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スカラビアさんちについての私見

表題の通りの内容です。

これを書いている人間はツイステくんを大変ふんわりと楽しんでいるのですが──具体的にどのくらいふんわりかというと、一番層に刺さるのがおじたんの兄とかそんなレベルです──そんな人間がなぜわざわざこんな文章を書いているかという話からしようと思います。
流石の圧倒的分母数と言うべきか、Twitter上で適当に生きてるだけでもオタクの悲喜交交がぬるぬる流れてくるんですよね。感情的な内容も多い。その中でも特にあそこの二人は何かしらの紛糾が流れてこない日はないんじゃあないか?という程に活発に議論されている印象があり(自分のTLが偶々そうなのかもしれませんが)しかも人によって評価が二転三転腸捻転するもんだから頭がパァしてしまいそうになってきたので、この際だし自分の中の解釈を纏めるなどしようかな?というのが発端であり趣旨です。なので特定個人や界隈に対して言及する意図は特に無いということを念頭に置いておいてください。界隈とか俺は知らぬ。
もう一つ、言うまでもないことですがこれは四章配信までの現段階での俺の私見でしかなくその全てが正しいわけは当然ないので、「こういう考えもあるのだな」程度に読んでいただけるといいかと思います。ツイステくん、わりと解釈に幅が出せるジャンルだと思うし。

アラジンは「知っていれば楽しみが広がるよ」くらいの扱いだろうと思っているので触れていません。ウィル・スミスのことしか知らん。あと「物語上、最低限必要なことは本編だけで拾えるだろう(逆に言えば、それが拾えない時点で作品としてはちょっと不親切な設計であろう)」というのが個人的な考えではあるんですが、せっかく真面目に考える機会なので手持ちのキャラストに加えて持ってない分の彼らの幕間も読んではきたけど流石に人の話に出てくる彼らの姿までは網羅し切れてないのでその辺もよろしくメカドック。お豆の話も読んでない。復刻あればいいね。


●ラッコちゃんについて

一言で言えば底抜けに明るい善人というのが最もシンプルかつわかりやすいパーソナリティでしょうか。みんなが幸せなら自分も幸せ!とごく自然に思える人物であり、誰に対しても分け隔てがなく、面倒見がよくて、与え施すことに躊躇がない。他者の長所に対して目敏く、それを正当に評価し、妬まず、嫉まない。大多数の人間にとって好ましい存在だと思います。実際、寮生たちにたいへん慕われてるし(彼を素直に慕う、性根のひねくれてない人間が軒並みあの寮に集まっているとも言える)。

一方で、おそらくこれは「他者の長所に目敏い」という部分と表裏一体なのですが、相手が短所と認識したり気にしている部分をそうと認識しないのでかなりズケズケ言及するところがある。

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これとか。本人に悪意は全くないし、運動が苦手なのは彼にとって何も悪いことではないので思ったままを伝えてることは分かるが、それ故に始末に困るタイプ。平たく言えばデリカシーがない、察しが悪いところが多分に存在するキャラクターですよね。ついでに富豪故のズレた価値観を随所で無邪気にまろび出してくるので、ウミヘビくんの言うところの「傲慢」は彼のこのあたりの性質に由来するのかな?と想像できます。一挙手一投足に一番振り回されてる立場だしね。(海棲ヤクザの皆さんの言うそれはまた別の部分にあると思うんですが、後述します。)
更に言うと、彼は一度決めたらかなり頑固で滅多に主張を変えないところがあり、ついでにけっこう押しが強い。全ての物事においてそうではないけれど、こと宴の話になると富豪やめて海賊王になる気か?というくらい頻繁に宴だー!と言い出しては周囲の広範囲を巻き込む(ルフィはそこまで頻繁に宴を開いているわけではねえ)。この宴好きがかなり悪い方に出ていたのがラッコちゃんの実験服の話でしょうか。尤も、宴は成功して賓客もそれなりに満足したよ!というのがあの話のオチでしたけど。このあたりは彼の人徳であり、人をもてなす稀有な才能なんでしょう。

じゃあ彼は全く空気が読めない、察しが絶望的に悪いのか?と言うとそれが案外そうでもない。むしろ察知能力自体は良い方なんじゃないかと思います。立ち振る舞いや成績を元に「彼は自分を偽っている」と確信していたタコの人と違って、そういう部分に対しては滅法疎いにも関わらず「あいつは何か無理をしている」と確信を持っていましたし。具体的にどう無理をしているのか、という部分には思い至らなかったけれども。
これは近しい仲のウミヘビくんに限った話ではなく、そういった機微にはおそらく本能的な部分で敏感なんじゃないか?と感じられる場面はいくつかある。

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トレイパイセンの運動服の話では「聡いんだか鈍いんだかわからん」という評価を賜ってましたが、どちらも正解なんでしょう。相手の機微には敏感だが具体的にどうこうという理屈の部分には理解が及ばない、といった風に。
更に言えば、人の話を全く聞いてないわけでもないんですよね。全く話を聞かない人間に約束は守れないし、兄を悪く言うなというオルトくんの言い分を素直に聞き入れてきちんと謝罪もする。

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ここの話術が地味にすごい。
ラッコちゃんは絶対に否定から入りません。「お前はこんなことができるのか、すごいなあ!」と心の底から感嘆して、それから「でも、それじゃ面白くないぜ?」と自分の意向を不快感を与えず自然と相手に伝えることができる。そこに裏表は一切ない。これは間違いなく彼の才能でしょう、相手の心を掴む話術がある。なるほど商人向きですね、聡明な参謀がいればさぞ円滑に商売が回ることでしょう。裏表や下心が無いわりに本人の意向がしっかりと存在しているので、意外とカモにされにくいタイプな気がします。まともに商売する分にはVIPな人物。ところで兄貴は弟妹を何より優先するもんだろ?という意識が当然のものとして存在する長男いいよね……いい……

じゃあ、宴だー!状態の時にはそれらの能力が無効化されてるのか?というと、多分そういうわけではない。実験服の話で催した宴の趣旨が「あまり周囲と交流できていないウミヘビくんのために、同級生との交流の場を設けたい」だったあたり、むしろ相手が何かの要因で苦しんでいるなら、宴でパーッと楽しもう!という発想なんじゃないか?と推測できます。「歌え!踊れ!そうすれば嫌なことも忘れちまうだろう?」とも言っているし。嫌なことが全くない人間、嫌なことに理解の及ばない人間はこんなこと言わないよね。
まあ宴はセラピーの場ではないので苦しんでいる訳でもなんでもない人間でも目についたら招いてるようですが。自国文化を愛している彼なので、宴=みんなが笑顔で幸せになれる催し、という等号が成立しているのかもしれません。短所をそうと認識していないという部分に通じるのですが、宴に来るのが億劫という人物の存在は認めても宴そのものを疎んじている陰キャなど想像もできないのかもしれない。それ故にか時折り会話が成立しない時がある。オタクに優しいが優しさでオタクを殺すギャル(?)

そういった良くも悪くも底抜けの明るさと陽キャメンタルを持っている彼ですが、考えなしのただただ明るい馬鹿というわけでもない気はします。嫌なこと自体は知っているだろう、とは先程も言いましたね。

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ラッコちゃんといえば誘拐と毒殺未遂!(かなしい)
「ガキの頃から誘拐されまくってるから大抵のことじゃ驚かないぜ!」と豪語するくらい(こんな悲しい自慢ある?)誘拐されまくったり毒を盛られて昏睡したりとなかなか波瀾万丈、で済ませていいのか微妙なラインの修羅場を潜り抜けている彼ですが、これらの背景は普段の明るさからはあまり想像がつきませんね。知ってる人の方が少なそう。かと言って受けた被害に無自覚というわけでもない。何度も誘拐されたことは本人が言っている通り自覚的だし、「毒を盛られた」とは決して言わないが特技が毒の鑑定なあたりお察し案件です。というか、それが分からないレベルのうつけ者ではないと思う。
しかし、それについて悲観的な発言をすることは無い。全く気にしない訳でも傷付かない訳でもないっぽいのは四章の例の「お前だけは俺を裏切ったりしないよな?」などの発言からも察することが可能ですが、彼わかりやすく弱音を吐いたのが四章の中だけなんですよね(見落としてたらすまんが)。それも自分が裏切られて、傷つけられてつらいみたいな話ではなく「自分が気付いてやれなかったから、あいつはあんなことをしたんだ」って方向で悲しんでいる。まあ、これらの発言に対しては「そういうとこじゃね?」「ウザい」「気持ち悪いです」等、そ、そこまで言わなくてもいいだろ!くらいの総スカンを食らってしまったけれども……
これらの話から感じたことですが、ラッコちゃんは明るく愚かな善人故に過度に楽観的で悪意を感知しないというよりも悪いことは楽しいことで吹き飛ばして、悪意でもなんでも良い方に捉えて受け入れようと努めている人物なのではないでしょうか。本人が周囲の人間に概ね愛されているし生来から天真爛漫な性分、というのもあるでしょうが、意識的にそうであろうとしている部分もある気がする。家のことについて具体的な内容は憶測するしかないが、弟妹はもちろん父親とも確執のない良好な関係に見えます。実際、愛のある父親なんじゃないでしょうか。生まれた立場に付随する義務の話なんかは別として。
で、それ自体は自ら選んだ立派な生き方ではあるのだけど、なんでも良いように捉えようとすることは転じて相手の悪意を認めようとしないという部分にも繋がってくるんだよな。相手の悪意を認めないってことはつまり相手の意思、意向、ひいてはパーソナリティを無視するということに繋がる。
あの学園だと顕著ですが、当然ながらこの世に悪人はいます。悪人とは行かないまでも、性格が悪い奴はうじゃうじゃいる。性格の良し悪しに貴賤はなく、ただ実際やらかしたことには咎があり責任が伴うよ、というだけ(ツイステくんだとみんな学生かつ今のところ致命的なことにはなっていないので、責任問題もけっこうマイルドになっている印象だけど)。
「お前は悪い奴だ」を認めないということは、そういう人間たちの意思や責任を無視するってことなんですよね。実際にやらかしたことを受けてなお「あいつはあんな奴じゃないんだ、俺のせいだ」と主張することなんかまさに"相手の意思と責任を無視する"行為じゃないですか。タコの彼が「傲慢」と称したのはこのあたりかな?と言う気がする。貴方は全く悪くないけど貴方のその考え方は自分たちのように性格が悪い人間を真っ向否定するんですよ、という話。これも後述しますが、ウミヘビくんの溜めていたフラストレーションの中には"不理解"がある気がするので「貴方はそうやって彼を追い詰めてきたんですね」もあながち間違いではないのかもしれない。勿論そこに悲しいすれ違いはあってもラッコちゃん本人には責任も咎もないのですが。
あそこから「お前は悪い奴だ、でも助けてくれたのもお前なんだ」に着地した四章は良い落とし所だったな〜て思います。

●ウミヘビくんについて

彼に対する直截な印象は図太くプライドの高い凝り性の世話焼きといったところでしょうか。彼の世話焼き部分は従者の立場とか関係なく染み付いてるもののように思えます、ラッコちゃん相手に限らず見ちゃいられねえ!といったシーンでは思わず口出ししてしまう場面がそこそこあったので。ふろいどくんのダンスとか。

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何このおもしれー男……
この件はウミヘビくんがソウルを燃やす趣味特技の分野であるところのブレイクダンスの話だったからというのもあるんでしょうが、彼の世話焼き気質は従者としての義務感からくるものに限った話ではない気はしますね。四章前の段階だとわりと過保護なところあるし(そのくらい向こうが奔放、かつ野放しにするといろいろな意味で危ないということかもしれんが)。ラッコちゃんとは幼少期からの幼馴染でおそらくは元々兄弟のように近しい存在だったのと、彼自身さっぱりした距離感の妹がいるみたいなので、そのへん由来もあるかもしれぬ。性根の世話焼きが拭えない兄っていいよね……(兄いいよねbot)

常日頃のウミヘビくんといえば働き者、というよりもラッコちゃんに振り回されてや〜れやれしながら働いてるイメージがありますが、これらの業務全般も義務感というよりは従者という立場としてのプライドを感じる。凝り性の性分も一役買っていそう。
再びラッコちゃんの実験服の話ですが、ラッコちゃんの言動への苛立ちが積もりに積もってア゛ーーーーーもう知らん!!!!!!!!!とボイコットするところから話がスタートしていました。要するに彼ら、少なくともあの学園の中では主従と言えどあまりにムカついたら従者側が最低限以上の従者業務をボイコットできる仲なんですよ。なので、それが一時のストレスになることはあっても尾を引くことは多分ないんですよね。後押しの一つくらいにはなったかもしれないが、従者として日々奔走していることやその業務内容自体はウミヘビくんにとって恐らく重大な問題ではない。仕事人的なプライドすら持ってる。
更に言うなら、幼少期の両親の言を全て素直に聞いていたならラッコちゃんに対してもっと諂った口調をしてるはずなんですよね。「なんて口のきき方をするの!」と言われていたし。両親のぺこぺこと頭を下げる姿が嫌いなだけあって、忖度は仕方ないと受け入れてもそこは頑として拒んでいる。それを誰も咎めない(咎められたかもしれないが、少なくとも現状そんな言葉遣いはしていない)。ラッコちゃんがそうであるように彼も頑固だし、良い意味で遠慮がない仲だよね。
ウミヘビくんなら"約束"すれば二度と宴を開かせないことだって可能かもしれないが、彼はよっぽど噴き上がらない限りはなんやかんや言いつつ服を着替えさせ、食事を作り、寝床を整え、完璧に身辺の世話をこなしている。それは偏にウミヘビくんが彼自身の業務に対しては自信と誇りを持って臨んでいるからではないでしょうか。プライドと凝り性がたたってか、やるからにはパーフェクトを目指すあまり偶に自分で自分の業務増やしてるからな彼。妙な計画を練ってない時は大嫌いなガクエンチョ相手でも「見てろよ最強の宴を魅せてやるからよォ〜!?」方向に奮起してるので、凝り性の苦労性だな……と感じる。そんなだから四章がツイステッドワンダーランド外伝犯人たちの事件簿になっちゃうんだぞ!

※9/18追記※
上記で言及しているラッコちゃんの実験服の話なんですが、お豆のイベントの話と合わせるとあれって四章後にあった出来事みたいですね。教えていただきありがとうございます。そういえば四章本編だとスープを掻き混ぜるのさえ初めてだったねラッコちゃん。成長してるな〜。ところで世界でも希少なキノコの栽培に成功している魚人とは一体?
そうするとあの距離感、例の騒動後にお互い距離を測っている途中段階ということになるんでしょうか。忌憚なき関係性を築けているようでたいへん良いですね。ところでウミヘビくんは未だ周囲の警戒が解けていないであろう段階でうるせーもう知らねー!中止だ中止ィ!とボイコットを決行したことになるけど大丈夫なんだろうか。色々。まあ本人に有能な従者という矜持があるからいっか。あと俺がこれを四章前と認識してたのはラッコちゃんが宴を開いた動機で、ラッコちゃんは自分の世話や副寮長としての仕事で忙しく人とあまり関わる時間のないウミヘビくんを気遣ったのかな?と思っていたんですが、あれってつまり例の騒動から未だに周囲と打ち解ける様子のないウミヘビくんのために宴を計画したということなの?それは……なんか……すごいな……
ただ、これも上記で言ったとおり大人の言うことを何もかも素直に受け入れ阿っているわけではなく、立場的には主人であるはずのラッコちゃんへの口調なんかは一貫しているので、やはり従者としての勤務内容はあの騒動の主軸ではないだろうなあと思います。あれらを経て彼らなりにより良い関係性を築く過程で今まで当然だった部分も少しずつ変化していっているのが分かる、良い幕間ですね。一方で変わらない約束もあるよ、という。
※追記ここまで※

しかしその勤勉さが副寮長として信を置かれ慕われている所以なのだろうな〜と思う。朗らかで行動力があり人望に厚いがどこか抜けている寮長と、それを上手くサポートして業務を円滑に回す副寮長っていう良いコンビなんだよね。あれだけメチャクチャなことしても純然たる巻き込まれ被害者である寮生たちになんやかんやで許されているのは、それだけ平時の貢献度が高かったのでしょう。あそこの寮生に真面目な善人が多いってのもありそうだけど。サバンナなら秒で暴動だぜ!

ウミヘビくんのプライドの強さは四章以前の彼の成績にも如実に現れています。彼に求められていたのは「何事においてもラッコちゃんを上回ってはならない、主人より目立ってはならない」であって、全科目平均値でいろなんて誰にも言われてないわけですよ。何なら手抜きにも多少はムラがあったほうが目立たないまである、実際それでタコちゃんマンに目をつけられてるし。だがしかし彼は全て平均値、目立ちはしないがさしたる穴もなく、あまりナメられないであろうラインを維持し続けた。それだけの能力があることを隠しながら。杜王町在住の殺人鬼の方かな?そういう滲み出るプライドの高さもタコちゃんマン的にはイイネポイントだったのかもしれない。有能でプライドが高くて性格が悪い人間に対するセンサーが搭載されているタコ。

とはいえウミヘビくんは自身の能力を惜しみなく披露し、それを正当に評価されることを求めていたので忖度環境は大変なストレスだった、というのは本編で聞いた話です。逆に言えば、自身の能力が正当に評価されることは彼にとってこの上なく喜ばしいことなのだな。

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嬉しそッ
この点でいくとラッコちゃんってけっこう主人としての相性いいんですよね、相手の長所を目敏く見つけて評価できる人間なので。ウミヘビくんの式典服の話なんか「君たちこっちが想定してたより相性がよろしいね……?」という気持ちで読んでしまった。それ故に理解されないストレスも大きかったのだろうが、まあこれは後述。

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おじたんとはあからさまに相性が悪そうですね。おじたんは自覚的に高慢で横柄だし、実利(と夢)を与えるが労いと評価は特に与えないので……従者の相性……
あとラッコちゃんが死にかけて心臓止まるかと思った……って反応してるあたり情がないわけではないのだろうな。お前の生死に俺の首がかかってるから、というのもあるかもしれないが、それだけでああいう反応はしないんじゃない?と、思う。

正当な評価を求めているし、その上で一番を目指したいし、それなのに全力を見せることを生まれながらに許されていないというのが彼の主なフラストレーションですが、全てを他人の評価に委ねているわけではないんですよね。むしろ絶対的な自信がある(からこそ、それを対外的にも認められたい)。そして、その軸があるからなのかメチャクチャ図太い。カレーでぶっ倒れてもカレー食うくらい図太い。毒味は従者の義務の一つであり、それを完遂するのは当然という考え方なのでしょう。一方のラッコちゃんはめちゃくちゃ引き摺ってるけど。お前の飯しか食べない!はそこ由来でもあるんじゃろな。

四章では腹の内全世界中継とかいうBMPもかくやのしっぺ返しを食らってしまったウミヘビくんですが、全世界に配信されたことによってむしろ吹っ切れたので良い機会だったんじゃないでしょうか。結果論だけど。本人の図太さが良く働いてますね。
配信に関してはハッタリでは?という話もありますが、本編であれはハッタリだったと今のところは明言されていないし配信していたことを否定されてもいない、それにあのヤクザ共がハッタリでそんなことするか?あいつらなら"やる"ぞ?という個人的なイメージ等から、配信はされたんだろうな、と今のところは思っています。エースデュースくんらが知らないのは、あのLINE(ではない)が来てからずっと公共交通機関を乗り継いで追いかけてたと思えば当然かなとも思うし。俺たちズッ友だよな!突然タルト作りに駆り出されたことは忘れねえけど!
そしてそれはつまりあの騒動が公になっても目立った罰は受けていないし、解任もされていないということでもあります。ご実家が察知したのか、察知したとしてどう受け止めたのかって話は描かれていませんが、ラッコちゃんちはウミヘビくんを今後もラッコちゃんの従者として信任するよ、という落とし所である可能性が高いように思う。尤も、仮にあれが弱味を握るためのハッタリだったとしてウミヘビくんが周囲の大人に気を使って忖度することは二度とないのでしょうが。
(脚注:BMPとは…ベンゼンメガネペラペラ之助の略称。"愛"を真摯に描いた大人気漫画(主観)ラブデスターのとある登場人物へのファンからの愛あるニックネームだぞ!詳しくは本編を読もう!受けたしっぺ返しの内容以外の共通項は特にない。)

四章後は吹っ切れて忖度とか知らね〜!!!!!!!!!!!!と全力を出せるようになっているので良かったネ〜と思って見てるんですが、自分は想定していたほど万能ではないっぽいぞ?というのを逐一悟ることになっているのが現状のウミヘビくんなのかな、という気もしています。爪を隠し続けてきた弊害の一つかもしれません。元々そういうケは多少なりあったけど、あの白々しさがイマイチ隠し切れてない慇懃無礼さとか……

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俺が指摘されるなんてまるで予想していなかったぜ!という顔すき。
しかしウミヘビくんは先述した通りプライドが高く凝り性で克己心がとても強い努力家タイプ、そして上を目指すためにその道の先達に教えを乞うのを恥じることも躊躇うこともない人間なので、その都度成長していくんだろうなぁと思う。ダンスの高みへ至るためにヲタ芸に師事するのすごくないですか?オタクに優しくはないけど偏見もないギャル(??)

腹を割って話し合う機会を得、忖度の必要がなくなり、業務も安定して、といった風に総じて四章は結果として彼に良い変化を齎している気がします。やったね!そうかな?

●四章の顛末と、二人の関係

先ほども述べましたが、基本的に相性はいい二人なのだと思う。共にいる時間が長いから、こいつはこういう奴だと大方のところは理解し合っている(あいつは言い出したら聞かない、あいつがこんなミスをする筈がない、等)(ラッコちゃんの善性を最も理解しているのはウミヘビくんだろうし、ウミヘビくんの表沙汰にしない克己心の強さなんかを誰より理解しているのはラッコちゃんなのだろうなぁ)のもあるし、お人好しで朗らか故に愛されるけど少し抜けてる主人とそれを適度に諫めつつ円滑に事を回す有能な従者って組み合わせはうまく嵌っている。ラッコちゃんはそんなウミヘビくんの有能さを全面的に認め信頼しているし、ウミヘビくん側も式典服の話なんかを見るに自身の働きを真っ当に評価され称賛されること自体は満更でもない様子。

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お互いへの理解が深〜い。

じゃあ何がまずかったのかと言えば、自分だって一番を目指したいのに生まれついての立場から忖度を強要されて叶わないことに対するフラストレーションから来るストレスの蓄積が最も大きい感情であり、齟齬であり、彼らの関係性の上にずっと横たわっていた問題点だった。ラッコちゃんもウミヘビくんと同じく偶々そういう立場に生まれただけで立場故の労苦もある存在だし、そう在ることに責や咎があるということは勿論ないのですが、ラッコちゃんが主人という立場である時点で従者であるが故に課せられる戒めに不満のあるウミヘビくんにとっては自動的に目の上のタンコブ的存在になってしまうんだよね。まあしかしタンコブに罪はない(言い方)のはウミヘビくんもたぶん分かっているし、再三言うとおり相性自体は普通に良いので、なんやかんや上手くやってこれたんでしょう。ラッコちゃんが寮長に、自身が副寮長になるまでは。
水面下で燻っていたそれらの鬱憤が、ガクエンチョの「寮長の座はラッコちゃんの実家のパイプによって決まったんですよ〜わかってくれますね?」という言葉で爆発してしまったんだな。CV宮本充氏ということを差し引いても教育者としてアウトだぞお前!
というかラッコちゃん、寮生の面倒をよく見ていて少し抜けてるところも含め彼らに慕われているのであの寮の寮長向きだし、そういう意味ではわりかし有能ですよね。人徳は才能。それ自体は仮に建前上だろうとウミヘビくんも理解してたのか「寮長に向いてるのはお前のような奴だ」という旨の話をしているし、人柄とそれに伴う人望という強みがあったからこそ四章では先ずそれを削ぎにかかる必要があったわけで。そんな彼の抜けてる部分をサポートしながら寮生のことも見ているウミヘビくんと合わせて、二人とも寮生に慕われているんだな〜というのがわかります。
とは言えガクエンチョのことだからコネからの勝手な忖度があってもおかしくはないんだよな……とは思いつつ、仮にあそこで「適材適所」という言葉でも出てたらドッカーン!!!!!ヒャーハハハ!!!!!あばよ!!!!!!!することはなかったんじゃないでしょうか。あれ、最初なにごとかと思ったけどアラジンのオマージュなんですね。初めて知ったぜ。

お気付きでしょうが、この件で彼がブチギレる正当な相手ってラッコちゃんじゃなくてガクエンチョなんですよ。両親は……生活のこともあるし、渋々ながら承諾できたラインなのかもしれない。ガクエンチョはそうではない。
作中でも何度も、それもかなり強い言葉で言われていることですが、四章の事件で最も被害を受けたラッコちゃんは間が悪かった、至らない部分があった程度の話で、この件についてはあの二人なら100-0でウミヘビくんが悪いんだよね。あくまでもあの二人の話なら。それをラッコちゃんが0-100にしようとして総スカン食らったのが例の地の果てでの会話であり。
ウミヘビくんに要らぬ忍耐を強いて理解を求めたのは彼の周囲にいた大人だが、彼のやったことで実害を被ったのはラッコちゃんと寮生たちである、というのがやたらめったら紛糾する一因なのだろうなあ。

でもウミヘビくん、単純に矛先を誤っているわけではないんですよね。洗脳(されてない)タコちゃんマンとの会話からしても、彼が自発的かつ徹底的に追い詰め陥れたいのはガクエンチョでしょう。何故タコチャンマンはウミヘビくんとガクエンチョのこと知ってたの?ヤクザだから?ところで普段は上位争いしてるらしい(真面目な生徒が多いんだからそりゃそうだろう)スカラビアさんちの成績が最下位だったのってどう考えてもイソギンチャクのせいだと思うんですけど、自分で撒いた種を切っ掛けに芽吹いた騒動を自ら徴収しにお邪魔するのマッチポンプの化身か何かなのかな。この面の皮がアツい2020
閑話休題。四章の計画自体の趣旨は私怨というより「こいつをうまいこと手を汚さずに蹴落として俺が天に立つ」がメインではないでしょうか。尚のこと最悪だぞ!?更にそのための筋書きが「最下位という結果に憤った寮長が強制的に合宿を始めるが、あまりの暴虐に耐えかね求心力を失いクーデターを起こされる」とかいう究極に迂遠かつ絶妙に自分の従者としての格も落とさないラインなのがまたなんともですね。あいつの人望を削ぐために……洗脳!これでいく……!
でも、それだけ壮大な計画を練って私が天に立つしてる割には実際キングになってどうこうってイメージがフワッフワなんだよな。実際に頂点に立ってやることが「とりあえず飯持ってこい!俺を褒め称えろ!」ですよ。一昔前の暴君でももうちょっと凝ったこと要求してくるぞ。
しかしそれも当然でしょう、だって彼の本来の願望は頂点に立つことでも王になることでもなく「俺だって誰に気を使うこともなく一位を目指したい」という過程の話ですから。ラッコちゃんもそういうとこあるけど、一見して思慮深いようで一度アクセル踏んだら深く考えずに突っ込んでいくタイプなのかもしれん。一人旅してえな〜!という願望は具体性のあるものになりそうでよかったね。

ラッコちゃんを蹴落とすのは手段であって目的ではなかったんじゃない?という話をしましたね。その全てが白日のもとに晒された時にはもうヤケクソでうるせ〜知らね〜!どうにでもなれ〜!!俺が王様〜!!!!と大暴れしてました。では「大っ嫌いだったんだ!」もその場限りのヤケクソ発言でしかなかったのでしょうか。
そうではない。忖度の強要と別口ながら密接に関わるところで、恐らくウミヘビくんはラッコちゃんに対して名状し難い感情を抱いている。「大っ嫌い」はそれらの鬱屈した感情の端的な表出を感じた。

何度も繰り返し言っていますが、彼の不満の中核は「忖度を強要されること、そのように在ることを期待されること」です。それを求める大人は決まってこう言います、「賢い君なら分かってくれるね?」と。

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ここから「大人に一方的に理解を求められながら、自分は理解されることがない」というのも忖度環境に身を置くストレスに拍車をかけていたと推察できますね。彼の置かれている環境やその中での苦労について理解者の一人でもいれば違ったかもしれない──と一瞬思ったけど、ウミヘビくんのそういう部分を真っ先に察知していたのってタコちゃんマンだからこの話は無しということで頼む。

話を戻しまして、「誰が俺をわかってくれる?」に最も近い人物がいましたよね。そう!ラッコちゃんです!カンカン(貝を割る音)
何度か言及していたように彼らは基本的に気心の知れた仲であり、互いの解像度も高めです。そしてラッコちゃんは「あいつは凄いやつなんだ!」とウミヘビくんの有能さに逐一言及している。本人にも伝えてる。最も理解者に近い立場にいる存在なのだな。
しかし彼は気付かない。ウミヘビくんの有能さを理解しているし寮長に選ばれるのはお前だと思ってたのにな〜とまで言っていたけれど、そんな彼のそこそこな点数を見ても「そっか〜、頑張れよ!」としか思わないし言わない。気付けや鈍感野郎💢という感情はウミヘビくんの期待と、それを悉く裏切られ続けた苛立ちの積み重ね、なんじゃないかなあ。別に相手を理解しなければならない義務はないんですけど、感情的な話としてね。
まあ、これも既に言ったがラッコちゃんはウミヘビくんが何かしら無理をしていることには感覚的に気付いていたようだし「もっと気楽に生きればいいのになぁ」とも言ってたんですけどね。実際ウミヘビくんが求めてたのって自分を戒めるものから解放されて気兼ねなく生きることなのであながち間違ってないのが、こう、まさに「鈍いのか聡いのか」となるポイント。ウミヘビくんの悩みはラッコちゃんの得意とする宴や気遣いでは解決しないものだったので悲しい話だね……

しかしこれらの感情、ぶっちゃけ全部モノローグの独白なのでウミヘビくん本人の中にしか存在しないしたぶん正確には伝わってないねこれ!ラッコちゃんはヤクザの皆さんとの会話を通じて漠然と「親の地位や主従関係のことで要らない気を使わせていた、俺はずっとそれに気付かなかった、そういうところがあいつを追い詰めたんだ」と思っているっぽいし。そうだけどそうじゃない。

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そしてこの渾身の「は?」である。遠慮、じゃないんだなぁ。
しかしながら関係性を築く上で完璧な相互理解を得る必要なんてないので、現状そういうことでいいかもう知〜らね、という落とし所なのだろう。なまじ相互理解度は高めなぶん、お互いに相手の理解の及ばないところはあるしそれでいいのだ、を受け入れるのにワンステップ必要だったのかもしれんね。不理解の理解と受容とでもいうか。

彼らの関係、回想でのやりとりを見るに元々は気心の知れた友人というのが最も近いものだったんだと思います。兄弟のような、やライバル、も含まれるかな。そこに家で定められた主従関係が後付け的に加わったけれど、この際に生じた軋轢が解消されないままここまでズルズル来てしまったのが四章以前の彼らなのかなぁ、というのが個人的な見解。
そして力技で一本化されたそれらに「友達」と名付けたのがラッコちゃん、「主従」と名付けたのがウミヘビくんなのだな、という認識でいる。変化の痛みは伴うだろうしちょっと寂しいと思う時もあるだろうが、変わっていくこと自体は悲しい話ではないな、と個人的には思います。「利害関係がないなら関わりたくない」は言い換えれば「利害関係が発生するのでお前とは今後も関わっていくぞ」なので。

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忌憚のない関係の二人の会話というかんじで好き。
彼らは少しずつ学び変わっていっているようだし、今後とも良い方向に変化していけると良いな〜って。


●最後に

長々と語りましたけど、最初にも言っているとおりやわらかエンジョイ勢の所感でしかないので「そういう見方もあるんだね〜」くらいに見ていただけると幸いです。解釈はよっぽど変なこと言ってない限り人それぞれだしね。これもはじめに言ったがツイステくんなんか特に解釈に幅が出る作品だと思うし。
ただ一方を過剰に擁護するあまりやったことに対する責任の均衡を求め始めたり無から悲劇を捻出したり謎のいちゃもんをつけ始めたりするのは俺は好きじゃないぞ!これは俺の感情です。終わり。完。

あ、そういえばウミヘビくんお誕生日らしいですね。おめでとうございます。エキゾチックホストって感じでイカしてるね。


●追記(9/14)

五章が配信されましたね。急に歌とダンスが始まったので頗るビックリしたんだゾ。あと正々堂々戦おう!って手袋を投げてきた生徒がナ゛メ゛ン゛シ゛ャ゛ネ゛ェ゛!とか言い出したからゲタゲタ笑っちゃったんですけどこれ仕様なんですか?
新情報も出てきたところで、四章時点で不明瞭だったために憶測で語った部分について放置するのは不誠実かな〜と思ったので追記です。

・全国配信のハッタリについて
これに関してはもう俺がお前の性格の悪さをナメてたわ……としか言えねえ。そうだな!そんな重要な証言わざわざ全世界公開して手札を捨てるなんてしない男だな君は!そういや弱みがどうこう言ってたし!でもウミヘビくんも「いやお前ならやるだろ」って言ってて笑っちゃった。ワイトもそう思いました。というか彼、三章で既にやりすぎた結果痛い目を見る、ということを身をもって体感していますもんね。くっ……学んでやがる……この叩き上げ努力家ド根性オクトパスめ……
一方で、さすがに思春期真っ盛りの青年の抑圧からの感情任せの吐露が全国ネットに乗るのは悲惨すぎるので、よかったな……とも思いました。守ろう!青少年の未来!
家があの騒ぎを知らないとしてももう二度と忖度はしないだろうし、その上で「ラッコちゃんから解雇されない限りは従者としてやっていく」と本人の意思できっぱりと断定していて、良かったですね。まあ仕方ないさ、と受け入れてるところも良い。図太い!面の皮が厚い!健康!

・寮生たちの反応
四章ラストだとみんな笑顔で宴!だったのでエグい巻き込まれ方された割に朗らかな雰囲気だね!?と思いつつ、貢献度も高かったろうしこれまでの苦労も偲ばれるから理解があったのかな〜と何となく思ってたんですけど、結構まともな糾弾を受けてましたね。慕っていた寮長を洗脳するわ、地獄の行進を強いられるわ、咎のない寮長に対してのヘイトを溜めさせられ利用されるわ、ついでの流れで洗脳されるわ等々の憂き目に遭っていたのでまあ、いくら温厚な生徒でもそりゃそうなるな……
しかし大事にならなかったのは一番の被害者であるラッコちゃんが許していることと彼の仲裁は勿論のこと、その中でも言われていた「この中で副寮長の世話になっていない奴はいない」という実績ありきなのだなあ、と思えたのが良かったですね。学園内での信用の失墜、人望の喪失は仕方ないとして、一学生が長年の鬱屈を爆発させたことで全ての未来が絶たれることが無いのは運のいいことだよ……本当に……
不満はありつつもそれを一旦飲み込んで大勢を見ることができるのはまさしく熟慮の精神に他ならないので、彼らがそのような生徒でよかったなぁと思います。そんな彼らがあの寮の生徒だったからこそギリギリまで寮生たちの不満が爆発することはなく、罪のない人間が陥れられる最悪の事態は免れたわけだし。サバンナなら(後略)
ところでああいう事があった後で自分たちの間のすれ違いと不理解を認めて、ウミヘビくんが悪いことをしたという事実も受け入れ、その上で「確かにあいつは許されざることをした、けど有能だ、みんな世話になったろう?」「時間をくれないか?」という言い方をするラッコちゃんはたいへん大局を見られる上にやはり話術に長けた人間だなぁと思ったし、成る程たしかに熟慮の精神の寮長……となりましたね。天然にしろ狙ってるにしろ、個人的には天然でやってる印象を受けましたがそこに関しては憶測しかできないので置いておいて、言いくるめ95くらいありそう。そして何よりウミヘビくんの有能さを最も理解しているのはラッコちゃんですからね。

・二人の関係
やっぱ仲良いじゃん!?
というのは配信済のストーリーを読んだ上での雑な感想ですが、やっぱり君たち相性いいよね?いいよ。確執がなくなったぶん以前より良好な関係でさえある。先に言ったようにウミヘビくんも自分で自分の今後の身の振り方を「こいつに解雇されない限りは従者である」と決めているし、ラッコちゃんも他でもない本人の意思で共にあることを選んでいるので。お友達であることが必ずしも"良好な関係"の必須事項ではありませんしね。
未だ最適な距離感を互いに測っている段階だとは思うんですが、少なくとも彼ら二人はもう大丈夫だろうな、と確信できました。これからどんどん良い変化をしていってほしいところです。ところでタコちゃんマンが勧誘絶対お断り(ガチ)を繰り返されてて面白かった。当たり前だよなあ!?


以上です。五章、楽しみですね。そういえば合格通知は矢文だったわけだけど、刺客と間違われなかったんでしょうか。

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