創りごと:僕
さては、この敵、僕を味方につけようという魂胆だ。
「僕」というのは、僕のことでまず間違いない。僕を好きだと書いてある。
僕は、その手の罠には、ひっかからない。もし罠ではなく本気で言っているのなら、僕の創作日記を読んでそう言っているのだろうから、敵は家から出たことのない箱入りで、人間に会ったことがほとんどないに違いない。
いずれにせよ、敵に対して厳重警戒は続く。
箱の中といえば、この前の日記に書いたっけな。創作は箱の中とか、どうとか…。僕の謎の理論で仮説を立てれば、敵は箱の中、つまり創作物であり、僕の傲慢さが生み出した。
さっぱり意味が分からないや。
今日もSARASAという0.5ミリのゲルインキボールペン、儀式の相棒を指の間で回している。
それにしても、敵の僕に対する見解はあまりに的外れ。ここまで、褒められたり深読みされたりすると、バカにされているんじゃないかとまで思えてくる。
敵を攻略するには、まだ時間がかかりそうだ。
僕は得意の、それっぽく見える言葉で締めくくる。
“好きと言って、始まることもあれば、終わることも、どうにもならないこともある。”
「始まる」「終わる」「どちらでもない」を網羅しているんだから、そりゃ、ごもっとも。
敵の深読みに期待。