#思春期ブロッカー について。TrangenderTrend の記事より。
元記事
思春期ブロッカー
動画:ジェンダー違和(性同一性障害)に対する思春期ブロッカー:オランダのプロトコール(マイケル・ビグス博士)
英国で2020年12月1日に、高等法院が18歳未満の子どもの治療における思春期ブロッカーの使用について判決を下した。
司法審査は、元タヴィストック精神科医スーザン・エヴァンスがタヴィストック&ポートマンNHSトラストを相手取って起こしたもの。
請求人は、タヴィストックジェンダー・アイデンティティー発達サービスにおいて受けた医療介入を後悔している23歳の若い女性キーラ・ベルと、治療を待っていた自閉症の15歳の少女の母親Aさん。
法廷に持ち込まれた主張は、18歳未満の子供には、思春期ブロッカーによる治療に対してインフォームド・コンセント(編注:情報を知らされた上での承諾)を示す能力がない、というものであった。
これが裁判所の結論である。
2021年、タヴィストックGIDSはこの判決に対して控訴し、勝訴。控訴審は、インフォームド・コンセントは法律で決めるべき問題ではなく、臨床・医療の専門家が決めるべき問題であると判断した。
しかし、この判決は、双方が提出した証拠に基づく分割裁判所の所見を否定するものではなく、単に、そのような決定をするのは裁判所の管轄外であると述べているだけ。
この判決に対する上告は却下されたので、最高裁に進むことはない。
思春期ブロッカーとは何?
思春期ブロッカーは、合成ゴナドトロフィン放出ホルモン(GnRH)類似物質の一種。下垂体に作用して、エストロゲンとテストステロンの産生を刺激する化学信号の放出を妨げ、これらの性ホルモンによる思春期の変化を止める。
Tavistock GIDSでは、2011年に「早期介入研究」を開始。それまでは、思春期ブロッカーは16歳からの子供だけに治療として提供されていた。
この試験で対象年齢が12歳に引き下げられ、その後2014年には、思春期のタナーステージ2に達したすべての子供が対象となった。
つまり、10歳の子供にもブロッカーを投与できるようになったのだ。
現在までにGIDSは1000人以上の子供たちに思春期ブロッカーを投与してきたが、そのうち約230人が14歳以下、最年少は10歳だった。
治療上の利点は、思春期の発達に伴うストレスから解放され、異性ホルモン(cross-sex hormones)や手術による移行(transitioning)を継続するか否かを検討する時間を確保できること。
移行しないと選択した者はブロッカーの服用を中止すると、本来の思春期が再開し正常に進行するとしている。
この薬は効果的で安全であり、完全に可逆的(fully reversible)であると主張されている。
この主張を裏付ける根拠はあるのか?
NHSは、思春期ブロッカーに関するガイダンスを変更した。
以前はブロッカーは「完全に可逆的であると考えられる」と主張していたが、NHSのウェブページには今やこう書かれている。
思春期ブロッカーの副作用
GnRHアナログは、1985年に末期前立腺癌治療薬として初めて認可され、現在も広く使用されている。
また、ブロードムーアでは性犯罪者を化学的に去勢(chemically castrate)するために処方されている。
その後、他の適応症でも使用されるようになり、最近ではジェンダー違和(gender dysphoria/性同一性障害)の子供の思春期を遅らせるために「適応外:off-label」でも使用されている。
また、トランスジェンダーの成人が異性ホルモン療法を受ける際にも、自然な性ホルモンの産生を抑制するために使用されている。
米国では、1993年にルプロン(編注:日本ではリュープリン)という商品名のGnRHアナログ製剤を、思春期早発症の小児に使用することが認可された。また、背を伸ばす必要がある子供たちのために、適応外で使用されることもよくあった。
現在、小児期にルプロン(リュープリン)を使用した女性の間で、成人期に骨や血液の障害、関節の問題など深刻な問題を報告する人が増えている。
この情報についての報告はこちら。
GnRHアナログが機構的に骨量減少(bone thinning)を引き起こすことは以前から知られていた。女子のエストロゲン・レベルの低下は、一時的な骨減少(osteopenia)を誘発する可能性がある。(エストロゲン・レベルが自然に低下する更年期に見られるものと同様である)。
2009年の研究では、ルプロン(リュープリン)を投与された女児は、骨密度が元に戻ったものの、骨量の減少を引き起こしたことが示されている。しかし、骨密度は治療後10年以内に正常レベルに戻ることが確認されている。
また、前立腺癌(prostate cancer)の治療を受けた男性を対象とした2005年の大規模な研究では、骨折のリスクが有意に増加することが観察されている。
ルプロンの添付文書「重要な基本情報」にも骨量減少作用が記載されており、骨量減少の既往症がある方への延長使用は推奨されていない。
スウェーデンの国営テレビ局による画期的なドキュメンタリー番組で、とある子供・レオ君の骨に損傷を与えた衝撃的な事例が明らかになった。
レオ君は、カロリンスカ大学病院が治療した13人の子供のうちの一人で、思春期ブロッカーによって壊滅的な損傷を受けたことで、知られている。
彼らの症状(ailments)には、肝臓障害、原因不明の体重増加(2ストーン)、精神衛生上の問題、骨格の損傷、成長障害などが含まれる。
このドキュメンタリーは、「トランス・トレイン」シリーズの一部で、このリンクから視聴可能。
レオ君のケースはデイリー・メールで報道された。
GIDSの英国の内分泌学者は、トリプトレリン(Triprorelin)というGnRHアナログを使用している。ルプロン(リュープリン)とは少し異なるが、これらの薬剤はすべて同じ部類のGnRHアナログで、同じ作用機序(mechanism of action)がある。
機構的な安全性の問題は、おそらくこの部類の薬すべてに当てはまるだろう。
トリプトレリンは、「Gonapeptyl Depot」および「Decapeptyl SR」という商品名で2つの会社から製造されている。この薬剤は、NICEによって思春期早発症の子供への使用が承認されているが、ジェンダー違和(性同一性障害:gender dysphoria)の子供には「適応外」として使用されていることに留意する必要がある。これは、適切な安全性試験が実施されていないがために、NHSでの使用には規制当局の承認が必要ではないことを意味している。
リュープロレリン(ルプロン/リュープリン)は、小児への使用はNICEから認可(approved)されていない。トリプトレリンで副作用が見られた場合のみ処方される。GIDSの処方情報は、情報公開請求によりこちらで公開されている。→https://www.transgendertrend.com/wp-content/uploads/2017/10/FOI-on-puberty-blockers.pdf
性自認(gender identity)に与える長期的な影響とは?
思春期の進行を阻害することで、ジェンダー違和(gender dysphoria)の子供が苦しんでいる直接的な症状を緩和できる場合もあるが、その根拠は賛否両論(mixed)。また、長期的な影響も不明(unknown)である。
思春期ブロッカーの効果に関する長期的な研究はなく、自然な思春期を中断することで、子供の内面におけるジェンダー違和の自然な軌跡や、あるいはジェンダー違和の解消に、変化を来たすかどうかは不明(unknown)である。
ジェンダー・アイデンティティ(Gender identity)は、若者の身体が性的に分化(sexually differentiated)し成熟していく思春期から青年期にかけて形成される。
ジェンダー・アイデンティティと、それがどのように形成され定着していくのかについて、私たちはほとんど理解していないことを考えると、性的成熟(sexual maturation)の正常なプロセスに干渉することには慎重であるべきである。
しかし、私たちが知っていることといえば、思春期ブロッカーを使い始めた子供たちのほぼ全員が、最終的に異性ホルモン剤に移行しているということのみ。これは、いったん自然な思春期が中断(interrupted)されると、考えを変えることは稀であることを示唆している。
タヴィストック(Tavistock)が発表した早期介入試験(Early Intervention trial)に関する研究によると、思春期ブロッカーを投与された44人の子供のうち、43人(98%)が異性ホルモン剤に移行していることが示されている。
この研究の全体的な所見は、GnRHa治療はこれらのジェンダー違和(性同一性障害)を持つ若者の心理的機能に対して測定可能な利益も害ももたらさないということであった。マイケル・ビグス(Michael Biggs)によるこの研究結果の分析は、こちら↓から読める。
保健研究庁(HRA:The Health Research Authority)は、タヴィストックの早期介入研究に対する調査の中で、思春期ブロッカーの目的として述べられている「子供に『決断する猶予期間:space to decide』を与える」という言説に疑問を呈した(questioned)。
HRAの報告書は、ブロッカーは実際には異性ホルモン剤(cross-sex hormones)という形でさらなる医療介入を行うための第一歩として使われていたことを示唆している。
異性ホルモン剤には、治療を中止しても元に戻すことができない生涯にわたる深刻な影響がある。
もし子供が思春期のタナー段階2で思春期ブロッカーを服用し、その後16歳で異性ホルモンを服用した場合、配偶子が発達していないため不妊症になる。
思春期への影響は本当に可逆的か?
ジェンダーの問題を抱える子供たちが思春期ブロッカーの服用を中止することは稀であり、それは、これらの子供たちが通常の思春期を再開することを示す長期的な研究がないことをも意味している。
「可逆性:reversibility」の証拠は、異なる状況下の子供たちに関する研究によるもの。すなわち、思春期早発症の子供たちだ(思春期障害:a puberty disorder とは、思春期が非常に早く始まる障害のこと。専門的には、女子の場合、早期とは8歳以前を指すが、未就学児でも発症する可能性がある)。
このような子供たちでは、通常12歳頃に思春期ブロッカーを中止し、約1年後に女の子の月経を開始する。
この点で、思春期の再開は子供たちの「期待される年齢」の頃に起こり、思春期の生理学的・心理学的発達の他の側面と一致することになる。
この点が、ジェンダー違和のある子どもへのアプローチとは大きく異なる。
通常の思春期が延期される一方で、通常の加齢のプロセスは進行していく。
したがって、自然な思春期を再開させることは、他の発達の過程とそぐわないことになる。
また、思春期早発症のほぼすべてのケースは女児に起こるため、男児の思春期を再開させたという証拠はほとんどないことに注意する必要がある。
これらの理由から、ジェンダーの問題を抱える子供たちの思春期を阻害することの本当の可逆性は、現在のところ不明である。
自然な思春期を阻害する意味とは?
思春期ブロッカーの使用支持者は、これらの薬物が子供時代の「間違った思春期」の苦痛な症状を和らげるだけでなく、その後、成人期に外科的に修正しなければならないような不可逆的な変化を体が受けるのを防ぐことができると言っている。
例えば、女性では乳房が永久に大きくなり、将来的に乳房の両切除が必要になる可能性がある。また、男性の場合、髭が永久に生え続けるため、将来的に脱毛が必要になるかもしれない。しかし、子供の生殖機能や性的発達への影響については、ほとんど議論されていない。
思春期ブロッカーに続いて異性ホルモン(opposite sex hormones)を投与しても、「異性の思春期:opposite sex puberty」を作れず、異性の二次性徴(secondary sex characteristics of the opposite sex)が生じるだけである。しかし、通常の性的または生殖的な発達は起こらない。
女の子は月経が始まらないので、不妊になる。
男子の精巣は成長・発達せず、生殖能力に影響を及ぼす。
したがって、この変化は外見的(cosmetic)なものでしかない。
男子のペニスは未熟なまま、大人になっても子供の大きさのままだ。このため、ペニスが残っていると、機能的にも性的興奮の面でも、性的な問題が生じる。また、後に性別適合手術(gender reassignment surgery)を選択する場合、ペニスと睾丸から使用する材料が少なすぎることも問題となる。
子供の自然な思春期が阻害されると、身体だけでなく、発達中の脳にも影響が出ることが予想される。
思春期の脳の重要な変化の引き金となるのは、思春期に急増する性ホルモンであり、それが完成するのは20代半ばである。
思春期におけるホルモンの変化は、脳の構造と機能の両方の発達に影響を与えると考えられている。
最近の研究では、いくつかの認知機能には発達の受付期間(window)があり、この期間を逃すと、ブロッカーを中止しても認知機能の発達が後に再開されないことが示されてる。羊を対象とした最近の研究では、長期空間記憶(long-term spatial memory)の低下がブロッカー中止後も持続することが判明しており、下記のように、結論づけられている。
中枢性思春期早発症のために思春期ブロッカーを服用した女児のIQパフォーマンスを分析した2つの先行研究は、GnRHa治療が子供の認知機能に悪影響を与える可能性を示唆(suggest)している。
2001年に25人の子どもを対象に行われた最初の研究では、ブロッカーを2年間服用するとIQが7ポイント低下すると判明(found)した。
2016年の2番目の研究では、マッチさせた対照群と比較して、15人の女児でIQが8ポイント低下すると判明した。
これらの研究の分析結果はこちら↓。
2017年に行われた後期前立腺癌の男性を対象とした研究↓では、GnRHアナログによる治療が言語能力、短期記憶能力、精神的柔軟性、抑制制御などの認知機能に影響を与えると判明した。
Tavistock GIDSの早期介入研究を研究したマイケル・ビグス教授による最近の証拠分析によると、子どもたちが思春期ブロッカーを1年間服用した後、次のような「重大な憂慮すべき感情や行動への影響:worrying emotional/behavioural effects」が報告されている。
カール・ヘネガン教授は、最近発表されたすべての調査研究報告書↓で、ブロッカーの効用を示す証拠の質が非常に低いことを強調した。
子供や若者に対するすべての「『ジェンダー肯定』治療: ‘gender affirming’ treatment 」のエビデンスに関する結論は下記の通り。
国立医療技術評価機構(NICE:National Institute for Health and Care Excellence )は、2020年にジェンダー違和(性同一性障害:gender dysphoria)を持つ子供や青年の治療法に関する2つの調査報告書を発表した。
ジェンダー違和(性同一性障害:gender dysphoria)を持つ小児および青年に対するゴナドトロフィン放出ホルモン類似物質に関する調査報告書の結論は以下↓の通り。
思春期ブロッカーが自殺を「治癒:cure」させることを示すと称する最近の「研究:studies」は数多くある。
最も新しいものは広く公表されている。
マイケル・ビグスの分析↓を読むと、研究結果が著者の主張をいかに「裏付けていない:not back up 」かがわかる。
英国国民保健サービスの委託を受けた独立系医療機関によるタヴィストックGIDS関するキャス博士の報告書(編注:通称キャス・レビュー)は、2022年3月に中間報告書を発表した。この報告書↓では、思春期ブロッカーについて、次のように述べている。
最近、アメリカの「『ジェンダー肯定』外科医:‘gender affirming’ surgeons」のパイオニアでさえ、子供に思春期ブロッカーを投与することのリスクについて発言している。38歳で性転換(transitioned)したマーシ・バウアーズ(Marci Bowers)は、思春期前に性転換した子どもは大人の性機能を持たず、オーガズムも経験できないことを認めている。
結論
子供への思春期ブロッカーの使用は、完全に安全で可逆的(reversible)であるとしばしば主張(claimed)される。しかし、この主張は長期的な研究において検証(tested)されたことはなく、ジェンダー違和(性同一性障害:gender dysphoria)に対する使用は実験的(experimental)なものである。
しかし、ブロッカーには、不妊症や性機能の喪失をもたらす医学的経路に子供を閉じ込めるだけかもしれない、ということを示す証拠があるのだ。
Bell & Mrs A 対 Tavistockの司法審査に関する詳細な情報
Further reading on the Bell & Mrs A v Tavistock judicial review:
🌱高等法院判決に対するKeira Bellの声明全文
Keira Bell’s Full Statement in Response to the High Court Judgment
Keira Bell statement
🌱司法審査の結果に関するスーザン・エヴァンスへのインタビュー
「思春期ブロッカーをめぐるタヴィストック・クリニックへの内部告発が正しかった理由」
Interview with Susan Evans on the outcome of the Judicial Review
Why I was right to blow the whistle on the Tavistock Clinic over puberty blockers
🌱トランスジェンダー・トレンド 高裁判決への対応
「キーラ・ベル:高等法院は、弱い立場の子どもたちを守るために歴史的な判決を下した」
Transgender Trend Response to the High Court Judgment
Keira Bell: The High Court hands down a historic judgment to protect vulnerable children
🌱この判決の分析と、それがTavistockについて明らかにしたこと(弁護士Naomi Cunninghamによる)
「思春期ブロッカーと保護者の同意」
An analysis of the court judgment and what it reveals about the Tavistock by lawyer Naomi Cunningham
Puberty blockers and parental consent
🌱思春期ブロッカーと、ジェンダー違和(性同一性障害:Gender Dysphoria)に苦しむ青少年における自殺傾向→ https://www.transgendertrend.com/wp-content/uploads/2021/01/PubertyBlockersSuicidality.pdf
〈終〉
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