって特殊召喚しますが、このカードは自分フィールドのアンデット族に破壊耐性を付与するので《アルグールマゼラ》の代わりとなることができます。
《ヴァンパイアサッカー》はこのデッキでは《同族感電ウィルス》の効果を使う前に破壊可能な相手モンスターを蘇生させれば、実質的にボードアドバンテージを取らせずにドロー効果を使える点がかみ合っています。リンク2と軽いため、《アルグールマゼラ》など墓地に送りたいモンスターを使ってリンク召喚するにも最適です。

デッキの基本的な動きとしては、様々な墓地送り手段を使い、《チャンシー》を呼び出せるような状況を作っていき《ベアトリーチェ》につなぎ、最終的なコンボができるように整えていきます。
《屍界のバンシー》《背護衛》《アルグールマゼラ》を落としつつ、レベル6をどう並べるかを意識して動くことが大事です。といっても《チャンシー》や《イモータルドラゴン》を出すことを意識していけば意外とランク6を狙う事は容易いです。
落とす優先順位としては防御としても使いやすい《アルグールマゼラ》を最初に送っておくと盤面の維持や《アドヴェンデットセイヴァー》からの墓地肥やしがしやすくなります。
次点は《屍界のバンシー》ですが、《チャンシー》や《ホーンデットアンデット》などが狙える場合は《背護衛》でも良いでしょう。

ここで実際にいくつかレベル6を並べる例を示します。
《チャンシー》とレベル4が揃った場合、《マッドマーダー》を墓地に送ることでレベル6のモンスターを2体並べることができます。
具体的な手順は以下です。
1.《マッドマーダー》で《チャンシー》のレベルを下げ、これら2体で《イモータルドラゴン》をシンクロ召喚。
2.《イモータルドラゴン》の効果で《馬頭鬼》を墓地に送ってレベルを2に変更し、《イモータルドラゴン》とレベル4でレベル6をシンクロ召喚。
3.《馬頭鬼》で《イモータルドラゴン》を蘇生。
これでレベル6が2体となります。
レベル4と《チャンシー》の並びは《牛頭鬼》の墓地効果で《チャンシー》を除外しつつレベル4を展開したり、墓地から《チャンシー》を除外できる《不知火の武士》あたりで作ることができます。《ホーンテッドアンデット》もレベル4トークンを好きなタイミングで用意しやすく狙いやすいです。

墓地にアンデット族が1体存在し《ユニゾンビ》と《チャンシー》or《ヴェンデットコア》が手札にある場合、レベル6のモンスターを2体並べることができます。
具体的な手順は以下です。
1.《ユニゾンビ》の効果で手札の《チャンシー》or《ヴェンデットコア》を捨てて《ユニゾンビ》のレベルを上げる。
2.《ユニゾンビ》の効果で《チャンシー》or《ヴェンデットコア》のうち墓地にいない方をデッキから墓地へ送り《ユニゾンビ》のレベルを上げる。
3.《ヴェンデットコア》で《チャンシー》を除外して特殊召喚。
4.《チャンシー》を墓地のアンデット1体を除外して特殊召喚。
5.《ヴェンデットコア》とレベル5の《ユニゾンビ》でレベル6をシンクロ召喚。
これでレベル6が2体となります。
特にこの動きは墓地にアンデット族が1体必要という部分を《不知火の隠者》から《ユニゾンビ》を展開することで満たせます。

他にも墓地に《チャンシー》とコスト用のアンデットがある状態なら《アンデットリボーン》を使うだけで《チャンシー》2体を並べられすぐさまランク6につながります。
《イモータルドラゴン》にもアンデット族が戦闘破壊された時に自身を墓地から蘇生する効果が備わっているので、そこから狙うのも場合によっては選択肢になります。

《イモータルドラゴン》と《チャンシー》が並ぶような場となった場合は、《馬頭鬼》を墓地に送って一度《PSYフレームロードΩ》を出して《馬頭鬼》を戻せる分の手数を増やすという選択肢も考慮しておくと後々動きやすくなります。

除外されているカードを戻したい場合は《アンデットリボーン》《ホーンテッドアンデット》《リターンオブアンデット》なども使えますが、デッキに戻るので墓地に送る手間が再びかかることには気を付けましょう。

終わりに


今回は《同族感電ウィルス》の概要と運用方法について紹介してきました。

が、ここで一つ謝っておかなければならないことがあります。
実はこの構築、3月中旬ごろにクソカード医学会に向けて構築していたデッキなのですが…

(ちなみに上記ツイートの「今すぐ出せるネタ」とはnoteに書ける構築の話です。)
なんとその後、3月下旬にまさかのインストラクター公式と構築ネタかぶりが発生してしまいました。
その公式の紹介がこちらになります。

戦術すげーかぶってんだよなぁ…

ということでこの内容、事実上の二番煎じとなっております。

さすがにネタかぶってるし、使ってみると《アンデットワールド》のメタ性能が強すぎて医学会に不向きで、医学会用デッキとしてはお蔵入りにすることにしたので、今回この記事を書いてます。
まあかぶるのは仕方ないと思ったので、むしろ前向きにこのデッキ詳しく説明できるで!っていう気持ちで書きました。
ちなみに《アンデットスカルデーモン》の部分は参考にさせてもらいました。ありがとう!
公式は見ての通り紙のほうでの構築なのでMDのカードプールでもこういう感じで行けますっていう紹介にもなるかなと。
特に今回のMDの構築はストラクチャーデッキ「イモータルグローリー」を3つ購入すれば基本の動きに必要なメインデッキのカードは全て集めることができます。
《妖刀-不知火》《不知火の隠者》はソロで手に入るので、メインで採用しているうち《異次元からの埋葬》《トラップトリック》《のどかな埋葬》の3種がマスターパックから入手するSR・URになります。
EXデッキのうち、特に必要となりそうなSR・URは《Ω》《ベアトリーチェ》《アドヴェンデットセイヴァー》《ヴァンパイアサッカー》程度です。EXについてはとりあえずどれも1枚あれば問題はなく、それ以外は結構自由でいけます。
このようにMDでは非常に手軽にバイオなハザード起こせるので、皆さんもどうでしょうか。

ちなみに次回医学会用のデッキはすでに別で用意しております。
水属性ではなく某所で研究協力の末生まれたデッキですが、もしかしたらどこかで紹介するかもしれません。

しかしこの一件、医者なのにパンデミックを起こそうとするなという啓示だったのかもしれませんね。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
また次回の水属性運用実録でお会いしましょう。

ひと時の別れだ。
次なる水属性を救う時まで。


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