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創りごと:私

私は、ずっと優等生だったよ。
長文読解だって、論作文だっていい点を、合格点をとってきた。
教師たちの口ぶりから、定期テストで出る問題を嗅ぎつける能力も身につけた。
不得意科目は、担当の教師を立てながら、大体もう分かっている問題の質問をして、もともと分かっていたことを、さもたった今、先生のおかげで分かりました、ありがとうございます、感動、感謝といった具合で笑顔を振りまき、立ち去り好感を得る技も習得した。

そういう力では、歯が立たないのが「僕」。変な人。

私は社会人になっても、この類の力で、それなりに仕事をこなしてきた。
ずっと気づいてはいたけれど、この力は、見せかけ。はりぼて。
晴れやかな舞台の一幕しか役目を果たせない装飾。
その証拠に、この“力”で手に入れたものは、今の私の手元から綺麗さっぱり消えてしまっている。

だからかもしれない。「僕」のことを知りたくなった。「僕」は確かに変な人だろうし、理解不能な言葉でノートを埋め尽くすし、子どもっぽい。でも、私が引き止められず、指の間から解け出ていった何かを、今も間違いなく握りしめている。

私は今日の日記を締めくくる。

“私は「僕」のことが好きなようだ。”