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日本ビクターの業務用VHS ダビング機 BR-7000


 ビクター最初の業務用VHSの系譜を書くといってからはや6ヶ月。まったく進んでいませんでしたが、ようやくビクターのダビング機BR−7000についてまとめたので紹介します。


 1980年代、家庭用VHSが普及してくるとビデオソフトの拡充が求められるようになります。VHSのビデオソフトは、当時はマスターテープを放送用の1インチVTRで再生し、それをたくさんのVHS VTRで一斉に録画(ダビング)して作っていました。初期には家庭用のVHS VTRを使ったり、業務用のVTR BR-6400を使ったりしていたようです。

しかし、安く大量にビデオソフトを作るためには大量のVHS VTRを使って24時間365日連続稼働でダビングを行うことが重要です。そのため、価格が安く、故障が少なく、耐久性のある、ダビング専用のVTRの要望が大きくなりました。また、当時新たにVHS規格に追加されたHiFiオーディオへの対応も求められていました。

そこで登場したのがダビング専用のVHS VTRです。松下からも先行してダビング機が発売されていましたが、ビクターもダビング専用のBR-7000シリーズ(仕事番号:G01)を開発・販売しました(1984/04から開発スタート)。

機種展開は、国内向けのBR-7000、米国向けのBR-7000U、欧州向けのBR-700Eの3モデル。のちにシリアルリモコン対応のBR-7000R、BR-7000UR、BR-7000ER、さらにはコストダウン版のBR-7000A、BR-7000UA、BR-7000EAがリリースされます。

BR-7000シリーズは従来の業務用VTR BR-6400のメカをベースにしていましたが、BR―6400からコストダウンをはかっていました。

不要な機能を省くのと不要な部品を削除するのとセットになりますが、主な点は

1.サーチ機能を削除することでテープのテンションコントロールを差動トランスからメカニカルなバンドブレーキに変更

2.ピンチローラーの圧着をソレノイド方式からギア連動アーム方式に変更

3.リールモーターの軸受をボールベアリングからメタル軸受に変更

4.テープカウンターの電子表示をメカニカルなカウンターに変更

といったところです。追加された新機能としては、HiFiオーディオぐらいでしょうか。

ほかに、ダビング機独自の仕様として

1.AGC ON/OFFスイッチの追加
(最初からダビング防止の信号を入れておいて、そのまま記録可能)
2.再生時のビデオの画質補正を抑える
3.オーディオ、ビデオのレベルメーター
4.オーディオ4chの記録ボリューム
5.アワーメーターやテストポイントのフロント配置
6.RECランプの大型化
7.トップパネルのドラム上部に点検カバー追加
8.爪折れカセットでも記録可能
(最初から爪のないカセットでも記録できる)
9.大型のカセット挿入ガイド
10.数珠つなぎに接続して操作するシリアルリモコン機能(BR-7000Rから)

などが挙げられます。

また、生産途中での変更にはなりますが、ガイドローラーのフランジを耐摩耗化したり、ヘッドクリーナーを追加したりしました。

BR-7000のメカで一番苦労したのはカセットハウジングです。それまでの業務用VTRではまったく問題がなかったカセットハウジングが、ダビング機にしたら故障が頻発。

あるときダビングの現場を見に行くと、カセットをほおりこんだり叩き込んだり、挙句の果てにはカセットを蹴飛ばして入れたりしていました。
編集機はビデオスタジオで丁寧に取り扱われていたのでそうそう壊れませんでしたが、さすがに蹴飛ばされてはたまりません。

使い方が悪いといってもしょうがないので、よく壊れるギアを厚くして強度をupすると今度はその次のギアが壊れるといういたちごっこ。もぐらたたきのように順次強化していきました。

もともとあったバネによる緩衝機構もストロークが足りずによく壊れていたので、固定にして別途クラッチを追加、ギアの材質もジュラコン(ポリアセタール)を焼結合金やべスペル(ポリアミド)に変更、位相のずれるカセットドアはギアを長くしたりして、ようやく壊れないカセットハウジングとなりました。


このように苦労しながらも市場の要望に応えていった結果、BR−7000シリーズはダビング機のベストセラーとなったのです。


YoutubeにBR-7000の動画が上がっていたのでリンクを貼っておきます。

Victor/JVC BR-7000 Duplicator VCR part 1


Victor/JVC BR-7000 Duplicator VCR part 2 : Belt replacement


Victor/JVC BR-7000 Duplicator VCR part 3 : Capstan motor repair



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