学祭本2015感想②

やつらは時間に嫌われた 感想

 文学的だなあ(小学生)ってなる文章。部内ではいわゆる純文学に一番近いのでは、と思うけどそもそもそっち方面を志向する人がほぼいないしまあ当然といえば当然?(よくわかっていない)

 中盤、ラノベ・シリーズもの批評パートはこの話の中で持つ意味であるとかを一切考えないでそのまま読んだら面白いと思う。実際、そこをメインで楽しんでもいいのではくらいの感覚だった。作者の批評というか論はたいてい面白い。

 ではそのラノベ批評について、ラノベの下劣さについて論じられる中で、作中行われるギビーへの性的虐待をどう捉えればいいか、みたいな話も当然出てくるんだろう。ラノベにありがちなラッキースケベよりよっぽど下劣なことが存在しているけどその辺どうなのよ、というメタ的(?)な問題提起を感じた。けど、残念ながらラノベにも純文学にもたいした見識がないのでそれをどう論ずるかについては誰かやってくれという感じ。なので、ギビーに対して行われたことには「不覚にも興奮した」くらいしかいうことがないです。

 一応、ラノベについて知らないなりに考えるならば、いわゆるラノベに分類される話は設定や世界観が「こんな世界だったらいいのになあ」という感情を想起させるものが多いような気がする。一方で純文学的な世界観といえば不条理であったり現実の残酷な面を切り取ったものが多いような気がする(根拠が希薄すぎてどちらも気がするだけ)。この考えを進めていくと「その世界に憧れを抱くかどうか」がラノベと非ラノベの境界を決める基準の一つとすることができるのではないか。そしてラノベ世界への憧れをラノベが掲げるライトなエロに対しての憧れと拡大して捉えれば、その願望のストレートさというか、あけすけな欲望に対する反応として「ラノベは下劣」という評価に落ち着くのでは、と思った。よくわからないですね。

 シリーズものについてはナンバリング化を嫌い「~・ジェネシス」なんかにしてしまう手法に効果があるか懐疑的でも作中論じられることに概ね納得という感じ。同じ枠の別物に意味があるんだろうか、結局1を見ないと100%楽しめないのでは、と思ってしまう性格なので素直にナンバリングにしちゃえよ、と思わなくはない。とはいえナンバリングが進むと手を出しづらくなるのは事実なので商業的には正しいんでしょうね。自分だったら今更やったことのないファイナルファンタジーをやるのもどうなんだろう、みたいな。リメイクについても、逆に成功と言われる作品を挙げられるだけ挙げてみてくれと言いたいくらい自分の中ではパッとしない印象があるのでシリーズ論は特にわかるわぁと思いました。


バーチャルリトルワールズ、エンド 感想

 恋じゃないって言ってるけど、これは恋でしょ絶対恋だと思っていたらやっぱり恋だよウワァ~って感じ。よいですね。「恋なの?」とか好きですね。台詞が青いというか若さ故の特権というか。

 最後にしなないまほうで締めるのはそこだけ見ればいいシーンに思えるけど、直前の「やめだやめだ、こんな茶番は」からの繋がりを考えると「茶番」側でない言葉で終わらせた方がしっくり来るような。「やめだ~」のところが好きだし一番重要な台詞だと思ったのでそう感じたのかもしれない。「やめだ~」はそれだけでも良いけど、その前の「茶番」の台詞の間間に「違う、言いたいことはこんなことじゃない」的な心の叫びがあればより好物だった感はある。ベタだけどそれがいいんだな。

ストーリーについて。タイトルの通り二人だけの世界が終わるって話だけど、これは終わりよりもむしろ始まりを示唆しているというか、恋愛ものとしてはここからがよいところよね。だからというか、この話はなんとなく現在恋愛中の二人の過去エピソード(回想?)みたいな印象がある。それがどうした、と言われると特に何もないんだけどこの文量で恋愛を描くのって結構難しいよね、という話にはなってきそうな気はする。あまり恋愛ものを読んだことはないけれど、小さなエピソードの積み重ねで二人の関係を形作っていくのが恋愛ものの常套手段であるように思うので。脇役にも男女を配置しようとすると必然的にキャラ数も増えてしまうしメイン二人に割く力が減ってしまうけど、いないといないで話が進めづらいし按配が難しいですよね。

ただ、作者がストーリーを重視するというよりも「こんなシーンを書きたかった」タイプなら良い場面はいくつかあったしそれは十分成功しているように思う。言い回し、表現なんかはおおっと思うものがあって、たぶんそれらしいシーンを連ねるだけでもそれなりに話として成立してしまうような文章だな、という感じ。羨ましいです。

描写に光る部分が目立つ一方で、荒ぶる鷹のポーズであったり人によってはこの語のチョイスおかしくない?と思うところも割と多め。パロネタみたいなのもあるんですかね。自分も実は話の雰囲気にそぐわない(と思う)語があまり好きでないタイプなので気になったりした。

もう一つ、文章の特徴として「これは言わなくてもわかるよね?」的な省略がけっこうあるように思った。一番顕著なのは下駄箱、ローファーのあたりで「ちゃんと読めばわかるけど、どの言葉が何に対してかかっているかわからない」状態になったので強気な省略の仕方だなあという感じ。自分は割とくどいくらいの説明が嫌いでないけど、基本的に文章は簡潔である方がよしとされるらしいので、このくらいが良いのかもしれない。

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