阪急杯・フィリーズレビューコース論

ダイヤモンドS◎ベスビアナイトそれ4。
フェブラリーS◎アドマイヤルプスそれ5。
穴しか買わないマンだから割り切らないといけないんですけどね。

複製元:スワンS

中山芝1800m
4重賞分まとめて書いてある数字が濃密な記事です。


阪急杯・フィリーズレビュー(阪神・芝・1400m)

コースデータ

・右回り/内回り
・スタートから3コーナーまで 443m
・最終直線 356.5m
・高低差 1.9m
・最終直線坂 1.8m

特徴

・スタート地点は2コーナー奥のポケット
・スタート直後は平坦で、中間あたりから3,4コーナーにかけて少しずつ下っていく
・3コーナーの残り800m付近から下り傾斜が大きくなり、最終直線の残り200m地点まで下り
・残り200mを通り過ぎるとほぼ同時に二回目の坂、上り終えた後100m弱平坦でゴール

このコースを使用するOP以上の競争

G2
フィリーズレビュー(3歳・牝)
阪神カップ(3上)

G3
阪急杯(4上)


コース考察

○内有利だが内過ぎると苦戦

阪神芝1400m・補正込み枠順別1着割合(2018年~・1勝クラス以上・16頭以上)
阪神芝1400m・補正込み枠順別馬券内割合(2018年~・1勝クラス以上・16頭以上)

 「補正込み」とは、当該コースが最大18頭立てで開催される、即ち7・8枠の出走頭数が1~6枠に比べて多くなることを踏まえ、1~6枠の出走頭数とほぼ同じになるように一定の係数を掛けた後の数字であることを意味する。
 今回の場合、7枠に75%程度、8枠に70%程度の補正をかけている。

 阪神1400mに限らず阪神内回り全般に言えるのだが、あまり最内枠であることそのものの利益が少ないような印象がある。1200mは比較的内で立ち回りやすいが、それ以外(1400,2000,2200)は最内枠を引いた馬の成績があまり芳しくない。明確にこれが理由だと断言できないが、とにかく阪神内は最内が必ずしもメリットとなり得ないといことである。

 そしてこの1400mも最内枠の成績がそれほど良くない。このコースの場合、2枠から4枠までの馬で約半分の勝ちを占めているだけに余計目立ってしまっている。

 外枠は頭数が多くなりやすいが、補正をかけると明らかに数字は物足りない。単純に内枠であればあるほどいいというわけでないのは上に書いた通りだが、少なくとも外枠に関しては外であればあるほど悪い、と言い切ってしまっていいだろう。

 なお阪神はAコース・Bコースの2パターンが存在するが、それぞれの傾向は以下の通り。

枠順:Aコース

阪神芝1400m・補正込み枠順別1着割合(2018年~・1勝クラス以上・16頭以上・Aコース)
阪神芝1400m・補正込み枠順別馬券内割合(2018年~・1勝クラス以上・16頭以上・Aコース)

枠順:Bコース

阪神芝1400m・補正込み枠順別1着割合(2018年~・1勝クラス以上・16頭以上・Bコース)
阪神芝1400m・補正込み枠順別馬券内割合(2018年~・1勝クラス以上・16頭以上・Bコース)

 Bコースのほうがより内枠が立ち回りやすくなっていそうだが、誤差レベル。

○明確に差し有利ではあるのだが

阪神芝1400m・全頭脚質分布(2018年~・1勝クラス以上・16頭以上)
阪神芝1400m・馬券内脚質分布(2018年~・1勝クラス以上・16頭以上)
阪神芝1400m・馬券内脚質分布円グラフ(2018年~・1勝クラス以上・16頭以上)

 このグラフから見える最初の印象はやはり差し有利ということになるのだろう。
 他の阪神内回りの例に漏れず直線が短いことから差しといっても道中である程度の位置を確保できなければそもそも勝ちの権利を得ることすら難しいのが実情。
 追込で勝ったのはここ5年で僅か2頭(18年4月3勝ヤマカツグレース・19年阪急杯スマートオーディン)のみであり、そこに20年6月1勝を通過順14-12で勝ったカワキタアジンを加えた3頭以外は、全て16頭立て以上のレースで10番手くらいのポジションを取れている。
 他の阪神内回りがそうであったように、直線が短い分豪快な追込でのごぼう抜きが物理的に厳しくなるコースであるということはまず言えるだろう。

 そして差しが有利になる理由だが、これは下に記載している重賞ラップ推移と併せて考えたい。
 ある程度差はあるものの、概ね最終2F-1Fでのタイムの落ち方が大きくなっているのが見て取れると思う。この区間以前のラップ推移と一緒に考えると、このペースメイクの仕方は完全にスプリントレースで頻出する前傾ラップ(序盤の展開が非常に速くなり、終盤に行くにつれて時計が落ち続ける)そのものであるが、1400mゆえに純粋な前傾ラップを刻むと1F分余計に長いことになる。
 この1Fが差し優位を産み出している理由そのものである。実は阪神1200mはかなり前受けが成立しやすく、とにかく前に出しておけば何とかなるという大味なコースなのだが、1F伸びただけでがらりとレース質が変化している。

 伸びているのが「スタート地点から3コーナーまでの距離」であることが最も大きな理由であると考えられる。ここが伸びることによって先行勢の争いが直線で激化しやすく、その分消耗が激しくなることによって最終直線を耐えるだけの体力を持たせられなくなり、結果その一列後ろにいる中団差し馬群の進出を許しやすくなるのであろう。
 こういうところは予想する上で常に気に掛けておきたい。

 ただし気を付けておきたいのは、人気か否かに関係なく逃げ馬が押し切ってしまうパターンが割と起こること。
 グラフを見ても分かる通り、頭数が多くても前半のペースが34秒台くらいに落ち着くと逃げ切りの可能性が大きくなっていく。例えば2018年阪急杯は7番人気の伏兵ダイアナヘイローがスプリンターズS連覇のレッドファルクスと後のG1馬モズアスコットの猛追を振り切っているが、この時の前半3Fは12.3-10.7-11.2=34.2と決して極端に速い流れではなかった。逃げ馬が刻み方がこのくらいかもっと遅くなると予想するのであれば、先行勢を狙っていく方が理に適っている。

 AコースとBコースそれぞれのパターンは下の通り。

脚質:Aコース

阪神芝1400m・馬券内脚質分布(2018年~・1勝クラス以上・16頭以上・Aコース)
阪神芝1400m・馬券内脚質分布円グラフ(2018年~・1勝クラス以上・16頭以上・Aコース)

脚質:Bコース

阪神芝1400m・馬券内脚質分布(2018年~・1勝クラス以上・16頭以上・Bコース)
阪神芝1400m・馬券内脚質分布円グラフ(2018年~・1勝クラス以上・16頭以上・Bコース)


 ほぼ差のない結果。使用されているコースに拘らずこういう結果になると認識でよい。

過去の阪急杯・フィリーズレビューラップ推移

阪急杯

2013 12.4-10.9-11.1-11.2-11.6-11.6-12.2 34.4-35.4
2014 12.2-10.7-10.9-11.1-11.2-11.8-12.8 33.8-35.8
2015 12.2-11.1-11.6-12.1-11.7-12.1-13.0 34.9-36.8不
2016 12.1-10.5-11.2-11.4-11.2-11.4-12.1 33.8-34.7
2017 12.1-10.7-11.0-11.7-11.7-12.0-12.2 33.8-35.9
2018 12.3-10.7-11.2-11.3-11.4-11.2-12.0 34.2-34.6
2019 12.3-10.9-11.2-11.3-11.3-11.3-12.0 34.4-34.6
2020 12.1-10.7-11.3-11.4-11.3-11.6-11.9 34.1-34.8
2021 12.2-10.6-11.2-11.4-11.2-10.8-11.8 34.0-33.8
2022 12.2-10.6-11.2-11.4-11.5-11.3-11.7 34.0-34.5

 不良馬場開催の2015年を除けば概ね短距離らしくペースが速く、また21年を除けばテン3Fよりも上がり3Fのほうが時計が掛かるレース。このあたりは流石にロードカナロアコパノリチャードミッキーアイルレシステンシアなどG1馬も出走するレベルの高いレースならでは。
 なお、その21年に関してはレシステンシアが逃げて勝ったことになっているが、レース内容的には好スタートから一度ロードアクアにハナを譲ったもののスピードの違いで馬なりのまま先頭を奪い取った形になっており、結果この馬がやや溜める形での競馬になったことでこのペースが刻まれたものと考えられる。

 また、全ての年で最終1Fの時計が掛かるようになっているのは阪神1400mの特徴。逃げ馬の粘り具合によってペースの変動幅は変化するものの、そもそも最終直線に急坂を構えているコースで、かつ内回りであることから惰性をつけて一気に駆け上がりづらく、それが最終1Fでの様相一変を招きやすくしている。15年ダイワマッジョーレ、19年スマートオーディン、20年ベストアクターなどはその最終1Fで一気に脚を伸ばした馬。

 過去10年データは逃げ馬が最優勢となっているが、勝った馬といえば先に述べた通りこの時点ですでに阪神JFの勝ちを含めて最上位戦線での好走多数なレシステンシア、同じくNHKマイルC勝ち馬で前年の同レース2着・高松宮記念も3着のミッキーアイル、G1勝ちこそないものの2走前にマイルCSで逃げて4着好走のコパノリチャードという面々で、1400m以上での好走歴に乏しく7番人気だったダイアナヘイロー以外は単純に能力差で押し切っている感もある。純粋な地力の差が認められなければペース的にも差し馬にやや向く基本傾向は変わりないはずなので、その点は注意しておきたい。

フィリーズレビュー

2013 12.3-10.9-11.7-11.8-11.3-11.9-12.2 34.9-35.4
2014 11.9-10.9-11.8-12.1-11.7-11.4-12.5 34.6-35.6
2015 12.2-11.0-11.5-12.0-11.7-11.8-12.3 34.7-35.8
2016 12.2-11.2-11.6-12.2-11.7-11.5-11.7 35.0-34.9
2017 12.0-10.2-11.3-12.0-11.8-11.7-12.0 33.5-35.5
2018 12.3-10.3-11.1-11.7-12.0-11.9-12.2 33.7-36.1
2019 12.2-10.8-11.9-11.9-11.7-11.3-12.2 34.9-35.2
2020 12.0-10.4-11.0-11.6-11.5-12.0-12.5 33.4-36.0
2021 12.1-10.5-11.1-11.5-11.5-11.8-12.2 33.7-35.5
2022 12.0-10.5-11.0-11.4-11.5-11.7-11.8 33.5-35.0

 フィリーズレビューは阪急杯と比較して、前のめりになりがちなのは変わりないが、一方で序盤にかなり無理なペースを刻む馬が一定数存在する傾向にある。また、阪急杯が道中持続調のペースを刻むのに対し、フィリーズレビューでは道中で一度緩みが起こる傾向が強い。

 前者については、阪急杯とフィリーズレビューのラップを見比べれば一目瞭然だが、阪急杯ではテン3Fの最速が16年・17年の33.8であったのに対し、フィリーズレビューにおいてはこれを上回る速度でテン3Fが推移した年が5年もある。
 なおこの5年の該当逃げ馬は、
・17年アズールムーン
・18年ラブカンプー
・20年カリオストロ
・21年ポールネイロン
・22年コンクパール
となる。

 特に近年はそういうハイペースで流れる傾向が強くなっており、その結果本来のコース傾向以上に極端な差し寄りの決着になっているのがこのレースの最近のトレンド。特に18年2着アンコールプリュ、21年3着ミニーアイル、22年1着サブライムアンセムあたりは本来であれば足切りによって厳しくなりかねないポジショニングから上位に食い込んできており、レース質が本来のそれとはまた異なっていることを示唆している。

主観

 純粋なスプリンターで出脚の速さを武器に粘り込みしていたような馬はあまり買いたくないようなコース。ただ上がりの速度が大きく求められるような感じでもなく、そこそこの出脚・瞬発力・持久力が問われるようなコースのイメージで、スプリンターに寄りすぎていてもマイラーに寄りすぎていても微妙。

 また、何かに特化している必要がない分全体的な能力を高水準でまとめていることが問われるため、欠けているものが少ない馬が勝ちやすく、それが阪神カップにおけるキンシャサノキセキサンカルロリアルインパクトの連覇や、ダイアナヘイローの2018年阪急杯+阪神カップ制覇などのコース巧者がよく登場する。このコースで好走できるということは、それだけ全体的なステータスが高くまとまっているということになるため、欠点が少なく強いということが言いやすくなる。

 なので、スプリントオンリーでもマイルオンリーでもなく距離が若干ぼやけているがどちらでも何となく好走できている、くらいの方がここでの好走期待値は高いような気がする。
 無論、位置取り能力は必須にはなるが。

 ただし、フィリーズレビューはやや異質なレースで、本来阪神で求められる能力があまり問われない展開になりやすく、追走力が多少乏しくても前が飛ばしすぎているがために何とかなってしまうということも近年は多発している。
 逆に言えば、その分普通に先行しているはずの馬がハイペースに巻き込まれてしまいやすいということでもあるので、特にスプリント色の強い馬や、折り合い能力に欠いている感の強い馬が出走してきていないかどうかはよく検討した方がよさそうである。



 阪急杯は20年◎フィアーノロマーノは3着も相手抜け、逆に21年は○ミッキーブリランテ2着、▲ジャンダルム3着も◎ダノンファンタジーが痛恨の出遅れで取りこぼし。
 22年は◎リレーションシップ○サンライズオネストで3-4着。
 フィリーズレビューは20年◎エヴァジョーネ、21年◎オパールムーンで共に撃沈。

 3歳牝馬限定なんて買うもんじゃないと強く思った。

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