日本ビクターの業務用VHS 3in1ダビング機BR−7030 メカ編
前回、ビクターの3in1タイプのダビング機BR-7030について紹介しました。
今回は、このBR-7030のメカを紹介したいと思います。
両横のネジを緩めるだけでメカユニットが引き出せます。
取り出したメカユニット
メカユニットを調整用の治具につなげば本体無しで走行系、ビデオ系、オーディオ系のすべての調整が出来ます。そのため、メカユニットだけを別に生産したり、故障したメカユニットを調整不要で交換することも出来ます。
実際にメカユニット単体をSA-K7030という型番で販売していました。
本体との接続は後部の2つのコネクタ。メカユニットを本体に差し込むだけで映像信号も音声信号も制御信号も接続されます。
このコネクタは安定してましたね。刺しにくいとか接触不良とか、聞いたことがありませんでした。
では次にカセットハウジングを外してメカを観察しましょう。
メカ部分は民生用のD66のメカを使用して薄型化しています。リールは首振り式のアイドラーを使って1モーターで駆動。
D66からの主な変更点は
・ソレノイド方式のヘッドクリーナーの追加
ビデオヘッドの汚れを吹き飛ばし、ゴミ付き(目詰まり)を防止します。
ビデオヘッドに近いので磁気の影響がないように真鍮製。
・インピーダンスローラーの質量増加
プラ製の軽いローラーを真鍮の削り出しの重い(そして高い)ローラーに換えてビデオ信号のジッター(画面の揺れ)を改善
・A/Cヘッドの調整用コネクタ、共振防止の板金の追加
調整用の信号を取り出すテストポイントとしてコネクタを追加。あわせて、共振しないように板金を追加して重くしました。
・ガイドローラーのフランジの耐摩耗処理
窒化処理か窒化チタンコーティングだったような(見てもわかりませんが)
摩耗ってすごいもので、薄くて柔かいビデオテープが何百、何千時間も走行するとステンレスのフランジを削って溝を掘っていくんです。
ビデオテープの走行はミクロン単位の精度が必要なので、数μm削れたらガイドローラーを回転させて高さを調整します。
調整して回転させるごとに溝の位置が変わるので、市場から帰ってきたガイドローラーを見ると溝が何本もついていることがよくありました。
さらに、長いこと調整しないとどんどん溝が深くなってしまい、それから回転させて調整するとハマっていた溝から外れてがくんと走行高さがずれてうまく調整が出来ないということになってしまいます。
ダビング機は24時間365日使う場合も多く長時間のテープ走行が当たり前なので、ダビング機のガイドローラーのフランジのステンレスを硬くして削れにくくしているのです。
メカはこのくらいにして、フロント周り。
BR-7000から好評で引きついだ仕様は
・大型のRECランプ
BR-7000よりもっとでかくなって斜め横からでも見えるようになりました。ダビング屋さんでこれが何十台も並んでいる様は壮観です。
・オーディオのレベルメーター(4chの信号を切り替え式で出力)
・4chのオーディオ記録ボリューム
・WARNING表示部
エラーのときに種別を示す番号を表示します。
・フロントパネルのテストポイント(メカユニット3台の信号を切り替え式で出力)
オシロをつないで波形のチェックが出来ます。
BR-7000からさらに割り切った仕様としては
・EJECT以外の操作ボタン削除
代わりにリモコン端子がフロントにあります。
・カウンター無し
BR-7000では申し訳程度にメカカウンターが付いていましたが、BR-7030ではそれも削除。代わりにTAPE RUNのLEDが点滅します。
・ビデオレベルメーター、ビデオレベル調整ボリューム削除
・カセット挿入口の蓋無し
民生用(家庭用)では子供がいたずらしてミニカーを入れたりするのを防止するために蓋がついてるんですが、このVTRは業務用、さらには大規模なダビングハウス向けの製品なので、誤操作の心配はあまりないこと、蓋があるとかえって壊れやすいことから、蓋無しになりました。
このように、大規模なダビングハウスでの使用を前提に、仕様の見直し、コストダウンを行ったのが、BR-7030になります。