すべてのおてんば娘は「トランスジェンダー」とタグ付けされる。
手術やホルモン剤による、性役割不適合者(sex-role nonconformity )の「治療」を推奨する背景にある、用語の変化。
このエッセイは、2022年9月22日付の『ウォール・ストリート・ジャーナル』に掲載された。
ジェンダー・クリニックの紹介データや、疾病対策予防センターの調査に基づくウィリアムズ研究所の最近の報告書(https://williamsinstitute.law.ucla.edu/wp-content/uploads/Trans-Pop-Update-Jun-2022.pdf)によると、自らを「トランスジェンダー」と表現するアメリカの若者の数は、過去10年間で爆発的に増え、20~40倍にもなっているそうだ。なぜだろう?
報告書の著者であるジョディ・ハーマンは、それを 『困惑させる質問 』と呼んでいる。臨床心理学者のエリカ・アンダーソン氏は、この急増についてこうツイートしている。「説明がつかない……私たちがまだ理解していない何かが起こっている 」と。
2つの有力な説明は、社会的受容の拡大(greater social acceptance)と社会的感染(social contagion)である。どちらも一因だろうが、私はもっと単純な理由だと考える。それは、用語の変化に起因しているのだ。
最近まで、「トランスセクシャル:transsexual」という言葉は、異性装のアイデンティティを持つ人(people with a cross-sex identity)、異性になりたいと願う人(a desire to be the opposite sex)、あるいはgender dysphoria(性同一性障害/ジェンダー違和)と診断された人を指していた。現在使われている「トランスジェンダー:Transgender」という言葉は、もっと広い意味を持っている。厳格で伝統的な性役割(rigid traditional sex roles)に対する単なる不適合も含まれる。
もしあなたがおてんば娘(tomboy)やフェミニンな男の子(feminine boy)なら、つまり、あなたの表現や行動が、あなたの性別に対する伝統的な期待に基づいて典型的に関連づけられるものと「異なる」ならば、あなたはトランスジェンダーだ…ということになる。
多くの若者が、自分の性別(sex)を「矯正:correct」するためにするために医療の助けが必要だと考えるのも無理はない。
この概念は、重要な科学的&医学的組織によって広められている
・家族計画連盟(Planned Parenthood provides services )は、すべての拠点でトランスジェンダー患者へのサービスを提供しており、2020年には自らをアメリカの 『第2位の規模を持つジェンダー肯定ホルモン医療の提供者 』と表現している。
同社のウェブサイトでは、「ジェンダー」を「行動、特徴、思考に関する、社会的・法的地位、社会からの一連の期待」と定義し、「より本質的には、性別(sex)によって期待される行動」と断言している。
「ジェンダー・バイナリー:gender binary:ジェンダー二元制」とは、出生時に割り当てられた性(based on sex assigned at birth)に基づいて、『雄/男性/男性的:male/men/masculine』『雌/女性/女性的:female/woman/feminine』を、厳密にどちらか一方のみ選択するという考え方」であり、
「ノンバイナリー:nonbinary」とは、ジェンダーが、出生時に割り当てられた性別(sex)に基づいて、『雄/男性/男性的』、あるいは『雌/女性/女性的』というどちらか一方の選択肢しかないという性別二元論的な前提への拒否反応(rejection of the gender binary’s assumptio」であるという。
・米国で臨床実践の規範を定めている米国心理学会(The American Psychological Association)は、「トランスジェンダー」を「その性自認(gender identity)、ジェンダー表現(gender expression)または所作(behavior)が、出生時に割り当てられた性別(sex)に通常関連するものに適合しない人々の総称(umbrella term)」と定義している。
ホルモン医学の実践と研究を目的とする世界最古で最大の組織である内分泌学会(The Endocrine Society)も、ほぼ同じ表現を使っている。
アメリカ精神医学会(the American Psychiatric Association)も同様で(https://www.psychiatry.org/patients-families/gender-dysphoria)、「ジェンダー表現」の定義は、「伝統的な期待に基づく内面の性自認を反映する場合も、しない場合もある、人物のジェンダーの外見上の現れ」であるとしてる(https://www.psychiatry.org/patients-families/gender-dysphoria/what-is-gender-dysphoria)
・CDC(Centers for Disease Control and Prevention:アメリカ疾病予防管理センター)は、「国民の健康を守る、科学的根拠に基づく、データ主導の全米トップのサービス機関」を標榜しているが、「トランスジェンダー」を「性自認または表現(男性型、女性型、その他:masculine, feminine, other)が出生時の性別(男性、女性:male, female)とは異なる人の総称」と定義している。
病院は、自分たちが不適合者を医療化(患者化:medicalizing)していることを隠しもしない。カリフォルニア大学サンフランシスコ校の「ジェンダーを肯定する健康プログラム:Gender Affirming Health Program」は、「二元的なジェンダーの物語(narrative)の中で生きていない人々」のための「ホルモンと外科的な移行」への配慮について次のように説明している。
「このプログラムには『ジェンダー・クィア(奇妙なジェンダー/変態)、ジェンダー・ノンコンフォーミング(ジェンダー不適合)、ジェンダー・ノンバイナリー(非二元的ジェンダー)」を自認する人々が含まれる。」
シカゴ小児病院(The Children’s Hospital of Chicago)は、その患者には 「拡大されたジェンダー(gender expansive)またはジェンダー不適応(gender non-conforming)の子供たち 」が含まれるとし、それを 「割り当てられた性別(sex)とは異なる行動をとる子供や青年」と定義している。
性別不適合(sex nonconformity)とトランスジェンダリズム(transgenderism)の同一視は、トランスジェンダーの利益団体に支配(presided)された裁判所の判決や官僚的なガイドラインを含む複雑な法的手順を通じて、徐々に生まれた。
女性のための法律運動から借用した不服従(nonconformity)という規定(frame)は、2000年代初頭に考案され、オバマ時代に強固なものとなった。この規定は、規則制定手続きを回避し、タイトルIX*違反のペナルティとして、学校に生徒の性別自認(gender self-identification)を尊重するよう強制する権限を、連邦市民権局の裁判官と官僚に与えるものだ。
私たちは、風変わりな個性を持つ子供たちに対して、思いやりと受容の心を持って接するべきだ。しかし、トランスジェンダー・イデオロギーは、その逆を行く。
子供たちが自分自身をトランスジェンダーだと言うと、しばしばジェンダー・クリニックに行くことになり、「ジェンダーを肯定する」セラピストが思春期ブロッカーやクロス・セックス・ホルモン、さらには手術を処方して、「ジェンダー・アイデンティティ」(つまり社会的役割&固定観念)と、その子の生物学的性別の間に認識された「ずれ:misalignment」を、「修正:fix」することがある。
イデオロギーの課題単独でも、これは極端に後退している。
このような概念を性差別的で抑圧的なものとして正しく評価し、異端児(nonconformists)を社会的な汚名から解放するために戦った女権活動家たちの数十年にわたる活動を否定するものだ。
そして、子供たちを手術や薬による身体改造の犠牲にするなど、恐るべき規模の医療スキャンダルなのだ。
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