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創りごと:僕と私と

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僕と私は話し合う。

なんだよ。どうやって会うのかとか、実は出会えないはずの2人だったとか、そういうところを山場にするのかと思ったよね。

今、2人は話をしている。

僕らはずっと同じところにいた。そして、これからも。

私だって気がついていたんだよ。

2人は、なぜか一通り話し合ったような雰囲気を感じさせる。

私を生んだのは「あなた」でしょ?

「あなた」だ。僕を生んだのも。

僕は、面倒くさいよと言わんばかりの素振りを見せるのに、目は優しく霞んでいる。
いつもの調子で声を出す。

まだ言いたいことがあるだろう?続けてよ。

私の口角と目が、うなずいた。

私たちを産んだのは別々の人だよね。つまり産みの親は違う。「あなた」はそうじゃなくて、あなたっていうのは、つまり、あなた。これを書いている作者のあなた、あるいは、画面の前でこれを読んでいるあなた。私たちを創ったあなた。

台本に書いてあるみたいに間髪入れず、私は続ける。

「あなた」は、私か「僕」になりたかった。とてつもなく不自由なのに、どこまでも自由な私たちに。
あなたは、自由に締め付けられて、不自由に苦しめられているけれど、私のいるところと、あなたの住む世界とを好きに行き来するようになった。

不服そうに首を傾けた僕が食い気味に

この作者は、不器用すぎる。読み手も、どうなんだよ。僕らをここまで引きずり出しておきながら、この期に及んで、まだ結末が思い浮かばないとさ。あまりに乱暴なやり方だ。

そう言われても仕方ない。「僕」と「私」に名前も付けず、地位も与えず、勝手に入り口を見つけて、帰りには扉を閉めずに出ていくのだから。

「あなた」は、きまり悪そうに

明日も会えるかな。できれば、明後日も。でも、いいんだ。劣化したプラスチック製品みたいに、ある日突然、いつもの強さだけ触ったのにバラバラになっちゃって、一生かけても元に戻らなくなってても。バラバラになったときには、もう初めて会った日の色も、質感も思い出せないからさ。その時には、ありがとうって、ちゃんと笑って言うからさ。お願いだ、明日もそこにいてほしい。そして、いなくなると決まったら、必ず前の日に教えてほしいんだ。君には、それができるだろう?

その言葉に、誰も応えられない。息をするのにも、ごめんなさいと言いたくなる重さを含んだ空気の中に、僕と私と「あなた」と。

創りごと。