コップ

寂しいね、寂しいね、って言い合ったところで、2人の寂しいは別物。それぞれ癒えることはなくて、また新たな寂しいねの誕生会。

でもね、新しい寂しいねは、別物じゃないからね。一緒に寂しい。

コップの表面、張り付く水滴。引き合って、1つになって、名無しの生き物、滑り出す。そのすぐそばから、もういない。もう二度と元通りにならないように。

ある人は名付けるでしょう。瞳にしがみついて、耐えきれなくて、一気に流れた涙です、って。

ある人は、寂しさだって。

飲み干された後、ひしめく氷。あれだけ信じ合って組み合わさって、急にカランと崩れて、ぬるっと半回転。ドキッとするね。
あとは、ごゆっくり。
こうなるって、実はみんな知ってたんだね。

寂しくて良かった。

結露した冷たいコップ。
手にジーンと伝わる冷たさと、手を濡らす感覚。滑り落ちないように、指先に力を込めて。

寂しいね。