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ヴェノミナーガ特殊裁定の謎


序文


お久しぶりです。
最近は医学会系デッキの紹介を動画に移行してしまったせいで、めっきり更新しなくなってましたが、久々に文章でやらせてもらおうと思います。

本日のお題目は《毒蛇神ヴェノミナーガ》の特殊裁定についてです。
もしかしたら知ってる方もいるかもしれませんが、この特殊裁定について調べ、遊戯王Wikiを更新した当事者です。
某医学会サーバー内の人で、この件について、先に2人ほど動画にされてます。(一応引用)

こちらの動画はサーバー内で当時確認・共有した情報を基に作られています。

こちらはそれを踏まえたうえで独自で確認を再度取り、動画としています。

一体どうしてこんなことになっているか、当事者として説明しておく必要があると思い立ちまして今回の記事となります。
今回の経緯慣例に基づく予想も含めて詳しくお伝えしていきます。

始まりは医学会


そもそもなぜ《毒蛇神ヴェノミナーガ》の効果をコピーした場合の処理が医学会サーバー内で問題として沸き上がったのか。
それは第12回クソカード医学会でのことでした。

なんと《毒蛇神ヴェノミナーガ》の特殊勝利を《WWークリスタル・ベル》でコピーし連続攻撃させて特殊勝利するというコンボが披露されたのです。


騒然となりました。(独断と偏見)

特殊勝利条件のほとんどは効果外テキストであり、基本的にコピーが不可能なのです。
一部例外的にコピー可能な効果外テキストは存在しますが、特殊勝利条件に関してはコピー不可能というwikiの記述が存在していました。
故にMDの挙動、なんかおかしくない?という話になったのです。

ここに関してwikiや公式データベースのQ&Aを引用しつつ説明します。
まずそもそも効果外テキストとは何ぞやという話。
これについてはwikiでは以下のように書かれています。

カードの処理について記述したテキストのうち、効果として扱われない記述の事。(非公式用語)
召喚制限や特殊召喚モンスターの召喚条件、素材・用途制限、維持コスト、特殊勝利条件などが該当する。
~(中略)~
第9期より効果として扱うテキストは文頭に番号が付く様になった。
つまり、テキスト欄にある文頭に番号がないテキストは効果外テキストである。

効果外テキスト -遊戯王カードWiki

見ての通りの非公式用語なのですが、重要なのは「効果として扱われない」の部分です。
具体的には、公式データベースにおいてこの類の効果は基本的に「効果として扱われない」と記載されていることが多いです。

テキストでの見分け方の基本は「テキスト欄にある文頭に番号がないテキスト」なのですが、実はデュアルのような例外が存在します。

例として11期に登場した《ゴルドナイト》のテキストとQ&Aのページにある補足情報を見てください。
デュアルの共通効果である②の効果に関して以下のように書かれています。

■『②』は効果として扱いません。

「重起士道-ゴルドナイト」の公式DB Q&A補足情報

これも効果外テキストです。
このような例があるので、可能なら公式データベースを確認しましょう。マジで。
でもたまに明確に書いてないことがあるので、その場合で困ったら公式に聞きましょう。
「このカードのこの部分は効果として扱われませんか?」って聞けば答えてくれます、多分。
とにかくは「効果として扱われないが、効果モンスターのテキスト内に書いてあるもの」をwikiではそう呼ぶことにしていると認識してもらえば結構です。

このように効果外テキスト「効果として扱われていない」ので《WWークリスタル・ベル》《ファントム・オブ・カオス》が持つ「別のモンスターの効果を得る」効果で基本的には得ることができないようになっています
実際の例として公式データベース上にこのようなQ&Aがあります。

Question
「ファントム・オブ・カオス」が自身の効果によって、「アルティマヤ・ツィオルキン」のカード名と効果を得た場合、「ファントム・オブ・カオス」のレベルはいくつになりますか?

Answer
「アルティマヤ・ツィオルキン」の『ルール上、このカードのレベルは12として扱う』は効果の扱いではありません。

したがって、「ファントム・オブ・カオス」が「アルティマヤ・ツィオルキン」のカード名と効果を得たとしても、レベル12として扱われる事はありません。(「ファントム・オブ・カオス」の本来のレベルである4のままです。)

「ファントム・オブ・カオス」のQ&Aより

「レベル12として扱う」効果を「効果として扱われない」という理由からコピーできないとしています。
一方で、一部例外的にコピー可能な効果外テキストとして先ほど例にも挙げたデュアルが存在します。

Question
「N・ブラック・パンサー」の効果の対象をして、「ヘルカイザー・ドラゴン」等のデュアルモンスター選択した場合、その効果処理はどのようになりますか?

Answer
「N・ブラック・パンサー」の効果の対象に選択したデュアルモンスターの効果を得る事ができます。
効果を得た時点で通常モンスターとして扱われますが、再び召喚する事によって効果を得る事ができます。

「N・ブラック・パンサー」のQ&Aより

先ほど挙げたようにデュアルの共通効果は効果外テキストなのですが、コピーできます
wikiでは一部例外的にコピーできる効果について、以下のような記述があります。

・コピーされる効果外テキストの例
ディフォーマーやデュアル等、特定の条件下でのみ効果を得るカードの効果をコピーした場合、一緒にコピーされる。
この場合、条件を満たせば効果を適用することができる。

コピー -遊戯王カードWiki

wikiが掲げている例外に当たるものはデュアルのような「以下の効果を得る」という記述を持つ効果外テキストです。
例として挙げられている表示形式に従って効果を得るディフォーマーの他にポピュラーなものとして特定のX素材を持っている場合に効果を得るCNo.《インフェルニティ・ネクロマンサー》などが存在します。
残念ながらデュアル以外のこれらに関しては公式データベースのQ&Aには例が存在しません。
wikiでは一例として《CX 冀望皇バリアン》のページにて以下のような裁定があることが分かります。

Q:《CNo.107 超銀河眼の時空龍》を選択し、その効果を得ました。
このカードが《No.107 銀河眼の時空竜》をエクシーズ素材として持っていない場合、連続攻撃の効果を発動できますか?
A:いいえ、このカードが《No.107 銀河眼の時空竜》をエクシーズ素材としてなければその効果は発動できません。(14/03/20)

《CX 冀望皇バリアン》 -遊戯王カードWiki

この裁定は《CNo.107 超銀河眼の時空龍》の「《No.107 銀河眼の時空竜》をエクシーズ素材として持つ場合に効果を得る」効果外テキストによって得られる効果を「持っていなければ発動できない」と回答していますが、裏を返せば「持っていれば発動できる」という事です。
これは明確に「効果を得る」効果外テキストをコピーしていることをうかがわせます。wikiの記述はこのあたりを根拠としていると考えられます。
そもそも《CX 冀望皇バリアン》の最も有名なコピー先として挙がる《No.86 H-C ロンゴミアント》の「素材数に応じて効果を得る」部分も効果外テキストです。wikiがコピーできるとする根拠は一応は立証できていると感じます。


というような感じで一部例外が存在しうる以上、一概に効果外テキストをコピーできないと断言はできないのですが、特殊勝利に関してはどうなのか。
公式データベースでは《光の創造神 ホルアクティ》でのQ&Aしか存在していません。

Question
「ファントム・オブ・カオス」がフィールド上に表側表示で特殊召喚に成功したターンにて、墓地に存在する「光の創造神 ホルアクティ」をゲームから除外して、「光の創造神 ホルアクティ」のカード名と効果を得た場合、デュエルに勝利する事はできますか?
Answer
「光の創造神 ホルアクティ」の『デュエルに勝利する』勝利条件を、「ファントム・オブ・カオス」の効果によって得る事はできません。
したがって、デュエルに勝利する事はできません。

「ファントム・オブ・カオス」のQ&Aより

《ホルアクティ》は非常に特殊で再録もされないことから、公式データベースの補足情報も2012年から止まっており、特殊勝利条件が「効果として扱われない」ものなのか書いていません
確かにコピーできないと言及しているのですが、このカード特有の回答とも取れ、やや情報として不十分だと考えました。

wikiでは特殊勝利のページにて、当初以下の記述がありました

モンスターの持つ特殊勝利条件は、《席取-六双丸》以外はすべて効果外テキストに分類されている(2023年3月現在)。
効果外テキストであるものは、《ファントム・オブ・カオス》などでコピーすることはできないが、特殊勝利を《スキルドレイン》などで無効化されることも無い。

特殊勝利 のバックアップ(No.87) -遊戯王カードWiki

「《ファントム・オブ・カオス》などでコピーすることはできない」
この根拠となっているのは何か
、こちらでwikiの特殊勝利効果持ちを当たってみたところ、根拠と思われる裁定が存在していました

Q:特殊勝利する効果を《ファントム・オブ・カオス》でコピーできますか?
A:いいえ、コピーできません。(13/12/04)

《究極封印神エクゾディオス》 -遊戯王カードWiki

他に見当たらなかった為、おそらくwikiのコピーできないという記述はこれを根拠にしたものと考えました。

これらから、MDの《毒蛇神ヴェノミナーガ》の挙動おかしくね?という話になり、医学会サーバーメンバーは協力してそのほかの特殊勝利の挙動確認に走ることとなりました
その結果、効果外テキストのはず《究極封印神エクゾディオス》《No.88 ギミックパペットーデステニー・レオ》において同様にコピーして勝利できるという現象が発見されるに至りました。
(ちなみに後の事務局の回答でも分かる通り、この2枚は紙と挙動が異なっています。)

一方で、wikiの客観的な根拠が薄いと思いました。
《エクゾディオス》の一例しか見つけられず、それによってコピーして特殊勝利が狙えそうな他4体のモンスターが同じ処理だとしているのはどうなのかと思いました。
せめて調べていたなら当時の裁定を載せてほしかったところですが・・・。
また、《エクゾディオス》についても2013年の裁定であることから、約10年の間での裁定変更も疑いがありました。
そのため、MDの挙動を調べる一方で、念のため紙での裁定の確認も必要だろうと思い、確認を行うことにしました。

事務局の回答


wikiや公式データベースでは正確な情報に乏しい事から、今回該当する以下の5枚を確認することにしました。
・《No.88 ギミック・パペット-デステニー・レオ》
・《ゴーストリックの駄天使》
・《CNo.88 ギミック・パペット-ディザスター・レオ》

・《究極封印神エクゾディオス》
・《毒蛇神ヴェノミナーガ》

この5枚はいずれも特殊勝利を効果外テキストとして持つ、すなわち公式データベースにて特殊勝利条件が「効果として扱わない」と記載されているモンスターです。

《究極封印神エクゾディオス》《毒蛇神ヴェノミナーガ》《ファントム・オブ・カオス》《覇王眷竜スターヴ・ヴェノム》をそれぞれ用いて、連続攻撃コンボによって特殊勝利が発生するかを確認しました。
コピー用のモンスターが異なるのはダメージ発生が必要かどうかの違いです。《エクゾディオス》でライフ前提条件などを書くのは手間だったため、初めからダメージが発生しない《ファントム・オブ・カオス》にしました。

一方、エクシーズである3体のモンスターは一律で永続的に効果をコピーする《隻眼のスキル・ゲイナー》を用いて特殊勝利が発生するかを確認しました。

そして事務局からの回答はこうなりました。

  • 《No.88 ギミック・パペット-デステニー・レオ》
    《No.88 ギミック・パペット-デステニー・レオ》の効果をコピーした《隻眼のスキル・ゲイナー》を使い、《No.88 ギミック・パペット-デステニー・レオ》の①の効果でデステニーカウンターが3つ置かれた時。
    →勝利できない

  • 《ゴーストリックの駄天使》
    《ゴーストリックの駄天使》の効果をコピーした《隻眼のスキル・ゲイナー》のエクシーズ素材数を10にした時。
    →勝利できない

  • 《CNo.88 ギミック・パペット-ディザスター・レオ》
    《CNo.88 ギミック・パペット-ディザスター・レオ》の効果をコピーしたエクシーズ素材のない《隻眼のスキル・ゲイナー》が存在する状態で、自分エンドフェイズ時に相手のLPが2000以下の時。
    →勝利できない

  • 《究極封印神エクゾディオス》
    《究極封印神エクゾディオス》の効果をコピーした攻撃力1000の《ファントム・オブ・カオス》に《EMカレイドスコーピオン》の効果を適用。
    このバトルフェイズに《ブラック・ガーデン》の効果で相手フィールドに特殊召喚されているローズ・トークン5体に《ファントム・オブ・カオス》で攻撃し、「封印されし」モンスター5種類を墓地に送る。
    →勝利できない

  • 《毒蛇神ヴェノミナーガ》
    相手のライフが8000である時に、攻撃力1400の《覇王眷竜スターヴ・ヴェノム》に《EMカレイドスコーピオン》の効果を適用した後、墓地の《毒蛇神ヴェノミナーガ》の効果をコピー。
    このバトルフェイズに《ブラック・ガーデン》の効果で相手フィールドに特殊召喚されている攻撃表示のローズ・トークン3体に《覇王眷竜スターヴ・ヴェノム》で攻撃して合計1800の戦闘ダメージを与えてハイパーヴェノムカウンターを3つ乗せる。
    →勝利できる

なぜか《ヴェノミナーガ》のみ可能という回答を得てしまったのです。これには驚きました。
同時に、それ以外の特殊勝利がコピーできないという客観的証拠も得られました。これは大きい成果です。
基本的にコピーできないという点はwikiの記述は間違っていなかったわけです。しかし、今まで例外はないと思われていたが、《ヴェノミナーガ》という例外がいたという点はwikiへの更新が必要な案件だと感じました。
なぜならこのことは明らかに公式データベースと効果テキストから一切読み取れません
そこからwiki掲示板でこの回答に関する客観的意見を聞いてみたのち、裁定の再度確認を経てwikiの更新に至りました。

これが先月9月の中~下旬ごろの話になります。
ちなみにこの《ヴェノミナーガ》の裁定だけで分かる限りで4回も確認が入ってます。いずれも裁定回答は一貫してます。

特殊裁定?


今回のような「テキストから読み取れない挙動がある」状態をwikiでは特殊裁定と呼んでいます。

遊戯王OCGでは、「テキストに反した」もしくは「テキストに書かれていない」裁定が下されることが少なからずある。
また、再録されていない事からテキストが古くなり、裁定に矛盾が生じる例も存在する
このような裁定を特殊裁定と呼ぶ。(非公式用語)

このページでは、以下のいずれかの条件を満たすものを列挙する。
・テキストから読み取れない。
・過去の同類カードの慣例に反する。
・特定カードと同時存在した時等、特定の状況下でテキストからでは判断できない。

特殊裁定 -遊戯王カードWiki


《ヴェノミナーガ》の場合は長らく再録されておらず、特にテキスト整備がされた9期以降のテキストは存在していない状態にあります。
その場合、テキストの解釈はプレイヤーにゆだねられてしまいます
このカードの場合、2016年最終更新の公式データベースの補足ではこう書かれています。
ちなみに2016年は最後に再録されてから4年後です。

■『このカードにハイパーヴェノムカウンターが3つ乗った時、このカードのコントローラーはデュエルに勝利する』はモンスターの効果の扱いではありません。カードによって定められた勝利条件となります。

「毒蛇神ヴェノミナーガ」の公式DB Q&A補足情報

ここから読み取れるのは、「特殊勝利が効果外テキストである」という事だけです。
比較として8期に登場し、2021年再録時の新テキストがあり、同じく独自のカウンターを3つ置いて勝利を目指す《No.88 ギミック・パペット-デステニー・レオ》は、例えばこのような状況です。

カードテキスト
レベル8モンスター×3
このカードにデステニーカウンターが3つ置かれた時、自分はデュエルに勝利する。
①:1ターンに1度、自分の魔法&罠ゾーンにカードが存在しない場合に発動できる。
~(中略)~
『このカードにデステニーカウンターが3つ置かれた時、自分はデュエルに勝利する』
効果として扱いません。カードによって定められた勝利条件です。

「No.88 ギミック・パペット-デステニー・レオ」の公式DB Q&A補足情報

この2枚を比較したら、ほとんどのプレイヤーはこの2枚に類似性を見出し、《ヴェノミナーガ》のテキストをこのように解釈するでしょう。

このカードは通常召喚できない。「蛇神降臨」の効果及びこのカードの効果でのみ特殊召喚できる。このカードにハイパーヴェノムカウンターが3つ置かれた時、自分はデュエルに勝利する。
①:このカードの攻撃力は、自分の墓地の爬虫類族モンスターの数×500ポイントアップする。
②:このカードはこのカード以外の効果の対象にならず、効果も受けない。
③:このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた時、このカード以外の自分の墓地の爬虫類族モンスター1体を除外して発動できる。このカードを特殊召喚する。
④:このカードが相手に戦闘ダメージを与えた時に発動する。このカードにハイパーヴェノムカウンターを1つ置く。

「毒蛇神ヴェノミナーガ」の9期以降テキストの予想の1つ

今の公式データベースの情報のみで考えれば、この解釈ができます。
しかし、この解釈ではなぜ《デステニーレオ》と異なり、特殊勝利条件をコピーできるのかが理解できません
再録されていない事からテキストが古く、今回裁定を確認した9期以降のテキストが存在する4枚と矛盾した裁定が出ているように見えるという状況にあるため、これは特殊裁定に該当していいケースと考えています。
そして、テキストの不備とこのカード自体のテキストの特殊性が、今回の特殊裁定の原因だと考えられます。
特にこのカードは古いテキストのままであっても、わざわざ再録がされていない2016年に更新されていて、公式データベースにて効果分類がしっかりと書かれているという比較的整備された状態にもかかわらず、なぜか分かりづらい状況にあるという稀有な例と言えます。

特殊裁定という俗称であるために、何か公式が矛盾した裁定をめちゃくちゃに出してるとも取れるかもしれませんが、ほとんど過去の話となってきています。その多くはテキストの不備として改められてきているためです。
9期より前はテキストから読み取れない矛盾がよく発生していました
が、再録時のテキスト整備によって読み取れるようになった例は多いです。
新しいテキストになってもルール上の矛盾が解決せず、存在しない海底都市を探しに行く《アトランティスの戦士》とかいますが・・・ああいったものはレアケースです。

テキストの謎


ではこの《毒蛇神ヴェノミナーガ》
どのようなテキストなら矛盾が生じないのでしょうか。

このカードの特殊勝利条件は「効果として扱われない」が「コピー可能なもの」なので、それに準じたテキストとなるはずです。
ここまでで「コピー可能な効果外テキスト」の例を1つ挙げています。
それはデュアルの共通効果です。
デュアルの共通効果は、再度召喚を行うという特定の条件を満たした時に効果を得るという効果外テキストでした。

そちらを改めてテキストも含めて見てみます。

カードテキスト
~(中略)~
②:フィールドの通常モンスター扱いのこのカードを通常召喚としてもう1度召喚できる。その場合このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。
●このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。効果テキストに「デュアルモンスター」と記された魔法・罠カード1枚をデッキから手札に加える。このカード名のこの効果は1ターンに1度しか使用できない。
●このカードは機械族になり、攻撃力が500アップする。
~(中略)~
■『②』は効果として扱いません。
■1つ目の『●』はフィールドで発動できる誘発効果です。(ダメージステップでも発動できます。)
■2つ目の『●』は永続効果です。

「重起士道-ゴルドナイト」の公式DB Q&A補足情報

このモンスターは効果外テキストで効果を得るので当然得る効果に関する記載が続いています。
《ヴェノミナーガ》では取られていない記載方法
です。
ただ仮に《ヴェノミナーガ》がこれらと同じようなテキストを持つとすると「⑤:このカードにハイパーヴェノムカウンターが3つ置かれた時、以下を適用する。●自分はデュエルに勝利する。」というような記述になり「効果外テキストで効果外テキストを得る」というまったく前例のない記述であるため、どのような書き方をされるかは予想できません。
そもそも、そのような回りくどい記述になり得るのでしょうか?
これは違うだろう
というのが感じられると思われます。

少し他の例も見ていきましょう。
今回の案件と類似性が高いカードとして「永続効果で特殊勝利条件を得ている」《CiNo.1000 夢幻虚光神ヌメロニアス・ヌメロニア》が挙げられます。

このカードの該当テキスト部分は以下のようになっています。

カードテキスト
レベル13モンスター×5
①:「CNo.1000 夢幻虚神ヌメロニアス」の効果で特殊召喚したこのカードは、攻撃力・守備力が相手ターンの間100000アップし、特殊召喚された次のターンより以下を適用する。
●攻撃可能な相手モンスターはこのカードを攻撃しなければならない。
●このカードが戦闘を行っていない相手ターン終了時、自分はデュエルに勝利する。
②:相手モンスターの攻撃宣言時、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。その攻撃を無効にし、その攻撃力分だけ自分のLPを回復する。
~(中略)~
■『①』は永続効果です。
~(中略)~
■『●攻撃可能な相手モンスターはこのカードを攻撃しなければならない』は永続効果です。
『●このカードが戦闘を行っていない相手ターン終了時、自分はデュエルに勝利する』は効果として扱いません。カードによって定められた勝利条件です。(適用される際にチェーンブロックは作られません。)

「CiNo.1000 夢幻虚光神ヌメロニアス・ヌメロニア」の公式DB Q&A補足情報

このカードのテキストは非常に面白く、永続効果のテキストにおいて「以下の効果を得る」ではなく「以下を適用する」と書かれているにも関わらず、なんと適用される部分に効果分類が存在しています
「以下を適用する」という書き方を最も目撃するのは、効果処理の一部として何かしら選択可能・条件付きの処理などを行っている場合でしょう。
しかしこの効果はそうではありません。補足情報を見る限りでは「以下の効果を得る」と同じ解釈が取られています
実際に比較として《エレメントセイバー・ウィラード》を確認してみましょう。

カードテキスト
~(中略)~
②:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、このカードの①の効果を発動するために墓地へ送った「エレメントセイバー」モンスターの元々の属性によって、自分フィールドの「エレメントセイバー」モンスター及び「霊神」モンスターに以下を適用する。
●地または風:戦闘では破壊されない。
●水または炎:効果では破壊されない。
●光または闇:相手の効果の対象にならない。
~(中略)~
■『②:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、このカードの①の効果を発動するために墓地へ送った「エレメントセイバー」モンスターの元々の属性によって、自分フィールドの「エレメントセイバー」モンスター及び「霊神」モンスターに以下を適用する』モンスター効果は永続効果です。
■「エレメントセイバー・ウィラード」を自身のモンスター効果によって手札から特殊召喚する際に、コストとして墓地へ送ったモンスターが「エレメントセイバー」と名のついたモンスターだった場合、その元々の属性に応じて、『●』の効果が適用されます。

「エレメントセイバー・ウィラード」の公式DB Q&A補足情報

《ウィラード》の場合、「●」の部分について何らかの分類を言及することはなく、「以下を適用する」は先ほど言及した効果処理の一部として適用され、独立した効果ではないものを表現していると思われます。
同様の表記がされているカードとして《エクスクローラー・クオリアーク》が存在します。

カードテキスト
「クローラー」モンスター2体
①:自分フィールドの「クローラー」モンスターの数によって以下を適用する。
●2体以上:自分フィールドのモンスターの攻撃力・守備力は300アップする。
●4体以上:相手はバトルフェイズ中に効果を発動できない。
●6体以上:自分のモンスターは直接攻撃できる。
~(中略)~
■『①』のモンスター効果は永続効果です。(「エクスクローラー・クオリアーク」自身を含む、自分のモンスターゾーンに表側表示で存在する「クローラー」と名のついたモンスターの数によって、『●2体以上:』、『●4体以上:』、『●6体以上:』の効果が適用されます。

「エクスクローラー・クオリアーク」の公式DB Q&A補足情報

こちらも《ウィラード》と同じく「●」の部分について何らかの分類を言及していません。

もう一つ比較として、効果処理によって効果を得る《No.66 覇鍵甲虫マスター・キー・ビートル》を見てみます。

カードテキスト
闇属性レベル4モンスター×2
①:1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、このカード以外の自分フィールドのカード1枚を対象として発動できる。このカードは以下の効果を得る。●このカードがモンスターゾーンに存在する限り、対象のカードは効果では破壊されない。
●このカードが戦闘・効果で破壊される場合、代わりに対象の自分のカード1枚を墓地へ送る事ができる。

■フィールドで発動できる起動効果です。
~(中略)~
『●』は永続効果です。(『①』の効果の処理の適用後に、この『●』の効果を得ます。)

「No.66 覇鍵甲虫マスター・キー・ビートル」の公式DB Q&A補足情報

こちらは見ての通りしっかり得られる効果の分類を書いており、テキスト上では「以下の効果を得る」と書かれています。
補足情報の記載を見比べると《ヌメロニアス・ヌメロニア》はこちらのタイプであるとした方が記載に納得がいくでしょう。
では、なぜ《ヌメロニアス・ヌメロニア》では「以下を適用する」と表記しているのか。
その理由はおそらく得られるものに「”効果”として扱われない」効果外テキストが含まれているためです。
《マスター・キー・ビートル》と同じように「以下の効果を得る」と表記した場合、テキスト内で”効果”ではない特殊勝利条件を得ているという矛盾が発生してしまいます。それを防ぐため、「以下を適用する」という表記をせざるを得ないのです

ちなみに、自力で「効果を得る」モンスターの大半は効果外テキストで得ているので、調べた限りでは効果処理によって効果を得るモンスターというもの自体がかなり少ないです。
その中で明確に永続効果を得ているにも関わらず、「以下を適用する」という表記を行っている《ヌメロニアス・ヌメロニア》は非常に特殊です。

《ヌメロニアス・ヌメロニア》の①の効果の補足情報と比較すると、これが《ヴェノミナーガ》に最も近しい状況と感じられるでしょう。

このことから、《ヴェノミナーガ》のテキストは他の効果のいずれかで特殊勝利条件を得ており、「効果として扱わない」という言及がされるようなテキストであると推測されます。
耐性などに関する永続効果で得ているか、ハイパーヴェノムカウンターを置く効果の処理上で得ているかのどちらかです。
データベースの記載準拠で考えると「このカードにハイパーヴェノムカウンターが3つ置かれた場合、自分はデュエルに勝利する」という効果外テキストをまとめて得られるものと推測されます。

この推測に基づきテキストを2パターン考えてみます。
永続効果で得ている場合、テキストはこのようになるでしょう。

このカードは通常召喚できない。「蛇神降臨」の効果及びこのカードの効果でのみ特殊召喚できる。
①:このカードの攻撃力は、自分の墓地の爬虫類族モンスターの数×500ポイントアップする。
②:このカードはこのカード以外の効果の対象にならず、効果も受けない。
また、表側表示で存在する限り、以下を適用する。●このカードにハイパーヴェノムカウンターが3つ置かれた場合、自分はデュエルに勝利する。
③:このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた時、このカード以外の自分の墓地の爬虫類族モンスター1体を除外して発動できる。このカードを特殊召喚する。
④:このカードが相手に戦闘ダメージを与えた時に発動する。このカードにハイパーヴェノムカウンターを1つ置く。

「毒蛇神ヴェノミナーガ」の9期以降テキストの、可能性のある予想

《ヴェノミナーガ》は2つの永続効果を持ちますが、おそらく攻撃力に関する表記より、耐性に関する表記に付随するのではないかという主観による推測です。どこに付随するかに関しては根拠はありません。

ハイパーヴェノムカウンターの処理上で得ている
場合、テキストはこのようになるでしょう。

このカードは通常召喚できない。「蛇神降臨」の効果及びこのカードの効果でのみ特殊召喚できる。
①:このカードの攻撃力は、自分の墓地の爬虫類族モンスターの数×500ポイントアップする。
②:このカードはこのカード以外の効果の対象にならず、効果も受けない。
③:このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた時、このカード以外の自分の墓地の爬虫類族モンスター1体を除外して発動できる。このカードを特殊召喚する。
④:このカードが相手に戦闘ダメージを与えた時に発動する。このカードにハイパーヴェノムカウンターを1つ置く。このカードにハイパーヴェノムカウンターが置かれている場合、以下を適用する。●このカードにハイパーヴェノムカウンターが3つ置かれた場合、自分はデュエルに勝利する。

「毒蛇神ヴェノミナーガ」の9期以降テキストの、可能性のある予想

こちらの難しいポイントは、やや回りくどい書き方をせざるを得ないという点です。公式データベース上の現状の補足情報をそのまま引き継ぐのであれば、「このカードにハイパーヴェノムカウンターが3つ置かれている場合、以下を適用する。●自分はデュエルに勝利する。」ではおかしいです
この場合なら「「自分はデュエルに勝利する」は効果の扱いではありません。」と書くでしょう。
もっとも実際に再録される場合にテキスト整備として公式データベースの記載表現を変更するかもしれないので、この点はおかしいと言いつつもないとは限りません
この効果の場合、カウンターを置く効果を一度でも適用しないと特殊勝利条件を得られないという構造となってますが、《ヴェノミナーガ》は他の効果を受けず対象も取れない、自分のサポートカードすらほぼ受け付けないカードであるので、当然外部からのカウンターを乗せる効果を受けず、Aカウンターや捕食カウンターなどが乗ることもありません
外からカウンターを増やすサポートカードよほどひねくれたやり方をしない限り出てこないでしょう。
それを踏まえれば前述の永続効果との差異はないに等しいです。

これが現状でのテキストの予想です。
このように分析していくと、近しい記載がされるモンスターも発見できており、何か頓珍漢な裁定が出ているわけではないという事が分かります。
ですが、こんな2021年になって登場した非常に特殊なテキストを持つ《ヌメロニアス・ヌメロニア》と同じような効果を持つモンスターということを公式データベースの情報だけで見抜くことはほぼ不可能です。多くのプレイヤーはこのような特殊なモンスターより《エクゾディオス》などのより一般的なものの類似テキストを持つと予想してしまいます。
これこそがテキスト不備の問題、特殊裁定の本質です。
この問題を解決できるのはテキスト整備だけです。
このカードを扱っていた「ヴェノム」というテーマは、アニメGX出身であり長らく一切の直接的な強化がされていないテーマでもあります。
一応これでもユベル復活に携わった中ボス的立ち位置のテーマです。
ここらでそろそろ強化して《ヴェノミナーガ》も再録しませんか?

おまけ


ちょっとしたおまけとして似たようなテキストがあるカード《飛行エレファント》を紹介します。
こちらも「誘発効果から特殊勝利条件を得る」カードなのですが、実は《ヌメロニアス・ヌメロニア》と比較すると公式データベースの表記の差異が見られます。

カードテキスト
~(中略)~
②:このカードの①の効果を適用した相手ターンのエンドフェイズに発動する。次の自分ターン中、以下を適用する。●このカードが直接攻撃で相手に戦闘ダメージを与えた時、自分はデュエルに勝利する。
~(中略)~
■『②』のモンスター効果は、フィールドで発動する誘発効果です。(対象を取らない効果です。自身の『①』のモンスター効果によって破壊を免れた場合に、その相手ターンのエンドフェイズに1度、必ず発動する効果です。)
■「飛行エレファント」が得た、『●このカードが直接攻撃で相手に戦闘ダメージを与えた時、自分はデュエルに勝利する』が適用される際にチェーンブロックは作られません。

「飛行エレファント」の公式DB Q&A補足情報

《飛行エレファント》は②の誘発効果によって特殊勝利条件を得ています。
しかし、補足情報を見ると、この特殊勝利条件について分類を言及していません。《ヌメロニアス・ヌメロニア》では明確に「効果として扱われない」ものを得ているとしていたにも関わらずです。
そのため《ヌメロニアス・ヌメロニア》と違い、実はこの特殊勝利条件は効果外テキストとして得ているわけではない可能性があります。
ただし、効果処理で見分けがつく内容ではないので、あくまで公式データベースの記載の法則性に基づく推測です。
もちろんこの公式データベースの記載に若干の不備があるという可能性もあります。
当然公式が言及していないことに則りwikiにおいても、この特殊勝利条件が「効果によって得られる効果外テキスト」なのかどうか直接的な明言を避けているので、公式以外は誰も把握していない謎です。

最後に


今回は《ヴェノミナーガ》の特殊裁定について掘り下げました。
今回の内容を書くにあたり、公式データベースを一通り見直したりしておりましたが、やはりOCGのテキストは非常に奥が深く、到底一個人では全てを理解しつくすことはできないものだと改めて実感します。

間違いのないよう気を付けて書いておりますが、細かい表現など問題があれば教えてください。逐次修正します。
また、何か情報の抜けなどありましたら、出典も記載の上で教えていただけると幸いです。
さすがにwikiの該当全ページのバックアップまで確認出来てはいないので・・・。

今回のようにこちらで「動画にするのはな・・・」と思った内容は、今回のようにnoteでまとめることもあるかもしれません。
また、そのような機会になったらお会いしましょう。

最後に、最近は医学会報告書動画を作っておりますので一応宣伝だけしておきます

では、またどこかで。


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