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全てに優先(Trump)する トランスの権利 〜トランスの人々が自分の性別を実際に決定可能にする法律では、女性の人権は考慮されなかった ・ 2

全てに優先(Trump)する トランスの権利

2017年、ジョグジャカルタの署名者の一部が再結集し、追加の専門家とともに、10の追加原則に署名した。

この原則は、当初の原則よりもはるかに踏み込んだ内容となっている。第31原則は、すべての国が「出生証明書などの身分証明書における性別(sex and gender)の登録を廃止せよ」と主張している。
性別(sex or gender)の登録を続行する場合は、「精神医学的診断……年齢、配偶者の有無、その他の第三者の意見」など、自己識別(self- identification)に制約が無いことを前提としなければならないのだ。

ウィンテムテは、新しい原則の起草には招かれなかった。
彼は、第31原則についてこう語っている。
「とんでもない話です。出生証明書への性別登録を廃止した国は、世界にはありません。」
オリジナルの原則は、たとえ一国であっても、世界のどこかに実在する法律に基づいていたと、彼は述懐している。

しかしながら、ウィンテムテは2017年の変化には気づかなかった。LGBTの人権に注目していたにもかかわらず、世界中で繰り広げられているフェミニスト団体とトランス活動家の激しい議論は、彼の世界には浸透していなかったのだ。

彼がようやくその対立に覚醒したのは、2018年、サマースクールで講義をしていたときだった。
彼は講演で、移行する者の配偶者に、性別移行(transitioning)が法的に認められる前に結婚を無効化する権利を与える英国の「配偶者拒否権:spousal veto」規定についての議論にも触れた。

「私は次のように説明しました。配偶者は同性婚に同意したわけではありません。ですから、同性婚をするには配偶者の同意が必要なのです」
すると、会場にいたトランスの男性(A trans man)が異議を唱えた。
「私は、他の人の権利を考慮する必要があり、トランスの権利が他のすべてに優先(trump)することはないと説明しました。しかし、その人は怒って部屋を出て行ってしまったのです」

それ以降、異性を自認する男性(正式な証明書の有無は不問)が、女性に与える影響を示す証拠がどんどん出てきた。
英国、カナダ、アルゼンチン、アイルランドでは、女性の受刑者が、「女性にとって重大な脅威」と評された者を含む暴力の履歴を持つトランス女性と、一緒に拘禁されているのだ。

女性が、男性器が見える男性(a male with visible male genitalia )に、ジムの女子更衣室から出て行くように依頼したことで、警察に通報された

アイルランドでは、「有意義な」移行(Transition)を行ったことや、長期間異性として生活したことなどを要件とせず、18歳未満も含めて性自認(self-identification of sex)を認める法律を制定している。

2015年にアイルランドが、トランスの人々が合法的に異性を自認(self-identify)することを認めるバージョンの法律を可決したとき、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、同国を「世界のトランスジェンダーのリーダー」と称賛した。

アイルランドは、トランスの権利を主張する活動家たちから、セルフIDのゴールドスタンダードモデルとして、不利な影響を受けた女性はいないという主張とともに、支持されている。

2019年12月、裁判官はとあるトランス女性(a trans woman)に、2年間に渡って児童への性的暴行を10件、児童虐待を1件行ったとして、懲役6年6ヶ月(うち6ヶ月は執行猶予付き)の判決を下した。
被告(控訴中:被害者の身元を保護するため名前は出せず)は、子供に対する犯罪を犯した頃に性別移行をした。

この判決を不服として控訴したトランスジェンダー女性(a transgender woman)の弁護士は、判決官はトランスジェンダー女性である依頼人が刑務所で直面する困難を「十分に考慮」しなかったと主張した。控訴者は、控訴審の判決が出るまで女性刑務所に収容されている。

活発なフェミニズム運動があるにもかかわらず、女性の法的・政治的・社会的権利に関する記録が衝撃的に少ない国、マルタは、2015年に性自認法(gender self-identification)を導入した。

2015年、欧州評議会は、「ヨーロッパにおけるトランスジェンダーの人々に対する差別」に関する決議を採択した。
この決議案を作成したマルタの議員デボラ・シェンブリは、決議案の作成に先立ち、事実調査のために英国を訪問した。

イギリスでもマルタでも、トランスジェンダーのイデオロギーやセルフID(self-identification)に批判的なフェミニスト団体には相談していない。しかし、法律上の性別(legal sex)を性自認(gender identity)に置き換えることを提唱する団体にはたくさんの相談があった。

シェンブリはフェミニストの味方ではない。国賓訪問の際に売春宿を訪れたことが暴露された男性同僚の大きなスキャンダルの後、彼女は彼らを保護するために新たに厳しいプライバシー法を提案したのだ。

マルタでは、トランスの囚人(trans prisoners)は、自分が認識する性別(the sex in which they identify)の人と一緒に収容され、女性の囚人には声を上げる機会はない。デンマークやノルウェーでも同様だ。

レディング大学のローザ・フリードマン教授はこう指摘する。
「デンマークには人口600万人しかありません。そして、その社会では女性の権利や女性運動が中心となっています。しかし、女性用スペースにアクセスした自称『女性』による女性への暴力やレイプの事例がすでにあります。ノルウェーも同様です」

2016年6月、ノルウェーでは、診断書や医療報告書、長期間異性として生活していたことの証明(proof of having lived as the opposite sex)を必要とせず、誰でも法律上の性別(legal sex)を変更できるようになった。年齢制限は6歳とされ、少なくとも片方の親の同意があれば可能だ。
トランス女性(trans woman)のデビー・ヘイトンがノルウェーの女性に聞いて知ったことだが、この法律が施行された直後、ある女性がジムの女性用更衣室から男性(男性器が見えている)に出て行くように頼んだことで警察に通報された。
この裁判は2年以上も長引き、最終的には控訴審でハラスメントの疑いが晴れが、しかし、それは彼女の発言がトランスジェンダーの女性(the trans woman)に向けられたものではないと判断されたからだ。

自称トランス女性(self-declared trans women)は、すべての女性専用施設を利用できるだけでなく、「ミスジェンダリング:性別誤認」を含む可能性のある「トランスフォビックなヘイトスピーチ」からも「最高で3年の懲役刑」を持って、保護されている。
ヘイトスピーチ法は、生得的女性(natal women)を保護するものではないのだ。


ウィンテムテは、当初の立場から大きく離れ、今ではGRAとそれ以前の法律がヨーロッパで成立すべきだったのではないかと考えている


*GRA(ジェンダー承認法

英国では、トランスの女性(trans women)が病室に入ることに反対する女性患者を人種差別主義者として扱うべきだという指針がNHS(国民保険サービス)から出されており、患者のプライバシーや尊厳の権利が無視されている。

公的なデータ収集の際に、ジェンダー(社会的性)とセックス(生物学的性別)が混同されているため、犯罪件数など、女性を明確な性区分として捉えた統計が損なわれる危険性がある。

トランスの女性(trans women)を一部の女性スポーツに参加させることは、女性の安全面でのリスクを増大させること、あるいはテストステロンを抑制しても男性の解剖学的・生理学的な利点があるため本質的に不公平であることを示す証拠が増えてきている。

先日、下院の女性平等委員会(the recent House of Commons Women and Equalities Committee’s)が行った男女共同参画に関する調査に雇用弁護士協会が提出した証拠は、英国の雇用法におけるかなりの不確実性を浮き彫りにしている。

例えば、女性(a woman)が性差別(sex discrimination)を主張する際に、比較対象としてトランス女性(a trans woman)を引き合いに出すことができるかどうか、またどのような場合に引き合いに出すことができるか否かについては、不明瞭である。
これは、女性が男性を比較対象として挙げなければ、同一賃金請求を行うことができないため、特に重要なのだ。

女性の声に耳を傾け「目を開かされた」ウィンテムテは、当初の立場から大きく離れ、今ではGRAとそれ以前の法律がヨーロッパで成立すべきだったのではないかと考えている。
「当時の主張は、異性に見えるように最大限の努力をしてきた人々が、その外見が公的な書類と一致しないことで、暴力やハラスメント、差別を受ける危険性がある』」というものだったと、彼は言う。

法律上の性別(legal sex)を変えるのではなく、法律上の性別と外見の違い(their presentation)によって引き起こされる被害から人々を保護することを、法律は単純に求めることができたはずだ、と彼は示唆する。
「そうすれば、トランスの人々の出生時の性別(birth sex)を法的な性別(legal sex)として認めつつ、性別に適合しない外見や行動(gender non-conforming appearance or behaviour)に基づく差別からの保護を確保することができるため、現在の争いの多くを取り除くことができるでしょう」

彼は付け加える。
「同性結婚や年金受給年齢の平等など、現在では出生時の性別はそれほど重要ではありません。しかし、出生時の性別(birth sex)は取るに足りない瑣末な事柄ではなく、単一性別だけの環境は性自認によって自動的に「切り捨られる:trumped」べきではないと、私は認識しています」

この見識は、GRAが成立する前に女性の人権を擁護する団体が相談を受けていなかったと主張する活動家の間で有力視されている。
1月にはキャンペーンサイト(http://www.repealthegra.org)が開設され、「生まれた時の性別を偽る(misrepresent their birth sex)」など許されない、と主張している。

一方、アムネスティ・インターナショナルは、女性の権利とトランスの権利の間に対立があることを認めない姿勢を貫いている。それどころか、衝突の存在を認めることさえトランスフォビアの証拠であるという、活動家グループTransActualの見解を採用しているようだ。

2018年、アムネスティは、法的な性別移行(a change of legal sex)における医学的診断(the requirement for a medical diagnosis)の要件を撤廃するという政府の提案に積極的な対応を促しつつ、次のように述べている。
「トランス女性は女性(Trans women are women)であり、シングルセックスの施設に危険はありません。報道やソーシャルメディアで、トランスの権利と女性の権利を対立させようとする議論を耳にしたことがあるかもしれません。このような議論は、偏見と誤った情報に基づいています」

性別自己決定(Self-ID)の結果、女性の人権が侵害されているという数々の証拠を無視し、協議会は「性別自己決定制度(セルフID)を導入している国では、トランスの人たち自身以外に影響があったという証拠はありません」と述べた。

2020年の終わり頃、アムネスティ・インターナショナル・アイルランドは、「トランスジェンダーの人々(transgender people)の性別自己決定の権利(the right to self-identification)に反対する」人々に「もはや正当な代表権(legitimate representation)を与えない」よう政治家に呼びかける書簡に署名した。
この書簡には、アムネスティ創設者の孫娘から非難の声が上がった。

ウィンテムテは、アムネスティの姿勢を理解するのに苦労した。
「私はトランスの人権を求める運動(the trans rights movement)の大部分に同意しています。しかし、その要求が他の人の権利に影響を与える場合には限界があります」

国際的な人権専門家であり、バンコクにあるチュラロンコン大学の法学部教授であるヴィティット・ムンターボーン氏(Vitit Muntarbhorn)も、この原則の原案者のひとり。
しかし、ウィンテムテとは異なり、彼は「性自認:gender identity」という概念を支持しており、それが女性の性に基づく権利の低下につながっていることを認めてはいない。
「トイレでのトランス女性(trans women)の話をしても、ええと、多くの国にはトイレがないのだから、どうしてそんなことが第一の関心事になるんです?」

ジョグジャカルタ原則がさらに注目されるかどうかは、他の署名者が勇気をもってウィンテムテの側に立ち、自分たちが間違っていたかもしれないと認めるかどうかにかかっている。

他にも多数の方にコメントを求めた。コレア(Correa)には連絡が取れなかった。他の署名者の中には、この問題を十分に考えていなかったと答えた人もいた。

あの時、女性への影響を考慮すべきだったのだろう。
しかし、女性の人権は常に後回しにされてきたのだ。

(了)(8割機械翻訳/後日修正有り)


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